取り敢えず気を取り直して腕の治療をする…するまでもなく蟲が既に折れた骨の支えになろうとしてるのが分かる…あのクソジジイがいない以上こいつらの主人は僕という事になる
…主が何か言った訳でも無いのにこいつらは勝手に主の状況を判断して最良の状態に持って行こうとする…そう考えると少し可愛く思え…ないな、うん…さっさと魔術を発動し骨を強引にくっつける…蟲が身体を駆け巡り骨折以上の激痛が走る…僕はポケットから薬を出すと呷った…強めの鎮痛剤だけどあんまり効果は無さそうだ…無いよりマシだろうけど…
剣を掴む際、落としたトンファーを拾う。
「…何で追撃して来ない?」
監督役は一連の動作の間一度も動かなかった。
「何、次は何を見せてくれるのかと思ってね。」
……こいつは完全に僕を嘗めているらしい…だけど啖呵切った割に僕にこいつを倒す方法が無いのも事実…こいつに下手な魔術を使ってもそのふざけた身体能力で対応して来るだろう…現に強化を使ってる僕のスピードに追従して来る位だし…
「あんたは何のためにこの戦争に参加する?」
……別にこいつに興味がある訳じゃない…正直聞くまでもなく分かる…僕にこいつは理解出来ない。
「大聖杯の中にあるのはこの世全ての悪。だが産まれてくるのなら祝福はすべきだろう?これでも聖職者なのでね。」
「…普通の聖職者は悪性を肯定しないと思うけどね…」
「この世全ての悪とは名に過ぎん…そうであったから名付けられたのではなく、そうであれと願いをかけられただけの事。」
「でも悪は悪だろ?そんなの外に出たらこの街も世界も何も残らないよ。」
……僕の言ってることは一般論以下だろう…大体、僕は今更死ぬのを恐れてないし、桜が生きれる世界なら他の誰が苦しんでもあまり関係無い。
「かもしれんな…」
…とまぁ言葉だけを聞くならそれについて思う所がある…って事なんだろうけど、ね…
「あー…あんたやっぱり聖職者としてここにいるんじゃないね…あんた見たいだけなんだろ?世界が壊れる所を?人が苦しむ所を?」
身近に人の苦しみを肴にするクズがいたからか不思議とこいつの本性が僕には見えた。……こいつは別に悪党って訳じゃない…単に人の苦しみ、悲しみとか、後は憎しみ?そういった負の感情こそがこいつにとっては生きる糧ってだけだ…マゾって訳じゃないだろうけど罵詈雑言をぶつけてもこいつは悦ぶだろう…要するに単なる変態だ。…そりゃあ衛宮に執着するよな、こいつらは良く似てる…最も衛宮はそれしか無いってだけだけど。
「私の歪みを理解してくれたのは君で二人目、いや、三人目かな?」
「…理解なんてしてないよ。別に納得だってしてない。」
改めて僕はトンファーを構える。
「お前がどんな奴かなんてどうだって良いよ。早くくたばってくれ。…衛宮は僕の獲物なんだからさ…」
さっさと終わらせよう…そろそろアーチャーの方も決着が着く頃だ…