「……おい、勝手に入ってくんなよ。」
「え~?せっかくお姉ちゃんが遊びに来てあげたのに…」
「…成長する身体手に入れたからって無闇矢鱈と姉ムーブすんなよ…てか、今の俺を見ろ…どう見積もったって、アンタより歳上にしか見えないだろ…?」
「…痩せたね、シロウ…ちゃんとご飯食べてる…?」
「まぁな…昔程じゃないが、食えてるさ…」
「顔のシワもこんなに深くなって…何かホント、おじいちゃんみたい…」
「…無闇に触るな、風呂もあんまり入れてねぇんだ「私は気にしないよ、それに…シンジが時々拭いてくれてるんでしょ?」…ハァ…アンタはあんま変わってねぇな、せいぜい三十前半くらいにしか見えねぇ…そう言や、あの女が姿消してからもう十年くらいか…メンテも受けれてねぇわけだが、身体の方は大丈夫か?」
「うん、平気…寧ろ時間を掛けて馴染んだのかな…昔より調子は良いんだ…シロウ?」
「ん?」
「ありがとう…」
「…何の事だ?」
「私が今、こうして生きてられるのはシロウのお陰だから…」
「…その身体を用意したのは人形師蒼崎橙子だ、俺はただ代価を支払っただけだ…」
「でも、トウコを探したのも…代価を払ったのだって…やってくれたのはシロウでしょ?だから、ありがとう…」
「…気にしなくていい…俺は、親父とアーチャーとの約束を果たしただけだからな…」
「…ハァ…せめてお礼の言葉ぐらい素直に受け取ってよ…魔術師は等価交換が原則なのに、私…シロウにどうやって恩を返したら良いのか…分からな「くだらねぇ」ッ…ちょっと、そんな言い方は…」
「"家族"だろうが。ンなもん一々気にすんな…てか、俺は魔術使いで有って魔術師じゃねぇ…そんなルール知らねぇよ。」
「…そりゃ、まぁ…私だって正式に魔術師名乗ってる訳でも無いけど…アインツベルン当主の肩書きだってある意味では自称みたいなもんだし…」
「現状正式にアインツベルンの名を持った生き残りはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンのみだ、アンタが当主務めるのが自然だろ…ホムンクルスであっても、アンタはあそこで生まれた存在には違いねぇしな…」
「…シロウにそう言って貰えると、少しは気が楽かな…」
「…ハァ…で、何の用だ?」
「用が無かったら来たらダメなの…?」
「…ま、別に良いが…本当に何も用はねぇのか?」
「…まぁ、本題は有るには有るけど…」
「じゃあとっとと用件を言えよ。」
「…しばらくここに住んでも良い…?」
「…何でだ?アンタはドイツにも、冬木にだって家が有んだろ?」
「そうだけど…ダメかな…?」
「…ハァ…好きにしろよ…!…そうだな、早速で悪いが…家の人間として一つ働いてくんねぇか?知っての通り俺は…身体にガタが来てるからな…」
「唐突だね…別に良いけど、何したら良いの…?」
「もう少ししたら客が来る…出迎えてやってくれ。」
「お客さん?知ってる人?」
「…直接の面識はねぇよ。ただ、どう言う奴かは分かるさ…」
「それって…!」
「来たみてぇだな…玄関に行ってくれ、で…ここに案内して貰えると助かる…」
「…分かったけど、それなら先にどんな人なのか教えてよ。」
「そうだな…早い話が、平行世界の俺さ…それも、今のままだと俺以上に英霊になる可能性なんてない相当な甘ちゃんだよ…やれやれ…普通繋がるにしても、アーチャーの野郎の所に来るのが自然だろうに…何で寄りによってここなんだか…ま、とにかく…早く迎えに行ってくれよ。」
「分かった…危険な相手とかじゃないんだよね?」
「敵でも味方でもねぇけど…無害だよ、戦い方もろくに知らねぇ奴みたいだしな…」
何となく、懐かしい姿だな…
「…良く来たな…ッ…悪いな、こんな状態で…」
