仮面が割られ、虚が消滅していく。生前の罪が斬魄刀によって洗い流されていくのだ。
「よ、よくやったぞ少年。」
気絶していた死神が意識を取り戻し、僕に話しかける。呼び名がガキから変わっているのは…
「命の恩人の事をガキだなんて呼べるかよ。」
死神は相手の考えてる事が分かる能力でも身につけているのだろうか。
「俺の名は車谷善之助。お前の名前は?」
「吹兎、冬空吹兎です。」
「そうか。いい名前だ。」
それから死神、車谷さんは色々と話してくれた。彼は護廷十三隊の十三番隊に所属している、とか。まだ新人の自分によく目をかけてくれる副隊長がいる、とか。そんな当たり障りのない事をひととおり話し終えた後で車谷さんは咳払いを一つする。それが本題を話し始めるまでの区切りだという事も車谷さんの様子からすぐに察した。
「吹兎、お前は死神になるべきだ。」
「吹兎、死神になるべきだ。」
俺は迷わず銀髪の顔の整った少年に、吹兎にそう言った。虚に一撃貰ってから、意識が混濁していたが吹兎が俺の浅打で虚を倒したところは見ていた。流魂街の民が虚を倒すなんて考えられない。霊術院では学年で常にトップで自分のことを選ばれたエリート死神だと思っていたが、十三隊に入ってからすぐにその考えを改めさせられた。上には上がいる。志波副隊長や浮竹隊長の実力など自分如きでは理解する事すら難しいだろう。一人称もそれまでの俺様が恥ずかしくなり変えた。吹兎が俺の斬魄刀を手にした時、彼の中のリミッターが外れたのか爆発的に霊圧が跳ね上がった。自分など比べ物にならないほどに。上位席官の霊圧にも届くだろう。隊長や副隊長のような人間は吹兎のような人間なのだろう。そもそもの物が違う。それに吹兎が虚を倒す時、彼の護る意志というものを感じた。流魂街の少年に護られる対象と見られている事は恥ずべき事なのだろうが…。彼は霊力と護廷の心を持っている。彼は死神になるべきだ。
車谷さんから死神になる事を勧められて僕は考えていた。救護の人に迎えられた時、車谷さんは瀞霊廷の近くまで連れていこう、とか上司に話を通しておこうなどと言われたがそこまで僕一人のために手間を取らせる訳にもいかないと思い、断った。瀞霊廷の近くまで行くのも修行ですと言ったら納得してくれた。今の底辺からの生活から抜け出すため、何かを護る力を手に入れるため、死神にならないという選択肢はなかった。死神になるためにはまずここから瀞霊廷の近くまで移動する必要があった。集める荷物などほとんどないが、長年用いた竹の水筒と数日凌げる程度の食料を手に僕は山からおりた。そこで大男に絡まれる事となる。
西流魂街80地区、叫喚。一応の僕の故郷だ。ずっと山で過ごしていたり、地獄のようなこの街から早く離れたいと常々思っていたが、いざ離れるとなると意外にも切ないものである。最後の機会だ。この街の思い出にでも浸るとしようか。
子どもが嬲り殺されてても何の反応も示さない周囲の大人。盗みは相手にバレないようにするのではなく堂々と強盗。綺麗な水など無に等しく泥水をすする毎日。
「…。」
切なさなど一瞬にして吹き飛んだ。
という事で吹兎に死神になるきっかけを与えた男死神さんの名前が判明しました。車谷さんです。イモ山さんです。アフさんです。ていうか、重霊地である空座町を任せられていたりするので本当にエリート死神だと個人的に思ってます。始解もできますし。唯一戦闘した相手が崩玉藍染なのかわいそう…
彼はまだ新人隊員なので当然始解もできません。入隊して霊術院とレベルが全く違う様子を見てプライド折られてる状態です。いわば綺麗なアフさん、イケイモ。