この作品、『桜と雪』ってまんま雛森とルキアを隠喩した安直なタイトルなんですが......
雛森って桜じゃなくて梅じゃん!桜って白哉じゃん!
今更なのでタイトルこのままですが......なんか悲しくなってきた......
さて、死神代行編始まったばかりですが今話は一護VS恋次です。原作と重なり合う場面はダイジェスト版でお送りしていきます。
斬魄刀。それは死神が扱う刀で斬拳走鬼の内の斬術に当てはまる。全ての死神は零番隊の二枚屋王悦が作った浅打を支給され、日夜浅打と寝食を共にしながら自らの霊力を高めていく。
浅打、というものは何にでもなれる刀だ。所持者の魂を写し取り、形取る。それこそが浅打の真髄。
斬魄刀というものは元々は所有者の魂の一部。だから斬魄刀、は己そのものではあるが自分と似て非なる存在と言う事もできるだろう。
浅打に写し取った斬魄刀と対話する事で始解を扱えるようになり、斬魄刀を屈服すると更に上の卍解に至る事ができる。
──卍解の先はないのだろうか──
──────
──三十年前──
「ついに卍解を完全にマスターされましたね主」
尸魂界を追放されて数十年。具象化した惜鳥と修行を繰り返し、始解も卍解も完全に会得する事に成功した。霊圧も、以前より上がっている。しかし......
「これで足りるのだろうか......」
敵は藍染惣右介。前回は未完成ながらも卍解したが倒す事ができなかった。相手は始解すらしていないというのに。
ここまで休みなしでひたすら修行しているというのに、自信を持って首を縦に振れない事がもどかしい。
無論、戦闘手段は斬術だけではない。鬼道も白打も、隊長だった時よりも格段に良くなっている。だが分からない。まだ強くなれる手段があるのなら一つ残らず掴み取る。そのための期間だ。
「手段なら......あります」
その問いは、声には出さないものの己の半身たる惜鳥には伝わっていたみたいで返答が戻ってくる。
「なら! ──」
「しかし当然リスクもあります。まだ誰もがやった事もない方法で、それ故手探りでしか到達できないものですが」
斬魄刀の進化にはある法則性がある。第一段階は斬魄刀と対面する事、二段階目は斬魄刀を屈服させる事。
いづれも浅打に写し取った魂との距離が近くなればなるほど大きな力をもたらす。
──それなら斬魄刀と死神の魂が一つになればどうなるのか──
「主は霊圧の具象化といった方法にて自らを霊圧の膜のようなもので纏い、鎖結と魄睡を直接的に鍛える事で強大な力を身につけました」
それは藍染惣右介から告げられた内容。
「そしてその影響は私にも表れました。霊圧が外に漏れ出ないからか、私の魂のほんの一部が一度、主の魂と混ざり合った事があります」
斬魄刀の特異体質というより僕自身の特異体質によって起きた現象。初めて虚に襲われた際、車谷さんの斬魄刀を握った時に混ざり合ったと惜鳥は言う。
「霊術院で浅打を貸与されるより以前、他人の浅打に触れた時に斬魄刀としての私の自我は生まれました。それが霊術院で貸与された浅打にも写し取られたという事です」
斬魄刀の自我の覚醒には死神の能力に関係なくある程度の時がかかるという。僕が短期間で始解を会得するに至った絡繰はそこにあると惜鳥は言う。
「浅打に魂を写し取った刀を用いるのではなく、浅打から私の魂を吸い取って主の魂だけで刀を打ち直す。そうすれば卍解の更に先へと理論上は到達する事ができます」
自身の霊圧を外に出す事なく僕の中だけで循環させる事ができるからこそ採れる手段だと惜鳥は言う。
「リスクとしては、単純に先駆者がいないため成功例がないという事。
そして......全霊力を私と主の融合に使わなければならない以上、他の事に霊力を使う事ができない。つまり魂が一つになるまでの間、死神化はおろか、霊を見る事すらできなくなります。
その状態がいつ終わるかも分かりません。明日かもしれませんし明後日かもしれない。もしかしたら十年先かもしれません」
「でも永遠って訳じゃないんでしょ?」
惜鳥は首を縦に振る。
「だったら迷う事はない。さっきも言ったけど、採れる手は全部採るんだ」
僕は惜鳥の手を握り、死神の力を使う事ができなくなった。
僕は死神の霊力が少しずつ消えていく中、浦原さんに事の経緯を話して義骸を貰えるように交渉していた。
「事情はおおよそ分かったっス。決戦の日までに一つでも手段を増やす事はアタシも同意だ。ただそれでも義骸を貸すのに一つ、条件があるっス」
浦原さんのいつになく真剣な様子に息を呑む。今の僕に支払える代償なのだろうか。
「後で隅から隅まで解析させて欲しいっス!」
無言で義骸を持ち去った。
──────
「黒崎一護。テメェを倒す男だ」
ルキアの変な絵がついた手紙読んで来てみれば、なんだこいつら。石田が血ィ流して倒れてやがる。
「石田をやったのはテメェか? 赤パイン」
「だったらどうする」
「倒すだけだ。いくぜっ!」
「ちっ! くそっ!」
刀を振りかぶったところで当たんねェ! チッ、ちょこまかウゼェ!
