桜と雪に埋もれて溺れる   作:マイケルみつお

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29話 あそびあそばせ

 「あ!隊長いいところに!あのヒゲ…いえ副隊長がまた執務を抜け出して…。本気を出した副隊長は我々では止められないのでよろしくお願いします!」

 

「あの野郎…」

 

 

毎日のように仕事をサボって抜け出す光景を繰り返したからか、僕が隊長就任当初に抱いていた一心さんいや一心に対する遠慮は消え去っていた。最早恩人の叔父という考えなど全くない。

 

──────

 「今日は霊圧を消してるか。」

 

幾度もの追跡で純粋な速力では逃げられないと考えたのか今日は潜伏してやり過ごそうとする腹づもりなのだろう。だがそう簡単に逃げられては色んな意味で困る。

 

縛道の五十八・摑趾追雀

 

一心の霊圧を探る網を張り巡らせる鬼道。勿論この軌道を発動させたからといって問答無用で見つけられる訳ではない。術とはいわば手段。素人がいくら真剣を使おうと達人の木の枝には勝てないように術を使う人間の素質も問われる。今回で言うと一心の霊圧を抑える技術とそれを感知する僕の感覚。鬼道で範囲を広げたり感知した霊圧を拡張したとしてもそれを感知できなければ意味がない。

 

 

縛道の七十七・天挺空羅

 

天挺空羅で自分の声を鬼道に変換して届ける。

 

「見つけた。覚悟しとけよ。」

 

 

まだ十番隊舎からは出てないな。毎日のように摑趾追雀と天挺空羅を使っているのでその二つの練度は中々のものになった。...これは喜ぶべき事なのだろうか...。

 

──────

 「げ、見つかった…。」

 

僕に見つかったのを理解した一心はそれまでの潜伏ではなく速力による逃亡を開始、追いかけっこが始まった。最初の方は僕に対して遠慮をなくすための一心なりの配慮かと思ったが違った。普通にサボりたいだけだったようだ。そして…流石にウザくなってきたので今日は痛い目を見てもらおう。

 

 

縛道の六十一・六杖光牢

 

「え?」

 

 

いつもは低級から中級の縛道を、しかし全力で放って拘束していた。動くことはできないだろうがそれでも痛くはなかっただろう。だが今回はいきなり六十番台を放つ。

 

縛道の六十三・鎖条鎖縛縛道の七十九・九曜縛縛道の九十九・禁。」

 

「えっ、ちょっ…タンマ…」

 

流石の一心も顔を青ざめているが知ったことではない。これを機に真面目に仕事して下さい。

 

──────

 「なあ中村。隊長、なんか楽しそうだな。」

 

目の前で笑みを浮かべながら一心を蟻の入る余地もないぐらいにギチギチに拘束していく吹兎を見て、ある隊員は同僚に対してそう呟く。

 

 

「本人は認めないだろうけど毎日のあの追跡も少し楽しそうだもんな。」

 

「隊長も就任してきた時は少し堅かったけど今じゃよく笑うようになったよな。」

 

「ああ、俺たちのような平隊員にまで気を配ってくれるしな。」

 

 

戦闘狂(変態)倫理観ゼロ(変態)が多い護廷十三隊の隊長格に比べて恵まれている自分たちの隊に彼らは感謝する。ただし…

 

「た、隊長…」

 

高難度の鬼道をいとも簡単に連発する吹兎に対して隊員は畏怖を感じ始めてもいた。

 

──────

 「今日は本当の意味で休暇だな。」

 

今までは自分の仕事がなくとも副隊長を追いかけまわすといったお仕事があったのだが最近は真面目に仕事に取り組んでいるのでそれもない。

 

「やる事がない…。」

 

十三番隊に所属していた時にも思っていたが自分はややワーカーホリックの性質があるのかもしれない…。部下にワークライフバランスを説いてるがまずは自分から実践しないと説得力がないなと思い努力して休もう、真剣に気分転換をしてみる事にした。

