HELLVOYAGE〜地獄が航海する〜   作:結城朝晴

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お気に入り登録が500どころか600を超えて明日には槍が降ってくるのでは考えている今日この頃です。


06話 第二回奴隷解放大会②

「ジルベールのやつ、シャボンディにいないと思ったらマリージョアにいたのか。やるじゃねぇか」

 

「灯台下暗しとはこのことだね〜。それにしても三大将全員招集なんて天竜人も相当焦ってるみたいだねェ」

 

「ジルベールの大馬鹿が。これじゃあ、海軍の面子丸潰れじゃろがい」

 

 赤い港(レッドポート)にはマリージョアからの要請を受け20隻もの軍艦と三大将のほか多数の海軍将校たちが待ち構えていた。

 

 奴隷たちは最初、確保され牢に入れられていたが五老星からの命令で扱いは保護に変わり、故郷に送られることとなった。

 

 ちょうど五老星からの命令が電伝虫で伝えられたときだろうか、ボンドラ乗り場近くの広場に空から何かが降ってきたのは。

 

 大量の砂埃を上げ地面に着地したそれは土埃が晴れていくと同時に姿を鮮明化していった。

 

「さっきぶりですね。皆さん」

 

 暗く深くそして赤い瞳に妖艶で不気味な顔そして目と同じ色をしたコート、彼女だ。

 

「本当だよねェ〜。今朝別れたばっかりなのにこれだけ騒動を起こすなんてねェ」

 

「これが私の信じる正義なんですよボルサリーノ大将。サカヅキ大将も私の正義を理解していただけますよね?」

 

「理解はしちょる。だが、これじゃと海軍の面子が立たんじゃけェ」

 

「つまり、私と戦闘した事実が必要ってことですか、組織の正義は大変ですねェ」

 

「お前が大変にしとるんじゃろうがっ!!」

 

「そう怒るなよ、サカズキ。なぁ、ジルベール。お前はお前の正義に()()()()()()?」

 

「もちろん」

 

「そうか。それならお前の正義を俺たちに見せてみろ」

 

「!?」

 

氷河時代(アイス・エイジ)

 

 クザン大将の代名詞でもあるこの技によって地面は凍り、私はとっさにジャンプし避けようとしたが間に合わず足を凍らされ身動きがとれないようされた。

 

 そこを狙ってボルサリーノ大将が指からレーザービームを撃ってくる。光の速度で撃たれるビームには見聞色の覇気がなければ絶対に当たってしまう、鍛えてくれたガープ中将には感謝しかない。

 たが、生憎足が固定されどうやっても避けれない。さらに後ろからはサカズキ大将が迫ってきている、四面楚歌とはこのことか?

 

 この状況を打破するために足を犠牲にした。凍っている足を影の槍で抉り取り、体が空を舞った瞬間体をコウモリに変化させて3人から距離を取った。

 

「なかなか思い切ったことやるじゃない」

 

「足がなくても堂々としちょるのぅ……」

 

「怖いね〜この若さ」

 

 海軍本部での修行中は将来敵対することを見越して使っていなかった能力が多くある。そのおかげで彼らは私の回復力も不死性もまだ知らない、そこを利用してこの島から逃げれるか。

 

 速度ではボルサリーノ大将には勝てない。パワーではサカズキ大将には勝てない。対応力はクザン大将には勝てない。なにをしたらこの状況から逃れられる?

 

「正義なんてものは立場によって形を変える。だから別にお前の正義は責めやしない。だが、俺たちは組織の一員だ。命令されたとあれば実行しないといけねェ」

 

 どうすればいい、どうすればこの島から逃れられる。彼らと戦い、この島から逃れるのは簡単だ。だが、ここは港町。民衆の生活の場でありこんなところで暴れれば民衆に大きな損害を与えてしまう。だから困っているのだ。

 

 影に潜って逃げるか?霧になって逃げるか?コウモリになって逃げるか?

 

 私が選択したのは影に潜って逃げることだった。まず、ジャッカルをクザン大将に当てるように見せかけて彼の後ろの先にあるネルソン号を狙って打ち込む。そうしたらすぐに影に潜り、弾丸の影に移り弾速と同じ速度で船に向かっていく。

 

 これには三大将も予想外だったようで案外すんなりと逃げれてしまった。影に潜ることができるのは彼らも知っているが、知っていてもどの影に潜んでるかまでは分かるまい。たとえ見聞色の覇気が使えても影に潜んでいればバレないのはガープ中将で検証済みだ。

 

「ここからが正念場だっ!!」

 

 銃弾がネルソン号に当たると同時に融合、そしてそのまま出港。出港できたがクザン大将が海を凍らしてくるかも知れない、ボルサリーノ大将が八咫鏡で移動してくるかもしれない、サカズキ大将が流星火山を撃ってくるかもしれない。更には軍艦からの砲撃も注意しなければ、気は気抜けないな……。

 

「あららら、ジルベールちゃん影に潜られると見つけられねェからな」

 

「これは一本取られたねェ〜」

 

「船が動きよるってこたァあいつは船と融合しとるのか」

 

 3人はジルベールを追撃しようとはしなかった。旧友の旅立ちを眺めるかのような眼差しで軍艦からの砲撃の中、逃げていくガレオン船を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 離れていても鼓膜を揺らすような勇ましい砲撃音と共に海軍軍船の特徴的な砲塔から砲弾が飛んでくるが当たることはなく遠くで大きな水柱を作り出しただけだった。

 

 ネルソンを作る際“機動力とスピードに重点を置きながらなるべく重武装で”と無茶振りを頼んだが、流石ガレーラカンパニー性能は要求通りだ。おかげで海軍の追手をぐんぐんと突き放していっている。もはや、敵船は彼方。