「吼えろ、蛇尾丸!」
しかも刀の形状変わってやがるし。
「なんだ? テメェら、自分の刀に名前でもつけてんのか?」
「フンッ! テメェの斬魄刀に名前も聞けネェ! そんな奴が俺と対等だなんて2000年早ェぜ!」
「グァッ!」
肩を斬られる。傷が深けェ。意識が、朦朧としてきた。が、
「いい気分だ」
頭が冴えてる。さっきまでと違ってこっちが押してる。
「止めだァ!」
が、斬魄刀を無防備な赤パインに振り下ろすまでもなく刀は折られ、折られた刀身は間合いの外と思っていた男の手に握られている。
「なっ!?」
そして次の瞬間。激痛が全身を襲い、身体は支えを失い前に倒れていく。何をされたのかも分からねェ......。
「そこを一歩でも動いてみろ。私を、追ってきてみろ! 私は、私はっ! 貴様を絶対に許さぬ!」
ルキアは、赤パイン達に連行されていく。薄れゆく意識の中、一つの言葉だけが俺の中で木霊していた。
「また......守られたッ......!」
「弱者が敵地に乗り込む事、それは自殺って言うんスよ。朽木サンを救うため? 甘ったれちゃあいけない。死にに行く理由に他人を使うなよ」
「ッ!」
傷を癒してくれた下駄帽子は尸魂界の行き方を知っていると言う。俺は......俺はッ!
「アタシと戦い方の勉強しましょう」
死神の力を取り戻して! 絶対にルキアを助けてやる!
「おめでとさん〜! きっちり死神に戻れたじゃないですか! お見事! レッスン2クリア!」
「やかましいわ!」
ジャスティスハチマキ装着! とか何も言わずに大穴に落としやがって! 死神の力戻ったんだ!
今まで受けた分、きっちり返してもらう!
「それなら丁度いい。このままレッスン3に入りましょ〜」
前を見ろ、進め、決して立ち止まるな、引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ......叫べ! 我が名は
「斬月!」(ダイジェスト版終わり)
「斬魄刀、戻ったみたいっスね」
「ああ」
俺の手にあるのは身の丈ほどの出刃包丁に似た斬魄刀。
「これが俺の、斬月」
「これで、黒崎サンの死神の力は元に戻った、いや以前よりも増したと言っていいでしょう」
下駄帽子は俺が吹き飛ばした帽子の埃を払いながらなぜか刀を杖に収めた。
「ですので、これから戦闘訓練を始めましょう。今のままではその霊力も宝の持ち腐れ。
達人の扱う木の棒が素人の刃物に勝つように、今の黒崎サンは持つ霊力は大きくとも、その扱い方を知らない。
これから、その巨大な霊力の扱い方を学んでもらいます」
「そうかい。じゃあ続けてやろうぜ。まだ身体は全然余裕だし何より時間が勿体ねぇ。刀、抜けよ」
「いえ、今からの修行は私以外の人に頼みます。来ていいっスよ〜」
「ん?」
下駄帽子が合図を出すと同時に上から人影が降ってくるのを察知する。そして俺は降ってきたそいつの顔を知っていた。
「お前は......!」
──────
惜鳥の手を取り、彼女が僕の中に入ってくる感覚を感じると今まで感じていた感覚が薄れていく。告げられていた事ゆえ動じなかったが幽霊が見えなくなっていく。死覇装も失われたため即座に義骸に入る。
「今日も霊圧は戻ってないか」
毎朝、起きるたびに発する言葉。そして就寝前には霊圧が戻る事を願う毎日。
自ら覚悟した選択とはいえ、無力感を拭い去る事はできなかった。藍染の策略によって一心も尸魂界を追われる事になってしまった。そして一心の奥さんも虚に襲われて死んだ。
僕が死神の力を持っていても結末は変わらなかったかもしれないが、それでも結末に悲しむ部下やその息子の悲しむ顔を見てしまえば拳を強く握るしかなかった。無力だった。
現世に逃亡して数十年が経った後、ルキアと再会した。何でも彼女は現世で虚と交戦し死にかけたらしい。そして命を繋ぐために重罪とされる人間への霊力譲渡をしてしまった。
一心の家は僕の家から近い。つまり僕が力を持っていればルキアが罪人となる事も、一心の息子を巻き込む事もなかったのだ。湧き上がる無力感に対して、しかし何もせず待つ事しかできない毎日だった。
しかし、その無力な日々もようやく終わる。
「やっとか!」
虚退治に出かけたルキアの帰りを自室で待っていたある日、突然懐かしい感覚が戻ってくる。見えなかった幽霊の感覚も戻って......なんか多いなこの部屋に幽霊。
『お久しぶりです主』
懐かしい相棒の声も......あれ、なんか僕の中から聞こえた気がしたんだけど。これまでも惜鳥と声を出さずに会話する時はあったけど声は斬魄刀から聞こえていたよね?
