48話 旅禍
「なぁ吹兎。何だそのマントは?」
浦原さんが穿界門を開く準備に入った。僕は事前に貰っていたフード付きの黒い外套を急いで身につける。その様子に疑問を持ったのか、一護が外套についての疑問を漏らす。
「これは霊圧を完全に遮断してくれるマント」
僕の体質を分析して作ったらしいマントを僕が使う事になるのは......凄く皮肉だ。でもこれがないと僕は尸魂界で動きづらくなってしまう。
「そんなもんがあるなら俺達にもくれよ」
「いやぁ〜それは作るのに凄く大変でしてね〜。冬空さんが今着用しているそれ一点物なんスよ〜」
一護の問いかけに対して浦原さんが代わりに答えてくれたが──凄く嘘くさい。まあ浦原さんの態度は置いておいて一護達がこのマントを着けるのは僕も反対なんだけど。
「一護達は尸魂界に霊子が補足されていないからね。マントを被る事によって欠点の方が大きいと思うよ」
「欠点って何だ?」
「霊圧を完全に遮断するって事は味方の霊圧も感じ取れなくなるって事だから。絶対的に戦力が足りない以上、向こうじゃ連携が必要不可欠だ」
夜一さんの霊圧は尸魂界に登録されているとは思うけど......まあ夜一さんの事だから上手くやるのかな?
「準備できたっスよ〜それじゃ皆さん、お気をつけて」
こうして僕たちは浦原さんが開いた穿界門を潜って断界を経由、尸魂界に向かった。
──────
主達五人と一匹が穿界門を潜ると──地獄蝶を持たないため真っ暗な断界へと送られます。真っ暗でもどちらに行けばいいのか、行き先に迷う事はありません。主たちは何かに追われるかのようにして走り始めます。
「
「何だよ吹兎! あれを振り切ってからじゃ遅いのか!?」
「最悪尸魂界に着いた時には皆バラバラになっているかもしれないから。ここを出たらもう尸魂界だし、ここしかない」
「バラバラって! 君は何て事を──」
「石田! いいから黙っとけ! 頼むから!」
修行が終わってから黒崎さんは主を見る目が色々と変わってしまいました。
「邪魔をするな黒崎! 第一僕たちはまだ何の説明も受けてい──」
「いいから黙っとけ石田! オメーはあいつが怒ったところを見た事がねぇからそんな事が言えんだ!」
確かに修行の時はピリピリとしていましたが、別に黒崎さんに対して怒っていた訳ではないですよ?
「(ねえ、やっぱり誤解解いた方がいいよね?)」
別にいいんじゃないんですか? 黒崎さんが主の事を誤解しているおかげでスムーズに石田さんを抑えられているのですから。
私達は死神と斬魄刀という似て非なる存在でしたが、長い時間をかけて魂が一つに戻りました。故に主は斬魄刀を発現させず、周りから見れば丸腰の状態ですが主とは言霊を交わさずに会話をする事ができます。
そんな中、主は見るからに怪訝な表情を浮かべて次の言葉を思い紡ぐ。
「(......ねえ、なんで最初の時のような口調に戻っているの?)」
......何の事だか分かりませんが。
「(まあ惜鳥の言葉が強制的に頭に響くから甲高い声よりもこっちの方がいいんだけど)」
誰が甲高いよ!
