トラベリング・ラビッツ ~VOICEROID達の大冒険~ 作:ライドウ
「キュオオオオオォォォォォッ!!」
「うおおおおおおっ!」
「わああああああっ!!」
「よっしゃああああっ!!」
スノーが勝鬨の方向を上げると、周りの衛兵たちも武器や腕を上げ勝鬨を上げ、ゆかりも警戒は怠らずにその勝鬨を眺めている。彼らが勝鬨を上げているのは閉めることに成功した正門だ。
スノーの圧倒的な強さとその力強さに蛮族やならず者の野盗連合たちは次々と敗走、そしてゆかりとスノーの活躍によって士気がとても上がった衛兵たちはゆかりとスノーに負けずに勇猛果敢に攻撃を続けた結果、リチャード町の防壁内から野盗連合を追い出し、正門を閉めることに成功したのだ。
「やったんだ!俺たちは勝ったんだああああっ!!」
「やってやったぞ!!俺は仇をとれたんだああああっ!!」
「生き残ってやったぞ畜生がぁあああっ!」
勝利を嬉しがる衛兵たち、仲の良かった同僚の仇をとった衛兵や涙を流しながら生き残ったことに雄たけびを上げる衛兵もいる。
「...お疲れ、ゆかりちゃーん!」
「マキさん。えぇ、勝てましたよ?って、マキさんストップ!返り血が付いちゃいますよ!?」
最前線で剣を振るっていたゆかりは少なからず返り血を浴びており、仕方がないとはいえ少し汚れていしまっている。そんなゆかりに抱き着けばせっかくマキが一切の返り血を浴びずに済んだというのに血で汚れてしまう。それを見るのが何となく嫌だったゆかりは抱き着こうとしたマキを必死に止めていた。
しかし、ゆかりの心配をよそにマキはゆかりに飛びつく...多少の返り血がマキの服にもつくにもかかわらずにマキは全力でゆかりをハグしていた。
「勝ったよ!勝てたよゆかりちゃん!!」
「わ、わかりました!わかりましたから、す、少し落ち着いて!!あわわ、ちょっ力強い!!たすけてスノー!」
「ワレフカンヲカカグキューイ。」
照れるゆかりと、ゆかりに全力で抱き着くマキをみて周りの衛兵たちにも思わず笑い声が出始める。
ようやく、終わったのだ。苦しく...恐ろしい戦いが...
そう、誰もが思った...その時―――
「......ッ!!ごめんなさい、マキさん!!」
「...へっ?キャッ!?」
唐突に抱き着いているマキをゆかりが突き飛ばす。
周りの衛兵が驚き、ゆかりに向けて怒号を飛ばそうとした瞬間―――
ガキィンッ!!!
「...ッ?!お、重いっ!?」
「.........」
謎の黒いマントの人物が、ゆかりに片手斧を振り下ろしていた。
キーンッ!!ドゴッ―――ザザッ...!!ブォンッ!!!カーン!!
「......ッ!!」
「......」
ショートソードと片手斧がぶつかり合い、鋭い一撃や素早い攻撃を互いに防ぎ、かわし、隙を見つけては剣で斬りかかり、斧を振り下ろす。
そんな戦いが繰り広げられている最中、マキだけが何が起きたのか理解できずに固まっている。いや、その光景を認めることができずに不安に駆られている……その、訳は―――
バキッ!!
「ぐぅっ...」
「ゆかりちゃん!?」
マキが知る中で
片手斧を持った黒いマントの人物が一方的に攻めているわけではない、だがゆかりが防戦というわけではない。むしろ逆なのだ、黒いマントの人物が防ぎ...ゆかりが小さな隙を見つけては斬りかかる。
だが、それに合わせられて、ゆかりは殴られ、蹴られ...着実にダメージを負っているのだ。
(戦いずらいっ!確かに小さな隙をついて攻撃しているのに...いつの間にか私が攻撃されている。それに―――)
ゆかりはふらつく視界を何とか抑えながら、ショートソードを構える。
周りの衛兵もそれぞれ槍や剣を構えてその謎のマントの人物を警戒するが...その人物は衛兵たちを気にすることなく、ただゆかりだけを見つめて...そして、ゆかりを煽り立てるように片手斧を構える。
(......
