「藍染隊長、そちらの資料はどうでしたか?」
「ダメだね。冬空君の手がかりは何もなかったよ...」
「そうですか...」
私は今、藍染隊長と共に吹兎くんの事件の事を調べている。隊長じゃないと入れない大霊書回廊まで連れてきてくれて調査をしている。今のところ分かってるのは...
「吹兎くんが瀞霊廷転覆を目指して隊長数人を殺害しかけた...」
まずあり得ない。吹兎くんがそんな事をする訳がない。中央四十六室が彼を嵌めたか......誰かが嘘の情報を吹き込んだんだ。私達が見つけた資料では中央四十六室の裁定の結果の一部だけでその過程までは分からない。誰が手がかりをどこで入手したかは分からない。少なくとも言えるのは...私は吹兎くんを嵌めた人を......
「絶対に許せない...!」
「雛森君。そういえば君は冬空君と長い付き合いだったね。彼は失踪の時、何か言い残したりはしなかったのかい?」
「...吹兎くん。約束してたのに私に何も話さないでどこかに言って......。音沙汰も寄越さない。フフフッ、次会った時に色々聞くからね」
冬空君。死神として最高峰に立つ可能性があり、私の壁となり得る存在。これはあの時、私を傷つけたせめてものお返しだよ、フフフ。
「雛森君。そろそろ時間のようだ」
「あ、以前言ってた現世のお仕事ですね?」
「そうだね。だから──」
「私は引き続き資料を見てみます!」
最初は私に依存させやすい存在と思っていたが...。まあだとしても彼を利用することで手軽な駒として機能しているな。さて、そろそろ実験の頃合いかな。
──────
ばあちゃんを雛森が見ていてくれたおかげで俺は霊術院に入学する事ができ、そして死神となった。
「隊長──っ! どこですか隊長──!!」
またやってる......。志波隊長は大の仕事嫌いで毎日逃げ回っている。前からいた隊士に尋ねればこれは前隊長が就任した時の日課らしい。隊長と副隊長の追いかけっこの声がここまで聞こえる。
「分家とは言え志波家の当主がそんな事じゃ宗家の方にも傷がつきますよ!」
「またまたァ〜。家柄の事なんて言い出しちゃって〜、オメ〜が俺に仕事をさせたいのは自分の仕事の配分減らして遊びたいだけだろ? 気がついてんだぞ? お前がこっそり自分の仕事の分を俺の仕事に組み込んでるの〜」
そして前隊長と志波副隊長の時と違って
「今日は長かったっすね。書類、終わりましたよ」
下らねぇやり取りで結局仕事が終わらず周りに迷惑をかけるのなら......と思って結局俺が片づけてしまう。アイツと同じ気質があるのか少し微妙だが。どちらにしても俺の実力じゃ隊長を分からせる事はできねぇ......少なくとも今は。
俺は十番隊の三席を務めている。隊長もアイツから話を聞いていたらしく入隊してすぐの大出世に文句を言う奴を沈めてくれた。仕事を過分に押し付けられる事以外はいい職場......だと思う。十番隊は俺を除いて席官全員が前隊長の時代の人間だ。故に隊の職務の他に
十番隊だけではなく雛森や古巣の十三番隊も動いていると聞く。隊長が自分はあくまで隊長代理だと名乗ってるのを見るに......十番隊ではまだアイツの存在感は大きすぎる。だとしても俺の中じゃ十番隊隊長は隊長でアイツの時代は知らない。たまに話についていけない時があったり、そんな意図はないだろうが仲間外れにされてるようで......少し嫌だ。
しかし頭を切り替えて俺は隊長に報告をする。書類を整理する中で気になった事があったから。
「隊長、二ヶ月前の報告、覚えてます? 鳴木市という中規模の都市で担当死神の一人が事故死した件」
「あ──、あったな。原因調査中のやつだ」
「それです。その先月分の報告書がさっき上がってきたんですが......原因不明のまま先月は二名死亡しています」
俺のその報告を聞いた瞬間、今までの隊長の朗らかな表情が一変した。
「ちょっと! どこに行くんですか隊長!」
帯刀して部屋を退出しようとする隊長に対して松本が尋ねる。
「調査! 後は任せたぞ。明後日くらいには戻るから明日の仕事はよろしくな」
「何言ってるんですか! 総隊長に報告とか......。追うわよ冬獅郎!」
瞬歩で消えた隊長に付いていくため松本も帯刀して準備をしていたが......
