白百合幕間 作:紅葉
中等部にあがり数ヶ月しリリィの体に異変が起こる。少し下腹部に腹痛を覚え始め翌朝シーツが真っ赤に染まって居たのだ。
初経、自分の体に後に起こる事の知識としては知っていたが実際に起こると放心しとりあえず備えておいたナプキンなどで対処し汚れたシーツを申し訳なく思いながら洗濯機にかけた。
向かえてから数ヶ月、なんともないと思っていた所徐々に下腹部痛と頭痛に悩まされ始め酷い時には吐き気を覚える事もある。休みの日なら寝ていられるが授業がある日には酷い顔で出席して授業を受けつつお腹や頭を抑えていた。
見かねた寮監に休んでもいいんだよと優しく休むように言われるがリリィは頑なにに拒否をする。
「休めないです。だって休むと授業に追いつくのが大変になる...し、前の噂みたいに女だからって理由で休めれるんだなって思われたくない...っ、です」
噂自体は時間がたつと事実を知ってる子やリリィの行動を見てた子達が少なくは無い事でガセだと知ったり噂に飽きた子達が増えたりで噂は下火になり今も話してる子は耳が遅いか噂を真に受けてる子だけだった。
それでも彼女の心には今だ嫌な記憶として刺さっている。理由を聞いて強く返せなくなった寮監はリリィを連れて一般の病院へ受診しリリィに会った痛み止めを処方して貰う。
「それで痛みはある程度抑えられるでしょう、それを飲んで授業へ出なさい。
でも本当に辛い時は無理をせずに休みなさい」
「...っ、はい!」
処方してもらった薬のおかげか月のものが来てもある程度耐えれるぐらいにはやわらぎ、薬すごい!!!とリリィは感動に浸っていた。
腹痛頭痛からある程度解放されて少し気分が楽になったリリィに今度は違う苦痛に襲われることになる。授業後に1人で歩いていると複数の男子が訓練の練習したいから手伝ってくれないかと声をかけられる。余りよく知らない子達だったが特に予定も無かった為にリリィは許可をしてしまった。
「はははははっっ!」
「ぅ.....」
ついて行った先は人気の少ないあまり人の通らない裏庭でリリィもよく来て1人でのんびり過ごしていた場所だった。
小さいながらも緑があり自然保護区でそだったリリィには安心出来るちょっとした家を思い出せる場所だった。が、今は綺麗な緑は所々赤く染まってしまっている。
訓練と行って裏庭に着いてきたリリィの後頭部を訓練用の木製の刀が強打したのだ。
痛みでのけぞり前へ倒れる。意識は残っており痛みで顔を顰めて頭を抑える。
ちらりと見やると1人の男子が少し血の着いた木刀をもって笑っていた。
後ろについてる男子に目線を投げると気まずそうに露骨に目線をそらす。どうやら笑ってる子主導のようだ。
木刀を投げ捨てると倒れて蹲ってるリリィに蹴りを入れ始める。腹や背中など服で隠れる所に狙いを定めているようで同じ所を蹴られ続けていた。
「お前がっ...! 一位なんてとるか..らっ!!!
はぁ...、お父様にっ!!女に負けるできそないなん..てっ!!! 言われたんだ...よっ!!!!」
「ゔっ...」
「おいお前らもやれよ、こいつに対して鬱憤溜まってたんだろ?」
「あ...あぁ...」
「...わかった」
重点的にお腹周りを蹴られ蹲った状態で相手の気が住むのを待ち続ける。
女のくせに、なんで僕が、教官に媚、優遇されやがって、など言いたい放題に言い散らかして主犯の子が段々とエスカレートしていく。
「噂でもっ!! 流して居づらくなればっ!!!やめるだろうってっ!!! 思ってたのによっぉ!!!!」
「ぅわ...ぁ...」
こいつが、噂を流したのか。
飲み込んで心に刺さっている物の元凶。
体の節々が痛く気力はあるもの体が言う事を聞かない。あの時の、努力を踏みにじられた怒りをぶつけたいのに。動け動け、手だけでいい。なんとか。
「はァ..はぁ...、何事も無いみたいに飄々としやがって...よっ!! 心まで完璧人間か、よぉっ!!はぁ.....はぁ..、ふざけん...な よっ!!?」
「ぅ......、ゔぅ..!」
腹に蹴り出された足を気力で掴み、ぎっとこいつを睨みつける。
私に抜かされたのこんな事してるからでしょう。文句ばっかり言ってないでさ。
口には出ないが睨まれたのが気に食わなかったのか思っていたのが顔に出たのかより逆上し掴まれた足を振りほどき額に思いっきりの蹴りを入れる。
一瞬で正気に戻り服で隠れないところを蹴ったのをまずいと思ったのか、誰かに行ったらまた捕まえてボコボコにするからなと脅しをして連れの子達を引き連れて帰って行った。
丸まってガードしてた状態を解き大の字で寝っ転がる。背中もお腹もじんじんと痛みが響く。痛みが引くのを待ってなんとか待ってゆっくりと体をあげて座り込む。
額からつぅーと何かが垂れてくるのを感じて左目を瞑る。そしてポタリと緑の上に落ち草を赤く染める。
「おい君大丈夫?」
「は..ぃ..」
教官かと思ったが横に来た人の姿は制服で初めて見る人だった。肩に手を添えてくれるが触れられると痛い状態なのでびくっと反応してしまった。
「す...みませ...、きょ..ぅ かん ...ょんで...くれませ...か...?」
「わかった、待ってな」
「ぁり..が...ぅ」
ゆっくりと深呼吸をして呼吸を整える。
目を瞑って深く息を吸って吐くことだけに専念をする。深く吸いすぎて肺の近くを蹴られたところに痛み刺さる。うっ、となるもゆっくりとまた息を吐く。
そう繰り返しているとばたばたと足音が複数聞こえてくる。
「ノワール!大丈夫か!」
「...いいぞ、そのままゆっくり深呼吸だ」
「ぃお..きょ..か...、ぁと..きょ..か....」
教官達が来てくれた...。
緊張がとけてなんとか保っていた意識が飛びそうだ...。
「安心しろ、もう寝てもいい。
よく耐えたな立派だ」
「次目が覚めたら暖かいベッドの上だ」
「......ぃ」
傷のないほうの頭をアトラ教官が撫でる。
暖かくて大きいてでお父さんが撫でてくれてるみたいで、酷く安心する...。
「...」
「寝たか」
「そのようだ」
かくりと首を落として気を失ったリリィをそっと姫抱きにするアトラ教官。訓練科目の教官なだけあって気を失って完全に脱力しているリリィを姫抱きに持ち上げても全く動じない。
もう一人の一見細身の教官は近くに置いていた血のついた訓練用の木刀を見つけて犯人を特定できるだろう証拠を回収する。
凶器とまでは行かないが武器を放置して逃げるとは初等部を通って来ているのか心配になるほどの杜撰な処理だ。
「確か、エイル・プレジテだったな。
貴殿の報告に感謝する、貴殿が来てなかったらまだ見つけれずにノワールは苦しんで居ただろうからな」
「いえ、当然の事をしただけですよ。
かわいい後輩が困ってたら助けるのは普通でしょう」
邪魔にならない所に立って柔らかな笑顔を浮かべて教官に返事をした。
確かリリィのひとつ上の2年に在籍しており成績はそこそこ優秀、絡め手の作戦立案が得意な生徒だったと記憶している。
「そうか、では失礼する」
「ありがとう、私もこれで失礼する」
気を失っているリリィを救護室に運び頭の怪我や打撲の処置をする。女性の救護官が常駐しておらずリリィが不快にならない範囲で処置を行い彼女の寮へ送り届けた。
リリィをみた寮監は怒り心頭で誰がこんな事をこめかみに青筋が立っていた。
リリィが目が覚めたら寮の自室で怪我の処置がなされていて驚きつつも教官達が処置してくれたのかなと心の中でぽつりと感謝する。
時間を確認しようと時刻をみると昼頃をさしておりしかも平日であった。
「ね..寝坊...!!?」
ひゅっと喉がなり布団を蹴り飛ばしてベッドから降りようとするがお腹に受けた蹴りが痛みきを取られて盛大に転ぶ。
衝撃で痛みがぶり返し悶絶しているとすごい勢いで足音が近づいて寮監さんの叫び声が響く。
「ノワールさn!!大丈夫ですか!!?」
「...だ、大丈夫です...」
開けますよと断りを入れて恐らくマスターキーを使って寮監が部屋に入ってくる。
床にへばりついてるのを見てびっくりしたようで小さな悲鳴をあげた。そしてなんとか寮監さんの協力を得てベッド腰掛ける。
事情を聞いたら怪我が酷く寮に戻された後に発熱がありまる1日ほど寝込んでいたらしい。学校...、授業...と悩んでいるとやっぱりといった様子の寮監さんがひとつのデータファイルを私の端末に送信した。
「ノワールさんが休んだ分の授業のデータを貰ってきました。イオ教官もアトラ教官もいつでも時間を開けているからおいでだそうです」
「教官...」
「あとエイル・プレジテという方とジェフ・ローザという子が心配にしていましたよ、お知り合いですか?」
「えぇ、ジェフ君は初等部からの友人ですね。でもエイル...?という方はちょっと...」
「なるほど、最初にノワールさんを見つけて教官を呼びに行った生徒だそうです。
ではエイルさんには私から大丈夫だとお伝えしておきますね。ジェフさんはお友達なら自分からお伝えしてあげて下さい、きっと安心しますよ」
「そうですね、そうします!
