トラベリング・ラビッツ ~VOICEROID達の大冒険~   作:ライドウ

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第11話 ~リチャード町の戦い 後編~

「はぁぁあああっ!!」

 

「ギヤァッ!!」

「命だけは、いのぢだげばあああああ!?!?!?!」

「じにだぐな...い......」

「だずげでぐ......れぇ...」

 

斬る。斬る。斬る。

ただひたすらにゆかりは蛮族やならず者を的確に、また致命的な一撃で始末していく。

たとえ相手が自分と同じ人間であろうとただひたすらに斬り捨てていく。

命乞いをしてももう遅い、命乞いをしたところでそいつは他者の命を奪っている。

ならば容赦はしない、ただ斬り捨てる。その簡単な考えのもとゆかりは返り血を浴び続けている。

 

「彼女だけにつらい思いをさせるなぁッ!」

「この町は俺たちの町だ、俺たちで守るんだぁッ!!」

「うおぉおおおおっ!!」

 

しかし、ゆかりのそんな姿を見て負けられないと燃え上がる衛兵たち。

良くも悪くもゆかりは美少女だ。そんな美少女がただひたすらに敵を殺すことを見て...黙っていられるほどここの衛兵たちは普通ではなかった。

ゆかりが再び動こうとするとさすがに疲れがたまっていたのかフラリと腰を抜かしペタンと女の子座りをしてしまう。

 

(...さすがに、体力が持ちませんか。)

「大丈夫け、嬢ちゃん!!」

 

座り込んだゆかりに一人の老いた衛兵が駆け寄る。

ゆかりは声に出すことすら億劫だったが、心配させるわけにもいかずに黙って頷く。

 

「あんがとうな嬢ちゃん、嬢ちゃんのおかげで何とかなりそうだぁ。こんな年食ったジジイで悪いが背中にのるけ?」

「...ありがとう、ございます。」

「ほっほっほ、気にするな!少し揺れるけ、勘弁してくれーな!!」

 

ゆかりは年老いた衛兵に背負われつつ、その戦場を後にする。

よほどの疲れだったのだろうか、ゆかりはそのままゆっくりと眠りについた。

 


 

「第2門区域は何とか押し返しましたが...」

「やっぱり正門区域は厳しい?封鎖が終わった農業区域の手すきの衛兵隊をまわして、正門をどうにかしないとジリ貧だよ。」

「は、はい!」

 

場所は変わって、中央広場。

そこでは臨時の本陣が作られており、テーブルの上に敷かれたリチャード町の地図を囲いながらマキが細かい指示を出していた。

それだけではなく、怪我をした人員や大量の物資が運び込まれておりまさに絶対防衛線と言わんばかりの形相を催している。

そんな中―――

 

「ふぅ、ふぅ...やはり老いには勝てないべ。おい、手を貸してくれんか!あの嬢ちゃんがすっかり眠っちまってるんだ!!」

 

あの老いた衛兵が本陣にたどり着く、その背中には安らかな寝息をたてて眠るゆかりといつの間にかフードから出てきていたスノーがその衛兵の肩に乗っていた。

周りの衛兵は、すぐに気づくとその老いた衛兵からゆかりを簡易ベットに眠らせる。

その様子を見たマキは、頭をうならせている他の衛兵たちに声をかけゆかりに駆け寄る。

 

「ゆかりちゃん、眠っちゃったの?」

「おぉ、マキ様。そうですだ、正門通りの戦いで疲れ切っちまいました。運んでる途中でぐっすりでさぁ。」

「やっぱり正門通りにいたんだ、スノー君...そばを離れないであげてね。」

「キュイ!」

 

もちろんだとも言わんばかりの鳴き声を上げるスノーを見てマキは思わずくすっと笑ってしまう。

老いた衛兵も補給係の衛兵から水と軽い食事を渡され、腰を落ち着かせて一息入れ始めた。

そんな老いた衛兵に駆け寄りマキは声をかける。

 

「お疲れ様です、休憩中のところ悪いのですが...」

「こ、こりゃぁマキ様!!いえいえ、歳を食っているだけのジジイにそこまでの言葉なんてもったいねぇです!」

「えっ、えっととりあえず聞きたいんですが...正門通りはどうなってます?」

「正直に言えば、地獄ですだぁ。あんだけ酷い場所は見たことがねぇ...あんなところで死んで、ばあさまに会いに行きたくねぇべ。」

「...ありがとうございます、あまり無理はしないように。」

「ほっほー!このジジイ、まだまだ迎えは必要ないですけ、安心してくだせぇ!」

 

老いた老兵から話を聞き終えたマキは、すぐさまテーブルの近くに戻り思案する。

敵の作戦はいたってシンプル、囲んで数で押し通す作戦だ。だがそこは蛮族やならず者の集まり、整った連携や戦術の文字は一つもなくただひたすらにごり押しと言わんばかりの戦い方であった。

だが敵の力量はそのごり押しを上手くいかせるほどに高いものだ...伊達に蛮族やならず者ではないということなのだろう。

しかしこちらが何とか戦うことが出来ているのは、敵にはないもの...整った連携と戦術による戦い方のおかげだ。こちらは数は同数とはいえほぼほぼ付け焼き刃としか言えないような力量を連携と戦術によって補っている。

だけどマキにはそれが妙に引っかかっていた。

 

(...どうして、ごり押ししかできない知能しか持っていないのに、この町を攻める必要があるの?)

 

いくらそこまで敵がバカとは言え、蛮族やならず者だ...街を襲うほどのアホでもない訳である。

第一に辺境貴族とはいえ、貴族が治める街を襲う...ということは、『王国』に喧嘩を売るということで間違いはない。

だからこそ、蛮族やならず者は旅人や商人を襲う...それならば、どうしてこのリチャード町を攻める?

 

(やっぱりこれ、私とゆかりちゃんに対する個人的な恨みだよねぇ。)

 

マキはそこまで考え、イラつきをあらわにする。

だがそうすると心当たりが無くなる、小さいころから誇りある父に恥じぬように淑女として生きていたマキが恨まれるようなことはしていない。

それこそ小さい時の―――

 

「......まさか、ね。」

 

ほぼ自業自得のような恨みが頭に思い浮かんだが...すぐさまその記憶をかき消した。

今は少しでも戦況を良い方向に持って行くようにしよう。マキはそう考えモヤモヤした心を切り替えるのであった。

 

 

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