桜と雪に埋もれて溺れる   作:マイケルみつお

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31話 約束

 「で、ルキア。桃達には気づかれてないよね?」

 

「無論だ。抜かりはない。」

 

 

僕が隊長に就任してから5年が経った。慣れなかった業務も今では日課のようにできるようになっていた。そして桃や恋次達は最終学年。そう、ルキアと一緒にドッキリ卒業祝いパーティを計画中なのである。

 

 

「そういえば桃は十番隊志望なのだな?」

 

「まあまだ予備調査の段階だけどね。」

 

 

桃は十番隊、恋次は十一番隊、イヅルは四番隊に希望を出していると聞いている。

 

 

「では私も十番隊に異動するぞ!」

 

「また変な事言って...。隊長や海燕さん達に恩義あるんでしょ?ただ知り合いがいるってだけで職場変えるなんてダメだよ。」

 

 

特にルキアは海燕さんに始解の修行をつけてもらっているらしい。僕?僕もまだ未完成だからね。他人に修行をつけるにもまずは自分ができないといけないからね。

 

 

「そういえば吹兎のところのあのお婆様にも協力してもらうのだったな。」

 

「ああ。店長も冬獅郎君も祝いたいだろうしな。勿論内緒だ、って事は話してる。っていっても桃が二人から何かを聞くこととかないと思うんだけどな。」

 

「そうか。ならば問題ないな。...ところで吹兎。」

 

「ん?どうした?」

 

「来月...だな。新作のあんみつが出るそうだ。今度行かぬか?」

 

「来月か。桃達は卒業とか入隊とかの忙しいだろうけどまあ一日くらいなら大丈夫かな。」

 

「いや...二人で...だが...」

 

「え?」

 

「と、とにかく!行くのか、行かぬのか!答えろ!」

 

「え?いや別にいいけど。でもなん...」

 

「言質はとったからな!取り消せぬからな!約束だからな!私は!これから海燕殿と修行の時間だからな!済まぬ!」

 

「え?いや、ちょっと!」

 

 

僕の言葉も最後まで聞かず、ルキアは瞬歩でその場を立ち去ってしまった。

 

──────

 「おかえり、吹兎。ちゃんと準備はできとるよ。」

 

「ありがとう店長。そういえば冬獅郎君は?」

 

「俺ならここだぜ。」

 

 

そう言って奥から冬獅郎君が出てくる。

 

「少し、テメェに話があるんだ。」

 

 

 

 「え?店長が病気?!」

 

「ああ。やっぱり雛森から聞かされてはいなかったか。」

 

「...初耳だ。」

 

「テメェの事はアイツから聞いている。色々心配かけたくなかったっていうアイツの事も分かれ。」

 

 

でも...僕にとっても店長はすごく大切な人で...

 

 

「だから、俺が伝えた。ばあちゃんも雛森も言わねぇと思ってな。」

 

「冬獅郎君。」

 

「ただいまー!って吹兎くん!?」

 

「あ、桃!霊術院は?」

 

 

霊術院は夏冬の長期休暇を除き瀞霊廷から出ることはできない。つまりここに桃がいる訳がない。まあだからといって霊圧探っても、というか話したらすぐ分かるけど偽物じゃない。

 

 

「その顔...シロちゃんから聞いたんだね...。」

 

「ああ。」

 

「黙っててごめんね。でも...」

 

「桃が言いたい事は分かってる。僕のためを思ってたんだよね?なら...別に謝らなくていいからさ。」

 

「吹兎くん...。」

 

 

桃がいるところでは当然催しの事など話せず当初の目的は失ったがこうしてまた四人で食卓を囲み、懐かしい思いになった。夕飯を食べると桃は瀞霊廷へと帰っていった。どうにも身内の病気、を理由にして午後の実践の範囲を午前中に済ませる事で時間を作っていたらしい。

 

 

「まだ起きてるか?」

 

「冬獅郎君。」

 

「さっきは雛森が来ちまったせいで途中まで伝えられなかった。」

 

 

縁側で横になっていると冬獅郎君が話しかけてくる。

 

 

「ばあちゃんは毎日毎日痩せ細っていくんだ。...正直俺はどうすればいいのか分かんねぇ。ただ、無理はさせてやりたくねぇんだ。あいつも...ばあちゃんを無理させてまで祝ってもらいたいとは思ってねぇはずだ。けど、俺から言ったってはぐらかされちまう。だから...」

 

「分かった。僕から言っておくよ。」

 

「すまねぇ。」

 

「いいさ。」

 

「じゃあ俺は先に寝るぜ。」

 

「ああ、おやすみ。」

 

 

そう言って冬獅郎は布団に戻っていった。

 

 

 

 「店長が...」

 

一体何が原因か。病気か?病気なら卯ノ花さんに頼めば治るだろうか...。僕の能力は出血や損傷など傷を負った時の救命はできるが病気の治癒は無理だ。...こんな事なら医学だけではなく回道もきちんと学んでおくべきだった。そう、後悔していた時だった。

 

「ッ!」

 

なんだこれは?霊圧?敵襲か?しかしなんでこんなところに...?そして寒い...