「…それは構いませんけど…貴方は一体「おいおいつれねぇな…つか気持ち悪いし、敬語は要らねぇよ」…いや、そんな訳には…」
「俺が誰か分かんねぇのか?相当鈍い奴らしいな…コレで分かるか?」
「っ!…その剣は…じゃあアンタはまさか…!」
「全く…こっちに来るなんてどんな奇跡なんだかな…まぁいい…良く来たな、衛宮士郎…時間はあまり無さそうだが質問が有るなら…俺は何でも答えるぜ?…普段は基本的にやらないが、今回だけは人生相談も受け付けてやる…」
アーチャーになりそうな衛宮士郎ならあまり世話したくないが…コイツなら、それもまた良いだろう…
「…つまり、自分でもどうしたら良いか分かんなくて…悩んだまま眠りに付いたら何故かここに来てしまったってか…そりゃまた難儀だな…」
「…アンタなら、答えを出せるのか?…一体、俺はどうしたら良いのか「知るかよ」…え?」
「お前の目の前に有る道は結局お前だけのもんだ…俺がどうこう言ってやる事じゃねぇだろ…どうするか選ぶのはお前だ。」
「…それは、そうだけど「つかよ?」ん?」
「仮に俺が助言したらお前は何でも言う通りにすんのか?」
「……」
「そうだな…例えば、お前が向こうに戻った時…セイバーに自害を命じてとっとと教会に保護して貰え…俺がそう言ったら、お前は従うのか?」
「!…そんな事、出来無「何でだ?結局お前は巻き込まれただけなんだろ?」…だけど!」
「……お前は死ぬのが怖くないのか?」
「それ、は…「どうなんだ?」…怖い。物凄く怖い…でも、セイバーの事は裏切りたくない…アイツは俺を助けてくれた…こんな俺でも、セイバーにせめて…何か出来る事が有れば…」
…成程、やっぱりコイツは…俺とも…アーチャーとも違う…多少歪みは有るが…多くの衛宮士郎の選択の果てを観たし、どう言う訳かコイツの前にも数人…平行世界から衛宮士郎が迷い込んだ事は有るが、そいつらは皆狂い切っていた…手を貸すどころか、即刻殺そうかと迷う程に…
だが、コイツは違う…俺の観たどの衛宮士郎よりも人間に近い…まるでロボットとか、人形の様な生き方をする奴が多い中…コイツは間違い無く異端だ……そして、俺よりも確かにまともだ…面白ぇな…
「シロウ!お茶持って来たよ!」
「…と、少し休憩にするか「いや、でも」…焦んなよ、焦ったって…結局何も解決しねぇんだからな…」
…ま、俺に茶の味は分かんねぇが…気休めにはなんだろ…
「…おい…あいつのは普通の紅茶みたいだけどよ、俺のコレは何だ…?」
「ん?カンポウ薬とか言ったかな…向こうで知り合った人から分けて貰ったの…身体に良いんだって。」
「……」
漢方薬ね…一時的にかも知れないが、ほぼ消し飛んだ筈の嗅覚が戻って来てる辺り…多分相当臭いんだろうな…
「ほら、早く飲んじゃって…まぁ、美味しくはないと思うけど…日本だと良薬口に苦しとか、言うんでしょ?」
「……」
宗教に傾倒しちゃいないが…何故かお経唱えたり、胸の前で十字を切るとかを自然とやりたくなる…ハァ…覚悟決めるか…何より、アーチャーの意思とかは無い筈の俺の左手が勝手に湯呑みを掴んでしまった上…下ろす事も出来そうにない…寧ろ徐々に顔まで上がって来てるしな…くっ!南無三、てか!?
「……不味い。」
「あちゃー…やっぱり美味しくな…あれ?シロウ、味覚が…」
「…まぁ、効果は有るらしい…」
とは言え、戻って最初に感じるのが尋常じゃない苦味か…やれやれ…
「口直しじゃないが…すぐそこの店で甘い物でも買って来てくれると助かる…財布はそこの引き出しに入ってるからよ…」
「良いけど…勝手に使っても良いの?」
「慎二には俺から後で話すさ…だから頼む…」
「…分かった、行ってくるね?」
「ああ…」