「き、綺麗…。」
今日のお店の営業が終わって、店を締めた後。おばあちゃん達が待ってる家に帰る途中で私は忘れ物をした事に気づいた。そしてお店の裏側で何色もの光の球に囲まれている彼、冬空くんを見つけた。
「桃さんですか?」
今日は空鶴さんとの修行の日ではない。初めて行ってからもう数週間経つ。空鶴さんのおかげで鬼道の修行方法も分かり、こうして直接指導を受けてない時も鍛錬に取り組む事ができている。今は他種類の系統の鬼道を光に収束して浮遊させている。光の色が異なるのはそのためだ。いくらこの店の裏の空き地が人の目が少なく広いと言っても路地を一本挟めば店も民家もある。そんな場所で実際に鬼道を発動して威力の修行を行う事はできない。今は制御の特訓である。そんな中、もう家に帰ったはずの桃さんの気配を感じた。鬼道の出力を収め、彼女に話しかける。
「どうかしましたか?」
「今のすごく綺麗な光の球、どうやったんですか!!」
「うわっ!」
いつもの彼女らしからぬ様子で詰め寄られたので一瞬驚いた声を出してしまった。
「お、落ち着いて下さい桃さん。それと少し離れて。」
「あ...す、すみません!」
冷静になり自分の行動を客観的に見れたのか彼女は頬をぽっと紅くして俯く。
「ま、まあ別に謝らなくても大丈夫ですが...そうですね、今やってたのは死神が使う鬼道の練習ですね。」
「えっ?冬空くんは死神になりたいんですか?」
「はい。次の霊術院の試験を受けようと思ってます。店長から聞いてませんでしたか?」
「いえ、初耳です...。あ、それじゃあ...来年からお店出て行っちゃうんですか?」
「まあ、試験に合格したら、の話ですけどね。」
「...!そうなんですか...。」
「そういえばどうしたんですか?何か忘れ物でもしたんですか?」
「あ!そうでした。お店にちょっと...」
「じゃあ裏口の扉開けますね!ちょっと待ってて下さい。」
僕は近くの岩に置いておいた鍵を持って店の裏口へと向かった。
「そっか... 冬空くん出て行っちゃうのか...」
私は忘れ物を取ってから家に向かって歩いていた。
「初めてできた友達だったのにな...」
シロちゃん以外にできた初めての同世代の友達。数週間彼の隣で働いていたけど、すごく楽しかった。私が何かミスをしてしまった時も冷静に対応してくれてすごく頼もしかった。しかしそれも残すとこわずか半年。
「おや、桃。おかえり。」
「あ、おばあちゃん。ただいま。シロちゃんは?」
私は家を見渡すがいない、もう一人の家族の事をおばあちゃんに尋ねる。
「ああ、冬獅郎なら大根を買いに行ったよ。」
「そ、そうなんだ。」
私の帰りが遅かったからかな。シロちゃんには悪い事したかな?
「どうしたんだい桃?」
「えっ?」
「何だか今日は少し暗いからねぇ。何かあったのかと思ってね。」
そんなに顔に出ていただろうか...
「じ、実は...」
私は冬空くんの事をおばあちゃんに話す。
「そうか。そう言えば言い忘れておったな。ごめんのぅ。」
「いや、おばあちゃんが悪い訳じゃないしいいよ!」
「それで、桃はどうしたい?」
「...。」
初めてできた友達。彼と離れないためには私も死神になるしかない。でもそしたらおばあちゃんとシロちゃんは...
「私たちの事は気にせんでいい。冬獅郎と仲良くやっていくよ。それに死神になっても流魂街に帰ってこれない訳じゃなかろう?」
確かに。ここ瀞霊廷に近い潤林安では死神さんの姿を多く見る。
「私たちのせいで決心できないのなら大丈夫じゃ。桃、後悔せんようにな!」
そう言っておばあちゃんは私の背中をポンと叩いてくれる。
「ありがとう!おばあちゃん!」
おば「それで?吹兎の事、どう思ってるんじゃ?」ニヤニヤ
桃 「?彼はすごくいい人だよ!私の初めての友達だし!」ピカピカな笑顔
おば「そ、そうか...。」
一連の会話を壁の向こうで聞いていた冬獅郎「..................。」
次回もよろしくお願いします!