堕落したブラウニー   作:三和

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まぁ、話すって言っても…この話に関しては本来は一日では当然語れない(相当端折れば何とかってところだ…)実際、アイツが時々語ってた時も一段落着くのに一年は掛かった……そう言えば、アイツは大抵酒飲んで酔っ払ってる時以外話さないから、所詮は酔っ払いの話と思って要点以外は聞き流してたけど(だって何度も同じ話するから…)

 

それでも何か、ただアーサー王物語読んだだけにしてはやけに具体的な内容を聞けた様な気がしないでも無い…例えば、向こうでの食事は基本、潰したじゃがいもで…全部円卓の騎士の一人にして、太陽の騎士ガウェインが手ずからやってるとか…ちなみに、アーサー王が治めていた国…ブリテンとは現在のイギリス領の事なんだけど…どう考えてもあの時代に芋は作ってないような…かと言って、わざわざ海越えて運んでたのだろうか……まぁ、あくまで酔っ払いの言う事、って考えてた方が無難だけどね…そもそも、アーサー王の実在自体証明されていないのに…正体が女だったとかどう考えてもファンタジーだ(と言うか、聖杯戦争の時にセイバーの姿は見たけど…甲冑にしろ、私服にしろ…アレで騎士たちが彼女を本当に男だと思ってたなら全員どうかしてると思う…)

 

まぁ、そんな世界で生きていた王の話だ…多少不可解な話が有っても別にそんなに不思議じゃないか…

 

とは言え、それでもアイツはあまりにも詳し過ぎた様に思う…と言うか、よっぽど気に入ったのか知らないが…アイツが一番話すのはアーサー、もとい…アルトリアの事じゃなくて脇を固める騎士たちの話だ……特に、ランスロットの話ばかりを嬉々として語ってた…まぁ、正直、到底笑えない話ばかりだったけど…と言うか、実はランスロットは以前の聖杯戦争の時にサーヴァント、それもバーサーカーのクラスとしてウチ(間桐家)が呼んだって言うからあまりにも皮肉が利き過ぎている…

 

ちなみに、ランスロットの願いはアルトリアに手ずから生前の自分の行いを裁いて貰う…つまり、主君に殺して欲しいと言う何とも拗らせたものだったらしい…その癖、実は主君に秘めた想いが有ってとかなら良いんだけど…そもそも、湖の騎士ランスロットはヒロイックに描かれる事も多く…アーサー王物語に登場する人物の中でも特に人々の人気が高い人物では有るんだけど…その人柄は一言で言えばただのクズだ…武勇はともかく、女性関係では普通にやらかしている…極めつけは、主君の妻との不倫だ…僕も女性関係に関しては人の事は言えないと思うけどコレは無い…と言うか、僕ですら…既に相手の居る奴にちょっかいは掛けない。

 

…ま、アーサー王が本当に女性だったので有れば夫婦関係は冷え切ってた可能性は高く、確かに仕方無い面は有るかも知れない…尤も二人の逢瀬を目撃、王に密告しようとした騎士アグラヴェインを殺害し…主君の妻グィネヴィアと逃亡…追っ手の騎士たちも殺害…結果、円卓の騎士の半数を殺害した事でブリテン崩壊の一因にまでなってるからな…さすがに擁護は出来無い…とは言え、どちらかと言えばトドメは、知らない内に産まれていた息子(実は娘らしいけど…)にして、円卓の騎士の一人で有るモードレッドの裏切りになるけどね…

 

一応、その後アーサー王は彼(彼女)を討ててはいるけれど…もうその時点で全ては手遅れ…ブリテンは滅んだ…そして、アルトリアはこの結果を覆す為…自分を王にしない為に聖杯を求め、世界と契約した…それから先、既に死を迎えるだけだった筈の彼女の時間は止まり…場所、時間を問わず全ての聖杯戦争に必ず呼ばれる事になる(肉体がまだ死んでない為か、霊体化が出来無い)

 

……まぁ、申し訳無いけど何ともアホらしいと言うか…途中までランスロットの下りで嘲笑する様に話していたアイツも(そもそもアルトリアとまともに話し合おうともせず、それぞれが良くも悪くも勝手に行動する騎士たちと…我の強い騎士たちをほぼ見限って、重要な所は全部一人でやろうとしてほとんど視野狭窄起こしてるアルトリア…アイツは基本、どちらも馬鹿にしている)いつも、最後の下りに来ると感情を消した無表情で"救いようがない"としか言わないからな…

 

…ま、話そうとしてなんだけど本当は子供に話す様な話じゃない。普通の子供相手なら僕も話さないね(教育にクソ悪い…)

 

相手があくまで、幼児退行してるだけのコイツだから言えるってだけだ…

 

「…騎士王アルトリアは何とか裏切りの騎士モードレッドを討つ事が出来ました…しかし、既に彼女の身体も限界を迎えていました……やがて、彼女も息を引き取りました…自らが君臨し、愛した国ブリテンと共に…」

 

「…アルトリアは、自分の子供と戦う事になって辛くなかったの…?」

 

「それは、本人にしか分からない…でも、どうだろうね…王としてはただの裏切り者…しかし人としてなら、あるいは…部下としては大切だったのかも知れないね…そして、もしかしたら…肉親の情も有ったのかも知れない…」

