剣を突き出し、奴に当たる直前…奴の姿はまるで空気に溶けるようにして掻き消えた。
……幻影か。…実の所、最初の時点で違和感はあったからそれ程驚きは無い。
「ハァ…」
気配は感じない。俺はその場に座り込む。…強化は既に解いているが、今も視界が可笑しい。そもそも抜いた以外にも刺さっている剣や槍なんかが邪魔して血も止まらないからそのせいかもしれんが…
「…結局、あんたは何をしに来たんだ…?」
気配は無いがどうせ何処かでこっちを見てるんだろうと思った俺は答えを期待してはいないが思わずそう零す……と…
『フン。我の前に立って良いのは真の英雄のみ。だから貴様の査定をしていたのだ。』
…答えが帰って来た。俺はうんざりしつつも更に言葉を発する。
「…何で俺があんたと対立する前提なんですかねぇ…あんた、今回の聖杯戦争には不参加じゃねぇのか?」
最もこいつが八騎目の可能性もあるがな…。
『あの様な穢れた杯は我が宝物庫には必要無い。』
否定しない…じゃあ何で戦う必要がと思いつつ俺は気付いた。
「…成程。あんた、人類を滅ぼしたいクチか?」
『戯け。下らん生を貪る貴様ら雑種を我が間引いてやろうと言うのだ。』
間引くねぇ…神代の頃の逸般人ならまだしも、呪いの泥相手に今の人類が何人生き残ると思ってるんだ?
「…多分滅ぶと思うけど?」
『それで朽ち果てるならそれまでの事よ。』
……どんだけ傲慢なんだこいつ?
『雑種、今一度問う…貴様は何故あの杯を破壊しようとする?』
「…アレの存在が気に入らないから…じゃあダメなのか?」
『…フ…フハハハハ!良いぞ道化!仮に理由が世界平和や人類の救済などという理由であればこの場で八つ裂きにしておったわ!』
「…んな下らない事考えるかよ。個人的には本当は人類が滅ぼうがどうだっていいんだ。結局、アレが気に食わないだけなんだよ、俺は。」
『…良かろう。我は杯の前で待つ。』
イリヤの話が出て来ないな。
「大聖杯の起動には小聖杯が必要だが?」
『ハッ!この我に不可能など無いわ!』
なら何でアインツベルンを襲撃したんですかねぇ?
……まあ俺にはどうでもいい事か。
「…帰るならこいつら持って帰れよ。」
奴が消えると同時に地面に落ちた宝具は消えたが俺に刺さった分は残っている。
『戯け。貴様の穢れた血に濡れた物などいるか。くれてやるわ!』
太っ腹だねぇ…。ざっと解析したが大半が呪いを断つ系統の宝具だ。…しかもピンポイントで俺に刺さるものばかり…。……俺が持っててもほとんど使えねぇぞ…。
「…たくっ。他人の家の前を滅茶苦茶にしやがって…。」
…ここまで被害が広がるとさすがに隠しきれねえなぁ…セラ、リズの時も虎と一悶着あったのに(何故か藤ねぇには暗示の効きがすこぶる悪い。…効きにくい奴やレジストする奴もいるがあれはそんなレベルじゃない…)
「シロウ!」
…まぁ、まずはこっちに向かって来る泣きたいんだか、怒りたいんだか分からない変な表情をした騎士王様をどうあしらうか考えますかねぇ…。