堕落したブラウニー   作:三和

116 / 124
116

「それにしても…」

 

「んん…?」

 

布団の上で、アイツの書いた原稿を眺めていたら横で寝ていた筈のアイツが身動ぎし、目を開ける……いや、思わず出てしまったとは言え、ほとんど独り言のつもりだったんだけどな…ここで例えば、薬が効いてるから起きてるのキツイだろ?寝てていい、とか言っても基本…僕の前では子供と変わらないワガママさを発揮するコイツが聞かないのは何となく察してるので仕方無く、僕は疑問を口に出した。

 

「…いや、聖杯戦争時の僕の行動とかは本当にチラッと話した程度なのに…結構的確に僕の心情を当てられてるな、って思ってさ…」

 

「ん…ああ、それか…俺が、お前の考えてる事が分からない訳無いだろ?」

 

「……」

 

昔なら気持ち悪いとか、それこそ口に出して気色悪いとか言ったんだろうけど(もう、コイツの前でだけ出る口癖みたいなものだった)今の僕は多分、苦笑を浮かべていると思う。

 

「ハァ…お前相手だと隠し事はあんま出来無いよなぁ…と言うか、お前って人に"共感"する事が出来無いとか言いながら…何だかんだある程度心情を理解してたよな…」

 

と言うより、コイツの場合は知識として人の喜怒哀楽については元々ある程度把握しているから理解出来なくてもそっち方面で多少なりとも見抜く事は出来るらしい……ちなみに僕は、コイツにとっては特に分かりやすいらしく…時折魔術無しの組手やっても動きが読まれてしまって中々勝てなかった……ハァ…思い出した所で、何かもう悔しさも浮かばないかな…最後は勝てたし…まぁ、今程じゃなくてもあの時コイツはかなり弱ってたけどね…ふぅ…それにしても、何で僕は強姦魔をこうして気遣ったり…わざわざ添い寝なんてしてやってるんだろうね…ん?

 

「…眠いんだろ?寝てて良いよ。」

 

「……眠くない。」

 

そんなトロンとした目付きで言われてもね…僕は取り敢えず横に有る机に原稿用紙の束を置いた。

 

「じゃあ僕もそろそろ寝るから「まだお前と話したいんだよ」…分かった、明日は仕事休みだし夜まで居るから…明日ゆっくり話そう。」

 

と言うか、今更そんな意固地になるほど話題なんて無いだろうに…ハァ…

 

「…慎二。」

 

「ん?」

 

「…頭、撫でてくれよ…そしたら、寝る…」

 

……コイツは本来の両親の記憶がほとんど無い。 何より、衛宮切嗣に引き取られてからも本人は、死ぬ直前くらいまでは家に居ない事も多かったらしい…まぁ、衛宮切嗣は自分の娘を迎えに行ってた訳で…そこに部外者で有る僕から言える事なんて無いけど…薬のせいで頭の回転が鈍ってるにしてもコレは可笑しい…全く、こんな拗れた人間生んだ責任くらいは取ってから死んで欲しかったとは思う。……まぁ、衛宮切嗣は娘に対しての接し方もかなりアレだったみたいだけど(そもそもイリヤスフィールも衛宮切嗣の事は名前呼びで父と呼んだ事は無いって話だしね…)ハァ…やれやれ…相手の歳考えたら普通スルー一択何だろうけどね…

 

「ハイハイ…コレで良いか「もう少し」…分かったよ。」

 

今でこそ、薬が効いて思考能力落ちてるせいか尚幼児退行してる様に思えるけど…実際、少し前から何でも無い時でもコイツはどうも子供っぽい仕草を見せる事が多い様にも感じていた(昔も言動何かにたまに含まれたりしてたけど、最近はかなり露骨だ…ちなみに、以前も無意識なのか親指をしゃぶってる姿も見た事が有る)

 

……子供として年相応に過ごせた時間短いにしてもコレは本当に異常だ、どうも可笑しい…う~ん…やっぱり一度病院で診て貰った方が良いかな。

 

「っ…」

 

「良いぞ、そのまま寝ても…お前が寝たら僕も寝るから。」

 

「…居なくなったりしないよな?」

 

昔の僕なら今のコイツを見て失望したり、イラついたりするのかな…でも、今は…

 

「ああ、大丈夫だ…明日の夜までは居るよ。」

 

不思議と今の僕は、変わり果ててしまったコイツに哀れみや庇護欲の様なものは湧いてもそれ以上特に思う所は無い…まぁ、同年代のそれも同性の人間に抱く様な感情では無いのも分かるけどね……ただ、僕にはどうしても今のコイツが…ただ図体のデカイだけの子供にしか見えないんだ。

 

「…ほんとに?」

 

発せられた言葉はかなり舌足らずに、しかもかなり高い声が聞こえた…まるで本当に子供に戻ったみたいだよな…まぁ、以前はともかくもう見慣れたから特に驚きも無いけど…コイツの肉体は特殊だから、普通の人間と同じ成長出来て無くても不思議は無いしね。

 

「本当だよ…だから、ほらおやすみ。」

 

「…うん、わかった…おやすみ。」

 

……チラッと、僕たちの中で最もコイツに対して過保護なイリヤスフィールに今のコイツの相手を代わって欲しいと頭に過ぎったのは大目に見て欲しい…いやまぁ、僕だって辛いからね…こうして友人が壊れる姿見てるのはさ…案外、この後連絡したらドイツから来てくれたりしないかなぁ……なんてね。ふぅ…何か、今の士郎をアイツに渡すのも癪だな…やっぱり僕の方で独り占めしよう…子供の相手は苦手だけど、コイツなら悪くないとも思うしね……あ。

 

「やっちゃったか…ハァ…せっかく寝かせたけど、コレは一旦起こさないと駄目かなぁ…」

 

士郎の着ている物は元より、僕の服まで濡れて来ている…"失禁"って言うとちょっと深刻過ぎるし、今のコイツだと意味が通じるかも怪しい…ま、そんな事考えるのは後だ…とにかく、先ずは士郎を起こして二人で着替えて…少なくともシーツは洗って…布団もどうにかしないと…やれやれ…大変だなぁ…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。