トラベリング・ラビッツ ~VOICEROID達の大冒険~   作:ライドウ

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変更点

・アンデッドモンスターの設定



第14話 ~禁忌:死霊魔術~

アンデッド。

 

それは、死んでしまった者が何らかの理由で復活し人を襲う存在。

一体でも表れてしまったら、間違いなくできることは死を覚悟し、自身が信じる神に祈りをささげることだけである。

 

だが、ゆかりたちの世界においてアンデッドとは、異界からの亡霊、死した謎の存在―――禁止された技術...【死霊魔術】によって、呼び出される存在だ。

頑強にして異常な再生能力、噛まれればほぼ即死の猛毒の爪と牙...唯一の救いなのは足が遅いことぐらいだろうか。故に、この世界ではアンデッドを呼び出すことは禁忌として知られている。たとえどんなに野蛮で低知能であろうとも、【死霊魔術】を使うことは愚かな事であり、また制御できない危険な魔術であるからだ。

 

だが―――

 

ア”アアアァァァァァァァッ!

 

 

 

―――それは、全ての生を恨む雄たけびを上げていた。

 

==========

 

「あ、アンデッドだぁーッ!!」

「ひっひぃーっ?!」

「逃げ、逃げろぉーっ!!」

 

壊された扉から入ろうとしているアンデットを見て、衛兵たちは武器を投げ捨て我先にと逃げ出し始める。そんな中、アンデッドたちは一体...また一体と壊された箇所から侵入している。

勇敢な衛兵たちでさえ、槍を構えたままでじりじりと後退している。

 

「...なんで、アンデッドがこんなところに。」

 

マキが絶望に染まり、そのままヘナヘナと座り込んでしまう。

アンデッドの恐ろしいのはしぶといと言うだけではない。死亡してもその醜く腐った身体を残し処分にも手間がかかる。しかも下手をすると強力な病原菌がその腐った身体からあふれ出し...ネズミにうつり、そして最後は街一つが死に至ってしまうのだ。

 

「マキ様!僭越ながら、今は逃げるのが最善の手かと!!」

「あ......う、うん!!全軍撤退!!第2臨時防衛線まで撤退して!!」

 

しかし、マキは護衛の衛兵隊長に声を掛けられることで自分がすべきことを思い出す。

マキの号令により、次々と衛兵たちは撤退を開始する。

我先にというわけではなく怪我した衛兵から優先し、まだ戦える衛兵が槍を構えたままゾンビたちを睨みつける。訓練通りの動きだ。

 

(でも、逃げる場所なんて...本当にあるの?)

 

マキは不安を抱えながら、アンデッドの集団を睨みつける。

 

「...ゆかりちゃん、答えって...今のうちに聞くことはできるかな?」

 

マキは半ばあきらめていた。ここから逃げ出したとしてもアンデッドの軍団はしつこく追いかけ襲い掛かってくるだろう。死霊魔術を行使している魔術師を殺さねばアンデッドたちは止められないのだ。

例えどんな戦術や戦略を練ろうとも、相手はそれらを踏みつぶすアンデッドの集団だ。

 

「...答えませんよ?まだ...()()諦めてませんもの。」

 

ゆかりも恐怖で怯える表情を隠しつつショートソードを鞘に納め、スノーも諦めるどころか威嚇をアンデッドに向けている。

 

「行きますよ?マキさん。」

 

