トラベリング・ラビッツ ~VOICEROID達の大冒険~   作:ライドウ

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第12話 ~白き獣~

マキの戦略眼と矢継ぎ早の様に飛ばされる戦術と指示により、リチャード町は正門を残してそのほかの門はすべて封鎖された。

しかし、他に攻めるところもなくなった蛮族・ならず者たちは正門を通り、大通りから攻めることに集中し始めた。

対するリチャード町の近衛兵たちも大通りに兵力を集中、その結果大通りは血を血で洗う大規模な戦闘が発生していた。

 

「...総力戦となると、やっぱりこっちが厳しいね。」

 

マキがぽつりとつぶやくと周りの衛兵隊長たちは頷いた。

大通りの大規模戦闘は現在蛮族・ならず者たちに押され気味であり、大通りから追い出される寸前なのがリチャード町の衛兵隊なのだ。

今はバリケードを盾にどうにか攻勢を防ぐことはできているが...このままでは時間の問題だ。

 

「...さすがに、私でもこの数は厳しいですね。」

「たった一人の旅人が、戦況を変えられる戦力を持ってるわけないよゆかりちゃん。」

 

目を覚ましたゆかりもその会議に参加しているが、ゆかりは戦闘特化であって戦術や戦略を出せるわけではなかった。だがマキはそんなゆかりを精神安定剤のような扱いで隣にいてもらっているのだ。

 

「...そうだ、スノー君ならこの状況をひっくり返せる?」

 

ゆかりが思い出したようにフードの中のスノーに声をかける。

周りにいるマキや衛兵隊長たちは首をかしげるがもぞもぞとフードか出て地図の上に着地するスノーは

 

「キューイ!(ムフン)」

 

任せろと言わんばかりに鼻を鳴らすのであった。

 


 

「うおおおおっ!」

「おうらぁっ!!」

 

悲鳴と怒号、そして金属がぶつかり合う音が響く大通り。そこにあるバリケードの後ろでマキとゆかりは大通りを眺めていた。

ゆかりの肩に乗るスノーはその様子をみて、忌々しそうに威嚇を続けている。

 

「キュルルルルゥ~」

「...スノー君、彼らが憎いんですか?」

「...キュ!」

 

ゆかりとてスノーの言葉を完全に分かる訳ではないがスノーの怒りが野盗やならず者に向けられているのは何となく理解できていた。

...ゆかりとマキは一度見合い、ゆかりはスノーを飛び出させるため左腕を前に突き出す。

勢いよく、ゆかりの左腕から飛び出したスノーはクルクルと回りだしながら強い光で視界を奪い始める。

 

「う、うわわ!?な、なんだ!?」

「まぶしいぞクソが!!」

 

光が収まり、ズドン!という重いとともに大通りに()()()()()()が現れる。

愛らしい姿の擬態を解除し、本当の...獣らしい姿を見せつけるスノー。ゆかりもバリケードを飛び越えショートソードを鞘から抜いてスノーの隣に立つ。

 

キュオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

 

四肢を広げ、息を大きく擦ったスノーは自身の存在を見せつけるかのように咆哮を上げる。

その咆哮一つで、全ての衛兵たちと蛮族・ならず者たちは冷や汗を流す。

スノーの隆起した筋肉と獰猛な獣と変わらぬスノーの眼光、そしてその禍々しい肉体が人間の奥底に眠っている本能の恐怖を主ださせるが...

衛兵たちは巣のスノーの隣に立つ人物、ゆかりを見て安堵する。ゆかりがそこに立っているなら、あの怪物は、いやあの獣は自分たちの味方だと。

 

「スノー君!大暴れで行きましょう!!」

「キュオォオオオオオオオ!!!」

 

ゆかりの掛け声により再びスノーが咆哮を上げ、蛮族とならず者たちに襲い掛かる。

そんな蛮族とならず者たちは我先にと逃げ出すが、スノーの前では遅く...すぐに追いつかれて襲われてしまう。

 

「ぎゃあああああっ!?!?!」

 

「ひっ、ひぃいいいっ!アイツが襲われてるうちに逃げろぉっ!!」

「殺される!死にたくねぇ!!死にたくねぇよ!!!」

「くそ、クソぉっ!!何が略奪だけの簡単な仕事だよ!!あんな化け物がいるだなんて聞いてねぇよ!!」

 

