HELLVOYAGE〜地獄が航海する〜   作:結城朝晴

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04話 シャボンディ諸島

 海賊を惨殺したあと囚われの身となっていた人々をネルソン号へ移動させ、キツネ船の物色を私は始めた。

 

 結果的に2000万ベリーくらいにはなりそうな宝の品々しか目ぼしいものはなかった。船自体も売り飛ばすとなれば更に金になるだろう。戦利品としてもらっておこう。

 

 しっかりとクルーたちの血は舐め取り、船に血痕はなく干乾びた死体だけが乗った幽霊船にしてやった。命のストックがまた増えてしまったな。はっはっはっ!

 

()()()()()、助けてくれてありがとっ!」

 

「ん?」

 

 ネルソンに帰還し、甲板を歩いていると囚われていた母娘(おやこ)が話しかけてきた。

 

「娘だけではなく私まで助けていただきありがとうございます。名も事情も知らない私達を無償で助けていただいた貴方様には頭があがりません」

 

「いつの日にか、このご恩返させていただきます」

 

「大丈夫ですよ。私は民衆を守る為に海に出たのです、ですから私は当然のことをしたまでそのご恩とやらは貴方がずっと持っていなさい」

 

「で、ですが!」

 

「では、こうしましょう。私がもし貴方の故郷に行きましたらその時は私を泊めていただけませんか?」

 

「……え?そんなことでいいのですか?」

 

「いいも何も、本来なら見返りなんて望んでいませんから」

 

「お兄ちゃん、お家来るの?」

 

「もしお嬢ちゃんの故郷に私が行ったらね」

 

「やったー!」

 

「本当にありがとうございます、本当に

……本当に……」

 

「あと少しで船はシャボンディ諸島に着きます。それまでこの船旅を堪能していてください。それでは」

 

「あ、あの!お名前をお聞きしても!」

 

「そう言えば名乗っていませんでしたね。私はジルベール。クルシュ・ジルベールと申します」

 

「クルシュ・ジルベールさん……」

 

 甲板を振り返らず歩いていく。船長室と書かれたプレートが嵌め込まれたドアを開け自室に入る。

 

 そこにはバロック様式の豪華な部屋があった。黒と赤を基調とした厳かで休めそうにない部屋だ。ガレーラカンパニーさんよ、なんで無駄に豪華にしたんだよ……。

 あれか?こんだけ大きい船だから大船団の旗艦で提督でも乗るって考えたのか?残念、一隻でクルーもいない、1人で使う船だよ。

 

「はぁ。早く慣れて寝れるようにしよう」

 

「それにしてもお兄ちゃん……か」

 

 私は今、4年前の少女の姿ではない。外見は黒い長髪に赤い瞳、中性的な美形の青年って感じで赤いコートを着ている。完全に(彼ら)を意識している。

 

 まぁ能力のおかけで『姿形に意味は無い』まさにこの状態になっている。この姿にも、幼い少女の姿にも、歴戦の戦人(いくさびと)の姿にも自由自在だ。私が私足らしめるのは姿形ではなく、私の意志そのモノだ。私の意志だけが私でそれ以外は雑多な付属品にすぎない。

 

「シャボンディ諸島着いたらどこに行こう?漫画じゃあ“とある場所”とか“とある王国”とか明言されてないところでばっか抑圧されてるからな。場所が全く分からん」

 

 机にグランドラインの地図を広げて次の行き先を考える。

 

「───ドラム王国がいいか」

 

 ドラム王国。麦わらの一味の船医トニートニー・チョッパーの故郷である冬島にある王国。ワポル王の悪政により医療大国だった姿はもうなく、医者自体が国外追放を受けている。国民は医療を受けるため、国王に服従し辱めを受けている。典型的な独裁国家ってことだ。

 さらに、この国は滅ぶ運命にもともとある。黒ひげことマーシャル・D・ティーチ率いる黒ひげ海賊団によって壊滅的な被害を受け、ワポルは我先にと逃げ出した。つまり、ルフィたちがやってくるときには国王はいなくなっている、よって国王がいなくなるのが早いか遅いかの問題だ。結果は変わらない。

 

「そうと決まればシャボンディ諸島で難民たちを降ろして船を手配したらドラム王国へ向かおう」

 