『当然です。私の魂と主を一つに、と言うより主と一つになった上で新たに斬魄刀を打ち直したのですから』
「すぐに慣れるかな? 慣れるといいな」
惜鳥と戯言を交わしながらも感覚は以前のものを取り戻していく。感知できる霊圧の範囲も広がっていき......
「ッ!」
一心によく似た、おそらく一護が死にかけている事に気づき、ルキアの霊圧は全く感じられなかった。
「ようやく、死神の力が戻ったようっスね。若干、手遅れだったっスけど」
死神......恋次と白哉の霊圧の痕跡だ。ここまで材料が揃えば何が起こったのか察する事ができる。
「なんでルキアを助けてくれなかったんですか! あなたなら追手を交わしてルキアを匿って逃げる事だって!」
大事な時に何もできなかった僕がよく言うとは思う。けど、いくら隊長格二人が相手とはいえ限定霊印をした相手なら浦原さんならルキアを守る事だって......!
「......言いたい事は分からなくもないっスけど今はそんな事を話し合っている場合ではない」
「何を──」
「黒崎サン、今に死にに行きますよ」
──────
「お前! 吹兎! 死神の力が戻ったのか!?」
上から降ってきた男は、死覇装を纏った吹兎だった。
「そういやルキアが元死神とか言ってたな......」
完全に忘れてた。
「一護も死神の力を取り戻したみたいだね。僕もついさっき戻ったばかりだけど。今から僕のリハビリも兼ねて一護に修行をつける。斬りかかってきて、いいよ」
その言葉に、昔からの仲間とはいえ、俺は怒りを抑える事ができなかった。
「ふざけんな! 何がリハビリだ! こっちにはそんな余裕なんてねぇんだ! 時間がねぇんだよ! 第一テメェ
「黒崎サン」
俺の言葉は下駄帽子に遮られた。
「黒崎サン。おおよそあなたの考えは分かります。先日交戦した二人も、そしてアタシも、それ相応の霊圧がありました。しかし冬空サンからは何も感じない。自分より弱い相手のリハビリに付き合ってる暇などない、そう思ってるんスよね?」
そりゃあそうだ。今まで戦ってきた奴らからは押し潰されるような圧を感じた。しかし、目の前の吹兎からは......何も感じねぇ。
「冬空サン。彼は口で言うより肌で感じた方が早いようっス。霊圧が外に漏れないよう結界を張るので、黒崎サンに教えてあげて下さい。鉄斎」
「承知!」
結界が張られていくと同時に枷が外れたかのように吹兎の霊圧が上がっていく。
「何だよこれ......」
まるでバケモノじゃねぇか......
「確かに丸腰で応じるのは失礼だったね」
「ッ!」
その言葉に気づき、視線を前に向けてみると吹兎も俺と同じく
......待て、いつ刀を握った。
「いくよ」
「ッ!」
ここから、先ほどまでの下駄帽子との修行が可愛く見えるほどの地獄が始まった。
斬魄刀との対話の中で本人すら覚えていない人間時代の吹兎の魂の記憶、というエピソードも書いてみたんですが、卍解の時のエピソードみたいに「これじゃない」感が凄かったです。
ですのであくまで「設定」という形で作者の心の中にお蔵入りする事にしました。