 

「……慎二。」

 

士郎が僕の名を呼ぶ…その声は先程に比べて明らかに低かった…

 

「…よう、やっと起きたか?」

 

「…まぁな…朧気だが、まともな状態じゃなかったのは分かる……つか、相変わらずロマンチストなんだなお前…あの女、多分モードレッドを息子や娘なんて一度として思った事ないぜ?…と言うか、無理だろ…アイツは、下手したら俺以上に親がどんな存在か知らねぇんだからな…居ない、って一点だけ見たら俺もアイツも同類だが。」

 

「…聖杯戦争は触媒を使わずにサーヴァントを呼ぶと大抵は呼ばれるサーヴァントはランダム…では無く、実際はその人物と最も相性の良い英霊が呼ばれる…だったか?」

 

「証明は、出来無いけどな…まぁ正直な所、恐らく…"衛宮士郎"が触媒無しで呼べるサーヴァントはある程度パターンが決まっている…基本、その衛宮士郎がどんな奴であろうと…あくまで"衛宮士郎"である以上はそのパターンで呼ばれるだろうな…平行世界で結んだ縁が強過ぎて、定着してしまってるんだよ。」

 

「…例えば?」

 

「先ず…体内に鞘が無くても高確率でアルトリアが呼ばれるだろうな…そして、これまた高い確率でセイバーで呼ばれる「他のクラスのアルトリアも存在するって言うのか?」ああ。」

 

「……」

 

さも、当然の様に断言したな…コイツは、結局一体何を"観て"るんだろうな…

 

「ただ、アルトリアに関しては遠坂の奴が召喚出来る可能性が有る…」

 

「その場合、当然お前の所にアルトリアは来ないか…じゃあ誰が来るんだ?」

 

縁が深いとか言ってる以上…来るのは多分、僕も知ってる奴しか居ない。

 

「…他のクラスのアルトリアが来ないとは限らないが、それは多分稀だ…来るとすればエミヤアーチャーか、あるいは…エミヤアサシンだろうな…」

 

「…平行世界のお前はアサシンの可能性も有るのか?」

 

「…戦場を単独で駆け回っていたのが生前のエミヤアーチャーだ。ゲリラ戦が得意だったんだろうし、当然その可能性も有るが…この場合のアサシンは平行世界の俺が至った奴って訳じゃない、完全に別人さ…」

 

「?…じゃあ誰…!…いや、まさか…そうなのか?」

 

「…エミヤアサシンの正体は衛宮切嗣だ…ただ、そもそも俺と出会わず聖杯戦争も経験してない切嗣…その、成れの果てさ…」

 

「…ひょっとして衛宮切嗣も守護者か?血も繋がってない癖に、親子揃って最期は同じ事をしてるんだな…」

 

「愚かだってのは自分が一番良く分かってるだろうさ…ま、俺はそうならないから知った事じゃないが。」

 

……冷静に考えると話に脈絡が無い、その癖コイツは喋り続けている…

 

「そもそも、エミヤとアルトリアとの間の奇縁は衛宮切嗣が聖杯戦争に参加した事から始まって「士郎…」…何だ?」

 

「…何を焦ってるんだよ?」

 

「…遠坂や桜の奴に聞いてないのか?最近はいつもこんな感じだよ…」

 

「…質問に答えてない。だから、何を焦ってる?」

 

話の切っ掛けを作ったのは僕だが、奴の口が閉じる気配は無い…

 

「そもそも、本当はまだ眠いんだろ?寝てても「次…」ん?」

 

「次…次眠ったら、俺は…また変になるかも知れないからな…分かるんだよ、最近…だんだん俺の自我が消えて行ってるのが…」

 

「…アーチャーに食われてるのか?」

 

「……違う、俺の中にアーチャーの自我は無い。俺を塗り潰して言ってるのは平行世界の記憶そのものだ…それから、最近急激に身体も衰えて来た…時間切れは近そうだ…」

 

「…お前、結局自分の身体は作って貰わなかったもんな…」

 

「覚悟の上さ…どっちみち、今から移しても手遅れだ…もう、魂自体が死に掛けてる…」

 

「…だから、会話をして知識や今の自分の記憶の再確認か?…自伝を残せる様に。」

 

「どうせ出版は出来ねぇよ「本当に書けるなら、僕が無理にでも世に出してやるさ」…良いのか?」

 

「どうせ、一般人はお前の書いた内容を誰も信じないさ…魔術協会は過剰反応するだろうけどな…」

 

……ただ、内容そのものは読む限り…実際に体験した奴が書いてるだけ有ってリアルだ…コイツは所詮素人だし、読み物として拙い部分は有るが刺さる奴には刺さるだろう内容だ…それなりに話題にでもなってくれたら面白い。

 

「…何か企んでねぇか?」

 

「…別に何も?」

 

仮に出版されて話題になれば、あるいは死後にコイツが英霊化し…何処かの聖杯戦争に呼ばれるかもとか考えたら…楽しくて仕方が無いとかは思ってるけどね…間近で見届けられないのが残念だけど…ま、何にしても…そんな思惑をわざわざ言ってやる必要は無いだろう…

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