「降参だ…」
その二本の剣を突き付ける衛宮を見た時、僕は自然とそう口にしていた…後悔は無い。僕は勝ち目の全く無い相手に挑む程愚かじゃないつもりだ…それに今衛宮が浮かべてる間抜け面を見ただけで溜飲は少し下がった。
「お前…俺を殺したいんじゃなかったのか?」
「…ああ。今でもそう思ってる…でも、付け焼き刃でサーヴァントの力を得たお前に勝てるとも思ってないんでね…」
僕はその場に座り込んだ…別にこの場で殺されるんならそれでもいい…でも多分こいつは…
「ふ~ん…まあ良いわ。」
衛宮はその言葉と共に剣を消した…固有結界も切れたのか元の洞窟に戻って来る…やっぱり奴は僕を殺さない。…この状況をチャンスだとは思わない…どうせ返り討ちに逢うのは分かり切ってるしね…
「俺はこのまま大聖杯の所に向かうが…お前はどうするんだ…?」
奴の向こうに広がる暗がりに視線を移す…しばらく見詰めたあと、奴の顔に視線を戻し言ってやった。
「僕は行かない。後はお前の勝手にしたらいい…桜を頼むぞ?」
「薄情だな。お前の妹だろ「元は他人だ。あいつは元の家に戻った方が良い」…桜はそう思って無さそうだけど?」
「知らないよ。もう僕には関係無い。」
そうだ。僕の事なんて忘れたら良い。その方があいつには幸せだ。
「ライダーは「そっちはもっと知らないね。どうせ大聖杯が無くなったら消えちまうんだ。」確かにな…それにお前には俺がいるしな?」
「…好きに言えよ…もう突っ込む気力も無いから…」
「あっそ。じゃあ俺は行くからな?」
そう言って僕に背を向ける衛宮…
「衛宮!」
奴は歩みを止めた…こっちは向かない。
「一つ…答えてくれ…ぶっちゃけお前もう限界なんじゃないのか?」
「……」
「さっきのアレ、どうせ身体を保てなくて崩れる瞬間に咄嗟に思い付いたんだろ?」
真っ当な人間じゃない…高純度の魔力の塊であるこいつがゼロ距離の神秘の爆発に無傷で耐えられたなんて到底思えない。
「…お前、アーチャーの力だって本当は馴染んで無いんじゃないのか!?」
自分の考えをぶちまける…女々しいな…結局僕はこいつを失いたくないんだ…!
「答えろよ衛宮!?」
そこで漸くあいつが振り向く…
「…愛してるよ、慎二…もし生きて会えたらまた抱かせてくれよ…?」
「死んでもお断りだよクソ野郎。」
その顔を見て僕は自分の考えが間違ってないのを悟った…こいつはもう戻ってくる気なんか無い…きっとこいつは…!
「釣れないなぁ…」
そう言って前を向き歩き去っていく衛宮…僕はその後ろ姿を結局見えなくなるまで見詰めていた…止めようとは…思わなかった。