「座っててくれ。今、お茶を入れよう…葉はあるか?」
「おい、何を勝手に……ハア…ここには茶葉は無いよ。…そこの棚にインスタントコーヒーの粉が入ってる。」
「…むっ、これか?」
テキパキと勝手にキッチンの主のように振る舞うアーチャー…何なんだ、こいつ……
あの後、「立ち話も何だ、座れる所へ行かないか」と言うから正直僕も一度休みたかったし、取り敢えずキャスターに明け渡したのとは別に借りていた部屋にアーチャーを案内した……着くなりこれだ……何のつもりなんだか……ん?
「…コーヒーを入れて来た「アーチャー、悪いがそのまま少し屈んでくれ」む?何かね?」
僕は席を立ちアーチャーに近づくと逆立ったアーチャーの髪を手で下ろす……ふん。やっぱりか……
「…何の真似かね?」
「見た目もそうだけどさ、その喋り方……イメチェンにしても変えすぎじゃないか?なあ、衛宮?」
僕は余程こいつと縁があるらしいな……
「さっきは驚いたよ。…何で分かったんだ?」
アーチャーが入れて来たコーヒーの入ったマグカップに口を付ける。…大して美味くも無いけど少し落ち着いた気がする……認めるのは癪だけど。
「…僕は衛宮とは何だかんだ色々あったからね……」
「……すまん。」
「良いよ。大体、お前が謝る事じゃないだろ?僕の知る衛宮とお前は違う奴なんだから……」
僕は平行世界の衛宮に吐き捨てる様に言ってやる。
「…僕の事は良いよ。本題に入ろう……お前は衛宮を殺すのに協力してくれると言ったよな?」
「…ああ。」
「さっきの時点でも理解出来なかったけどさ、余計に分からなくなったよ、ほぼ別人とは言え、この世界にいる衛宮士郎は要は過去のお前だろう?何だって自分を殺したいなんて結論に繋がるんだよ?」
「……言わなきゃ駄目か?」
「出来れば聞きたいね。いくらお前が衛宮でも…いや、お前が衛宮士郎だからこそ僕はお前を信頼出来ないんだよ。」
そう。僕は衛宮士郎を信用しても信頼は出来ない……増してや僕の知る衛宮だって信頼出来ないけど、目の前のこいつは要は自殺したいって言ってるようなものだ。……元が別人である以上この世界の衛宮を殺してもこいつに影響がある訳もないけどさ、こんな遠回しな自殺志願者の事をどう信頼しろと言うのか……
「…俺の親父はさ、正義の味方になりたかったんだってさ。」
「……」
衛宮切嗣か……魔術師殺しの事は調べたし衛宮もある程度僕に話したから人となりは把握してる。……何となく僕の知る衛宮との違いが見えた気がしたが口には出さなかった。
「俺は親父の夢を継いだんだ。俺は正義の味方になろうとした……それが何をもたらすかも考えずにな。」
……成程。これが僕の知る衛宮との違いか。あいつは間違っても正義の味方なんか目指したりしないだろうからな。
「衛宮、もう良いよ……分かった。要するにお前は自分が正義の味方を目指した事実を消したいんだな?」
「…ああ。そうだ……」
「それが無駄だと分かっていても?」
「俺の意思は変わらない。俺は衛宮士郎を殺す。」
「…そうか。」
……僕はアーチャーと手を組む事に決めた。