...海燕、斬魄刀消えても鬼道で倒せなかったのかな?
「気をつけろよ、都」
「心配ないわ。今回の役目は偵察。後のことはあなた方にお任せしますから」
吹兎の後釜...というより休隊から三席に復帰した海燕殿の奥方、都殿は最近流魂街で暴れている虚の先行偵察として小隊を率い、向かった。今回の虚はいつも違う何か不気味なものを感じて...海燕殿はいつになく真剣な様子であった。
私はそんな海燕殿を初めて見た。短くない付き合いであるにも関わらず。でもそれは当然だ。私と海燕殿はあくまで部下と上司の関係。海燕殿と都殿のような夫婦の強い関係などと比べられる訳もない。私は海燕殿に対してそのような念は抱いていないが問題はそこではない。
「...夫婦、か」
惹かれ合った者同士の絆の深さというものを目の当たりにしてふと自分の事を考えてしまう。
ー私と彼奴との間にはそれほどのものがあるのだろうかー
餡蜜を食べに行くとの約束をして、それは必ず果たされるものだと私は思っていた。しかし今、私は彼奴がどこで何をしていて。そして今、何を考えているのかが...まるで分からない。私は餡蜜などどうでもよくただ...お前と一緒に行きたかっただけなのだ。お前は...私の事をどう思っておるのだ?
確かめようもないその問いはただひたすら私の中で循環を続ける。愛する者との繋がりが明日になっても続いている保証などどこにもないのだ。
「都! 都!」
海燕殿の奥方の都殿が意識不明の重体で帰還した。
──────
都殿が率いた小隊五名の内、都殿ともう一人を除いて殉職したという。
「都殿の命に別状はありません」
四番隊から派遣された医師のその言葉が不幸中の何よりの幸いであった。依然、都殿の意識は戻っていないが海燕殿もひとまず胸を撫で下ろす。もう一人の生存者、丸山隊員も意識はないが命に別状はないらしい。しかし三名の隊員が犠牲になった事には変わりない。浮竹隊長と海燕殿はすぐに対処を考えるために場所を移して話を始めた。
ただの平隊士の私にできる事はなく十三番隊の隊舎へと戻った。私の家は朽木家に用意されているが何やら不穏な胸騒ぎがする。地獄蝶で兄様にその事を連絡してから私は刀禅を始めた。
刀禅を始めてから数時間、何やら隊舎が騒がしくなりそして...
「ギャァァァ!!」
悲鳴が、断末魔が隊を支配していた。私はすぐに
──────
「朽木ィ!」
私が声のした場所に向かうと丁度浮竹隊長と海燕殿も反対側からやってきた。そして私は目を疑いたくなるような光景に直面する。都殿と共に帰還した丸山隊員が十三番隊の隊員を次々に斬り殺していってるのだ。
「チッ! 丸山の奴操られてやがる」
その様子は普段とはまるで違い、海燕殿は即座に丸山隊員が虚に操られている事を悟った。
「オマエ、アノ女の夫ダッタナ」
その虚は言葉を話した。虚というのは元は人間の魂魄だ。だが心を失った時に言葉も失う。失った心を求め、人間を喰らい続けると再び言葉を得る。つまり間違いなくこの虚が例の虚だという事だ。都殿の小隊が半壊した相手...私の斬魄刀を握る手は震えていた。
「安心しろ朽木。...お前は下がってろ。おい、お前が都達を襲った虚だな」
「ミヤコ...アア、アノ女カ。コイツ含メテ俺ノ腹ヲ満タシテクレタヨ」
そう言ってから虚は丸山隊員の中から姿を現す。丸山隊員は...ダメだ、霊圧を感じられない...。
「今ノ死神ノ力ハ落ちタナ。逃げ切ル事すらできないトハナ」
「何言ってやがる。都は生きてるぞ」
海燕殿が都殿を誇らしげにそう言うと、虚はニヤリと笑ったような気がした。
「...何がおかしい」
「カッカッカ! ただ滑稽デナァ。オマエラは息ハスルガ
「...何ィ」
「肉体ハ喰イ損ネタガ魂魄は既に喰ッタ。モウ目ハ覚メナ──」
「水天逆巻け 捩花」
虚が話し終えるより先に海燕殿は始解して斬りかかった。
──────
「グッ!」
激昂している海燕殿の勢いは凄まじく、虚をただひたすらに圧倒している。虚の身体のあちこちは捩花の水流によって斬り裂かれていた。私はその様子をどこか...恐ろしく感じていた。
「終わりだ」
海燕殿は虚の首を掴み、捩花を振り下ろそうとした。
「儂ニ触レタナ」
斬魄刀が振り下ろされる事はなかった。
「ッ!」
海燕殿の捩花が消えていたからだ。そして...
