トラベリング・ラビッツ ~VOICEROID達の大冒険~ 作:ライドウ
(´・ω・`)
アイディアが浮かばないとどうしてもこうなるんだ…申し訳ない。
リチャード町が襲撃され、一日経った。いまだに町は消火と復興作業に当たっている。一日や二日で直るものではなく、町が元通りになるまでかなりの時間がかかることだろう。
「……はぁ。」
そんな街をゆかりはため息をつきながら歩いていた。
理由は簡単、表彰代わりに渡された剣が結構高いものだったのだ。
「……これ、誰がどう見てもオリハルコンですよね?」
オリハルコンとは、ゆかりたちの世界における貴重な鉱石の一つだ。
『オーレタートル』と呼ばれる亀型の魔物の背中に生成されるとされていて滅多に見つかるもののない。兄が譲ってくれたショートソードでさえ鋼のショートソードなのだ。まあ、あそこまで貰ってくれと言われて断れるはずもなく、左の腰脇には兄から貰ったショートソード。右の腰脇にはマキ父から譲られたオリハルコンのロングソードがぶら下がっている。
「……まあ、適当に時間を潰しますか。」
まあそんなことはどうでもいいのだ、今ゆかりは適当に時間を潰さなければならない。
今日旅立つ予定だが、マキが来るまで待つのである。
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side:maki
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「―――以上、今回の戦いにおける衛兵隊の被害でした。」
言えた。何とか、噛まずに言えた。
今、私がいるのはお父さん―――ツルマキ卿の執務室だ。私は、衛兵隊の総指揮官としての立場として今日はこの場に立っている。娘としての私ではなく、騎士としての私としてだ。
「…ふむ、町の被害は想定より最小限、されど衛兵隊は被害甚大。遺族への手厚い弔慰金の手配の手腕、その後の衛兵隊に対するケアも完璧、見事の一言だ。」
厳格な一言共に私に鋭い視線が送られる。送り主は私の父、アレックス・リチャード・ツルマキ卿。
お母さんの話では20年前の帝国との戦争で不利だった戦場をたった一手でひっくり返した英雄。私と同じ、金髪碧眼のナイスミドル…って、ここは私的な場じゃないんだからそんな考えはやめないとね。
ともかく、ツルマキ卿は鋭い視線のまま、私を見つめている。
「はっ、お褒めの言葉感謝いたします。」
「…それで、一つ聞きたい。また此度のような襲撃があった際、どのような対策を?」
「はい、まずは―――」
戦いが終わってすぐ衛兵隊で会議した対策を具体的に上げてゆく。
まずは、まだ整備が整っていないがワイバーンライダーによる早期警戒網の構築、稼働。
その次に、精鋭遊撃隊の設立だ。この案はゆかりちゃんの活躍あってこそだが、自由に動ける戦力はあった方がいいという判断のもとである。そしてあの戦いで発覚した外壁扉の脆弱性を改善し、万全な状態にする。
「なるほど、素晴らしい案だ。では、遊撃隊の隊長は?」
「……衛兵隊に所属しているウルリッヒ隊員に指名しました。」
「
「―――ッ!」
ツルマキ卿が、私に多少の怒りを見せる。
確かに…ゆかりちゃんなら、今回のように町への被害を最小限に抑えたうえで、単騎であの強さなのだ…このリチャード町の衛兵隊……ひいては、ツルマキ卿の私兵としても最大戦力となることは間違いないだろう。
「失礼ですが、彼女は」
「あぁ、わかっている。民間人、なのだろう?偶然居合わせた。」
…わかってて言っている。
公的なお父さんは、ゆかりちゃんを自分の戦力の鬼札にしたいのだろう。
ゆかりちゃんのあの強さ、そしてゆかりちゃんに懐いてるスノー君…森の白い怪物の存在。
それを持って王国を安泰にするつもりなのだろうか…そんな考えばかり浮かぶが、私はただの衛兵隊の総指揮官。そして、ここは公的な場だ。荒れ狂いそうな私的な考えを抑え、何とか意見を出す。
「確かに彼女ならば、精鋭遊撃隊にふさわしい戦力でしょう。しかし、彼女はあくまでそこに居合わせた一般人です。それに、いくらツルマキ卿とは言え、王国の定めた徴兵法に違反するのではないでしょうか。」
「…なら、潔く諦めよう。それで、
―――いつあの子と結婚するんだい!?」
「急に何言ってるのお父さん?!」
重苦しい雰囲気が吹き飛んでいき、真面目な顔をしていたお父さんは一気にアホみたいなことを言いだした。もちろん私も公的な雰囲気など吹き飛んでしまっているが、急な温度差に驚き顔を赤くしつつも叫ぶ。
「いやだって、ジョンから聞いたよ?マキとその子結構距離が近くてデートもしてたって。」
「うっそ、みられてた!?しかもジョンってどのジョン!?」
「チャラ男のジョン」
「畜生、よりにもよってそのジョンかよ!!」
どうやらお父さんはこれ以上公的な話をするつもりはないようだ。
完全に雰囲気が、家族に対するそれになっている。これが20年前の戦争をたった一手でひっくり返した軍神なんだからなぁ…いやそんなことはどうでもいいんだよ!!
