桜と雪に埋もれて溺れる   作:マイケルみつお

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37話 逃亡

 「...失敗っス」

 

「......」

 

藍染から受けた肩の傷は浅く、動く分には全く問題などなかった。浦原さん達が向かった場所も知っている。何もできないかもしれない。それでも僕にも何か手伝える事があるかもしれないと思い、瞬歩を使って瀞霊廷に向かって駆ける。

 

しかし僕にできる事など何もなくただ見ている事しかできなかった。そして浦原さんは失敗を告げる。それと同時に平子隊長達がこの物言えぬ姿のまま変わらないという事も。

 

『平子真子達がああなったのは君のせいだ』

 

藍染に言われたその言葉が頭の中で木霊する。確かに覚えている。あの時、明らかに藍染と平子隊長の様子が噛み合ってなかった事について。長らく忘れていたのに藍染に一言言われただけで思い出してしまう。もし、あの時何か言っていたら...平子隊長達はこんな事にならなかったのかもしれない。その罪悪感とやるせなさが襲ってくる。

 

「すいません、鉄斎サン、冬空サン...少し表の空気吸ってきます」

 

「僕も行きます」

 

ずっと密室で詰めていた。外を見ればもう太陽が出ている。

 

「...お疲れ様でした、浦原さん」

 

「...冬空サンも。...ッ!」

 

刹那、夥しいほどの刑軍に包囲される。

 

「十番隊隊長、冬空吹兎様、並びに十二番隊隊長、浦原喜助様。及び鬼道衆総帥大鬼道長、握菱鉄斎様。中央四十六室より強制捕縛令状が届いております。ご同行願います」

 

 

 

 

 その日、瀞霊廷を衝撃が走った。護廷十三隊の隊長格二人と大鬼道長が非人道的な実験を行った事、そして少なくない護廷十三隊隊長格がその犠牲となった事。吹兎が元いた十三番隊、そして現在の十番隊は隊長、副隊長を始めとして抗議を行ったがしかし中央四十六室が採決を覆す事はなかった。

 

 

 

 

 「これは...一体どういう事っスか?」

 

両手を後ろ手に縛られ、身体の拘束を受け尋問を受ける。

 

「発言の許可を与えたかね? 査問のために呼ばれたのだ。回答以外で発言するべきではない。弁えたまえ、十二番隊隊長」

 

顔を隠し、下卑た笑みを浮かべながら僕たちを見下すのは中央四十六室。瀞霊廷の最高意思決定機関である。

 

「昨晩十二の正刻ごろ、君はどこにいたのかね?」

 

「...西方郛街区、第六区の森林です」

 

「虚化の実験のためかね?」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! 誰がそんな事を!」

 

その問答でなぜ僕たちがここに呼ばれたのかが分かった。

 

「藍染副隊長ですか?」

 

「君に質問の権利はない」

 

仮に藍染の証言があったとして今の時点ではそれだけ。それでも彼らは僕たちに反論も質問の機会も与えない。

 

「それは全部彼のしたことだ! 僕たちは平子サン達を助けるためにそこに行ったんっス!」

 

「嘘もここまでくると滑稽だな。昨晩、五番隊副隊長は瀞霊廷から出ていない。124名の隊士と1名の隊長格がそれを目撃している。疑問を挟む余地などない」

 

嵌められた...。僕たちは藍染に嵌められたんだ。

 

「藍染副隊長が瀞霊廷から出ていないのであればどうして僕たちが瀞霊廷の外で何をやっていたのか、彼が証言できるんですか?!」

 

「発言権は与えてないとさっきから言っているだろう十番隊隊長、冬空吹兎」

 

しかしやはり彼らは聞こうとすらしない。彼らの中では既に結論は決まっていて僕たちの反論を聞く耳も持っていないのだと。...こんなものが中央四十六室か。こんなものに僕たちは従っていたのか。

 

「次は別の罪状を与えるぞ」

 

そして浦原さんの私室から昨晩平子隊長達の治療に使用した器具が虚化研究の証拠として提出された。全てのタイミングと駒が予め用意されていた詰将棋。僕たちは反論さえ聞き入れて貰えず判決に移行した。

 

「判決を言い渡す! 大鬼道長、握菱鉄斎。禁術行使の罪につき第三地下監獄衆合に投獄!」

 

「十二番隊隊長、浦原喜助。禁忌事象研究及び行使...」

 

浦原さんの罪状は大鬼道長さんと比べても遥かに多い。

 

「...の罪により霊力全剥奪の上、現世に永久追放とする!」

 

そしてその罪も遥かに重い。

 

「十番隊隊長、冬空吹兎。禁忌事象行使の罪並びに浦原喜助の共同正犯として同罪に処する!」

 

そしてそれは僕も...

 

「尚、邪悪なる実験の犠牲となった哀れなる五番隊隊長以下八名の隊長格は虚として厳正に処理される」

 

「ッ! そんなの!」

 

その時だった。議場のドアがバタリと開かれ顔を包帯で隠した女が現れる。

 

「何者だ! 審議中の議事場入室の許可など誰が与えた!?」

 

「とっ...捕らえろ!! 賊だ! 誰かおらぬか──」

 

「お主らは一人で逃げ切れるな。あの修行場だ。儂は鉄斎を連れてゆく」

 

僕たちの手を縛っていた拘束具を全て破壊した夜一さんはそう告げる。

 

──────

 「現世に身を潜め、時間をかけて解き明かします。...必ず」

 

当然僕たちに尸魂界の中に居場所など残っている訳が無い。僕たちは現世へと逃亡する事になった。

 

「恋次...イヅル...」

 

修行の約束をしていたが果たす事はできないみたいだ。

 

「海燕さん...浮竹隊長...」

 

とてもお世話になった二人には何も返せなかった事に後悔。空鶴さんと京楽さんにも色んな事を教えてもらった。

 

「店長...」

 

店長の事で冬獅郎君とも約束したのに...

 

「一心...」

 

仕事を押し付けるような形にな...いやいいか、一心だし。そして...

 

「ルキア...桃...」

 

二人と必ず行こうって約束したんだ。でも...

 

「ごめん...」

 

もう二度と尸魂界の土を踏めるかも分からない。そんな状況の中、僕は後悔と罪悪感と、そして失意を胸に尸魂界から逃亡した。




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