トラベリング・ラビッツ ~VOICEROID達の大冒険~ 作:ライドウ
・たぶんなし
マキがゆかりに大胆な告白をした翌日。
ゆかりはとりあえず気にしない方針とし、少しだけ早く起きて早めの朝食を作り出す。勝手知ったる我が家のようなキッチンではないが、マキの性格故かわかりやすいところに器具や整理整頓された冷蔵庫のおかげで簡単でご機嫌な朝食が出来上がった。
「おっ、おはよぅ...ゆかりちゃん。」
「はい、おはようございます。マキさん」
「キューイ!」
部屋から出てきて挨拶をするマキに返答するゆかりとスノー。
ゆかりの反応に少しだけ頬を膨らませるがゆかりの持つおいしそうな朝食を見てすぐに機嫌を直す。
「おいしそうじゃん!」
「いいえ、おいしいですよ?」
「キュイキュイ!」
ドヤ顔で胸を張るゆかりに同調しスノーも自慢げに胸を張る。
息ぴったりな一人と一匹を見てマキも笑顔を零し、朝食に口をつける。
マキは今日はいい日になりそう、と思いつつゆかりの作った朝食を堪能するのであった。
~~~~~
「あぁ~...おいしかったなぁ~。」
「そんなに何度も言わないでください、結構恥ずかしいんですからね?」
「キュプ~...」
朝食も食べ終わり、食後のお茶を飲みつつ談笑するゆかりとマキ。スノーは満腹になったからか日光が差し込む窓辺で丸くなり大きなあくびをしていた。
遠くから聞こえてくる、町の活発的な生活音が静かな日常を彩っていて、まるで今日という一日を祝福しているかのように、この町にある教会の鐘が鳴った。
「あっ、そうだ!」
何かを思い出したのか立ち上がるマキ。
そんなマキに驚きつつゆかりとスノーは、立ち上がった彼女を見つめている。
「ゆかりちゃん、これからデートしよ!」
「で、デート...ですか?」
「キマシタワーキューイ」
妙案と言わんばかりにむふーと胸をはるマキ。
何を隠そう、もう昨日の夜に大胆な告白をしたのだ...あとは押しまくれば何とかなるという脳筋思想の元、マキはゆかりに自分の意識を向けてもらおうと猛烈アタックすることを(ついさっき)考えたのだ。昨日のアレを思い出し、ゆかりが頬を染めてそっぽを向く。
「で、でも...私は」
「ふふん、この私...弦巻マキは、ゆかりちゃんが私を好きになってくれるまでゆかりちゃんに猛烈アプローチをすることに(ついさっき)決めたのだ!」
「なっ、なんて強引な!?」
「ガッツクオンナハキラワレルキューイ」
スノーからしてみればバカバカしい光景だが、主に恋愛感情を向けている拗らせた少女の恋路を見るのは結構面白いため、邪魔をしないようにする。そしてそんなスノーに助けを求めるようにゆかりは視線を向けるが...スノーはそっぽを向いてゆかりを見放す。ガシッ!と言わんばかりにゆかりの両手をマキが掴み...
「さぁ、行こうゆかりちゃん!一緒に行きたいところがいっぱいあるんだっ!!」
「ちょっ、マキさん!?おっおちついて...力強いなこの人!?」
「ヤレヤレダゼキュピ~...」
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服屋、小物屋、アクセサリーショップや公園に喫茶店や劇場に行ったゆかりたち、ゆかりもマキもそれはそれは楽しそうにデートという名の観光を楽しんだ。(ちなみにスノーはお留守番だ。)
二人のデートは順調に、とても楽しい時間は過ぎ...すっかり夕焼けの綺麗な時間になっている。
そして...二人が初めて出会い、マキの初恋をした場所で懐かしいベンチに座りながら、今日の事を振り返っていた。
「今日は楽しかったね!ゆかりちゃん!」
「...えぇ、私は終始振り回されっぱなしでしたけどね。」
えへへとかわいらしい笑みを浮かべるマキと、ちょっとだけ疲労の色が強いゆかり。
だけどもゆかりもマキも、つないだ手を離すつもりはない。むしろゆかりが恋人繋ぎをしようとしているマキの手を無理やり押さえつけているだけだが...
「...、......私の告白、どう思った?」
賑やかな街の喧噪の中、マキの不安そうな声が聞こえた。
先ほどまでかわいらし笑みを浮かべていた顔は、少しだけ泣きそうで不安そうな表情に変わっている。
...マキは分かっているのだ、自分の持っている恋愛感情は生物的にはおかしい。ということを。
だけども、マキは捨てきれなかった。好きになったから仕方ない、愛に性別は関係ない...それを理由にしたくないのがマキの本音だ。それは辺境とはいえ、貴族の一人娘ゆえの葛藤でもあった。
「......そうですねぇ。キスされたとき、ビックリ...はしましたね。」
「...きもちわるいとか、思わなかったの?」
「いいえ?びっくりしただけです。別に、マキさんの事は嫌いではないですし。」
握っている手に力を込めるゆかり...震えていたマキの手は、次第に震えが収まってゆく。
「それは...その。」
「もちろん...私も、マキさんの気持ちを伝えられてもなんて返せばいいのかなんてわかりません。私...そういう経験もなければ、恋愛なんて考えたこともありませんでしたから。」
ゆかりには、そう言った経験や考えはなかった。
ゆかりにとっては、兄がいて、世界があって...その世界を冒険できたらいいな。という考えしかなかった。だから急にその胸の思いを伝えられても、ゆかりは決めることができないのだ。
「...それは、そうだね。」
「......だから、マキさん。まずは一緒に冒険に行きましょう?その中で、私は答えを見つけますし...マキさんもきっと冒険の中で何かを見つけられるはずですから。」
ゆかりはマキの手の指の隙間に自らの指をからませる。マキが今まで欲していた『恋人繋ぎ』のそれである。
「うん、そうだね...まずは冒険に出ないと始まらないよね!」
すっかり元気を取り戻したマキ。ゆかりはそんなマキを見て優しいほほえみを浮かべる。
再び、マキの表情はかわいらしい笑みに戻り、ゆかりもその表情を見て安堵する。
二人の少女の楽し気な会話は、町の喧噪の一つとして...消えてゆくのであった。
「.........」
ただ一つ、路地裏から見つめる影を除いては。