「それじゃ、ここは任せたよ。」
「分かりました店長。」
僕は兕丹坊さんに出会ったあの日、空腹に耐えるため、死神になるために流魂街の街を「ここで働かせてください」と書かれたプラカードを持って歩いていた。すると程なくして親切そうなおばあちゃんが声をかけてくれた。それから今はそのおばあちゃん、店長がやっている服屋で働かせてもらっている。服屋で働く従業員がボロボロの着物を着ていては客が来ないという理由から入店した時に一式の着物をプレゼントしてもらった。あなたは観音様か、即身仏になるくらいまで長生きして下さい。ホワイトな職場に衣食住を保障され、夜間は死神になるための勉強の毎日。死神の戦闘技能には主に斬魄刀による剣術の斬術、霊圧を手足に集中させて行う体術の白打、瞬歩など霊圧を足裏に繊細に集め行う移動手段の走法、鬼道の4つがある。斬術は斬魄刀がないので木刀による剣術、白打、走法は日常行っている霊圧コントロールで鍛えてきた。そして僕は昨日、鬼道を鍛えるための方法を掴んだ。
僕が普段通り店で接客をしていた時、
「いらっしゃいませ、あ、兕丹坊さん!」
来店してくれたのは親切に色々と教えてくれた兕丹坊さんである。
「ん?ああ、お前えかぁ!どうだぁあれから頑張ってるだべか?」
「はい。店が終わった後に勉強と修行をやってます。」
「そうか、それは感心だべ。何か困ったことがあったら遠慮なく言うだべよ。」
「ありがとうございます。それなら一つ、尋ねてもいいですか?」
そう言って僕は鬼道の修行法を兕丹坊に聞く。何も情報がなければ修行のしようがないのが鬼道である。
「鬼道とかは霊術院に入ってから教わればいいと思うが…」
「勿論霊術院に入るために霊力の修行も怠りません。ですから少し知恵を貸してくれませんか?」
そう言い僕は頭を下げる。
「そうか…、ならここら辺じゃ鬼道が一番うまい人に話を通してやるべ。その人もお前えに興味あったらしいし。」
という話を昨日され、今日店が終わる頃に兕丹坊が来るようだ。
「どうしたの?冬空くん、少しニヤニヤしてるけど。」
横から僕に小首を傾げながら聞いてくるのは店長の孫娘の雛森桃さん。たまに店長の手伝いとして一緒に働く。彼女目当てなのか、彼女が店に顔を出している時は男性の客が多くなる。普段は女性客の方が多いはずなのだが。
「今日の店番が終わったらちょっと用事があったので。表情に出てると接客の印象悪くなるから気をつけますね。」
頬を揉みながら表情を落ち着かせていく。そうだ、今は接客中、仕事中だ。今は目の前の事に集中しないと。僕は来店なされたお客様に笑顔を浮かべた。
「あ、桃。明日店に入ってくれんかのぉ?」
「え、お店?いいよ!」
おばあちゃんとシロちゃんと一緒に食卓を囲んでいるとおばあちゃんから声をかけられた。
「明日から新人が入ってくるからの。仕事のやり方とか教えてくれんか?今日腰をやってしもうてな…」
「そういえばその腰でお家までどうやって帰ってこれたの?」
今は座るのも痛いのか寝転んでいるおばあちゃんに尋ねる。
「ああ、その明日から来てくれるという子におぶってもらったんよ。それで話をしてる時にその子が仕事を探しとるって言っとったけうちを紹介してやったんじゃ。」
そうなんだ、おばあちゃんを助けてくれたんだ。明日私もお礼言っとこ!
「シロちゃんはどうする?来る?」
「明日は店番じゃない日だ。そうじゃない時はあんまり外に出たくねぇ。」
ぶっきらぼうに私の方も見もせず返してくるシロちゃん。私も明日は店番じゃないんだけど…。
「分かった。明日は私一人で行ってくるね。」
「冬空吹兎です。今日からよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるのはおばあちゃんを助けてくれたという冬空くん。短めに切り揃えられている彼の銀髪が少しシロちゃんに近いなと思った。
「雛森桃です。こちらこそよろしくね!私の事は桃でいいよ。」
それから私は冬空くんに一通りの仕事を説明した。彼は要領がいいのか、一回説明するだけで全てを理解してくれた。
「じゃあ実際に店に出てみようか、もうすぐ開店だし。」
「分かりました。」
「ありがとうございました。」
冬空くんが笑顔を浮かべて接客をする。彼が店に立ってから数刻、女性客の比率が高まってきた。いつもは男性のお客さんが多いのに...。冬空くん目当て、だよね。綺麗な顔をしてるしやっぱり女の子達にモテるのかな?
「桃さん、どうかなさいましたか?」
じっと彼の姿を見ていた事に気づいたのだろう、少し気恥ずかしくなった。
「ご、ごめんね。私は倉庫から商品の補充に行ってくるね。」
私は逃げるように倉庫に向かう。
「「お疲れ様でした!」」
冬空くんが来てからの初日の仕事が終わった。今は彼と一緒にお店を閉める作業をしている。
「そういえば冬空くんってお家は近いの?」
「僕は結構遠い地区から来たので潤林安には家がないんです。ですのでお店の休憩室で寝泊まりします。」
「お店の休憩室って結構狭いけど大丈夫?おばあちゃんとシロちゃ...もう一人男の子がいるけど。」
3人に加えて4人で住んだらお家も狭くなっちゃうけど冬空くんがかわいそうだし。
「いや、お店が終わってからちょっとやりたい事もあるのでここで大丈夫です。気にかけてくれてありがとうございます。」
吹兎と桃は両方、自分の容姿が優れている事に気づいてません。ただ吹兎は桃の、桃は吹兎の容姿が優れている事に一分の疑いも持っていません。
また今の段階では桃は吹兎のことを恋愛的な目で見てはいません。ルキアもです。個人的に一目惚れとかはあまり好きではありません。
次回もよろしくお願いします!