堕落したブラウニー   作:三和

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「…で、一年しかないとは言え…どうせ時間を伸ばして貰ったのは別れの挨拶どうのは建前だろ?」

 

「まぁ、な…」

 

「例の手記、か…」

 

…正解では有るんだが、そうやってあっさり当てられると…な…

 

「お前と少しでも長く過ごしたいとか「無いな」……」

 

「そんな顔するなよ、僕がそう思ってるんじゃなくて…お前の話だろ?」

 

「…ハァ…良く分かってるじゃねぇか。」

 

「その気になればほとんどの人間を従わせる術をお前は知ってる…それでも…当時"僕"を除いて本気で嫌がる人間を奴隷の様に扱った事は無い…あの頃、お前が玩具にしたのはそもそも心の何処かでそれを望んでいる奴だけ…ずっと見て来たんだ、それくらい分かるさ。」

 

「……」

 

「…で、お前は…散々僕には迷惑を掛けたから…事が済んだらさっさと消えたいと思っている…そうだろ?」

 

「…しゃあねぇだろ?お前に関しては、本気で好きになっちまったんだから…」

 

「全く…お前の事が嫌なら、せっかく全部ケリ着けて死んで…あの女の気紛れとは言え第二の人生歩める様になったのに…わざわざお前の所に戻って来たりしないさ…正直に言うなら、忘れられなかったのは僕も同じだ…今更、簡単に消えれると思うなよ。」

 

「…マジでお前、好きな女とか居ねぇのか?」

 

「…ハァ…さっきも言ったけどさ、お前の所為で興味無くなったよ…まぁ、元々…恋愛感情で女性に声掛けた事は結局無かったし…尤も、女性への恋愛的興味が薄かったのはともかく別に同性が好きな訳でも無かった筈なんだけどね…まさか、襲って来た相手を助ける為に…元々手慰み程度に付けてた知識を極める様になるとか…人生何が有るか、分からないね…本当に。」

 

「…俺が関わらなければ、お前は普通に医者に「なってなかっただろうね」…ん?」

 

「家では居ないもの扱い…そりゃ、さっさと離れたかったさ…とは言えそれでも、あの頃の僕が簡単に魔術から…いや、あのジジイから離れられたとはとても思えない…医学に手を出したのだって、あるいは魔術を使えなくても何か、ジジイの役に立てれば僕の事を見て貰えるかもとか…そんな風に思っていたから…だから士郎、僕はお前に感謝してる…お前が僕のプライドも何もかも滅茶苦茶にしてくれなきゃ…こうして、今日まで生きて来れたとは思えないから…」

 

「……」

 

「それに、いざ魔術を使える様になって思ったのは…こんなものが欲しくて僕はずっと足掻いてたのかって…笑っちまうよな…良く考えたら僕は、使えたからどうって…その先の事なんて何も考えてなかったからな…根源になんて興味も無かったし…いざ使ってみてハッキリ思ったよ。魔術も使えないただの人間が作った道具の方が遥かに役に立つ…こんな物、生活する分には使うのに手間でしか無いし…戦う気が無いなら邪魔でしか無い…現代社会を生きてく分には、使えたところで大して意味も無いってさ…あの女も言ってたよ、魔術より現代文明の利器の方が使い勝手が良いって…全く…僕は今までこんなものが使えない程度で悩んでたのかって、バカバカしくて笑うしかなかった…遠回りしたよ、本当に……なぁ、士郎…お前と関わってなきゃ、きっとこの答えを僕は得られてなかったんだ…出会えた事に感謝こそすれど、それで後悔はしないさ。」

 

「結果論だろ?」

 

「かもな…でも、当の僕が喜んでるんだ…それで良いだろ?」

 

「…ハァ…ホントお前って、やっぱバカだよな…」

 

「お前程じゃないよ『あのさ、そろそろ入っても良い?』…ここに住む事にしたんだろ?さっさと入って来れば良いじゃないか。」

 

「もう…だって、ちょっと買い物行って帰って来たらシンジが来てるんだもん…二人は恋人同士なんでしょ?お姉ちゃん、邪魔したら悪いと思って…」

 

「盗み聞きしといて良く言うよ「いや、だって…弟の恋愛模様は、お姉ちゃんとしてはやっぱり気になるし」…恋愛模様も何も、コイツはもう僕しか選ぶ気無いらしいから…今更修羅場とか無いぞ。」

 

「…でも、何か他の人にも手を出してたっぽい話してたし…」

 

「コイツが当時手を出してたのは別にコイツじゃなくても良い女ばかりだからな…修羅場になりようが無い…と言うか、あれからもう十年以上経つのに他に会いに来る奴も居ないんだからお前だって分かるだろ?」

 

「まぁ、それは確かに…」

 

「つかお前、聞かれてるの分かっててさっきからベラベラ語ってたのか?」

 

「コイツに聞かれて困るのか?「そりゃ、別に困りはしないけどよ」なら良いだろ。」

 

「と言うか、シンジ?」

 

「何だよ?」

 

「…シンジにとっても私ってお姉ちゃんみたいなもんだよね?せめてコイツじゃなくて名前で呼ぶとか「ハァ…キャラ変わり過ぎだろ…何年か前まで、散々僕を嫌ってたのに」…って言われても…冷静になって考えてみたら、私はどう考えてもシロウの姉以上の存在にはなれないし…そのつもりも無いし、そうやって考えたら…別に二人の関係が恋人同士でも夫婦でもどっちでも良いけど…私の義理とは言え、姉としてのポジションって結局変わらない訳だし…私が嫉妬する理由も、ましてや…シンジを憎む理由って言うのも、別にそんなに無いんだよね…もちろん、聖杯戦争の時に散々シロウを傷付けた事には思う事は有るけど…それでも、シロウは全然気にしてないし…シロウの為に頑張ってたシンジの姿もずっと見て来てるから…やっぱり、嫌えないかなぁって…」

 

…長いし、何か重い…とは言えだ…俺は慎二に目配せする…視線に気付き、一瞬露骨に嫌そうな顔をした…そんな顔すんなよ、この女はそれを望んでんだから。

 

「…じゃあお姉ちゃん、お小遣い「うん、良いよ…いくら?」…うわぁ…」

 

慎二に揶揄って貰うつもりが…この女、本気で喜んでやがる…

 

「どうしたの?これでもお金だけは稼いでるから…お姉ちゃん、いくらでも払って「いや、冗談だから…僕も金には困ってないし」何だ、残念…」

 

締まらない空気にはなったが、さっきまでの重たい雰囲気よりは良いかもな…

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