 

──────

「お、吹兎やないか。」

 

そうして考えに耽りながら道を歩いていると声をかけられた。

 

 

「あ、平子隊長こんにちは。」

 

「真子でええで吹兎。」

 

 

隊首会の時でも思ったがすごく親しみやすい方である。

 

 

「ところでお前何考えてたんや?」

 

「あ、実はですね…」

 

 

別に隠す事はない。僕は平子さんに自らの苦悩を吐露した。

 

「…。お前アホちゃうか?そんなん自分がやりたい事やればええやないか。お前も喜助とは別の方向でアホやな。」

 

僕の悩みは平子さんからしたら大した悩みではなかったようで鼻をほじりながら答えてくれる。…そういえば平子隊長っていつも遊んでる気がするな。京楽隊長と同じ系統か?そうか!僕も平子隊長達から学んだらいいんだ!

 

 

「平子隊長!僕に遊びを教えて下さい!」

 

「は?」

 

 

明らかにドン引きされた。しかし僕は諦めない。

 

「あ、ああ別にええで。丁度これからローズやラブ達と一緒にピクニックに行く予定やったんや。お前も連れて行ったるで。遊びを骨の髄まで教えたるわ。」

 

平子隊長!一生ついていきます!

 

 

「ただし、授業料はきちんと払ってもらうで。」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

僕がそう答えると平子隊長はニィと笑みを浮かべた。

 

──────

 「それで?あんたがウチ達の分まで払うてくれるって聞いたが?」

 

「なんで話が漏れとるんや…。」

 

 

最初は俺とラブ、ローズに拳西だけやったのにリサに白にひよ里まで来よってからに...。これじゃあ流石に吹兎にも申し訳ないやろうがい!

 

 

「ええわ!ならウチが遊びの何たるかを骨の髄まで教えこんだるわ!」

 

「ありがとうございます師匠!」

 

 

しかもなんか意気投合しとるし。あいつ、ほんまにただのアホとちゃうか?しかしそれにしても

 

 

「まさかお前も参加するとは思わんかったぞ。藍染。」

 

「平子隊長だけ遊びに行くなんてズルいじゃないですか。」

 

 

──────

 ん?なんで平子隊長さっきから五番隊の平隊員の人に対して藍染って呼んでるんだ?藍染副隊長ならその反対側にいるじゃん。そう思って藍染副隊長の方を見たら、

 

「フッ。」

 

何やらすごい笑みを浮かべられたんですが...。まあ他の隊長さん達も何もツッコまない辺りこれがこの二人の平常運転なんだろうか。いやー、色んな隊長副隊長の在り方があるんだな。

 

「それで、これからどこに行くんですか?」

 

よくよく考えてみればまだ聞いてなかった事を平子さんに尋ねる。

 

 

「現世だ。少し前までは現世もココ(尸魂界)みたいな街だったんだけどな。」

 

「最近、外国の文化とやらが入ってきて尸魂界とは違う様子になってな。この前行ったら面白かったんだよ。文明開化って言ってたな。」

 

「そう!お金も色々貯めたし、現世でたくさん買い物するんだよ!」

 

 

じゃあ霊術員で学んだ現世から少し変わってるって事かな?

 

 

「ねえねえラビたんは向こうで何するの?」

 

 

え?ラビたん?

 

 

「あー。まあ向こう行ってから考えようかな?って。時間もありますし。」

 

「それもそうやな。じゃあさっさと穿界門開くけ、ちょっと離れとき。」

 

 

そう言って平子隊長が穿界門も開く。僕たちが現世を訪れたのは現世の暦で言うと1945年の3月10日だった。

 

「なんやこれは...」

 

それは後世、東京大空襲と呼ばれるものでとても買い物など楽しめる状況ではなく、僕たちは肩を落として開きっぱなしの穿界門を通り、来た道を引き返した。




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