「さっきまでこう…なんかシリアスな雰囲気だったじゃん!!なんでそんなときに急にそんな話するかなぁ!?」
「いやだって、町の被害は最小限だし衛兵隊の対応や対策に関してケチ着けようとしても完璧だから言う必要もないんだもん!そんなことより、将来のもう一人の娘が気になるわァッ!!」
「いや、それ以前に返事すら貰ってないから!!デートのは認めるけどまだ正式に恋人になったわけじゃないから!!」
ゼェ…ゼェ…とお互いに息をきらしながら、不毛な言い争いが終わる。
「お戯れは終わりましたかな?」と、爺やが紅茶とクッキーを手に持ちながら入室してくる。
若干目が笑っていない気がするが、静かにクッキーがのったお皿を机に置くとテキパキとお茶の時間の準備を進める。そういえばもうそんな時間だった。
「まあ、ともかく…早く手を出してあの子をうちの子にしてくれ。」
「まだいうかクソ親父。」
流石の私も暴言が飛び出る。爺やがムッと睨んでくる…と思ったけど、爺やも白い目でお父さんを見つめている。
そして私の悪口が聞いたのか即座に机に突っ伏し「娘からクソ親父言われた、反抗期か…」とウソ泣きをかましている。
「まあともかく、私はあの子…ゆかりちゃんと一緒に旅に出るからね?」
「ああ、わかってる。衛兵隊はアドルフ隊員に任せるんだろう?」
「うん、あの人ちょっと過激だけど町と町の人のことを第一に考えてくれてるからね。」
爺やが入れてくれた紅茶を一口飲み、お父さんを見る。
厳格とした雰囲気はないけれど、しっかり者のいつものお父さんだ。
ちなみにチラチラと私を見ている。そしてそれはお父さんが私を心配してくれている証拠である。
「大丈夫だよ、危なくなったらすぐに逃げるし。ゆかりちゃんも強いからね!」
私がそういうとお父さんの目つきが変わる。
お父さんとしての雰囲気だが、少しだけ不安げな様子だ。
「そのことなんだが、マキ。」
声は厳格、これは真面目なときのお父さんだ。
「……彼女と行く旅は、常に危険がある。そう考えなさい。」
「え、うん。まあ旅だし、ゴブリンや猛獣に―――」
「―――いや、そうじゃない。」
…もしかして、スノー君のことなのだろうか。
ううん、考えたくはないけど
「…私は、そのゆかりちゃんと出会ったとき一つ、嫌な臭いがした。」
「…いやな、臭い?」
お父さんは、一族譲りの鼻の良さを持っている。
毒や火薬の臭い、それを嗅ぎ分けることができるのだが、お父さんは特に先祖に近しい鼻の良さらしく、毒や火薬だけでなく『死の臭い』や『危険の臭い』を嗅ぐことができるのだ。
私にも一応その能力は備わっているらしいのだが…どうやら私には残念ながら毒の臭いを嗅ぎ分けられるかどうかだ。
「あぁ、それも…20年前のあの時
―――『氷血戦争』の時とまったく同じの…いやそれ以上の、な。」
『氷血戦争』。
私も本で読んだりお母さんから教わった程度しか知らないが、それだけでも王国と、そしてその敵国だった帝国との間に起きた前代未聞の大戦争。
冬の時期に開戦され、血が凍るような寒さの中戦いが続いたことからついたとされる、地獄の戦争。発端は一切不明だが、とにかく血を血で洗う大戦争だったという話だった。
「アレは、そう…私が第4騎士団を率いて戦場に向かっていたころの話だ。それはそれは寒い吹雪の中、私たちは行軍していた。一刻でも早く、最前線にたどり着かなければ当時第4騎士団が運んでいた物資を待っている第2騎士団が飢え死にしそうだったからな。長い長い道のりの中、第4騎士団はようやく最前線まで間近というところまでついたところ、吐き気を催すほどの血の臭いを纏ったとある兵団に襲われた。
その時、帝国は兵力不足を隠すために帝国の冒険者や傭兵を雇うことがあった。その傭兵団に襲われて、私たちは危うく全滅しそうだったんだ。その傭兵団の名前は『アイスラット』。帝国の傭兵団、その最大戦力と呼ばれていて、そして戦争の名前にもなった『氷血』という傭兵が率いていた最強の傭兵団だったんだ。」
