「これがあいつから聞いた聖杯戦争の全てさ……」
「……」
……座っていた椅子の背もたれに背を預ける。自分の頭の中で気になった事に整理を……いえ、疑問は結局一つしかないわね。
「一つ聞いて良いかしら?」
「ああ、構わない……」
「貴方それ全部伝聞よね?自分で確認した?」
「……いや。」
「そう、その話信じる根拠は?」
「あいつは口に出した言葉に嘘は無い。隠し事は多いけどな。」
「……」
それは坊やの主観ね。客観的判断材料じゃない。……本人は一ミリも信頼していないと言いながらそう言う言葉が出てくる訳ね……しかも本人は気付いてすらいない……
「本来は信じるに値しない話だけど……まあ可笑しいとは思っていたのよ……」
あれはすぐ傍に存在する汚染された聖杯による違和感だったのね……近くに工房を構えて気付かないなんて……
「その話は信じるわ……でも……」
「僕に協力は出来ない…か。」
この坊やは歪んでいる。それこそこの子の口から出てきたあの坊や、衛宮士郎よりも……私に願いが無ければこの子の側に着くのも悪くなかったかもしれない……
「まあ坊やの邪魔はしないわ……そうね、借りは返しましょう。貴方の妹に会わせて頂戴。多分私なら助けになれるでしょう。」
……この辺が妥協案。これ以上は手を貸さない……この子、具体的なビジョンが何一つ決まって無いのよね……ただ衛宮士郎に歪んだ想いを抱いているだけ。……妹を助けたいと言ってるのも多分そんな自分を肯定出来る唯一の事柄だからに過ぎない……
「!…桜を、助けてくれるのか?」
……甘いわね。餌をチラつかせた途端に鋭く私を見つめていた気配が霧散した……まあ今回は自分の異名を否定しましょう。
「ええ…と、言っても見てみないと何が出来るか分からないけど……その子はこの家に?」
「……いや。ここは今回の戦争の為に僕が借りたアパートだ。」
「そう。じゃあ貴方の家に連れて行ってもらおうかしら?」
「ああ、分かった。」
「そういやあいつが見当たらないな…くたばるとは思えないが……」
「アーチャーですか……気配は感じ取れませんね……」
「まあ遠坂の手に令呪は無い…結局それが答えか……」
最も弓兵には単独行動スキルがある…一概に殺られたとは言い難い……
「まあ奴の事は今はいい。遠坂が目覚めたら聞けば良い話だ。……今はイリヤと合流するぞ。……嫌な予感がするんだ……」
合流時間はとうに過ぎた。だがあいつらは柳洞寺には現れていない……無事だと良いがな……