「(......ほら)」
............。
主は耳を押さえながらもしたり顔を向ける。尤も、周りから見れば何も聞こえる訳もないし視線の先にも何もないからやめた方がいいと思うけ──思いますけど。
「......なあ吹兎、さっきから何で百面相してんだ?」
「あ! それ私もさっきから気になってたんだ! 茶度君もさっきから気になってたよね?」
「......ム」
「............」
人を揶揄うからそんな目に遭うんですよ。
惜鳥に内心で毒づかれたり、一護達に色々と言われたりしながらも僕達は足だけは全力で動かしていた。
「結局何だかんだでまだ言っていなかったけど──」
「さっきから何だい!? 後じゃダメなのか!?」
「ふっざけんな! いい加減にしろ石田ァ! いいから逆らうな!」
僕の発言に石田君が噛みつき、そして石田君に一護が噛み付く。さっきから何一つ変わっていない構図。
「さっきとまた同じ会話をするようだけど......ここを出ると最悪バラバラになるかもしれないから今しか言う事ができないんだ」
「だから! そうだとしても今そんな事を話している場合じゃないだろ!」
「だからそれはこっちのセリフだ石田! お前いい加減にしろよ! 逆らうなってのが分かんねぇのか!?」
「(主。前置きなんてなしにとっとと要件を話す方が賢いと思いますが)」
それもそうだね。
「尸魂界着いたら僕は単独行動するから。さっきも言ったし僕はこのマント着てるしね。だから向こうで僕の姿を見失ったとしても探す必要ないから」
「それだけかい! それだけならさっさと言えば良かったじゃないか!」
「オメーが事あるごとに吹兎に反発してたからじゃねぇか!」
「仕方ないだろ! 僕達は今......」
石田君は動かす足を緩める事なく後ろを指差し......
「あの化け物から逃げているところなんだぞ!」
そういえば......今、僕達は大型の猪のような──そう! 拘突に追いかけられているのです!
──────
拘突から無事に逃げ切る事ができ、僕達は尸魂界の流魂街に辿り着く。一護達が盛大な尻餅をつく中、僕は即座に物陰に隠れた。
「(マントの件、黒崎さん達には結局詳細は話しませんでしたね)」
僕が尸魂界を追放されたのは藍染の謀略によるもの。当然今回のルキアの一件と藍染は関係がない。藍染とはいつか、必ず決着をつけなければならない。だがそれは今じゃない。
今回、僕は一護達と違って姿を視認されるだけで、「冬空吹兎」という存在がこの尸魂界にいるという事がバレるだけで僕の敗北条件は満たされる。
一護はどう考えても隠密作戦とは程遠いもので......だからこそ別行動を採りたかった。一人で向かう事が最適解だと思っていた。
「(瀞霊廷にはどうやって入るつもりですか? 黒崎さん達は白道門を突破するみたいですけど)」
尸魂界に侵入した事は既にバレている。できる限り瀞霊廷には早く入りたいよね。一護が突破に成功したら瞬歩で僕も追行するかな。
「(仮に失敗したとしたら......おそらく志波家の花鶴大砲で入りますかね)」
海燕さんが十三番隊の副隊長を務めている。仮にあれで入ったとして、すぐに志波家の仕業だとバレるでしょ。海燕さんに迷惑はかけたくない。
それでも僕一人なら侵入する方法はいくらでもある。
「なんだぁオメェ」
思考の渦に浸っていると遠くから、白道門の方から遠い昔に聞いた事のある懐かしい声が聞こえてくる。
「兕丹坊さん......」
霊術院に行くまでに、空鶴さんに修行をつけてもらうために繋いでもらった恩人だ。
しかし僕はこれからその恩人と敵対する事になる。兕丹坊さんだけじゃない。これから、今まで散々お世話になってきた人に対して僕は恩を仇で返す事になる。
「当初の予定とは違って俺は10日のところ、5日で死神の力を取り戻した」
僕は物陰に隠れて手を出す事も助ける事も許されない。
「それなら残りの5日間。俺は何をしていたのか」
兕丹坊さんと今の一護が戦えば......
「ひたすら戦いの修行をしていたんだ!」
兕丹坊さんが振り下ろした斧を一瞬で一護は無効化する。
「今更この程度で俺が......」
既に一護の実力は副隊長クラスにまで伸びている。
「止まるわけねぇだろ!」
斬撃そのままに、自らの何十倍もある巨体を一護は──瀞霊壁に向かって吹き飛ばした。
──────
「全く、旅禍なんて聞いてねぇぞ」
先ほど一番隊から地獄蝶が届き、緊急隊首会が開かれる通知を受け取った。
「隊長はまだ寝込んでいるし......また俺が代理か......」
副隊長に過ぎない俺が隊長代理としてあの場に立つのは──正直気が乗らねぇ。それに......