「いや、やめとこう」
俺たちが行っても......
「隊長はこの調査が危険だと踏んで一人で行ったんだ。今の俺達の実力じゃ足手まといにしかなれねぇ......」
部下の事を考え、そして護ってくれる。上官として欠点も確かにあるがそれでも理想的だ。だがその優しさが......俺は嫌いだ。
──────
「雲が出てきたぜ......」
「嫌だなぁ...オイ......。前の奴もその前の奴も確か雨の日にやられたんだろ?」
総隊長の許可なく穿界門を開いて現世に渡り......隊長や乱菊達と散々繰り広げてきた華麗なる追跡訓練で養ってきた感知をする。......よかったまだ無事だな。
「そうか、雨の日が危ないんだな」
「「うわぁ! 隊長!?」」
しかも値千金の情報まで手に入った。
「お前ら。雨が降ったら尸魂界に帰れ」
現世に赴かせた隊員はいずれも上位席官ではないがそれでも腕利きを選抜した。やられる事はあるかもしれないが何の救援要請も連絡もなしにやられるなんて事は考えられねぇ。それが起きたって事は......
「即死か何らかの連絡を阻害する術を相手が持つって事だ」
前者なら尚更、後者でもそんな危険地帯に部下を行かせられるか。十番隊の隊員は俺、若しくは隊舎に連絡を即座にとれるようにしている。それがなく、彼らの訃報が技術開発局からの報告書で初めて分かったという事は...俺の推測が考える毎に現実味を帯びてくる。
「降ってきたか」
敵が現れた時の対処について考えを張り巡らせながらついに日が暮れた。昼間に空を支配していた雨雲からついに雫が一つ、また一つと降り注ぎ、傘を差して歩く人間が増え始めた。
死神が狙われてるって事は死神自体が標的か、高い霊圧に反応してるかのどっちかだ。
「試しに霊圧で釣ってみるか」
思いたったが吉。俺は霊圧を高め、標的が現れるかを見る。が...
「ぐあッ!」
「ぎゃっ!」
近くにいた隊員の断末魔が響く。俺じゃなくてアイツらを狙ったって事は...
「くそっ! 霊圧のデカさにゃ反応しなかったか!」
自分の判断ミスによって傷つけてしまった部下達に詫びを入れながらも全力で襲撃者を索敵する。......見つけた。俺は急いで襲撃者の元へと瞬歩で向かう。これ以上犠牲者を出す訳にはいかねぇ。
「何だ...こいつは......」
感知した先にいたのは......全身黒色の異質な虚。孔も何もかもが塞がっているという異常は存在するがその特徴的な仮面や霊圧からこいつが虚であるという事はおそらく間違いがない。
こちらに気づいたのか...口を大きく開け突進してくる敵に対して抜刀し、俺は構えた。
「やり辛れェ!」
姿形は紛れもなく虚のそれだ。しかし重心移動や戦い方は死神のそれだ。虚と死神では戦い方も対処の仕方もまるで違う。視覚で入ってきた情報によってつい反射的に虚との戦いをしてしまうがそれを一々理性で修正しなければならねェ。
そして先ほど目の前のこいつは虚閃を使いやがった。
「冗談じゃねぇぞ! こいつは虚じゃなくて大虚だ」
そして見慣れた
「隊員達が瞬殺される訳だ」
だが俺が押してる。上級大虚ではあるが対処できる。が、解放なしだとちとキツいな。無断で出動してるため解放をすれば確実にバレるが......仕方ねぇ。
「燃えろ 剡月」
刀が炎を帯び、圧倒的な攻撃力で大虚を倒すべく構える。刹那、
「な...」
全く反応できずに背中を斬りつけられてしまう。今のはこいつの仕業じゃねぇ...。今のは......死神の攻撃だ。傷は深いがしかし呼吸を整えて追撃に備える。そして注意を怠らず頭も動かす。
そもそも尸魂界に気づかれずにここまで大虚が好き勝手できる事自体がおかしい。...いるんだ、死神の裏切り者が。
死神の裏切り者と言えば思い当たるのは一つしかない。隊長を嵌めた奴だ。隊長を嵌めた奴が近くにいる。
俺は隊長代理になってから隊長の事件を調べ続けた。隊長や、五大貴族という身分は大いに事件を調査するにあたって都合がいい身分だった。大霊書回廊にも議事録にも改竄された形跡はなかった。不自然な部分も見受けられなかった。俺が気づけてない場合を除けば......