「グァ!」
その生まれた一瞬の隙をつかれ、触腕によって海燕殿は強く地面に叩きつけられた。
──────
海燕殿が斬魄刀を失ってから形成は逆転した。鬼道を発動するも先ほどの傷が大きく、また能力を差し置いてもあの虚はかなりの実力があるようで海燕殿は次第に追い込まれていく。私が助けに行かねば!
「ダメだ朽木!」
「浮竹隊長! しかし!」
私は浮竹隊長に腕を掴まれる。
「今、お前が助けに入れば海燕の命は確かに助かるかもしれんだろう。しかし...その時海燕の誇りはどうなる?」
「誇りが何ですか! 命に比べれば誇りなど!」
「ここでお前が助けに入れば...奴の誇りを永遠に殺す事になる。いいか朽木。戦いには二つがある。俺たちはそれをよく見極めねばならない。命を守るための戦いか、それとも誇りを守るための戦いか」
「......」
浮竹隊長の言も理解した。海燕殿が命とは別の何かを守るために今、戦っている事はよく分かる。これは普通の戦いとは違う。...それでも! 私は!
「舞え 袖白雪」
ー吹兎。お前も私と同じ事をするのではないかー
私の勘違いかもしれないが、ふとそんな事を思った。私は浮竹隊長の静止も聞かずに始解し、虚に対して斬りかかった。
「朽木ィ! なんで来た! 下がれ!」
「下がるのは海燕殿です! そのような傷でまともに戦えるとは思いません!」
私が参加する事にやはり反対なのか、海燕殿は強い口調で言ってくる。私はそれを虚から目を逸らさずに言い返した。
「誇りが何ですか! 海燕殿は一つの誇りを失った程度で立てなくなるような軟弱者ではありません! 海燕殿には守るべき人がまだまだいるはずです! また新たな誇りを胸に立ち上がれるはずです! 死を言い訳にしないで下さい!」
「朽木ィィ!!」
「...それに都殿はまだ生きておられます。都殿が目を覚ました時、海燕殿の他に誰が待っていればよいのですか」
「...すまん朽木。目が覚めた」
海燕殿は先ほどまでの闘気を一旦納め、冷静さを持たせるために呼吸を深くした。その隙をつくように虚は突進してくる。
「次の舞 白蓮」
白蓮で雪崩を作り、虚はそれを避けるために後ろに大きく飛び退いた。海燕殿は傷が深い。浮竹隊長も先ほどから発作が始まっている。できれば長距離戦の展開をしたい。
「破道の三十一・赤火砲」
虚に当てるのではなく周囲を燃やし尽くすように。威力よりも範囲を優先して赤火砲を放つ。ここは隊舎から離れた森の中。木を燃やしていけば...自ずと敵の行動範囲は絞られる。
「縛道の四・這縄」
虚の立ち位置さえ分かれば縛道を当てる事ができる。そして...
「次の舞 白蓮」
白蓮を当てる。虚の触腕に触れる事で海燕殿の斬魄刀は消えたが、私の時に無理に接近戦を挑んでこなかった事から斬魄刀を消すには一日一回までなどの制限があるようだ。尤も、だからと言って無策で接近戦を挑む事はしない。白蓮はもろに虚に命中した。
「手間かけたな朽木」
虚の霊力が落ちたからか、海燕殿の斬魄刀は戻っていた。虚はまだ生きてはいるが未だ白蓮から抜け出せていない。
「死ね」
海燕殿はまだ氷も溶けきっていない虚の脳天目指して斬魄刀を振り下ろした。
雛森さんは藍染隊長とウッキウキで推理小説みたいな捜査(笑)しています。
吹兎のせいでルキアが浮竹の考えに同調しなくなってしまいました。吹兎との修行もしていたルキアは現在で既に席官クラスの実力を持っています。
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