あの殴られ、蹴られたあの瞬間...ゆかりの脳裏には死が横切ったのだ。
もしその一撃が拳や蹴りではなく右手で持った片手斧だったのなら、今頃ゆかりは上半身と下半身に断たれているか、両手両足...どれか二本が無くなっているはずなのだ。
だがゆかりには殴られたり蹴られることしかされずに...明らかに
荒れている息を整えつつ、そのマントの人物の動きを一つも見逃さないように瞬きすらせずに睨み続ける。
...そして―――
ゆかりは、剣を振り上げ斬りかかった。
――――だが、
「...右上から左下に振り下ろし。」
「っ?」
キィンッ!!
ゆかりの最初の一撃は、片手斧に弾かれ―――
「距離をとったと見せかけての足払い。」
「なっ...」
ブオンッ!
常人では見破るのには苦労する技をかわされ―――
「そして、蹴りの勢いを利用したままの回転斬り。」
「くっ!?」
ガキィンッ!!
意表をついたとはいえ、あのグレイマンの目の色を変えさせた一撃を防がれ―――
「......苦し紛れの刺突。」
ガァン!
......苦し紛れの刺突も、斧によって押さえつけられてしまった。
「あなたは、何者ですか!?」
パニックになりながら叫ぶゆかり。
しかし、そんな状態でも頭は冷静に今の状態を脱却しようと高速で考えを編み出している。
...そのマントの人物は顔?を近づけ
「...私は、何者でもない。私は、私の望みの為だけに...貴女を...いや、お前を―――
―――殺しに来た。」
わざわざ、『青く輝く瞳』を見せつつ...ゆかりに、殺気をぶつけるのであった。
「えっ?」
その殺気は、ゆかりの首に...死神の鎌を押し付けていた。
(あぁ、私...ここで死ぬんだ。)
世界の動きがスローモーションになる。
スノーが飛び掛かってきている、衛兵たちが身を挺してでも守ろうと走り出している。
だけどダメだろう、間に合わない。それはゆかりが...いや、全員が分かっている。
(なんか、デジャブだけど...今度は本当に死んじゃうんだなぁ...)
最初はスノーが本当の姿で現れたとき、そして...二度目の今は間違いなく死んでしまう。
幻影のような死神が、鎌を振り上げ...ゆかりの首を刈り取らんと振り下ろす。
(ごめんなさい、マキさん。旅、出れなくて――――――)
「《
だが、ゆかりは...一閃の雷によって救われる。
「...っ」
雷の槍がゆかりの頬をかすめるようにマントの人物に襲い掛かる。
だが、マントの人物はその槍をかわすが...
「たぁあああああっ!!」
「ゆかりちゃん!!」
マキの一喝が、消えかけていたゆかりの闘志に再び火をつける。
「『術式発動:アイシクルショット』!!」
ゆかりが咄嗟に剣を構え、刻まれた魔術を発動させる。
マントの人物がゆかりの魔術とマキの刺突から、大きく距離をとる。
ゆかりは立ち上がりショートソードを構え、マキはその隣に立ちレイピアの切っ先をマントの人物へとむけた。
「...ありがとうございます、マキさん。」
「まだ、答えも返してもらってないからね。」
お互いがお互いをカバーしあうように構え、マントの人物を警戒する。
「...」
だが、マントの人物は気にせずにさらに距離を取り...
「いずれ...決着をつけましょう。」
用は済んだ。そう言わんばかりにマントの人物が跳躍し、その場から立ち去る。
追おうとする衛兵たちだが、すぐさま足が止まり...
「ア”アアァァァァァァ...」
正門の壊された箇所から入ってくる、【禁忌】を...目にしてしまった。