「…その時以上の臭いが、ゆかりちゃんからしたの?」
「あぁ、
お父さんが俯き、爺やは心配そうに駆け寄る。
お父さんは爺やを手で制し…私に見せたことのない、怖がっている表情をしている。
「あの子をよく知るマキにこんなことを言うのは何だが、『アレ』から目と注意を逸らすな。」
私が、旅に出ることはあくまで止めないつもりなのだろう。だけど、とても怖がり…本当は止めたいという感情が伝わってくる。
そして私は、最初はゆかりちゃんを化け物扱いした事に対し憤怒した、したけど……すぐに落ち着いて納得してしまった。
成長した…今のゆかりちゃんと出会ってから感じていた些細な恐怖心や違和感。戦場で躊躇なく、蛮族とはいえ人を斬り殺していたあの姿。
私の知るゆかりちゃんと、今のゆかりちゃんは随分とかけ離れている。だけど私が恋して…うぅん。愛しているのは、今のゆかりちゃんだ。
だけど、お父さんの言い分もよくわかる。確かに、あれは気をつけないといけない。
「…あんまり気は乗らないけど。わかった。」
「すまない、だがこれだけは言っておこう。マキ、私はお前が進む道を否定するつもりはない、それがたとえ王国へと牙が向くものであっても、どんなことがあっても生きるんだ。」
お父さんは神妙な面持ちでそう私に伝えてくる。
…きっと、大丈夫。今回は外れてくれる。私はそう願いつつ、席を立ち…自分の旅の荷物を取りに行くのであった。
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「……爺、いやオットー。」
マキが退出した執務室。
そこで一人の老執事とツルマキ卿が神妙な面持ちで話し合う。
「何でしょうか、旦那様。」
「……念のため、結月 ゆかりの過去を探ってくれ。」
「…そのようなことをすれば、お嬢様から本当に嫌われてしまいますが。」
「一切バレずにだ。」
「承知いたしました。」
コツコツと老執事が靴で床を鳴らすと壁から発生していた気配が消える。
「さて、あの娘からどのような匂いがしたんですかな?一つ、この爺におきかせくだ―――」
「―――
「はい?」
「最初から話そう。結月 ゆかりからは最初から死の臭いがした。最初に会ったときは薄く、気にも留めない程度だった。きっと、何らかの病気の臭いだったんだな。」
「…では、今纏っている二つの死の臭い…とは?」
「一つはさっき言ったとおりだ『咽かえるほどの血の臭い』、もう一つは俺にも分らないはっきりと伝えることのできない匂いだった。例えるなら…そう―――
『■■の臭い』だった。」
「な、んで…すと?」
【旅ウサギ】結月ゆかり
オリハルコンのロングソードをもらって困惑中。
二刀流はできるがあまりしたくない人。
【マスコット】スノー
今回は名前も出なかった。
【軍神の娘】弦巻マキ
ストンと最後のピースがハマり、ゆかりに対して少しだけ警戒するようになった。
しかし恋心は変わらない、今回の父親の予感は外れると信じている。
【軍神】アレックス・リチャード・ツルマキ
ツルマキ家6代目当主。たった一手で『氷血戦争』の戦況をひっくり返した。
ゆかりから感じ取った臭いに敏感。
衛兵:ウルリッヒ
未来の伝説の最強騎士(予定)まだ卵。
朝起きたらチキン食って剣を素振りして衛兵勤務してチキン食って剣の素振りしてチキン食って柔軟して寝るという。
衛兵:アドルフ
思想は(魔物討伐の)過激だがリチャード町と人命第1な人。
チェスが得意で、(チェスで)マキを唯一焦らせた衛兵らしい。
ちなみに負けると「チクショーメー!」と叫ぶ、ちょび髭がチャームポイント。
老執事:オットー
その昔は王国の王城の執事・メイド総括の立場にいた。
ちなみにオットーという名前は偽名らしい。