特殊な虚の討伐が終わってから数週間。僕の仕事も普段の書類仕事へ戻ってきた。少なくない隊員が先の戦いで命を落とした。ある程度の応急処置を行う事ができる隊員を入れて隊の編成をするか、救援要請をもっと迅速に行う事ができるシステムの構築などやる事はたくさんある。席次、階級に関わらず意見を集めて犠牲者が少なくなるように努めなければ。
「よ!精が出るな吹兎!」
「う、浮竹隊長!お身体の調子は大丈夫なんですか?」
「ああ!今日は絶好調だ!」
ここ数日また調子が悪かった浮竹隊長が現れた。
「そうか。犠牲者を少なくするために。」
「はい。
僕は確かにみんなよりも勤続年数も短いしみんなを頼るというのが正しい事なのかもしれない。けれど部下、いや一緒に過ごした仲間が死んだ時にそう思った。
「どんな事があっても…か。」
浮竹隊長は僕の言葉に何か思うところがあったのか、神妙に何かを考え込む。
「吹兎。俺たちはこうやって命をかける仕事をしている。その中でこれから仲間が戦死する事もあるだろう。今抱いているそういう気持ちを忘れないで欲しい。」
そこまで話すと浮竹隊長はまた一段と真剣な表情へと変わる。
「だがこの事も覚えておいて欲しい。戦いには2種類ある。生命を守るための戦い、それから誇りを守るための戦いだ。俺たちはそれを常に見極めなければならない。例え生命を繋いだとして、誇りを失えば人は生きる事ができない。そういうものだからだ。」
「けど…僕は…」
確かに誇りを失えば生き辛くなるかもしれない。けれどやはり大切な人…思いつくのはルキア、桃など同期のメンバーだが、彼女達には生きていて欲しいと思ってしまう。何があっても。生きてさえいればまた新しい誇りが見つかるかもしれない。そう簡単に見つけられるものでもないとは思うが不可能ではない。
「これはあくまで俺の考えだ。俺はこの考えを押し付ける訳でも他の考えを否定する訳でもない。ただ知って欲しかっただけだ。だからそんな気まずそうな顔をするな。それに結論が違ったとしても過程がまるっきり異なる訳でもないだろう?」
俺は思っていた事が顔に出ていたのか、浮竹隊長にフォローされる。やはりこの人には敵わないな。
「それよりもだ。こうしてお前と二人きりで話す事はなかったな。お前の話でも聞かせてくれないか?」
「勿論です。」
それから僕と浮竹隊長は互いの身の上話などをして大いに盛り上がった。
「結婚?」
「ああ。姉様がな。吹兎に伝えようと思っていたらしいからおそらく明日にでも文が届くとは思うが、こうして会ったので直接伝えたという訳だ。」
休暇の日に、ふと懐かしく感じたのだろう。自然と足は瀞霊廷の中の霊術院の方にへと向かっていた。するとたまたま玄関の方に出てきたルキアと出くわし、緋真さんが結婚する事を知った。
「お相手は朽木白哉、という方なのだが吹兎は知っておるか?」
ああ、あの不審者か。
「ルキアは会った事ないのか?」
「ああ。」
これは緋真さんの家族に挨拶するのが恥ずかしくて避けてた感じなのかな。…正直よくプロポーズまでできたな。
「勿論式には参列するよ。緋真さんに文を送っておく。日付が分かれば仕事を前日とかにやれるからな。」
「なあ吹兎。やはり死神の仕事は大変か?」
最初は仕事覚えるのが大変だったな。けど慣れてくれば大丈夫だった。ルキアなら大丈夫だと思うよ。…多分恋次でも大丈夫だと思うし…
「そうか。ならば安心であるな。」
恋次の話をすると、ルキアは不安が全くなくなったのか晴れやかな表情を浮かべる。
「なあ、吹兎がいる十三番隊はどんな感じなのか?」
僕は他の隊は知らないけど…。
「すごくいい隊だと思ってる。隊長も副隊長もすごく尊敬できる人だし、みんな仕事サボらないでやってくれる。正直席官になって変なやっかみとか受けると思ったけど、そんな事なかったし。」
「そうか。よき隊なのだな。……ム?今吹兎席官と言ったか?」
あ、そういえばルキア達には言ってなかったな。
「ああ。なんか入隊した時に模擬戦やって、それで三席になった。」
「そ、そうか…。凄いな…」
おい、ドン引きするな。僕が傷つく。
「ルキアさん遅い…。あ!吹兎くん!」
「おお桃か。久しぶり。」
ルキアの帰りが遅かったのか様子をみにやって来た桃とも再会した。
「聞いてくれぬか雛森。こやつ、吹兎が三席にまで出世したというのだ!我らが追い抜こうと頑張っておるのにハードルをあげおって。」
「まあまあルキアさん…。えっ?!三席?」
桃もやはり驚いたのか先ほどのルキアと似た表情を浮かべる。
「ねえ、吹兎くん。三席って結構上の地位だよね?女の子って上の立場の男性に好意を覚える事が多いし…最近女の子にチョコレート貰ったりした?」
「ああ、この前のな。確か現世のバレンタインデーっていうイベントらしいな。結構貰ったぞ。義理チョコってやつだ。そういやなぜかハートの形が多かったなぁ。」
「…そうなんだ。」
ゾクリと背筋に悪寒が走った。僕…何か選択を間違えただろうか…。
それから数日経って結婚式の当日。僕はこの日の仕事は既に終わらせているので何の心当たりもなく出発する。
「吹兎。あ、そうか。今日は身内の祝言だったな。」
浮竹隊長が僕に話しかける。
「祝言が落ち着いてからでいい。少し話があるから時間を作ってはくれないか?」
正直自分は浮竹の考えは分かるけど、海燕の戦いのときは、別に嫁が復讐を頼んだわけでも、虚と刺し違える事も望んでないだろうからな…。仇を討つのも一人で!ってのは我儘に見えてしまうから海燕の時はあの理論、違うと思っちゃった。
…ファン的に海燕に死んでほしくないって考えの補正が入っている事は否定しない。
あと恋次ってああみえて実は書類仕事能力高いんだよね?確か(うろおぼえ)
次回もよろしくお願いします!