 

「冬獅郎君!」

 

その霊圧の発生源に向かう。そこには...氷の竜を想起させるような巨大な霊圧を纏った冬獅郎君がいた。

 

「ッ!店長!」

 

勿論同じ部屋には店長も寝ていて、凍えていた。もしかして店長の病気って...いや!まずはこの霊圧の奔流を止めなければ!

 

──────

 「そっか...シロちゃんが...。私がもっと早く吹兎くんに伝えていればおばあちゃんは苦しまずに済んだのかな...」

 

「桃は霊術院で冬獅郎君が眠る頃には帰っていたんだ。自分を責めるな。それに僕だって今日は桃の事があってたまたま泊まっただけだ。言われても気づかなかったかもしれない。」

 

「私の事?」

 

「あ。」

 

 

しまった。完全にサプライズって話だった。

 

 

「それより冬獅郎君の事だ。死神でもなければ霊術院にも入ってないのにあの霊圧。そしてその制御ができていない。」

 

いやまあ制御ができてたらもう席官クラスなんだけどね。

 

「さっき、冬獅郎君には死神になる事を勧めてきた。」

 

──────

 「ッ!これは一体?」

 

毎晩みるあの変な夢。それが一瞬でかき消されたと思えば目の前には冬空が立っていた。そしてアイツが周囲を見るよう促し、それに従えば部屋は冷気に包まれていて、ばあちゃんは震えていた。

 

「ばあちゃん!」

 

ここ最近のばあちゃんの病気は俺のせいだったのか?!

 

「冬獅郎君は死神になるべきだ。」

 

そいつは俺に対してそう告げる。

 

 

「冬獅郎君の霊圧は強大だ。それを制御する術を身に付けなければいつか取り返しのつかない事になる。」

 

「ばあ…ちゃん…」

 

 

死神になるべきって事は分かった。けどそれじゃあばあちゃんを1人にしちまう。

 

 

「この霊圧は…って隊長!?」

 

あいつは…。確か昼に会った…

 

 

「ん?乱菊か。どうしたんだこんなとこで。」

 

「いえ、昼ごろにこの少年を見かけて霊力を感じて。そしたらその霊圧が暴発したような感じがしたので。まさか隊長までいるとは…。いえ!隊長が霊圧を完全に消してるのが悪いんですよ!」

 

 

そう言われてふと気づく。乱菊と呼ばれた死神も、雛森からも何か抑えてるようだったが俺がさっきまで出してた霊圧?を感じられた。しかし冬空からは何も感じねぇ。…こいつは霊圧を完全に制御できてるのか?

 

 

「冬獅郎。」

 

「ばあちゃん!」

 

「冬獅郎は優しい子じゃからのぅ。ばあちゃんの事は気にしないで自分のしたい事をすればええ。」

 

「これからは冬獅郎君が卒業するまで僕が責任とって店長を見守る。桃も来年からは霊術院の生徒じゃない。初年は色々忙しいけど今よりは帰ってこられる。」

 

──────

 「じゃあ、シロちゃんも死神になるんだ。」

 

「嫌だったか?」

 

「ううん。確かに死神になるって事はシロちゃんは虚と戦わなきゃいけないって事だけど…シロちゃんの事を考えたら反対できないよ。それに!何かあれば姉の私が守るから!」

 

「姉、なんだな。」

 

 

うまく話を逸らせた事に安堵する。

 

 

「ところで吹兎くん。」

 

「ん?どうした?」

 

「私の事ってなあに?」

 

 

全く誤魔化せてなかった…

 

 

「まったく…吹兎くんって隠し事苦手だよね。分かった、聞かないでいるね。ただ!その代わり一つお願いがあります!」

 

「お願い?」

 

「来月、フルーツパフェの新作が出るらしいんだ!だからその…今度2人で行かない?」

 

 

ルキアと同じ事だな。

 

「いいよ、それくらいなら。」

 

「絶対だよ!約束したからね!」




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