HELLVOYAGE〜地獄が航海する〜   作:結城朝晴

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03話 出港

 海軍本部で特訓をし始めてはや4年。いろんなことがあった。1番の出来事はやっぱり、訓練中に海賊に襲われたことだろうか。

 本当ならゼファー先生が腕を切り落とされる事件だったが、私というイレギュラーの存在で被害を最低限に留められゼファー先生の腕も繋がったままになった。歴史を改変してしまったが、ネオ海軍とのゴタゴタで被害を被る市民たちが救われると考えればいいと考えるのが定石だ。

 

「ジルベール、本当に海軍に入らんのか?」

 

「今までも何回も言ったでしょうセンゴク元帥、私は海軍とは違う正義を信じて進みますって」

 

 私は今日をもってこの海軍本部から旅立つ。特訓の描写はなしかって?ルフィだって2年間の修行は詳しく描かれてなかっただろ。そういうことだ。

 それはそうとマリンフォードの港には私の出港の見送りでお世話になった人が駆けつけてくれた。

 

「ジルベール、少しでも道を踏み外してみぃ、ワシが骨の一欠片も残さず燃やすけぇなぁ」

 

「道を踏み外すなんてそんなことしませんよ、サカズキ大将。でも、もし私の正義が海軍とぶつかったときは全力でお相手務めさせていただきますから」

 

「威勢がいいねぇ〜。でもジルベールちゃんのことだから海軍と敵対するなんてG-6みたいな時でしょうォ。海賊みたいにはならんでしょうよォ」

 

「そんなことよりよ、ジルベール。あの旗のマークの意味はなんなんだ?」

 

 ボルサリーノ大将の言葉をそんなこと呼ばわりしてクザン大将が質問してきたのは私の後にある船に描かれたマークについてだった。

 

「釣り合ってる天秤ってのは平等を表してるのは分かるんだが……その周りの枝はなんだ?」

 

 ワンピース世界じゃあオリーブの枝は平和の象徴として認識されていないのか。そもそも平和に程遠い世界だし仕方ないのかもしれない。

 

「あれはオリーブの枝です。ある土地ではオリーブの枝は平和の象徴として扱われているらしいので描きました」

 

「平和と平等か!ぶわっはっはっ、お前らしいわい!じゃが、一目でオヌシと分かるマークじゃないのぉ」

 

「うぐっ!」

 

 それは分かってた。この世界の旗なんて自分のアイデンティティをそのまま旗にしたものが多すぎる。麦わらの一味は麦わら帽子、白ひげ海賊団はヒゲと船長の特徴がはっきりと出てる。

 

「別にいいんですよ!ガープ中将!これからあの旗を見たら“クルシュ・ジルベール”だ!ってなるようにすればいいんです!」

 

「ぶわっはっはっはっはっ!!そうじゃ、そうじゃ!さすがは、わしの弟子!!」

 

「しかし、ジルベールよぉ。お前一人でこの船はでかすぎねぇか?動かせられるのは知ってるがよぉ」

 

「ゼファー先生も来てくれたんですね。ありがとうございます」

 

 私の後ろにある船は全長70mの巨大なガレオン船だ。海軍本部で訓練してきた4年間で狩ってきた海賊たちの賞金で購入したものだ。

 操作に関しては悪魔の実の能力で船と融合することで船を意のままに動かせれる。(彼ら)が空母でロンドンへと帰還したときのようにね。

 

「もしかしたら難民とかも乗せないといけなくなるかもしれないからこのくらいで丁度いいんです!」

 

「そうか。そのでかい船がフル活用されねぇことを祈っとくぜ」

 

「そうしてください」

 

 そうだな、船が人で一杯になるなって想像したくない。それだけ酷い目にあった人がいたってことになってしまうからな。

 

「ジルベール様」

 

 おっと、ここで珍しい人たちの登場だ。

 

「科学班のみなさん……」

 

「これは我々からのジルベール様への出港祝いです。どうぞ受け取ってください」

 

 そう言って渡してきたのは黒いスーツケース。その場で開けるよう促され開けるとそこには銃身にJesus Christ is(神は天に在り) in Heaven now(世は全て事も無)と刻まれた黒い拳銃が入っていた。

 

 ま、まさかこれはっ!!

