桜と雪に埋もれて溺れる   作:マイケルみつお

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17話 巨大虚

 「魂葬実習?」

「そう!来週に現世でやるんだって!」

夏休みも終わり、明日から2学期が始まる。僕たちは既にみんな霊術院の寮に集まっており、日常と同じ生活を送っている。食堂で夕飯を食べていると桃が興奮した様子で教えてくれた。掲示板に書かれていたらしい。

 

「現世か。美味しい食べ物の事とか今の間に調べておこうかな。」

「吹兎くん...、駐在任務じゃないんだからそんな事できないよ...。」

まじか...。

 

 

 「今日、現世の魂葬実習を監督する6回生の檜佐木だ!」

ガタイの良い男性、茶色の髪をサイドにまとめている女性、そして頬に69と書かれた中央に立っている男性。この三人が今回僕たちの引率者らしい。檜佐木先輩が自己紹介すると教室はざわめき始めた。

「なんだ?有名人か?」

「知らないのかい?阿散井君!彼は檜佐木修平。数年ぶりに卒業前に護廷十三隊への入隊が決定していて将来は席官入りも確実と言われている有望株だよ。」

「ほお。」

自分で聞いておきながら興味がなさげに返す恋次。お前...そういうとこだぞ。

 

「それでは三人一組に分かれます。予め引いておいたくじの番号を見て各自で集まって下さい。」

引率の女性、蟹沢先輩にそう言われ、僕たちは自分のくじをそれぞれ見る。ええと...僕は3番みたいだな。

「みんな何番だった?」

「私は1番だったよ。」

「僕も1番だったよ。」

「なんだ、じゃあいつもの3人か。」

1番は桃と恋次とイヅルのようだ。

 

「私は3番だったぞ!」

「お、僕と同じか。じゃあ他の一人を見つけに行くかルキア。」

「うむ。」

 

「6回生は戦闘しやすい環境は整えるが、戦闘そのものには手出ししない。くれぐれも気をつけるように。それじゃあ、開錠!」

新たに仲間に加わった山下さんと共に僕たちは現世へと向かう。

 

 

 「一通り終わったな。」

「ああ。」

僕たちは何の問題なく(プラス)を魂葬する事に成功した。魂葬にはある程度の霊圧は必要だがより求められるのはその霊圧コントロール。元々鬼道が得意なルキアとは相性が良かったようだ。...恋次とか苦戦しそうだな。虚も今のところ出現していない。少しだけ修行の成果を見せれると思っていたのだが...。まあ戦闘がなく犠牲者は少ないに越した事はないからな。僕たちは上級生からの指示を待つ。

 

 

 「おかしい...。」

あまりにも指示が遅い。そんな事を考えていると。

「「「「うわあああああ!」」」

三時の方角で悲鳴が聞こえる。

「な、何だ?今のは?」

ピロロロロ!

無線にようやく通信が入る。

[緊急事態、現世に巨大虚(ヒュージホロウ)が出現しました。実習生は速やかに穿界門へと避難して下さい。繰り返します...]

 

「巨大虚だって?!」

山下さんが恐怖で顔を引き攣らせる。現在僕たちが講義で倒せるレベルはせいぜいが雑魚虚程度だ。そんなものよりも遥かに強い巨大虚の出現に顔を強張らせるのも無理はない。しかし僕が思った事はそれに加えて...

「あの方向......間違いない、桃達の実習の方向だ。」

霊圧感知してみたが間違いない。しかもあいつら逃げずに戦っている。

「すまんが僕はいってくる。ルキアと山下さんは穿界門に向かっててくれ。先生からの説教は後で受ける。」

これは穿界門に避難しろという命令に明らかに反する内容。しかし全力で瞬歩を使えばまだ間に合う。それなら選択肢は一つしかない。

「吹兎が行くのであれば私も行くぞ!」

ルキアが自分の斬魄刀の柄を握りながらそう言ってくれる。すごくありがたい、けれど...

「すまんが全力で瞬歩を使う。ルキアは山下さんと穿界門に向かってくれ。必ず帰ってくる。」

そう言って瞬歩を起動する。ごめん、ルキア。今は気を遣った言葉を選んでいられる時間的余裕がない。

 

 

 「どうして...なんでみんな逃げてるの...?」

巨大虚から逃げているみんなを見て純粋にそう思う。何のために私たちは修行してきたの?ここは現世。虚が暴れれば霊的自衛力を持たない人間が大勢死んでしまう。その前に6回生の先輩達が死んでしまう。

「何やってるんだ!雛森君!」

「おい!逃げろ雛森!」

吉良くんや阿散井くんの声が聞こえる。けれど頭に入ってこない。足が動かない。私、あまりのショックに頭が真っ白になっているんだ。こんな時、吹兎くんならどうするんだろう...。

 

「舐めんじゃねぇ!」

檜佐木先輩が今にも殺されてしまう...。吹兎くんならどうするか、そんな事は決まっている。私は斬魄刀を抜き、虚の爪から檜佐木先輩を守る。

「申し訳ありません!命令違反です。」

「助けに来たんだから見逃してくれよな、先輩。」

吉良くんと阿散井くんも来てくれた。3人なら、勝てる!

