翌日、クローム家の騎士練習場に二人の人物が居た。…正確にはクローム家お抱えの騎士団の方が集まっているのだが、二人の人物に目線が集まっていた。
片方はアンネマリー、木剣を垂直に構えていた。
もう片方は筋肉ムキムキな男性でアンネマリーの父、ローデスト帝国陸軍大臣トーマ・フィルム・V・クロームである。
「どこからでも良いぞ?」
「胸をお借りします父上。」
先に動いたのはアンネマリーだ。
「やあっ!」
下から斬り上げた所をトーマが受け流し、それに対して間髪いれずに唐竹で振り下ろす。それをいなす…を繰り返す。
「すごい…当主様と打ち合えている!」
「まだ剣を持って初日だぞ!?」
「これ本当にただの訓練か!?実戦でも見られないぞ!」
と、騎士達のご指摘は最もで、今日いきなり手合わせすることになったのだ。ただ、一番驚いているのは…
(ッ!我が娘はこれほどまでに強かったのか!しかし、木剣とはいえ持って初日でこれとは末恐ろしいな…)
(すごい!楽しい!)
と、もはや実戦レベルの手合わせになっている上、いなすどころかこちらも打ち込まなければ負ける可能性すら出てきた。
ただ、体力の限界の差は歴然でアンネマリーの手から剣がすっぽ抜けた。
「参りました…」
「いや、体力が続いていたのならば私の負けだ。我が娘ながらびっくりしたぞ今日はここまで。」
「はい、ありがとうございました」
こうして、初日の訓練が終わった。
風呂から上がり、自室で反省するアンネマリー
(う〜ん…やっぱり体がついてこないし体力不足か…鍛錬増やそうかな…それに、まともに打ち合えたとはいえ小さいから体重で負けてた…軽さを利用した戦術に変えるか…)
と、反省しながら机で14年式南部拳銃を分解整備していた。汚れる前提で手袋をつけて油をさしたり銃身を清掃していた。
(うわ…汚れがすごい…真っ黒…)
清掃が終わったあとベッドに横たわり本を読んで勉強を開始した。
ー 所変わって ー
一人の女性がお茶を嗜んでいた。この人物こそアンネマリーの母シルベスタ・フリーデグンデ・V・クロームである。ただし不機嫌であるが。
「…全くアンネマリーは相変わらず引き籠もっているのですか?」
「いえ奥様、先程騎士訓練上で旦那様と剣を打ち合ってました」
と、言うのはこの家の執事長たるセルメデスである。
「………あらそう…」
とても不機嫌そうである。まあ無理もない、何せずっと引きこもっているからである。
「友人ぐらいは作って欲しいのだけれど…本人がすべて茶会を拒否するのよね…」
「奥様、今度王宮で10歳になった子供を集めてお披露目会があったはずです。強制参加なので行かざるをえないかと。」
「そうね。」