先日、BLEACH原画展に行ってきました。会場でずっと流れていましたが「Rapport」やっぱいいっスね〜
現在の重霊地、そして一護達が住む空座町は十三番隊管轄の街。だからルキアが現世駐在の任務で出張してきたんだけど......。空座町の前の重霊地は隣の鳴木市だった。そこは十番隊の管轄地で僕も隊長の時に何度か様子見に行った事もあった。現世に逃亡した時も最初は鳴木市に身を潜めていた。
重霊地が空座町に移り変わった時に浦原さんも平子さん達も移動したが僕は留まった。その時には既に霊力を失っており重霊地に移動しても何の利点もなかったから。一心が個人病院を開業し一護が生まれた。いつしか浦原さんが一心の家の近くのマンションを用意してくれて、僕も空座町に引っ越した。
最初はどでかい家を用意してくれるみたいだったが流石に固辞した。狭くもなければ特別広い訳でもない、普通のアパートの一室。
「こ、ここが吹兎の家か。......お、お邪魔します」
初めての来客が訪れた。
「何固くなってるの? 向こうでも何回か来た事あったでしょ?」
「それは流魂街の桃のお婆様のお店の休憩室の話であろう! あれをお前の家とは呼ばぬ!」
言われてみれば確かに......。護廷十三隊に入隊してから、そして隊長に就任していた時の(ちゃんとした)家にはルキア達は外出不可の霊術院生だったりタイミングが合わなかったりで来た事なかったっけ。
「まあ瀞霊廷のお前の家も行っていないと言えば嘘になるが......」
「ん? 何か言った?」
「な、何も言ってないぞ!」
またこれだ。再会した後のルキア、昔と違って度々下を向いて口籠る回数が増えた気がする。
「取り敢えず夕飯にしようか。今日はカレーの予定だったし二人分作れるくらいの材料は揃ってるから」
「ん? 吹兎、お前料理などするのか?」
ルキアと初めて会った頃、というより霊術院に入るまでに修行した時は確かにしてなかったな。霊術院でも食堂だったし。
「入隊してからたまにね。
入隊してからは仕事がない時間の潰し方が分からないで軽い気持ちで始めたらいつの間にかハマったな。潤林庵で店長と会うまでは料理、というより食べれるものを片っ端から食べていたようで......思い返してみると叫喚の時の生活から驚くほど文明レベル上がったな。今戻っても絶対に適応できない。よく昔の僕はあんなところで生活できていたよな。
「私もやはり料理をやった方がいいのだろうか......」
その発言からルキアはあまり料理をしない事が推察される。
そっか、ルキアは今朽木家で暮らしていて料理人が作ってくれるのか。
「わ、私だって料理の一つや二つくらいできるぞ!」
「いや何のアピールだよ......」
「ふぅ......ご馳走様。良かったよ口にあったみたいで。昔とあまり味覚が変わってなかったようで何より」
僕はあまり辛いものが得意ではない。カレーも甘口である。当然来客を想定していないのでカレー粉や唐辛子などない。ルキアは昔から僕と同じように辛いものが苦手で......五十年経ったとはいえ味覚が変わっていなくて良かったと思う。
「お前もな。これ、やはり具は少ないな。お前、未だにそばもトッピングは別皿で頼むだろ?」
「あ、覚えてた?」
「無論だ。周りの男がみんなトッピングを大量に頼む中で一人だけかけそばだからな。見かねた食堂の婆さまが大盛りにしてくれてたではないか」
「そうだったね。懐かしい」
「それでいつも恋次がズルいとつっかかっていたりもしていたな。......本当に懐かしい」
カレーも食べ終わり、二人並んで皿洗いをしながら昔の事について語り合う。凄く前の話のはずなのにルキアと話しているとついこの前の出来事のように感じる。凄く......不思議な気持ちだ。
──────
「じゃあ風呂でも溜めるかな?」
食器洗いも終わり、一呼吸ついたところで吹兎がそう切り出す。......完全に忘れてた。
「そ、そうか。お前の風呂か」
吹兎の家に泊まると先に言ったのは私だ。落ち着け......落ち着け.........。海燕殿や清音殿の影響か、吹兎が絡むと頭が働かなくなってしまってどうにも困る......。深呼吸をして覚悟を固める。あ......
「吹兎。私はこの制服の他に替えの服を持っていないのだが......どうすればよいだろうか?」
今の私は制服姿。ついこの前現世にやってきたばかりで着替えなど持っておらぬ。そして魂魄の姿にもなれないため死覇装にもなれぬ。
「あ、本当だ。ごめん、そういえばそうか。これ、僕の服置いとくから使って? その間に制服洗濯しとくから」
差し出されたのは男物の下着と灰色のスウェット。......これは吹兎のものだろうか?
「明日、学校終わったら服を買いに行こう」
そ、それはでぇとというものではないのか? さ、誘いはとてもありがたいのだが突然ではないだろうか......? いやでも彼奴の事だ。この申し出を受けないと次いつ誘ってくれるやも分からぬ。第一、今のあいつを見てみろ。私のように熟考して提案した訳ではないであろう!
で、でぇとか......。この前見たまんがというものでは確か現世のでぇとは大きな遊園地のようなところに行って楽しむと書かれていたな。あと少し先ではあるが夏祭りというものもあるらしい。出店が立ち並んでおり最後は打ち上げ花火を見る事ができるという。
「そ、そそそうだな。私は綿あめがいいな」
「ちょっと待って、何の話?」
い、いかん......。つい考えすぎてしまった......。冷静になって頭をより働かせるのが逆効果になってしまった......。吹兎の前であまり変な姿は見せたくない。そ、それよりもだ。今は先の事ではなく目の前の事について考えねばならぬ! ふ、風呂か......。男と共に湯に浸かるなど当然した事がないが......しかし彼奴から誘ってくれているのだ! 覚悟を決めるのだ! 異性とはいえあいつなら......いつか身体を見せ合う時期が少しばかり早くなっただけだ......!