 

「このままいけば簡単に逃げられるだろうが、前世ではありえないこの状況。もっと楽しみたいと思ってしまうのが元男のロマンだよなァ」

 

 船を大きく傾かせ旋回する。大砲の射程なんて訓練で叩き込まれて理解してる安心して旋回できる。さっきの砲撃はアホな新兵が独断で撃ったんだろう今頃上官にこっぴどく叱られてるだろうな。

 

 今までは逃げていたが海の上では戦うぞ。海には民衆はいないからな。

 

「敵艦は15隻で単縦陣か。残りの5隻がどこに行ったか気になるな」

 

 敵艦隊とネルソンは反航戦になるかのような向かい合った状態でお互い船を進めていき、距離はどんどん短くなって行く。2000m……1500m……1000m……実際は数十分間経っているが私にとっては数分に感じられたそれほど緊張しているということだろう。

 

 敵艦隊との距離が500mを切ったとき、敵艦隊の進路を塞ぐように転舵させた。射程には入ってしまっているがこの距離ではたとえ止まっている標的でも当たることは滅多にない距離だ、この調子ならやれる。

 

 転舵したあと、ネルソン号の実用射程に敵戦列の先頭がほぼ直角に入れさせることができた。理想的な丁字戦法となった。

 

 そう、私が狙っていたのは丁字戦法だった。艦艇数で負けている私は白兵戦で勝てるとしても船を失ってしまう。ならば、敵陣形を利用して1隻ずつ各個撃破するしかない。武装なら大量に積んでいるから火力は十分だ。

 

「斉射、てぇ!!」

 

 側面にある50門の32ポンド砲が一斉に火を吹き先頭にいた海軍船(一番艦)を破壊していった。この一撃で一番艦はあの特徴的な砲塔を破壊され、前方にいるネルソンに手も足も出せなくされた上、マストも破壊され航行不可能となった。

 

 急に止まった一番艦を避けようと戦列からはみ出てきた二番艦も一番艦と同じ運命をたどり、2隻が使い物にならなくなったところでネルソン号と敵艦隊との同航戦に移った。

 

 同航戦中も圧倒的スピードをもつネルソン号は大きな円を描きながら再び丁字戦法をできるよう立ち回っていた。

 

 同航戦は船を私の体と融合させているネルソン号が圧倒的有利で例え砲撃が直撃しても私の再生能力で船も修理される。一撃で木っ端微塵にしない限りはダメージが意味をなさないのだ。さらに、体を動かす感覚で砲撃できるため敵の倍以上の速度で砲撃することができた。

 

 結果、同航戦ではネルソン号無傷に対して海軍側は大破2中破1小破4の圧勝となった。

 

 同航戦の終わりは再び私が丁字戦法を行ったことで迎えた。最大船速で転舵したが理想的な形にはならなかったがそれでも一隻に対しての集中砲火は効果的で大破1中破1の戦果を上げた。

 

 無傷な船が残り4隻に大破した船が5隻とガレオン船1隻にありえないほどの損害を与えられた海軍は白旗を掲げ降伏した。

 

 

 

「私がこの艦隊の司令長官のピエール・カスカード中将だ」

 

 海軍本部にいた頃に聞いたことのない名前だな。どこかの支部の人間か?

 

「私はこの船の船長クルシュ・ジルベールだ」

 

「…………………」

 

「あなた方は私に降伏したということでいいですね」

 

「あぁ……ただ、私の首一つで事を済ましてはくれないだろうか?それで部下たちには手を出さないでくれ……」

 

「ほぉ」

 

 部下のために自らの命を投げ出すというのか。この人は生きる価値があるな。

 

「あなたの首なんていりませんしあなたの部下に手を出すつもりはありません。取り敢えずあなた方に武装解除を命じます。船にあるすべての武器をこの船に」

 

「それは真ですか!感謝します、ジルベール殿」

 

 そう言いながら彼は電伝虫を使って全軍に武装解除を命じた。海軍船から木箱に詰め込まれたサーベルやマスケット銃が積み込まれていく。詰め込まれた武器は床に沈むように床に飲み込まれていき倉庫に運ばれていく。もちろん能力のおかげで海兵たちは飲み込まれていくたび驚いていた。

 

「それではあなた方の処遇についてお話します」

 

 ネルソン号の会議室には各船の船長が集まり下される処遇について緊張していた。

 

「あなた方は私の捕虜とし海軍との交渉で海軍に明け渡します。それまではそれぞれの船で待機していてください、航行不能の船や沈みそうな船は他の軍艦に移るかこの船に移るかしてください。この船に乗る場合、人道的な対応は保証しますよ」

 

「………」

 

 16人の将校たちはお互いの顔を見合うと全員が席を立った。

 

「人道的な対応感謝申し上げます」

 

 そう言って今まで脱がなかった軍帽を取り、頭を下げた。

 

 こうして後に“赤い港(レッドポート)沖海戦”と呼ばれる史上稀に見る完勝の海戦が終結した。

 

 ちなみに、大破となった軍艦5隻はジルベールの能力で影に取り込まれ戦利品として押収された。

 

 海軍との交渉は円滑に行われ、海軍艦隊10隻と約1万2千人の海兵は海軍に帰還しこの代わりに5億ベリーが支払われた。

 

「5億ベリーと無傷の海賊船1隻と大破した海軍船5隻かァ、ドラム王国に行くのはもう少し後になりそうだ」

 

 船長室で地図を眺めていて私はそう思った。キャビネットから1つの永久指針(エターナルポース)を取り出した。

 

 永久指針(エターナルポース)には“ウォーターセブン”と刻まれていた。

 

 

 




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こちら海戦の様子です

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