 

「ほぉ……これは……」

 

「対能力者戦闘用13mm拳銃『ジャッカル』」

 

「今までの火薬入り鉛弾ではなく 初の専用弾使用銃です。全長39cm 重量10kg 装弾数6発 もはや人類では扱えない代物です」

 

「専用弾は?」

 

「13mm炸裂徹鋼弾」

 

「弾殻は?」

 

「純銀製マケドニウム加工弾殻」

 

「弾頭は?炸薬式か、水銀式か」

 

「海楼石塗装済み水銀弾頭で」

 

「パーフェクトだ、科学班」

 

「感謝の極み」

 

 あぁ……素晴らしい。このやりとりができるなんて……。ってこいつらなんでジャッカルなんて作ってるんだよ。もしかして私の他に転生者でもいるのか?

 

「ベガパンク様がジルベール様のような方ならいかなる物でも扱えると考え高火力の携帯兵器として考案なさいました。弾丸に付きましては材料及び製造機械を船に積んでおります。材料を含め残弾は船内に数百万発とあります」

 

「そ、そうか。ベガパンクさんに感謝していたと伝えてくれ」

 

「承知いたしました」

 

 これは強力な武器を手に入れたな。ただの銃としても火力は十分、非能力者なら木っ端微塵になるだろうし、能力者もロギア系も関係なく海楼石のお陰で当たれば致命傷を与えることができるだろう。

 

「じゃあ皆さん、私はそろそろ行きます。今までありがとうございました!」

 

「頑張ってきなさい」

 

 センゴク元帥……。

 

「元気でやるんじゃぞ」

 

 ガープ中将……。

 

「甘ったるい正義なんて掲げんさんなや」

 

 サカズキ大将……。

 

「時々戻ってきても良いだよぉ〜」

 

 ボルサリーノ大将……。

 

「ジルベール、頑張れよ」

 

 クザン大将……。

 

「正義の味方になれよ」

 

 ゼファー先生……。

 

「頑張ってきます!」

 

 そう言って私は船に乗り込み体を船と融合させる。帆を張り、風に合わせる。風はマリンフォードからシャボンディ諸島に向かって吹いていた。まるで私をシャボンディ諸島に連れて行ってくれるようだ。

 

「ありがとう、海軍本部」

 

 船はどんどんマリンフォードから離れていき私の言葉は風に乗ってどこかへ消えていった。

 

 

 

◆Loading

 

 

 

 海は良いものだ。広くて優雅で開放的な気分になれる。人々が海に自由を求めて飛び出していく理由がわかる。

 

「お、ニュース・クーか。新しい手配書でもできたのか?」

 

 空から降ってきた新聞と手配書。それらに目を落とした瞬間、目を見開いた。新聞の一面に赤い髪と目の傷の男“シャンクス”がデカデカと載せられていたのだ。

 手配書もシャンクスのものだった。懸賞金額は驚異の40億4890ベリー、新聞でも第4の海の皇帝現るとこれでもかと叫んでいる。

 

「シャンクスが四皇と呼ばれ始めたか……。少しずつ原作に近付いてきてるんだな。本当にワンピースの世界にいるのが実感できてないな」

 

「そういえば、この船に名前をつけていなかったな。フランキーが言ってた勢いとかはどうでもいいが名前を付けたほうが愛着も湧くだろうしな」

 

 と言ってもネーミングセンスなんて期待できないしな。前世の有名所の名前でもつけるか?