ありがとうございます!」
幸い明日明後日は土日だ。ゆっくり休んで月曜日にまた登校してジェフ君に心配にありがとうと伝えよう。そう考えて端末の授業データを開き寝ていた分の授業をとり返す勢いでデータにかじりつくリリィは寮監が昼食を運んで来るまで止まらなかった。
怪我がある程度治り登校すると珍しく休んだリリィを珍しがる人と心配になって話しかけに来てくれる子に大きく別れた。
「心配してくれてたんだってね、ごめんね心配ありがとう。もう大丈夫だよジェフ君」
「もうなんともないなら本当に良かった」
初等部中段頃から交流の続く子で違うものをみる目を向けられることが多いリリィによってそう見てこない信頼できる友人だった。
よく一緒にいる友人で言ったら彼が1番多いだろう。私といて彼も良くない目で見られないか心配になるほどぐらいには気にかけてくれる優しい友人だ。
久しぶりの授業が終わり教官の所に行こうと思い立つがあいつらにまた1人でいる所を狙われるかもしれない、と思うと帰る準備をしてるジェフ君に少し付き添いをお願いして教官の所まで行く。目的地にこれくらいならお安い御用だからまたいつでも言えと頼もしく胸はって答えた。
珍しく今日はイオ教官がおらずアトラ教官のみだった。イオ教官はいま少しゴタゴタに巻き込まれており片付いたら戻って来るらしい。教官職ってやっぱり大変なんだな...と斜め上の予測をしつつまとめてきた疑問点を質問しつつ、先の事件について話した。
「たぶん、今まで手を出してこなかったのはノワールが弱みを見せなかったからだな」
「弱み?」
「あぁ、努力家で結果も出してるし噂にも動じないし素行が悪い話も無い。それに教官陣からの目も光ってるからな」
完璧人間、確かそんなことを言われた気がしないでもない...。思い出そうとすればするほど傷は疼くような気がして少し震える。
「あと、こないだのあれだ.....生理痛に耐えてるのを見たんだろう。今は薬で軽くはなっているがあの時のノワールの顔は酷かったからな...、隙の無い奴の弱みほど良くない感情を持つ奴にとって甘美だ。
教官陣で話し合ってより目を光らせてできる限り再び怒らないように務める。
今まで通りにはいかんだろうが安心して過ごしてくれ」
「...はい、私もできる限り1人にはならないようにしてみます」
「あぁ...」
少し不安げなリリィを安心させようとアトラ教官は大きい手で頭をポンポンと叩くように撫でる。やはり手は父のようで酷く安心させられる。
「そうだ、ノワールが大丈夫だったらでいいのだが訓練で習う以外の護身術を教えるのを考えているんだがどうだ」
「訓練にあるのは素手での戦闘術や銃や近接武器ですけど、他の何かあるんですか?」
「ノワールは足腰が強いからな、前々から思っていたんだ。ノワール、お前は足技を極めるべきだ」
「足技...、やって..みたいです」
「わかった、完全に完治してから教える。少しキツいがノワールなら大丈夫だろう」
「がんばります...!」
心のうちの不安と疑問を教官に話せてほんの少しスッキリし、教官室から出て夕焼けの景色が目に入る。早く戻らないと寮監さんに心配させちゃいそうだ。忘れ物がないかを確認して大勢の子が帰路に着く中で1回見かけたことある顔と遭遇した。たしかボロボロになった時に助けに来てくれた人。
「おや、偶然だな。もう何ともなさそうで良かったよ」
「その説はありがとうございました、えっとエイル...プレ...ジテさん..、でしたよね」
「そうそう、エイル・プレジテ。
初めましてリリィ・ノワールさん、よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
妙に押しが強い先輩に捕まっちゃったな、と思いつつ寮まで送るよと言われお言葉に甘える事にした。それ以降も度々会うことが増えてお話する様になり寮まで送られることも増えていくのだがその度に出迎えた寮監さんが先輩にすごい嫌な顔を向けるのちょっと面白く久しぶりにちゃんと笑えた気がした。