桜と雪に埋もれて溺れる   作:マイケルみつお

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32話 魂魄消失事件

 「あ、浦原さん。おはようございます。」

 

「おはよっス、冬空サン。」

 

 

ようやく予算編成の書類が整った。一度書いた文面だったので一回目より出来上がりは早かったが、徹夜してようやく間に合った。僕は書類に墨汁をこぼしてくれた一心を連れて瀞霊廷を歩いて一番隊隊舎へと向かっていた。

 

 

「おっす、おはようさん。喜助、吹兎。」

 

「あ、おはようっス平子さん。」

 

「おはようございます平子隊長。」

 

 

浦原さんと歩いていると藍染副隊長を連れた平子隊長とも合流した。

 

「真子でええ言うとるやろ。めんどいやっちゃな、お前ら。」

 

浦原さんにも呼び捨てを推奨してたんだ。

 

 

「おはようさん、マユリ。」

 

「よそよそしく涅と呼べと言ってるだろ。不愉快な男だネ。」

 

「...難儀なやっちゃな。」

 

 

うわぁ、なんかあのやり取り前にした覚えあるぞ...。

 

 

「そういや聞いたかお前ら、あの話。」

 

「どの話っスか?」

 

「流魂街での変死事件についてや。」

 

「変死事件?」

 

 

僕の問いかけに平子隊長は首を縦に振る。

 

 

「せや。ここ一ヶ月ほど、流魂街の住人が消える事件が続発しとる。原因は不明や。」

 

「消える?どこかにいなくなっちゃうって事っスか?」

 

「アホ。それやったら蒸発って言うやろ。大体蒸発やったら原因なんて知るかい。そいつの勝手やろ。」

 

 

いや、蒸発も続発したら問題だと思いますが...。

 

「ちゃうんや、消えるんや。服だけ残して跡形もなく。」

 

平子隊長はいつになく真面目な顔つきをする。

 

 

「死んで霊子化するんやったら着とった服も消える。死んだやのうて、生きたまま人の形を保てんようになって消滅したんや。そうとしか考えられん。」

 

「それって死んだ、って事とは違うんですよね...?」

 

「すまんな、俺も卯ノ花隊長に言われたことをそのまま言っとるだけや。意味分からん。ともかく、その原因を調べるために今、九番隊が調査に出とる。」

 

 

 

 「浦原さん、さっきの話どう思いますか?」

 

平子隊長と藍染副隊長が去ってから僕はさっきの話が気になり、浦原さんに尋ねていた。

 

「今のところじゃ何とも言えないっスね。まあ六車サン達が調査に行ってるなら何か掴めるでしょうし、今は続報を待ちましょう。今、アタシ達にできる事は何かあった時のために備えておく事だけっス。」

 

 

 

 「どう思う?一心。」

 

「浦原隊長でも分からねぇ技術的な事を俺が分かるとでも?」

 

 

一番隊の書類も提出が終わって一心と十番隊への帰路の途中である。

 

「そうじゃなくて、浦原さんが言ってた備えってやつ。」

 

一心の言う通り、浦原さんができない技術的問題を僕たちが解決できるとは思えない。

 

 

「何か起こった時のためにすぐ動けるように準備しておく、とかっスかね。有事の時のマニュアルを作成するとか。隊として動く準備を整えておくって事じゃないですかね?」

 

「今でも整ってると思うけどなぁ。」

 

「ま、ウチはその辺は大丈夫だと思うっスけどね。」

 

 

 

隊首会の緊急招集が届いたのはその翌日すぐの事だった。

 

──────

 「火急である。前線の九番隊待機陣営によれば、野営中の同隊長六車拳西、同副隊長久南白の霊圧が消失。原因は不明。これは想定し得る限り、最悪の事態である。昨日まで流魂街で起きた単なる事件の一つは護廷十三隊の誇りにかけて、解決すべきものとなった。」

 

例の魂魄消失事件。初の死神、それに加えて隊長格の被害が観測された。六車さん...白さん...。

 

「よってこれより隊長格を五名選抜し、直ちに現地へと向かってもらう。」

 

総隊長がそう宣言すると同時に浦原さんが入室する。いつもであれば全員揃わなければ始まらない隊首会だが、緊急時なため欠員がいる状態でも始められた。

 

 

「遅いぞ、浦原喜助。」

 

「僕に、行かせて下さい。」

 

「ならん。」

 

「僕の副官が現地に向かってるっス。僕が!」

「喜助!」

 

 

浦原さんのその言葉に異議を唱えたのは夜一さんだった。

 

「情けないぞ、取り乱すな。自分が選んで行かせた副官じゃろう。お主が取り乱すのは其奴への侮辱だという事が分からんのか!」

 

その言葉で目が覚めたのか、言い返す事ができなかったのか、京楽さんが列に並ぶように促してから総隊長の指示が再開した。現場へ赴く隊長は鳳橋隊長、平子隊長、愛川隊長。隠密機動の夜一さんは事が動くまで待機。僕を含めたそれ以外の隊長は瀞霊廷守護と、次々に役割が割り振られていった。

 

「これにて解散。」

 

その言葉で僕たちは一番隊舎を離れるが、浦原隊長の顔が忘れられなかった。




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