あいつとの出会いは今も忘れられない…それだけ衝撃的だったしね…
「ん?…なぁ?お前さぁ…」
「何だよ…うわ…」
当時初対面でいきなり向こうから声をかけられたんだ…今でも理由は分からない…でもあいつの事は知ってた…有名だったしね…
「傷付くなぁ…その反応…」
「…お前の噂知ってたら誰でもその反応になるよ…」
「俺の噂?お前だって女関係でロクな噂聞かねぇけど?」
「…お前みたいに見境なくって訳じゃない。同性に手を出したりしないしね。」
「…手を出すとは人聞き悪ぃな。俺が口説いたら皆乗ってくれただけだぜ?大体女ばっかりで飽きねぇのか?男の穴も悪くないぜ?」
「気色悪いから止めろ。で、何の用なんだよ?僕にはその気は無いからな。」
「おう、嫌な…つい最近ボロ雑巾みたいになった女に会ったんだけどな…」
「…それが…僕に何の関係が…」
…この時僕には心当たりが有った…違う…そんな筈ない…
「フェミニストのつもりは無いんだけどよ、つい気になって声かけちまったんだよ…」
「……」
「したら見覚えある奴でさぁ…いや、食指は動けないけどキープには入れてたんだよ、名前は…そうそう、間桐桜って言ったっけ…お前の妹だろ?」
「そうだけど…何が言いたいんだよ…」
「…色んな奴見て来たから分かるぜ?お前の家ってあいつに何やってんの?興味あるぜ、教えてくれよ?今夜はそれを反芻しながら誰か犯したいんだ。」
……噂以上のクズだった。と言うか今思えば間桐家が魔術師の家だと言う事も知った上で声をかけてきてたんだろうな…ただあいつの性格を把握した今だから言える…あいつはそれを知った上で本当に目的はあれだったと…ただ、桜が何をされてるのかって言う具体的な内容を聞いて愉悦に浸りたいだけだった…でも実際これもこじつけだったんだろうと思う。…お陰で今でも真意は分からない…
「…何で…そんな事教えないといけないんだよ…」
「良いだろ別に。減るもんじゃ無し。」
ニヤニヤしながら聞いてくるあいつに減るんだよ、とは言えなかった…当時僕はあいつの事を一般人だと思ってたから…魔術の教義を外部に漏らすと…みたいな話が出来るわけもない…でも実際はあいつはこっちの事をある程度把握した上で言ってたんだからそう考えると腹も立つ。
「そんなに聞きたかったら桜に直接聞けばいいじゃん…別に僕じゃなくても…」
まあ桜も答えられないだろうけどね…でも僕は早くこの場からいなくなりたかった。今日はテスト期間中で部活は無いし、トイレ近くのこの廊下は放課後である事もあって人気が無いけどこんな話誰かに聞かれたくもない。
「犯された側の話も良いけどよ、やっぱ犯した側の話を一番聞きてぇじゃん?俺タチ派だし。ぶち込まれるのはありっちゃありだけど。で、あの女の穴はどんな具合だったんだ?具体的に教えてくれよ?」
その瞬間僕は思わず今もニヤニヤしてるそいつ…衛宮士郎…の顔面を狙って拳を繰り出していた…
「なっ!?離せ!」
「おっそー…こんなんじゃホテル行く時にヤンキーに絡まれたら女守れねえじゃん…あっ、お前は先に逃げるから問題無いのか。」
顔面に拳が届きそうになった瞬間に奴の姿が掻き消えた…そして背後から腕を掴まれて…!
「ああああ!?」
腕に激痛が走った所で腕を離され、僕はそのまま床に倒れ込んだ…腕が痛い…!まさか…折られた!?
「大袈裟にすんなよ、関節外しただけだって。まあ無理矢理外したから相当痛いかもしれないけど…あんま経験無いんだろうし。」
そう言って僕の腹を蹴り飛ばす…思わず呻きが漏れた…くそっ…!何なんだよこいつ…!
「ゴホッ…桜に…」
「ん?」
「桜に頼まれたのか…?僕を痛め付けてくれって…」
「…は?何でそんな話になるんだ?」
「だって…僕にはいきなりこんな風にされる覚えが「何言ってんだ?」えっ?」
「俺はお前がいきなり殴り掛かって来たから反撃しただけだぞ?」
「本当にそれが理由なのか…?」
「別にあの女に頼まれたりしてねぇ。単なる正当防衛。その証拠に…」
「うがっ!?」
僕の横にしゃがんだ衛宮士郎が僕の腕を掴むと少ししてまた激痛が走った…!くそっ…こいつ…!
「ほら、動かしてみろよ、どうだ?」
「…動く。」
腕が動く様になった…けど…
「ほれ、帰ろうぜ…帰りながらじっくり話を…何やってんだ?」
「ゲホッ…お前が、蹴るから…呼吸が上手く出来ないし…腹も痛すぎて…立てないんだよ…!」
「モヤシ過ぎだろ…しゃあねぇ…肩貸してやるよ…」
……これがあの馬鹿との出会い…この後アレを親友と呼ぼうとするに至るなんて今も信じられない…最も今なら絶対呼ばないけどな…
あいつと居るのは楽しかった…あいつの前では素が出せるからな…桜にすら見せた事の無い顔をしていた事だろう…
「慎二。」
「…何だよ…僕はこれから弓道部に行かなきゃいけないから忙しいんだけど?」
努めて平静を装い返事をするけど僕は口角が上がら無いようにするのに必死だった…
「新作出来たからよ、今日桜と食いに来いよ。」
「お前まだ料理なんてやってんの?女々しいから止めろって言ったじゃん。」
そうは言うが僕はあいつに料理を辞めて欲しく無かった…間桐家ではロクな物食べられなかったし普通に美味かったしね…
「…そんなに時間余ってんならさ、弓道部入れよ。お前体力あるし、器用だからピッタリだろ。」
……僕としてはこいつと離れたくない本音が有った…少しでも長く一緒にいたいと思ってた…くそっ!これじゃあ女々しいのは僕の方じゃないか…!
「面倒くせぇ…」
「美綴辺りが聞いたら多分ブチ切れるな…」
「知るか、そんな事。で、来るのか?」
「…終わったら桜連れて寄るよ。じゃあ、行ってくる…っ…何だよ…?」
背を向けたら急に後ろから肩を組まれた…抱き寄せ、顔を近付けて来る…!
「行ってらっしゃいのキスがまだ…危ねぇな…当たったらどうする…」
「当てる気でやってんだよ気色悪い。」
僕は奴の顔面に裏拳を繰り出したがヒョイっと避けられる……女々しく見えても僕にはその気は無いからな…それにしても…奴に手も足も出なかったのが悔しくて始めた格闘技もこのザマか…奴を撃退するのには使えてるから良しとしようか…
「全く…僕はもう行くからな?」
「おう。浮気すんなよ?」
僕はそれを聞かなかった事にした…全く…何であいつにあんなに気に入られてるのかまるで分からないな…最も僕もあいつを嫌ってないからお互い様かもしれないけどさ…
「兄さん?今日は機嫌が良いですね…」
「馬鹿な事言ってないで集中しろよ桜…」
……桜とこうして普通に話せる様になったのもあいつのお陰、か…まぁ単にあいつと過ごすようになったら、桜に八つ当たりをする事が無くなって自然と蟠りも消えたってだけなんだけどね…
「集中してないのは兄さんでしょう…?さっき一本も的に当たってなかったじゃないですか…」
「っ!良いから早く行って来いよ…」
「はい。じゃあ、行ってきます。」
…ちなみに桜は普通に絶好調だったので僕は落ち込んだ…