 

「「「君臨者よ!血肉の仮面・万象・羽ばたき・ヒトの名を冠す者よ!焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ!」」」

右足に痛みが走る。虚の攻撃の巻き添えでも受けたのだろうか。しかし今はそんな事気するな!霊圧を高めるのよ!いけー!!

 

「「「破道の三十一 赤火砲!」」」

 

私たちが今出せる全力の鬼道。三人で力を合わせたんだ!流石の巨大虚でも無傷じゃない!今のうちに檜佐木先輩を安全なところに!

 

 

 「しかし何で巨大虚がこんな近くに?」

「分からん。だが尸魂界に援軍要請はした。とにかく走れ!」

私たちは逆立ちしても倒せないという事実を味合わされ、走って逃げている。だが現実は残酷だ。

 

「「「「「「ウォォォォ!」」」」」

先程の攻防で足を負傷した影響か、一人だけ逃げ遅れて私は巨大虚の集団に囲まれる。虚は私を亡き者にしようと巨大な鎌を振り下ろそうとする。ダメ、防げない。ダメ、阿散井くん、吉良くん、逃げて。ごめんねシロちゃん、ごめんねおばあちゃん、ごめんね...吹兎くん...

 

 

破道の六十三 雷吼炮!

刹那、爆音と閃光が辺りを支配する。ゆっくりと目を開けるが痛みは襲ってこない。

「遅くなってごめん。」

やっとこの胸の高鳴りの正体に気づいた。私は...吹兎くんの事が好きなんだ。

 

 

 間に合って良かった。あと一瞬遅くなっていたら僕は僕を一生許さなかっただろう。いや、感傷に耽るのは後だ。雷吼炮で数は減ったと言ってもまだ巨大虚は数体残っている。僕は腕に抱いていた桃を恋次とイヅルに預ける。

「冬空君、ありがとう。」

「吹兎、ルキアはどうした?」

「ルキアなら先に穿界門に帰ったよ。......うん、無事についたみたい。恋次、後で無茶したって怒られるぞ。...意味は分かるよな。」

「ああ!当然だ!」

しかし現状は瀕死の檜佐木先輩に足を負傷した桃、恐慌状態のイヅルと、戦うにしても逃げるにしても難しい。

「恋次、みんなを任せてもいいか。」

「俺じゃ力不足だ、って言いてぇのか?俺だって!」

「アホ。お前だから、いやお前にしか頼めないんだ。僕は全力で攻め込む。もしかしたら桃達のフォローはできないかもしれない。後ろを気にしながら戦うには相手が悪すぎる。」

恋次は気づいてないだろう。霊格察知でこの巨大虚よりも強力な虚が迫ってきている。まずはそいつらが到着する前にこいつらを倒さなければならない。霊圧も温存する必要がある。斬拳走鬼で最も僕が霊圧の消費を抑えられるのは斬と走だ。攻撃には力とスピードという概念がある。しかし斬魄刀に霊圧を乗せて斬るのは霊圧を消費する。それならば...。巨大虚は3体、1列に並んでいる。

 

「行くぞ!」

瞬歩の速度そのままに巨大虚3体を一気に切り捨てた。

 

「す、すげぇ。」

だが本命は次だ。

 

「「「ウォォォォ!!!!」」」

 

空を開き出現する虚、いやギリアン、大虚だ。大虚が数体出現した。一隊士がどうこうできるレベルではない。王族特務の管轄だ。

 

『今しかないよね!』

ああ、やるしかない!

 

 

 

〜数日前〜

 「も、もうちょっとここにいようよ〜」

最初と性格が全然違うが...。

「その...あなたには謝らなければなりません。」

黒髪の女性は僕にそう告げる。

「斬魄刀の同調には霊圧もそうですが、お互いがお互いを信頼し、自分の()()()()()()()事によって成功します。あなたはすぐに私の霊圧と波長を合わせる事ができ、最初から私に全てを曝け出して接してくれていました。」

黒髪の女性は顔を赤くして、更に僕から目を逸らして続ける。

「問題なのは私の方でした。私がつまらない演技(見栄)を張ろうとしなければすぐに達成できたのです。」

彼女は申し訳なさそうにする。

「では僕はあなたがありのままでいてもいい、と思ってもらえるようになれたって事ですか?」

「はい、そうです。あなたは既に私の名前を聞くことができるでしょう。ただ名前を呼んでもらうにあたってお願いがあります。」

「お願い?」

「修行が終わってもここに遊びに来て下さい。」

 

 

 

 

断て 惜鳥(オシドリ)

 

僕の全身から枷が外れたかのように霊圧が吹き出した。




惜鳥ちゃんは2日目くらいからもうメッキがとれてしまいました...。

次回もよろしくお願いします!
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