証拠はない。根拠すら未だに持ててない状態でとてもじゃないが訴えを出す事もできない。誰にも話してない仮説だが...
──藍染惣右介が近くにいる──
だが相手は霊圧や姿を隠している。それにこの背中の傷では......卍解を使うことは難しい。同じ隊長格に対してあまりに分が悪すぎる。それに今は目の前のこいつを何とかしなきゃなんねぇ。剡月は身体の傷で大きく左右される。この深手でアドバンテージは消滅したと考える方がいいだろう。
「しまッ」
片腕を斬り落とした事で何らかの反応を見せると思い、一旦後退したが大虚はそれを気にも留めぬ如く詰め寄ってくる。一瞬の判断の誤り。背中の傷によって少しでも休息をしたいといった感情から生まれた致命的なミス。こちらも深手は負うだろうが......しかし大虚にもそれ相応のダメージを与えてやると刀を振りかぶる。
「何だ?!」
が、大虚がこちらに肉薄する前に何者からの攻撃を受け...その方向に振り返ると弓を持った少女が立っていた。
──────
「無断出撃は罪なれど即断即行により隊士の犠牲は最小限に抑えられ、ひいては現世の被害も軽微なものに留める事となった。此度の隊規違反は不問とする!」
「ハッ!」
滅却師のあの少女のお陰で大虚を撃退する事ができた。その後は襲撃者の調査がしたかったが俺の始解で尸魂界にバレたのか、即座に一番隊から出頭命令が届いた。少女──真咲に別れを告げ、俺は隊首会で裁きを受けた。
「.........」
「どうしたんだい? 志波隊長」
藍染の奴、顔色一つ変えねぇ。
総隊長から無断で現世に渡った事のお咎めはなかったが......しかし俺はまたも無断で現世に渡った。あの少女に改めて礼を言いたいってのもあったが昨日の霊子の残滓を調べれば何か分かるかもしれねぇと思ったから。許可を取れば...おそらく藍染が何かしらの対策を取るかもしれねぇ。だから無断じゃないと駄目だった。
俺は穿界門を勝手に開いて現世に渡った。
──────
「未練に足を引っ張られて恩人を見殺しにした俺を明日の俺は笑うだろうぜ」
現世に渡るために穿界門を開いた際、たまたま真咲が近くにいて早く再会する事ができた。しかし真咲は俺を助けた時に受けた傷が原因で死にかけており......そこに隊長と一緒に尸魂界を追われた元十二番隊隊長の浦原喜助が現れた。
その後、色々な説明を受けたが技術的な事は何も分からなかった。ただ、分かった事は...このままでは真咲は確実に死亡するという事。唯一俺が死神の力を失う事で真咲を助ける事ができるという事。
あの時真咲に助けられてなかったら俺は死んでたかもしれねぇ。その恩人を自分の未練で失ったら......俺はもう罪悪感で生きてなんかいけねぇ。生きる事ができたとしても俺が俺でなくなってしまう。
俺のその返答を聞いてメガネをかけた石田は驚いていたが浦原は何か分かっていたかのような反応を示していた。
「分かってたような反応だな」
「ま、志波サンはそう答えるだろうってある方から聞かされていましたっスから」
「...冬空隊長は元気か」
「それは自分の目で確認して下さい」
浦原がそう言うと...
「三十年ぶりだな......一心」
人間の義骸に入っているからか、全く霊圧を感じない隊長の姿があった。
一心って在任期間こそ短くてまだ死神としては成長期なんだろうけど他と隔絶した霊圧を持つ五大貴族の一員だし崩玉藍染(ハンペン)相手に斬り合ってはいたから隊長の中でも上位の実力だと思うんだよね。一心の卍解発表してくれ師匠〜
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