大混乱の蛮族とならず者たちは、自分の命を優先する。

だが、それを情けない姿を見て許すほど衛兵たちの怒りは穏やかではなかったのだ。

衛兵たちの怒りは、自分たちが生まれ育った町を燃やされ、壊され...平和を壊されたことにとても腹を立てていたのだ。

 

「あの獣に続けぇっ!クソどもを一人も逃がすなぁッ!!」

「押し返せぇっ!俺たちの同僚の仇を討ってやれぇっ!!」

「これは、俺の上司の分!!これは、俺の後輩の分だぁッ!!」

 

すっかり戦意を取り戻し、逃げまどう蛮族とならず者たちを襲う衛兵たち。

バリケード周りにいた衛兵たちも、怒りをあらわにして武器を手に追いかけまわし始める。

 

...そして、そんな光景を見ていたマキは―――

 

「ゆ、ゆかりちゃん。と、とんでもないのをペットにしてるね。」

 

 

ただ、ひたすらにドン引きしていた。

 

 


 

 

「おっ、親分!!大変だ、大変なんだ!!」

 

森の中の蛮族とならず者たちの本陣、そこに血相をかいて逃げて来たであろう一人の蛮族が駆け込んできた。

その様子に、本陣の中で待機していた蛮族やならず者たち...そして彼らを支持する立場の三人組は腹立たしそうにその男を見る。

 

「...どうした、俺が命令したのはただ略奪しろと―――」

「そんなこと言ってる場合じゃねぇんだ親分!町に、町のど真ん中に森の白い怪物が出たんだ!!」

 

不気味な男の言葉を遮ってまで、その男は伝えた。

そしてその伝えた内容に蛮族やならず者たちに動揺が走る。

()()()()()()。それは、間違いなくスノーという名前が与えられる前のスノーの事だ。

蛮族やならず者たちにとってその怪物は自分たちのアジトを襲う厄介な害獣...一部の村や町からは信仰をされているほどの強い獣である。

それを伝えるために彼は、ただひたすらに本陣に向かって逃げ...そして自分たちを指示してくれる親分にそれを伝えたのだ。

このままでは自分たちは全滅する、頭のいい親分なら逃げるという選択をしてくれるはずだと。

 

...だが―――

 

「それがどうした、森の白い怪物ごとあの町を焼き捨てろ。」

「...お、おや......ぶん?」

 

彼の親分は、彼の言葉すら聞く耳を持たずただ冷ややかにその男を見下ろした。

 

「親分...何を言ってんのか分かってるんすか?!森の白い怪物に火なんて効かねぇ!!俺たちが束になっても勝てない相手なんっすよ!?」

「それがどうした、あの町と一緒に燃やせば死ぬだろう?何ならお前らが足止めして心中すれば必ず殺せる...生物なんだ、精々一撃加えて死ね。」

「ッ!?親分、アンタ......お、おれたちを捨て駒にしようってのか?!」

 

彼がそう叫んだ途端周りの蛮族やならず者も自分が慕っていた人物に敵意を向ける。

不気味な男の隣に立つ二人の男たちだけが、その不気味な男を守るように立っていた。

 

「...臆病者は俺の駒に入らない。《火よ、矢の形となりて、我が敵を穿て》。」

「うぎゃああぁぁぁぁああああっ!?!?!?!」

 

スノーの事を伝えた男が、不気味な男に魔法で殺される。

周りの蛮族やならず者たちも悲鳴を上げて逃げ出し始める。

 

「...どうする?奴ら逃げ始めたが。」

「...ヒヒヒッ。馬鹿な奴らだぁ...逃げても無駄なのになぁ。」

 

「ひっひぃいいいい!?」

「な、なんでこいつらがここに!?」

「たす...だず......ぎゃぁああああああっ!!」

「くるな......くるなぁああああああっ!!ぐあああああああああっ!!!」

 

不気味な男は、聞えてくる悲鳴を聞きながら口元を大きく歪ませ―――

 

 

「俺は...俺は一番だぁ。世界で一番の男なんだぁ...だからこそ、俺の全てを奪っていったアイツラヲユルセネェッ!!ヒヒッ...ひゃーはははははははははっ!!!」

 

 

狂ったように高らかな笑い声をあげるのであった。

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