「今は朽木の事でうちの隊は一杯一杯なんだ。旅禍の事を考える余裕なんてねぇよ」
朽木の事は、大切な部下であると同時にあいつの大切な仲間だ。あいつが戻ってくるまで、朽木を殺させる事なんて絶対にさせねぇ。
しかしそんな私情が許される訳もなく俺、志波海燕は十三番隊の代表として隊首会に向かう。
「それで、何か申し開きはあるかのぅ、市丸ギン三番隊隊長」
「ありません」
隊首会は通知の通り、旅禍に関するものだった。白道門を突破した旅禍を市丸が迎え撃ち、取り逃したという。正直市丸は何を考えてんのか分かんねぇ不気味な奴だが、しかし実力は確かなものだ。そんな奴が取り逃すほどの存在。必然的に旅禍に対する警戒は高まった。
「それで、旅禍の特徴は」
しかしそんな中でも山本総隊長は一切動じず引き続き市丸から情報を──いや、これは最早尋問に近けぇな。
「やっぱり一番目立っとったのはオレンジ色の髪をした彼やろなぁ〜。ぎょうさん太い斬魄刀を背負っとったよ」
市丸のその発言に真っ先に眉を顰めて反応したのは──朽木の兄貴、朽木だった。
「何か心当たりでもあるかのぅ、朽木隊長」
「......先に連行された朽木ルキアが霊力を譲渡した人間かと」
「じゃあ彼らの目的はルキアちゃんを助けに来たってところなのかなぁ」
「京楽隊長......」
浮竹隊長の大親友で、隊長以外の十三番隊隊士とも親交の深い京楽隊長の言葉に思わず声が漏れた。確か名前は......「いちご」だったな。
当然、俺は朽木から事の真相を聞いている。吹兎と同じくあいつの旧友である六番隊の阿散井は散々恨み節を放っていたが──俺はそういう気持ちにはなれなかった。
命を賭けて家族を守るために危険な世界へと足を踏み出し、そして朽木の刃から生還したにも関わらずもう一度仲間を助けるためにこんなところまでやってきたそいつを──俺は直接会った事すらなかったがどこか嫌いにはなれなかった。話に聞いただけだったが、どこか自分と通ずるものを感じた。
「それで、残りの旅禍は」
「オレンジ色の彼の他は......そうやねぇ......エラい大きな身体で肌がやや浅黒い子と全身真っ白の子とえらい綺麗な女の子やったねぇ」
市丸が挙げた三人は──オレンジ色の髪の「いちご」とは違って特に思い至る者もいなかったのかそのまま流された。
「ああ、そういえばもう一人、物陰に隠れた奇妙なもんもおったなぁ」
「奇妙?」
市丸の勿体ぶるような言い方に目を半目にしつつも総隊長が更に尋ねる。
「そうや。何や対面しても全く霊圧感じんかったんよ」
「「「「!?!?!?」」」」
その市丸の突然の発言に、対面しても霊圧を感じない死神に心当たりのある人物の雰囲気が一斉に変わる。俺も当然その一人だ。無意識に握った拳からは血が滲み出している。
「あぁ、多分みんなが思っとる彼ではない思うよ」
明らかに豹変した雰囲気に、最近隊長に就任して事情を知らない者は戸惑う中、市丸は一切動じずに続けた。
「何や妙なフード被ってたからなぁ〜。何やそれに霊圧を遮断する機能でも付いとったんちゃうん?」
「数十年前に尸魂界を追放された浦原喜助は霊圧を遮断する義骸を開発していました。霊圧を遮断するフードも原理的には可能でしょう」
「あいつまで関係しているのか......」
フードに関して思うところがあった藍染隊長の言葉に、浦原隊──に何かしら思うところがある砕蜂隊長は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「とにかく。元隊長の関与が疑われるとはいえ未だ瀞霊廷の外。恐れる事はない。各員、持ち場につき瀞霊廷の守護に努めよ」
総隊長がそう言った瞬間、瀞霊廷への侵入者を知らせる警報が鳴り響いた。
雰囲気が変わった隊長......卯ノ花、白哉、京楽、日番谷、(海燕)
何の事だかさっぱり分からなかった隊長......狛村
残りの隊長は事情を知っていても雰囲気が変わりませんでした。「戦いたい!」、「実験したい!」と、いつも通り平常運転です。
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