「えーっと、ドラム島の永久指針(エターナルポース)は………これか。海軍で要求品目に入れといて良かった、貰える永久指針(エターナルポース)全部貰ってあるから大抵の場所に行ける」

 

 ナミみたいに記録指針(ログポース)での航海も訓練でやったからできるがやっぱり永久指針(エターナルポース)があれば行くのが楽だよな。寄り道も当然したいから、永久指針(エターナルポース)があればログをいちいち貯めないで済む。

 

 強力なコネクション様々だ。

 

『パンッ!!!』

 

「!?」

 

「ってなんだシャボン玉か。もうシャボンディ諸島の領域に入ったのか」

 

 窓を見れば巨大なシャボン玉が浮かんでおり、それらが続々と破裂していっている。

 

 永久指針(エターナルポース)をキャビネットに戻して甲板に出ると、甲板には難民たちが集まっていて皆、シャボンディ諸島を眺めている。

 

 世界最大のマングローブ、ヤルキマン・マングローブが作り出すマングローブ林。その木の樹脂によって生み出されるシャボン玉が特徴的な土地だ。4年後には最悪の世代が集結し麦わらの一味の一味は全滅することとなる。

 

 原作だと海賊だからって奥の方で停泊してたが私は海賊でもないし、賞金首でもないから堂々と44番GR(グローブ)に停泊しよう。

 

「おいおい、ありゃあどこの船だ?見たことのねーマークだぞ!」

 

「デケェ!!」

 

「大砲の量が異常に多いな」

 

 港にいた人たちもネルソン号の勇姿に騒いでいるな。ちなみに大砲は118門搭載している。

 

「さぁ、皆さんシャボンディ諸島に到着いたしました、あなた方の故郷までは海軍の方々がお送りしていただけることになっております。海軍基地は60番GRから69GRですのでお気をつけて」

 

「何から何までありがとうございます。ジルベールさん」

 

「いえいえ、あっそうでした!皆さん、1番GRから29番GRは無法地帯と言っても過言ではありませんのでそこを通るのはおすすめできません」

 

「そうだったのですね。ご忠告ありがとうございます。では、またどこかでその時は我々各自各自の場所でジルベールさんに恩を返しますから!」

 

 そう言って難民団はシャボンディ諸島に消えていった。

 

「返さなくていいんだがなぁ。───少しシャボンディ諸島を観光してからドラム王国に向かうか」

 

 べ、別に原作で大きな転換ポイントになった土地だから実感してみたいとか聖地巡礼したいとかじゃないんだからね!

 

 

 

 

 

 

「栄えてるな」

 

 多くの人が闊歩し、笑い合っている。表面上はとてもいい都市に見えるが実情は違う。魚人は魚類として差別され人身売買が黙認されているような胸くそ悪い顔も持っているのがシャボンディ諸島でもある。

 

「ここがあのヒューマンオークションか」

 

 着いたのは1番GRにある大きなヒューマンオークション。ルフィが天竜人を殴り、ルフィ・キッド・ローの3人が大暴れしたドフラミンゴファミリーのヒューマンオークションだ。

 

「まもなく、毎月恒例1番GR()()()()()()()()()を開催致したいと思います!!」

 

 中に入ればたいそう裕福そうなクズ共がニヤニヤしながら所狭しと座っている。全員殺してやりたいがそうするとここが潰れて歴史が大きく変わってしまう。グッと堪えるんだ。

 

「司会はもちろんこの人!!歩くスーパーバザールこと〜〜!!!Mr.ディスコ!!!」

 

「どうも、皆様!!今回も良質な奴隷達を取り揃えることができました。皆様ラッキー!!本日は目玉商品もございます!!お好みの奴隷をお持ち帰り頂けますこと心よりお祈りしております!!」

 

「それでは早速競売(オークション)を始めていきましょう〜!!」

 

「エントry──────」

 

「やっぱ無理。こういうクズ共は狗のエサがお似合いだ」

 

狂乱の宴(マッドネスバンケット)

 

 胴体が名状し難いモノに変わると、そこから目がいくつもある巨大な狗の顔が現れる。手足と頭は床に落ち、血が飛ぶ。落ちたものは巨大なムカデになり床を埋め尽くしていく。

 

「はっあ!?」

 

 こいつを見てしまったやつがいたみたいだ。目を限界まで見開いて声にならない声を上げようとしてる。

 

「さぁ、餌の時間だ」

 

 狗たちは近場のエサに飛びかかりエサは噛み砕かれ食われていく。逃げようと席を立てばムカデに足を取られ足からジワジワと食われていく。まさに阿鼻叫喚、地獄絵図と見た人がいれば100人中100人が答えるだろう。

 

「何が起こってんだえ!」

 

 客の中に天竜人がいたのか。

 

 ワンピース世界でもっとも底辺のクズ共“天竜人”彼らは800年前に世界政府を作った王たちの末裔で赤い土の大地(レッドライン)の聖地マリージョアに住んでいる。

 

「お前ら何ぼさっとしてるんだえ!早くやつを捕らえるんだえ!」

 

「は、はっ!カンヒザクラ聖直ちに!」

 

 天竜人で思い出した。ドラム王国に行く前にマリージョアに行こう。そして奴隷達(彼ら)を開放しよう。ついでに、このシャボンディ諸島にあるヒューマンショップも全部襲撃して開放しよう。奴隷解放は数年前に“フィッシャー・タイガー”によって行われたがこいつら天竜人共は懲りずに奴隷を生み出し続けてる。2度も襲撃されれば少しは懲りるだろう。

 

「だが、その前にこの天竜人だ」

 

「!?」

 

 天竜人のそばにいたムカデがまた名状し難い状態になり、そこから右上半身を具現化して天竜人を殴り飛ばす。天竜人は勢いよく吹き飛び階段とディープキスすることとなった。

 

「カンヒザクラ聖!?大丈夫ですか!?」

 

「化け物がっ!」

 

「そうだ、私は化け物だ。化け物が天竜人を殴らないとでも思っていたのか?」

 

たあいぶんたいぶしょう(海軍大将)とぉ()ぶぅんかん(軍艦)わよべぁ!!!(を呼べ)めにぶぉのみせびぃせてやべぇ!!(目にものを見せてやれ)

 

 顔がぐちゃぐちゃで何言っているか分からんな。どうせ大将で……も……あれ?もしかしてあの3人の誰か来ちゃう?さっき別れたばっかりなのに?あ、これやらかしたやつだ。

 

「海軍大将がくるまで持ちこたえるんだ!」

 

「カンヒザクラ聖を安全なところにっ!」

 

「化け物め!この世界からいなくなれ!」

 

 でも、やらかしたのは仕方ない。過ぎたことは気にしないで前を向いてしまおう。と、とりあえず使い魔を戻して体を再構築しよう。

 

 衛兵たちは既に気が狂いそうになっていたが狗やムカデが体中に目のついた人間の姿に変化していくのを目にしたら彼らのなにかが狂いだした。

 

「「「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」」」

 

 彼らは一斉に甲高い笑いをし始め、その槍で私を突いてくる。せっかく人型になったって言うのに名状し難い姿になってしまったよ。

 彼らの目は狂気に染まり、瞳孔は見開き、口からは涎が垂れている。狂気状態でなんだか分からないモノにやりを突き立てている。

 

串刺し公の槍(ツェペシュ・ランサー)

 

 私の影は彼ら(衛兵)の影へ、影はいつまでもついてくる逃げようのないもの。影の槍は獲物を逃さない。

 さぁ、次へ行こうか。

 

 

 

◆Loading

 

 

 

「な、何だこれは……本隊に連絡しなくては!!」

 

 海軍駐屯地から派兵された海兵達が見たものは見た者すべてを震撼させた。

 

 シャボンディ諸島にある全ての()()()()()があった場所に森ができていた。本来無いはずの森、上を向いてみればあるのは血が抜かれカラカラに干からびた串刺し死体、そう木と見間違えたのは串刺しにされた槍だったのだ。

 

「こりゃあ、ジルベール。やり過ぎやしねぇか?」

 

「クザン大将!!ご苦労さまです!」

 

「天竜人は?」

 

「世界政府経営の大病院に緊急搬送されております!」

 

「あー分かった。……全部隊に連絡しろ“クソでかいガレオン船を探し出せ”ってな」

 

「ガレオン船……ですか?」

 

「いいから、さっさと連絡してきなさいな」

 

「はっはい!」

 

「初っ端からやってるなぁ。こりゃあ初頭の手配からどえらい金額になるぞ」

 

 

 




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