「ニコラ、ちょっくらワノ国行ってくる」
「はい…………ってえ!?」
アラバスタで色々やってきてから数ヶ月たったある日、私はニコラに唐突にそう言った。
「ジルベールさん!な、なんでワノ国になんかに!」
「ワノ国で手に入れられる品々に少し興味がある。それとカイドウと戦ったと箔をつけたいからだな」
「そ、そんな理由で……」
「それ以外にもちゃんと理由はある。ワノ国の民たちは将軍というものに虐げられているらしい。虐げられているなら解放せねばな」
「それはそうですけど……ワノ国は百獣海賊団の本拠地ですよ?いくらなんでも無茶が……それにPOHはアラバスタの金で拡大できたといえ5000人。それに対して百獣海賊団は2万人の兵力を持っていると聞きますよ!?」
「POHを連れて行く気はない。そもそも連れていけないだろう。オリーブソープ島の内戦もラズライト島の紛争も収まってない、アラバスタでもB.Wの動きが怪しい。どこからも戦力は抜くことはできない」
「でしたらなおさら!?」
「いくら止めても私はワノ国に行くぞ。ガレーラカンパニーに電伝虫を繋げてくれ」
「もう!必ず戻ってきてくださいね!」
頬を膨らませながら電伝虫を渡してきたニコラ。“かわいい”それしか言葉が見つからない。
『ンマー、ジルベールどうした』
受話器の向こうからは少し怠そうなアイスバーグの声がしてきた。彼の声の後ろからはなんか怒号が聞こえるし何かあったのだろう。
「アイスバーグさんか、数日前に完成したって言っていたアレを港に出してくれ。個人的に航海する」
『分かった。今度はどこに行くんだ?またアラバスタか?それともアレを使うってことはグランドラインを出るのか?』
「いや、ワノ国に行く」
『!何をワノ国でしでかすかは聞かないが俺の師匠がよく言っていたことを君に伝えよう。
「私が男なのか女なのかは置いといてありがとう。新聞を楽しみに待っていてくれ、結果がどうなろうと新聞の一面は私になるだろうからな」
『それは楽しみに待っているよ。もう少し君と話していたいが客人が来てしまったようだ。ではな』
「あぁではな」
『ガチャリ』
受話器を置けば電伝虫は目を閉じて寝たように動かない。こんなヘンテコな生き物がいることも最近は普通になってしまったな。前世じゃあありえない生物だっていうのに。
「ジルベールさん、いつ出発するんですか?」
「そうだな、船の準備が出来たらすぐにでも出港しよう」
「本当に生きて帰ってきてくださいよ?カイドウはあの白ひげと並ぶ四皇の1人なんですから!」
「もちろんだ」
◆
「ウォーターセブンを出て7日で
乗っている船はネルソン号ではない。巡洋戦艦を作る過程で生まれた試作艦である装甲巡洋艦“ヤネール”だ。
目標と比べたら性能はお世辞にも良いものとは言えないがこの世界では十分な性能だ。速度で言えば、帆船が自転車ならばヤネールは車だ。射程で言えば海賊が使う大砲は100m 以上近づかなければ当たりもしなければ効果も期待できない。しかし、ヤネールの武装は10kmで有効射程に入る。
このヤネールを基準に数を揃えて艦隊を組むのも悪くない。そうすれば海戦で負けることはないだろう。
「何だあの船……いや、船なのか?それになんだあの3本の煙突は……」
「マストも外輪もないのにどうやって進んでいるんだ。そもそもあれはどこの船だ」
「あの船尾の旗は……クルシュ・ジルベールだ!POHの剣と銃の枝の旗でもなくFGLの天秤に金貨と木箱がのった旗でもない、シンプルなあの旗!クルシュ・ジルベールの自身の旗だっ!!」
「な、なんであいつが再び!またマリージョアを襲撃するっていうのか!」
「で、でも彼は七武海よ!なんで政府側の彼が政府を襲うのよ!」
「それもそうだが……」
久しぶりのレッドポートだ。だが、今回はただの通り道だ。さっさと艦をしまって
「「「船が消えた!!!」」」
一々いい反応をしないでくれ笑ってしまう。
「あ、あいつだ……串刺し公ジルベール……」
「史上最悪の偽善者クルシュ・ジルベール……」
「そんなに警戒しないでほしい。レッドポースの方々、私はなにも暴れに来たわけではないすぐに居なくなるさ」
体をコウモリへ変化させ空へ飛び立つ。市民たちは口を開け固まっていたがそんなのお構えなしに
登りきった見覚えのある人工林と遠くのパンゲア城だ。今回はマリージョアを荒らすことが目的ではないためスルーして足早に新世界側へ飛ぶ。
これが私が新世界に行くために選んだルートだ。魚人島を通るルートも考えたが艦を体内にしまえることを考えれば魚人島を通るよりマリージョアを横断したほうが安全で早い。彼の能力あっての強硬手段だ。
新世界側の岸にたどり着ければコウモリ化を解いて人型に戻る。今度は崖から飛び降りて全身で重力と空気抵抗を感じる。前世でバンジージャンプが好きだった私にとってこれほど楽しいバンジージャンプはない。
流石に重力に任せて地上に落ちればレッドポートに多大なる被害を与えかねない、ある程度地面と近くなったら霧化して衝撃を無くした。
「ふぅ楽しかった」
「あ、あんた今レッドラインから落ちてこなかったか……?それに一瞬霧みたいに……」
「なにいってるんだおっさん、昼間から飲みすぎだ」
「えっ?……え?」
パニック状態に陥っているおっさんを横目に港に向かってヤネールを出してすぐに出港する。港の周りにいた市民たち皆、あのおっさんのようにパニック状態になっていたな。
「さてここからどうするか、ワノ国への"永久指針《エターナルポース》なんて持っていないからな」
海軍でもらえた永久指針は世界政府加盟国のものだけだったからなァ。どうやってワノ国に向かうか。
「取り敢えず、ドレスローザに向かうか」
ルフィたちがワノ国に行く前にドレスローザを通ったように取り敢えずドレスローザに行くことにした。ドレスローザにいるドフラミンゴはカイドウと繋がっているし、もしかしたらワノ国への永久指針を持っているかもしれない。
◆Loading
艦をドレスローザの永久指針に合わせて進み始めて丸2日、遠方に船が見えた。
「あれは………百獣海賊団の船!?」
あの特徴的な旗と船首間違いない。あの船に永久指針があれば問題は解決だ。そうなれば襲うしかない。
コウモリに変化して敵船に乗船する。突然現れたコウモリにクルーたちは慌てふためいていたがそんなのお構えなしに人型に戻り、即座に1人を腕で突き刺す。
「さぁカイドウ、
クルーたちは剣を構え、銃口を向け、機会を伺う。そんなものは関係ない、目にも留まらぬ速さでクルーたちをミンチにしていく。
手がクルーの肩に当たればクルーは肩から斜めに引き裂かれ、横っ腹に当たれば上半身と下半身に引き裂かれる。
「とった!」
1人のクルーが剣を振りかざして私の頭を真っ二つにする。頭は綺麗に両断され頭の中が文字通り見えた。
「へっへっへっ、馬鹿が!百獣海賊団に挑む度胸だけは褒めてやry───」
次の瞬間、そのクルーは頭がかち割れた化け物に首を締められていた。
「「頭を両断すれば死ぬと思ったか?」」
「ウグッ!──は、離せ!」
「「敵に離せと言われて離すやつがどこにいる?」」
「ばッ…ば」
「ばッ化物め!」
「「!」」
「「
「「出来損ないのくだらない生きものめ」」
「ほざくな!世界政府のオモチャめ!!世界政府の犬になり下がった貴様に海賊としての」
「
真っ二つにされた頭は元通りになり、腕が巨大な狗の頭部に変化する。禍々しい狗、サメの歯のように鋭く大きく、今にも喰らいつきそうなほどヨダレを垂らし、頭部全体にある無数の目玉。まさに魔犬。
「お前らは犬のエサだ」
狗はまず首を絞めていた男をすぐさま飲み込み、一人二人と喰らっていく。
狗が10人喰らった頃だろうか、クルーたちは抵抗するのをやめただしを待つだけになった。目は光を無くし絶望した顔つきで天を仰ぐ。その姿はあまりにも哀れだった。
「お前ら、百獣海賊団をやめろ」
「………」
「やめてFGLに入れ。今ちょうどアラバスタの鉱山で人が足らんのだ」
「………」
「はァ……“魅了の魔眼”」
「ァァっ、ァァァっ……」
「ァうァ、あ”あォ……」
私の瞳に生き残ったクルーたちの目が合わせられるとクルーたちの瞳に私が映り込み、彼らの中で私への思いが溢れてくる。男たちは私にカリスマ性的感情が、女たちは私に最上の恋愛感情がまるで噴火時のマグマのように溢れてくる。
「マストをPOHの物に変え、男どもはアラバスタの鉱山で働け、女どもはウォーターセブンで事務を行え」
「「「了解しましたァ」」」
「ワノ国への永久指針はあるか?」
「こちらに……」
クルーが持ってきたのはワノ国と刻まれた永久指針。これで直接、ワノ国に乗り込むことができる。
「お前らは魚人島を通ってアラバスタに向かえ。そこで男どもをおろして、女どもはウォーターセブンだ。船はガレーラカンパニーに売れ」
「「「はっ!」」」
ヤネールに戻り海賊船が新世界を逆走していくのを見守り、ヤネールをドレスローザからワノ国へと進路を変える。
「カイドウ待っていろよ」
艦は帆船とは比べ物にならないスピードでワノ国へと向かっていく。パンクハザード、ドレスローザ、ゾウ、ホールケーキアイランドとルフィたちが4年後激戦を行う島々を横目に流しながら進んでいく。
天気が急に悪くなり潮の流れも激しくなってきた、それに遠くには巨大な滝が見える。ついにワノ国入国寸前まで来たことを実感する。
本来ならワノ国に許可を得ず入国するには鯉を使ってあの滝を登るしか手段がない。しかし、私なら───。
艦を取り込みコウモリ化して滝を登って行く。なんと便利な能力か。
レッドラインとは違う水の壁、透き通った淡水は巨大な鯉の姿を鮮明に見せ、水飛沫がその勢いを警告してくる。
鯉が滝を登りきり空に舞ったと同時に滝を登りきり、ワノ国のその姿を見た。
濁流の海を飛び、潮が穏やかになったところで艦を出す。
「さぁワノ国よ!黒船来航だ!」
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