 

「ガレオン船……海戦……提督……ネルソン?」

 

「決めた!この船は今から“ネルソン号”だ!」

 

「そうなればよろしくな、ネルソン」

 

 とりあえず、どうしようか。今はとりあえず風に合わせてシャボンディ諸島に向かってるが

、次はどこに行こうか。抑圧されてる民衆を助けたいけど、どこで抑圧されてるのかわからないぞ。

 原作で明言されてる場所なんてルフィたちが助ける土地で原作に介入してしまうから嫌なんだよな、でもそうすると苦しんでる人々を見殺しにすることになるからなぁ。

 

「原作を改変する覚悟決めるかぁ?いやでも……」

 

 ゼファー先生の腕を切り落とさないようにした時点で既に原作改変を行っているからもう諦めるしかないのか。この際だ、せっかく漫画の世界に来たんだ物語が大きく変わらない程度に介入するくらいならいいだろう。

 

「適当に旅してついた先で抑圧されていたりされてる噂を聞いたら向って助ければいいか。それがいいな……って……ん?」

 

 水平線の先にポツンと見える船。キツネの海賊旗(ジョリー・ロジャー)を掲げたなかなかデカいガレオン船だ。シャボンディ諸島に向かってるのか、私と進行方向が同じだな。

 吸血鬼の視力でこそ見れるがガレオン船の甲板に見えるのは海賊たち以外に……囚われた人か?手足を縄でしばられて床にってあれはどう見ても奴隷として売り飛ばされる感じだな。

 心優しい海賊が一般人を次の島まで乗せてあげているようには見えない。

 

 舵を回して標的をキツネ船に合わせる。船は大きく傾き、船底は水しぶきを上げ、航跡が目立つ。今回は船内に囚われた人たちがいるかもしれなから大砲は使えない。ならば私が単身飛び込むしかないか。

 

 急激に接近してくるネルソンに相手も気づいたようで慌てるようだ。本当にあの悪魔の実は恐ろしい。食べただけで人間の基礎能力が全て化け物じみるんだから。望遠鏡もなしに数km先の人間の表情まではっきりと見れるんだから吸血鬼は恐ろしい。

 

「ジャッカル……」

 

 さっき渡されたばかりのジャッカルを左腕を台替わりにして構える。彼がチェダース村で白金銃を撃ったときのように。

 

「全ては民衆の為に」

 

 引き金を引けば拳銃とは思えない鈍く重い銃声と共に弾丸は発射され、キツネ船で望遠鏡を使ってこちらを見ていたクルーに望遠鏡の中を通るようにクルーの頭を吹き飛ばさした。

 

 続けて連射していけば、ドタバタと甲板のクルーはグチャグチャになっていき、キツネ船が大砲を撃てば弾丸が砲弾を撃ち落とす。

 甲板にクルーがいなくなれば銃口は大砲へと向けられネルソンに向けられていた大砲は全て破壊された。

 

 キツネ船はそれでも抵抗し壁などに隠れながら当たらないマスケット銃を撃ってくる。諦めない姿は素晴らしいが、民衆を抑圧するのは許さない。

 

「船を寄せろ!」

 

「おぉ!」

 

 遠距離では敵わないと判断したのかキツネ船自ら近づいてくれるようだ。甲板にもサーベルを持った海賊が集まり始めている、完全に白兵戦で方を付けるつもりだな。

 

「では、行くとするか」

 

 体を無数のコウモリに変化させてキツネ船の甲板に着く。キツネ船のクルーたちは突然現れたコウモリに混乱していたがコウモリが集まって人型になったらもう殺るやつの目に変わる。

 

 だが、行動に移さなければ意味はない。

 

「海賊諸君、略奪ご苦労、さようなら」

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」

 

 その日、レッドフォックス海賊団は壊滅した。この時、逃げ出した数人のクルーたちがまた海賊団を作るがゾロに船を間違えられ船を斬られるのはまたまだ先のお話。

 

 

 




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