「久しいな…この身体ももう何代目か分からんが、お前の事はまだちゃんと覚えているよ…で、今度は何の用だ?…慎二。」
「僕の事はまだ覚えている、か…その見た目で痴呆始まってるのは色々と不味いんじゃないのか?」
「本体の私の能力的に全盛の時をモデルにして作ってる身体とは言え、そりゃ…記憶は段々削れて行くさ…と言うか、あいつと言いお前と良い…昔から変わらんな、生意気な所は…」
「言ってる事の割に、あんまり怒ってないよな?」
「魔術師として元は非才の生まれで有りながら、今や術者としては二流止まりだが医者としては超一流…まぁ、何と言うか…あいつやお前みたいな奴には自然と寛容になってしまうな……いや、どうでも良いか…結局、何の用なんだ?」
「…あいつは、やっぱり治せないのか?」
「無理だ。魂そのものが既にズタズタだからな…私に出来るのは、要は本人の魂と肉体をモデルにスペアの身体を用意する事だけ…代価さえ払えるなら多少の部分はサービスするが、アレはもう治せんよ…と言うか、もうそこまで行けば大体の魔術を扱える上…医者でも有るお前の領分だろう…お前に無理なら、どうやっても無理だ…歴代で最も不出来な上、歴代でも一番キレそうになったタイプの奴では有るが…一応あんなのでも弟子で、何だかんだ気に入ってもいるが…無理なものは無理だ。」
「そんなに何度も無理無理言わなくても良いだろ「ハッキリ言わないとお前はあいつの為に走り回るんだろ?お前も一応弟子では有る以上、不毛な事はさせられんよ」…ホント、アンタも魔術師とは思えない奴だよな…橙子さん。」
「あいつにも良く言われたな…今まで言わなかったが、今後も今の様な生き方を続けるなら一つ覚えておけ。魔術師って言う生き物はだな、愛した奴や気に入った奴には存外…お節介な側面も有るのさ…上手く取り入れば利用出来るぞ。」
「もう知ってるよ、お節介通り越して挙句…過保護な奴も居るってな。」
「…何だ、私もそうだと言いたいのか?」
「あいつの目…用立てたのはアンタなんだろ?それも、多分無償でな。」
「…あいつが払った分の余りを返しただけだよ。でもまぁ…愛してるかと言われればどうだろうな…確かに…最早世界そのものにすら嫌われてそうなあいつを見てると何故か、心の何処かが疼く気はするが…」
「知ってるか?そう言うのを世間では母性本能とか言うらしいぜ。」
「…ハァ…式たちに関わり過ぎたな…まさか、私にそんなものが芽生えるとは…」
「嫌がってる様には見えないな……ま、良いや…あ、そうだ…本気で隠居したいなら両儀式はともかく、両儀未那に居場所を教えるのは失敗だったんじゃないか?あいつ、結構お喋りだぞ。」
「別に他人に教えられてもそれ程困らんからな…ま、十年後の私がどう考えるかは分からんが。」
「そうかい…さてと、じゃあな…と、最後にもう一つ…忘れたくないなら少しは運動でもしろよ、連中もアンタに会いたがってたからな。」
「医者らしい忠告だな…」
「アンタは病気とは無縁だろ。今のはカウンセラーとして言ったんだ…一般人はそもそもアンタの事なんてそんなに知らない…木っ端の代行者程度じゃどうせ相手にならないんだし、旧友に会う為にたまには俗世に出て来たってバチは当たらないだろ?」
「…考えておく。」