ゆかりはマキの手を引っ張り、立ち上がらせて第2臨時防衛拠点へと走り出す。

マキもつられるように走り出し、諦めていないゆかりの背中をただ見つめていた。

 

~~~~~~~~~~

 

「バリケードもっと持って来い!ちんたらするなっ!!」

「クロスボウを倉庫から引っ張り出せ!何なら旧式でもいい!!」

「けが人は第3臨時防衛拠点に移動させろ!急げ急げ!!」

 

ゆかりに連れられマキは第2臨時防衛拠点にたどり着く―――と、そこでは衛兵たちもあきらめずに迎撃しようと行動をしていた。

 

「...ほら、皆諦めてないじゃないですか。」

「ゆかりちゃん...」

 

絶望に陥っていたマキの瞳に光が戻り始める。パチン、と自分の両頬を叩き気合を入れなおし、息を大きく吸う。

 

「全員、作業したままで聞いて!!」

 

マキの大声に一度衛兵たちが怯むも、言葉通りに作業の手を止めずに進める。

 

「今、私たちの住み慣れたこの町にアンデッドがやってきてる。それはみんなも知ってると思う!

アンデッドは、とっても怖くて...恐ろしいから、戦うのは嫌......でも、でもっ!

 

 

この町がアンデッドまみれになるのはもっと嫌!!

 

 

私は、この町で生まれて...育ってきた、私の宝物がここにはいっぱいある!!

それが、汚されたり...壊されたり、この町が無くなっちゃうかもしれない!!

だからみんな、この町を守るために...皆の町を守るために、私に力を貸して!!」

 

肩を大きく上下させながら、息を整えるマキ...

作業の手がいったん止まり、衛兵たちがマキを見据える。

 

 

そして―――

 

「「「「「「オオオォォォォオオオオッ!!!!」」」」」」

 

 

衛兵たちの雄たけびが、上がった。

 

「おら急げ!!俺らのマキ様の宝物を護るんだ!!」

「いっそのこと使えるモン全部持って来い!!いいか!全部だ!!割れた瓶底でも持って来い!!」

「このぐらいの怪我でへばってられるかぁッ!!」

「今の言葉聞いてビビってる奴いるか!?居ないよなぁッ!そらそら、準備急げッ!!」

 

どん底に近かった戦意と士気が―――マキの震えた声の激励によって跳ね上がる。

自分たちが住み慣れた街を守るために、自分たちが暮らしている街を守るために。

 

何より、あこがれの少女が助けを求めているからこそ、衛兵たちは再び燃え上がった!

 

「はぁ...はぁ...ゆかりちゃん。」

「頑張りましたね、マキさん。」

 

荒い息を整えるマキの頭をゆかりは軽く撫でる。

いきなりの事にマキの顔は少しだけ赤くなるが、その安心感のある手によってすぐさま落ち着きを取り戻す。

 

「ねぇ、ゆかりちゃん。」

「...はい、マキさん。」

 

「...必ず、勝とう!」

 

「無論、ですよ?」

 

ゆかりとマキは、向き合って頷きあった。

 

============

 

「来たぞーッ!アンデッドの連中だーッ!!」

 

高台にのぼる衛兵が大きな声を上げる。その声が聞こえるほんの3分前に、迎え撃つ準備は整っていた。

マキは胸に手を当て、緊張を抑えて...そして―――

 

「全軍、迎撃用意ッ!!」

 

マキが勇敢な掛け声をかけ、指示を出す。

マキの指示を衛兵たちは、素早くクロスボウや弓矢...そして槍や間に合わせの武器を手に取る。

みずぼらしい外観の衛兵隊であろうとも、その気概は本物...ここで必ず迎え撃つという覚悟が一体となり、みずぼらしさなどかき消すほどに威圧感が出ている。

だが、悲しきかな相手はアンデッド。その威圧感は意味がない。意味がないが...彼らにとってそれほどの覚悟はあるのであった。

 

「第一射、放てッ!!」

 

マキが右手を振り下ろすと、衛兵たちが一斉に矢とボルトを放つ。

統率の取れた第一射は容赦なくアンデッドの先頭軍団に襲い掛かる。

 

ア”アァァァッ!?

ア”アアアァァ...

ア”ッ?!

 

アンデッドの断末魔らしきものが多数上がり、先頭にいたアンデッドの多くが倒れる。

...誰もが、その光景を見て『撃退できる』と確信した。

 

「第二射、用意!!」

 

撃ち終わったクロスボウを持った衛兵が、装填してあるクロスボウを持った衛兵に入れ替わり...その衛兵がクロスボウを構える。弓矢を構える衛兵たちは、2本目の矢をつがえてアンデッドに狙いをつける。

交代した衛兵はクロスボウのハンドルを回し、装填の用意をする。その隣では、ハンドルを回し終わったクロスボウにボルトをセットする衛兵がいた。

 

「第二射、放てッ!!」

 

二回目の統制された射撃が放たれ、また数多くのアンデッドが断末魔を上げて倒れる。

マキが即興で思いついたその方式は、別の世界では『三段撃ち』と呼ばれる戦術だ。

ただ、遅く前に進むだけのアンデッドたちはその『三段撃ち』の前に次々となすすべなく倒されていく。

第三射、第四射、第五射と放たれ...

 

ア”アァッ......ア”ァァァァァァ......

 

 

最後のアンデッドが、倒された。

 

 

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