「じゃあ洗濯物を乾かす必要もあるしルキアが先に入ってよ」
「ほぇ?」
吹兎の言葉の意味が分からず頭の中で何回も咀嚼する。......そ、そうか.........一緒に入る訳ではなかったのだな......。私は先ほどから何を考えておったのだ! 今すぐに顔の火照りを白蓮で冷ましたい欲求に襲われる。
「う、うム......」
私は逃げ出すようにして浴室に向かった。
「ここが......。吹兎はいつもここで身体を......彼奴の匂いだ」
風呂場にいけば興奮も冷めると考えたがむしろその逆で......私はいつもよりかなり長めの風呂に入ってから浴室を出た。
──────
私の後に吹兎が入り、その後はテレビをぼおっと見ていた。テレビがつまらなかったという訳ではなく彼奴に借りた服が......まるで彼奴に抱きしめられているような匂いがしてさっきからまともに思考が働かぬ......。
「布団は一つしかなくてね......。僕は地面で寝るから」
先ほどまでテレビを見ていたその場所に吹兎は布団を敷く。
「私に気を遣うな! なんなら一緒に寝れば良いではないか!」
いかん......口が勝手に......。とんでもない事を言ってしまった気がするが......しかしまだ頭がぼおっとしている......。
「そっか、ありがと。他の人なら異性って事でちょっと無理だったけどルキアなら大丈夫だ」
そう言って彼奴も同じ布団に潜り込む。一つの布団に男と女が寝るはやはり狭いみたいで吹兎の右足右手は完全に布団から出てしまう。
「やっぱりちょっと狭いね。明日、布団も一緒に買おうか」
そう言ったが最後、吹兎は私の隣で寝息を立てて眠りに入ってしまった。
ここまで来ればいくら頭が働かない今の私でも分かる。吹兎は......私を異性として見ていない。
他人がすぐ側にいる中、何の警戒もなくすぐに眠りに入るという事は私を完全に信頼して、安心しているという事。その事は本心から嬉しいと思うのだが......やはり心にチクリとくるものがある。
「私だけがこうも鼓動を鳴らし続けているのは......割に合わぬ」
これは彼奴からの信頼を裏切る行為かもしれない。しかし私はもう......止まれない。彼奴の唇を奪うくらいの事は許されてもいいだろう。私たちはお互い、もういい歳した男女なのだ。いい歳した男女が一つ同じ布団に寝泊まりして何もない方がおかしな話だ。
「吹兎は......起きる気配ないな」
今日は色んな事があった。死神の力を全て一護に吸われてしまい、どうするか考えているところに彼奴と出会った。50年間1日足りとも望まぬ事などなかった再会を果たしたのだ。最初に出会ったのは流魂街の戌吊だったな。お前はいつも私に道を示してくれた。姉様が兄様と結ばれて私が朽木になった時、昔からの仲の恋次と桃が私との距離を測りかねている時、お前だけは昔のまま私と接してくれた。
私が一番辛かった時、私を孤独と絶望のどん底にいた時に助けてくれたのはお前だった。いつからかお前への気持ちはただの友情とは違うものに変わっていった。しかし私はその感情の正体をその時に知る事はなく、そして放っていた。お前との時はまだこれからも続く。その長い時の間で自分の気持ちについて考え続け、答えを出していけばいいと思っていたからだ。幸せな時はいつまでも続くと、私は思っていた。
しかしお前は突然、何も告げぬまま私の側から去っていってしまった。
その時の私の気持ちを......お前への想いを......
「............」
唇を近づける。心臓の鼓動で吹兎が起きない事をただ祈るのみ。こんな事をして、気づかれてしまえば全て終わってしまうかもしれぬ。......しかし私は止まれない。
「............」
不意に視線を感じた。顔を上げてみると......
「あ、その......」
頬を赤らめて壁に隠れてこちらを覗く少女達が......。
「失念していた......」
吹兎が言っていた。なぜ格安でこの物件を借りられているのかという事を。ここは幽霊が住む......所謂いわく付き物件なのだという。尤も死神である我らからしてみれば幽霊に対して怖がる気持ちなどないため問題ない。しかも吹兎は霊力がないため幽霊を見る事もできないため全く実害がないという。
一護に霊力を譲渡した私も今は死神の力を持っていないため煩わしい此奴らを魂葬する事ができぬ。そして......吹兎と違って私は此奴らを見る事ができるため無視する事もできない。
「えぇい! うっとうしい!」
衆人環視の元、先ほどまでしようとしていた事を続行する事などできず、そしてその間に頭が冷めたのか自分のどれだけの事をしようとしていたのか思い至り、布団を頭まで被って逃げるように眠る他に私が採れる選択肢はなかった。
完全に吹兎の中ではルキアと雛森は幼なじみ枠認定されています。そもそも異性として見られていません。ここから恋愛枠まで持っていくのはかなり難しいです。お二人には是非とも頑張って頂ければと思います。(どうしてこうなった......当初の予定とは全然......)
ルキアの性格が全然違うと思われるかもしれませんが、この50年の影響で吹兎が絡むとルキアはアホになるように......。海燕や清音が全力で揶揄い続けた結果です。
そういや黒崎家のみんなに存在を隠していた時はルキアはどうやって風呂に入ってたんだろ?