HELLVOYAGE〜地獄が航海する〜   作:結城朝晴

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07話 棚からぼた餅

「私は海賊じゃあねェェェェェ!!!」

 

 私の手元にあるのは新聞とこの4年間で呆れるほど見てきた顔の手配書だ。

 新聞には一面にデカデカと海戦のときの私の写真が載せられこう締めくくられていた。

 

“第二の奴隷解放の英雄・史上最悪の偽善者クルシュ・ジルベールは三大将を相手取る強さ、ガレオン船1隻で海軍軍艦15隻に完勝する指揮能力どれをとっても世界屈指の()()と言えるだろう”

 

 これは……直接世界経済新聞に問い合わせないとだな。

 

「そんでもってこの手配書かァ」

 

 新聞と同じ写真で作られた手配書、そこに書かれた金額は3億5000万ベリー。最初の賞金額で3億超えってどうなってるんだよ……。どうせ天竜人が早く捕まえるよう色々横槍を入れたんだろうな、センゴク元帥お疲れさまです。

 

「はぁ……」

 

 赤い港(レッドポート)沖海戦から早くも2週間ネルソンは広大な海を突き進んでいる。今日は追い風で最大船速で進むことができているが、向かい風の日にはそれもう舵を切ってなんとか前進していった。こうなると帆船は面倒くさい。

 

 そんなことはどうでも良くて問題なのはあともう少しであの魔の三角地帯(フロリアントライアングル)に突入するってのに食料がないってことだ。

 ここで勘違いしないでほしい。ここで言う“食料”っていうのはパンや肉、魚といった普通の生物が食べるものではなく、吸血鬼としての食べ物“血液”のことだ。別にパンや肉が食べれないというわけではないが、それらの食料はこの体になってから栄養補給としての意味をなくしてしまっている。

 

 血液が私の主食であり、主菜であり、副菜であり、汁物なのだ。海軍本部時代は使用期限が切れた輸血パック(クソ不味い飯)で過ごしていたが、こんな海の上ではストックをするどころかそもそも手に入らない。血液を1Lも飲めば1週間くらいは飲まず食わず不眠不休で動いていられるが最後に血液を飲んだのは3日前のことだ。どこか島によって血液を補充しないと駄目だな。

 

 この姿(彼の姿)で行くのは不味いだろう、なにせ3億5000万の賞金首でマリージョアを襲撃した悪党として世界に顔も名前も届けられているんだから。

 

 だが、悪魔の実の能力を使えば楽々と姿を変えることができる。献血ということで血を集めるためには優しそうで親しみやすい姿が良いだろう。

 

 それらを考慮して出来上がった姿は“真っ赤な軍服を着た金髪碧眼の少女で、服の上からでもそれとわかるほどの巨乳っ子”といった感じで彼女(婦警)の姿になった。軍服を選んだのは軍用の輸血パックためとすれば民も協力してくれるだろうという魂胆だ。

 名前はそうだな……“ヴィクトリア・カーミラ”とでも名乗ろうか。

 

 じゃあ後は、肝心の島を見つけないとだな。地図で確認すれば現在位置から少し先にある程度の大きさの街がある島があったからもう少し経てば見えてくるだろう。あともう少しで新鮮な血液(美味しい食事)にありつけると思うとワクワクしてきてしまう。

 

 

 

◆Loading

 

 

 

「やぁ、らめぇ…っああぁっ」

 

 島に寄港することを決めて3日後、やっと魔の三角地帯(フロリアントライアングル)の手前の島の町にたどり着いた。

 献血活動を装って町外れの空き家で食料のストックを生産していたが、6日間血液を飲んでいなかった飢餓感に抗えず直接女の子を吸血してしまった。

 極度の飢餓感の中、目の前で若い女の子の血液(ご馳走)のあると思ったら誰しも飛び付き貪り食うに決まっている。

 そして、相手は感じたことのない快楽に溺れているかのように(とろ)けきった顔をしていて、今はない股間が熱くなるのを感じた。

 

 血液は健康に害が出ない範囲で採取し、献血のお礼としてパンと多少のベリーを渡している。採取した血液はすