1話 出発
「なんだぁオメェ?」
西流魂街80地区、叫喚。この世の最底辺に位置するこの場所では窃盗は生きていくための当たり前の行動であり、理不尽な暴力、殺人はこの土地で狂った人間にとっては娯楽でしかない行為だった。そして今まさに身の丈2mを越す大男が練度の低く切れ味も悪そうな鎌を持って、一人の少年に斬りかかろうとしていた。きっかけは大男の歩く先に少年が立っていて邪魔だった。ただそれだけ。大男と少年が立っている場所は叫喚の中では最も人が多い場所であり、道も広くはないが狭くもない。数歩横に移動すれば何の問題もない事だった。
「邪魔だ、死ね。」
大男は何の躊躇いもなく鎌を振り下ろす。先も言ったがここは叫喚の中では人の多い場所。この様子を見ている人間も多く存在していた。しかし誰も大男の凶行を止めない。全員がその凶行を止める勇気がない臆病者という訳ではない。大男がここ一帯で有名な粗暴な人間で、巻き込まれるのが怖いという訳でもない。そもそも彼らにとってその行動は凶行ですらない。ただの日常。巻き込まれた少年を僅かに憐れに思う者、少年がどんな絶望的な表情で喚くのかを楽しみに眺める者、賭けにすらならない殺戮に興味の一切を持たない者。そんな彼らにとっての日常の一ページに見知らぬ一人の少年の死が追加されるだけのはずだった。___それがただの少年だったのならば。
「ッ?!」
振り下ろされた鎌に対し、臆する様子など微塵も見せず鎌を避けた少年は反撃の一撃のみで自分の倍以上の大きさの大男を地に沈めた。
大男を沈めた少年、
死神。その存在は前から知ってはいたが自分が死神になろうなどと思ったのはつい先日の事だった。
「昨日の猪はうまかったなぁ。」
竹で作った水筒に入った水を飲み、今日も空腹を凌ぐために山を歩く。流魂街の人間が空腹のあまり餓死するかどうかは知らないが、どちらにせよこの耐えられない苦痛から逃れるために取れる手段は一つしかない。肉を食べた時、空腹が収まっていく時に身体の中で感じるものを手足に纏わせることで攻撃の威力が上がって獲物をより楽に倒せる事が分かった。…もっともその攻撃をした時はいつもより腹が空くんだけど…。空腹を凌ぐための行動なのにその行動によってより空腹が進むという矛盾に頭を抱えるが、思考を切り替えて獲物を探そう。そう考えていた時だった。
「ウォォォォ!!」
この世のものとは思えないおぞましい悲鳴が辺りを包む。
「何だ?今のは。」
聞いたことのない獣の声。いやそもそも獣の声なのか?もしかすると今までに出会ったどの獣よりも大きく、この空腹を癒してくれる存在かもしれない。そんな好奇心で声の元へと進んでいったのが間違いだった。
声の元に辿り着くと仮面を被った化け物(後に虚と知るが)と男の死神が戦っていた。その化け物のあまりの不気味さに背筋が凍った。その存在に対する恐怖が足を止め、息を乱し、思考を中断させた。
「うあああああ!!」
虚は僕と目が合った瞬間、それまで戦っていた死神には興味を失ったというように一直線に僕に襲いかかってきた。
「おい!逃げろガキ!」
死神は僕に叫ぶが恐怖で足が動かない。口を大きく開けた虚が更に近づいてくる。嫌だ怖いキモい…死にたくない。
「ッ!クソッ!」
虚の攻撃に最後の足掻きで目を閉じていたが未だ痛みはない。そっと目を開けると死神が僕を庇ってくれていた。大量の血を流して。
「ど、どうして…。」
「死神はなぁ…。護るものなんだ…。理不尽に奪われる人間、流魂街の民達を虚から護るために…。」
溢れる血と共に死神は言葉を続ける。
「俺たちは護るためにこの刀を振るい続ける。俺もガキの時に虚から死神に助けてもらったんだ。それから…」
そう続けようとしたが死神はそこで気を失った。死神の血溜まりが広がっていく。
「ウォォォォ!!」
しかし虚はまだ滅んでいない。自分のせいで死神も既に戦闘不能に追い込まれている。やるしかない。自分をこの人を護るためには。
「お借りします。」
武器など持っていなかったので死神の刀を拝借する。その刀に触れた瞬間、自分の身体の中から力が溢れてきた。
「な、何だこれは?」
何がどうなってるか分からない。しかし考えるのは後だ。目の前の虚を倒す。
「はああああ!」
腕が死神の腹から抜けずに動けないでいた虚を死神から借りた刀、斬魄刀によって両断した。
こんにちは〜ハンバンパンです。初めてss書いてみました。機能とかも全部わかってないので何かあったらここの先輩方、教えてください!