切嗣から全てを聞いても俺は魔術師を…切嗣を恨む気持ちは無かった…いや、強いて言うならどうでも良かった気もする…それより…
「がああああ!?」
時折襲って来るこの痛みが…!俺の思考を停止させる…!
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいイタイ…!」
この苦痛を味わされる間、俺からは断片的な記憶以外にも大事な物を削られて行った気がした…今思えばそれは、多分人間性とかそういう物だったんだろう…
この痛みは医者には消せなかった…内側から頭を破壊される様なこの痛みを…医者は精神的な物だと判断し効きもしない薬を何度も何度も処方された…昼夜問わずナースコールを連打する俺を鬱陶しがったのか、軈て看護婦はもちろん医者も呼び出しには応じなくなった。普段の検診も義務的に行われる…
時折現れてこっそり切嗣が飲ませてくれる薬だけがこの痛みを和らげてくれた…
「士郎、本当に良かったのかい?君の家族を奪ってしまったのは僕だ「どうでもいい」…えっ?」
「何も覚えてないんだよ、俺は。家族の事はもちろん、友人、自分の事すら名前以外覚えてないんだ。…俺の事を知ってるのはもうアンタだけなんだよ…」
「士郎…」
退院の時ですら切嗣以外の人間は現れなかった…切嗣は俺の身寄りをずっと探していたらしいが見つからなかったようだ…そして厄介払いが出来たと露骨に喜ぶ医者や看護婦の顔を俺は…
俺が魔術を習うようになった切っ掛けは些細な事だった…そう、それは何処にでもある有り触れた出来事…生活力0の切嗣と時折家に訪れては俺にちょっかいを出して来る料理は愚か、家事全般出来ないし、しようともしない虎の為に飯の一つでも作ってみようかと、退院以来、初めて一人で遠出をした。
学校には行っておらず、土地勘も失っていた俺は通りすがりの人間に道を何度も聞きながらスーパーに辿り着いた俺は今度は店員や他の客に手伝われながら何とか買い物を終え、一人で帰路に就いていた…今思えば送って行こうか?という申し出を断るべきじゃなかったんだろうな…
横断歩道を渡っている最中、俺はその場に蹲った…
薬のお陰と俺自身慣れて来ていたせいか油断していた…今までに無い強い痛みのせいで俺はその場から動けなかった…そして俺は車に跳ね飛ばされた…
……その後の事は覚えていない…次に俺が気が付いた時俺はまた病院のベッドの上だった…
「気が付いたかい?」
声をかけられ横を見るとまた泣いたのか赤い目をした切嗣がいた…
「本当に良かった…君が車に跳ねられたと聞いて「切嗣」何だい?」
「どうして、俺は、生きているんだ?」
あの状態から生き延びたとは俺には思えなかった…それに…
「何で、俺は、怪我をしてないんだ?」
しばらく切嗣は黙ったまま俺から視線を逸らしたり、また向けたりを繰り返していたが俺が顔を切嗣に向け続けると軈てその口を開いた…。
「…そう、だね…すまない、士郎…僕にはまだ君には話していない事がある…」