以前…年老いて、寝たきりになった親の世話をしていた人の書いた本を読んだ事が有る…基本、肉親と言う事も有って最初は皆献身的に世話するらしいけどすぐにそんな感情なんて消し飛んで、やめたくなるのが常らしい…
…と言うのも、とにかく大変らしいのだ…食事一つにしても、大抵向こうは自力で起き上がれないから補助は必須だし…何より、特に嫌になるのが下の世話らしい…そうなる理由は色々だけど、赤ん坊とかと違うのが大抵は臭いが本当にキツイらしい…特別重たい物摂取させなくても何故かとにかく小も大も、大人だとかなり臭いし…そもそも胃も弱ってるから半分未消化で口からも出る事が有るって話だ……まぁ、たった一人しか居ない実の親でもそんな関係性投げ捨ててさっさと老人ホームに叩き込みたくなる気持ちは客観的に見ても理解出来る。
ま、とは言っても…
「そんなに酷くは無いかなぁ…」
小の方だったからかも知れないけど、コイツのソレは特別嫌な臭いって程でも無い…まぁ、処理の方考えたら頭痛くなっては来るけどね…
「うー…」
「ほら、唸ってないで行くぞ…終わったら別の布団敷くし、寝て良いから。」
コイツ自身は別に歩けない訳じゃないから寝ぼけ眼でも、手を引けばこうして風呂場には来てくれる……いや、もう少し早く歩いて欲しい本音は有るけどね…裸のままだからこのままで居て風邪なんてひかれても面倒だし…
「…ねぇ?」
「ん?」
「…おこってる?」
……今夜はずっとこのままみたいだな…ま、かえって楽だけど。
「…怒ってないよ。ほら、早く身体を綺麗にしよう。」
怒らない怒らない…だって"小さい子供"に一々そんな事でイライラしたって仕方無いし…やれやれ、結局コイツのせいで結婚前提の恋人なんて作れなかったし、当然自分の子供も居ないけど…不思議と、今のコイツに対して父性の様なものが芽生えてる。実際、こう言うのも楽しいかも知れないとさえ思えて来るよ(まぁまぁの量出してくれた上に、夜中だから布団洗った所で天日干しは出来無いからどうしようかと考えると少し憂鬱だけど)
…ま、今はとにかくコイツの身体洗って着替えさせるのが先決だ。
「…いっちゃやだ。」
「後で戻って来るから…」
「やだ!」
「参ったな…」
士郎を着替えさせ、さっさと布団と着ていた服を洗いに行きたいんだけど僕の服を掴んだまま離してくれない……こう言う時、遠坂や桜が近くに居ないのが辛い…コイツも、何もわざわざ衛宮家出ようとしなくても良かっただろうに…まぁ実際、こんな事であの二人一々呼びたくないけど…イリヤスフィールなら二つ返事で来ようとするのかなぁ…と言うかコイツ、こんなんで僕が来ない日はどうしてるのかと思う…さすがに家政婦くらいは雇ってるけど、夜には帰ってしまうしね…まぁ、僕程頻繁じゃなくてもあの二人も時折ここ来てるから何とかなってるのかも知れないけど。
「うー…じゃあおはなし!」
「話?」
「なんかおはなしして!たのしいやつ!」
「おはなしねぇ…」
とは言え、僕自身普通の子供として生きて来た訳じゃないし子供だって居ないんだから小さい子が喜ぶ様な話はあんまり知らない…今のコイツには難しい話は理解出来無いだろうし確実にブーイングが飛ぶだろう…結果、意固地になって、余計に寝なくなると思う…ま、さすがに全くおとぎ話の類に心当たりが無いと言う訳じゃないけど…冷静に考えたらコイツは今幼児退行してるだけで、別に元々の記憶が完全に消えたとかじゃないだろう…昔のこいつは色んな物語に手を出してたみたいだから、あんまり定番の話しても知ってるからつまんないとか言われそうだ…う~ん……あ、そうだ…
「…じゃあこんな話はどうかな?強くて賢い、とある騎士の王様の話だよ。」
「なにそれ!?聞かせて!」
……今、一瞬素のコイツに戻った様な…気の所為か。
「じゃあ話そうか…その王様はね、本当は女性だけど…訳あって男の振りをして王様になった人なんだ…」
きっと、これは今のコイツに聞かせるのに一番相応しい話だと僕はそう思う……ま、結構コレもコイツが以前…僕に話した話をそっくりそのまま聞かせるだけになるのが少し癪だけどね…