「桃、準備はできたか?」
「ごめんね吹兎くん。じゃあ行こうか。」
霊術院入学から3ヶ月が経ち、今日から夏休みに入る。霊術院生は年に2回の夏冬の長期休暇を除いて瀞霊廷から出ることはできない。今日から僕たちは店長の元へ里帰りする。ルキアと恋次は緋真さんの元へ向かうらしい。僕も数日したら向かう、と伝えておいた。
「そういえば僕って桃達の家に泊まるのって初めてだよね。」
「そうだね。吹兎くん、お店の休憩室に泊まってたからね。私は誘ったのに...」
「ご、ごめんって...あの時は桃も死神になるとか思ってなかったし修行が迷惑になると思ったから。」
「ま、そういう事にしとくね。」
そういう事も何も本心そのままなんですが...
「着いたよ!」
僕たちは桃の家の前に到着する。
「ただいま!おばあちゃん!」
「ん?おぅ、しょんべん桃じゃねぇか。とうとう霊術院退学にでもなった...か...」
僕と同じ銀髪の少年は僕と目が合った瞬間言葉が尻づもりする。初対面の人間の前で身内の事悪く言ったらそりゃこうなるのも仕方ないな。
「ああ、初めまして。僕は冬空吹兎です。店長、桃達のおばあちゃんのお店で働いてたんだけど聞いてない?」
「そうか...テメェがか。歓迎するぜ。」
そう言って彼は家の中に僕を入れてくれる。
「そういえばシロちゃん、おばあちゃんは?」
「ああ、ばあちゃんならお前達が帰ってくる!って言って夕飯の買い物に行ってきてる。最近体調悪いみたいだから俺は止めたんだがな...」
「ん?桃達の方が早かったか。桃、吹兎、おかえり。」
「あ!ただいま!おばあちゃん!」
「店長!お邪魔してます。」
店長は両手に荷物を持っていたのでそれを受け取る。
「そう固くならんでいいよ吹兎。あんたもここを自分の家と思ってもらっていいからのぅ。」
「...!ありがとうございます。」
思わず涙腺が緩みそうになったが堪える。
「二人も長旅...っていうほど距離もないがお腹空いたろ。夕飯にしようかの。桃、手伝ってくれるか?」
「勿論だよおばあちゃん!」
「僕も手伝います!店長!」
4人で食卓を囲んで夕飯を食べ、お皿洗いをした後僕は縁側で木刀の素振りをしていた。
「なあ、ちょっといいか?」
銀髪の少年、日番谷冬獅郎君は初めて僕に話しかけてきた。
「冬獅郎君だったよね。どうしたの?」
僕は素振りを中断して縁側の、彼の隣へと腰を落とす。
「あのアホは霊術院でどんな感じだ?」
あのアホ...桃の事か
「桃ならやっぱり鬼道かな。あ、鬼道ってのは死神が使う技術の一つなんだけどね。彼女は複数起動が特に上手だからね。成績も学年トップクラスだよ。」
「そうか...。学校であいつ、いじめられてたりとかしてねぇか?」
「してないと思うよ。学校じゃ僕たち、結構5人で行動してるんだけどそんな感じはないな。男子生徒からは結構注目集めてるみたいだけど桃はその視線に気づいてないね。」
「まあ、あの鈍感桃じゃ仕方ねぇな。」
彼は僕の言葉に思い至る点があったのか笑みを浮かべる。
「前置きはここまでにして一番聞きてぇ事を聞く。テメェは雛森の事、どう思ってる。」
どう、って。桃は霊術院に入る前からお店でお世話になったし修行もルキア達と頑張ったし友達、親友だよな。
「言っとくが友達、なんて答えは聞かねぇぜ。あいつは前からお前の事...」
「ちょっとシロちゃん!」
「邪魔が入ったな。とりあえず雛森泣かしたら承知しねぇからな。」
そう言って彼はぶっきらぼうに去っていく。
「ごめんね吹兎くん。シロちゃんから何か変な事言われなかった?」
「いや、何も。冬獅郎君も姉の桃の様子が気になってたって感じだったからな。」
「じゃあ直接私に聞けばいいのに...」
「恥ずかしかったんじゃないかな。」
「素振りはもういいの?」
「ああ、冬獅郎君に話しかけられた時、もう止めようかな?って思ってたし。今日はもう終わり。」
「そうなんだね。」
二人並んで縁側に座っているが会話が途切れ、辺りを静寂が包み込む。太陽は既に西の彼方へ沈み込んでいて、月の光が暗闇を照らしている。今日は雲もなく月も一片足りとも欠けていない満月だ。いつもより月が大きく見える。
「...綺麗だね、お月様。」
「そう...だな。」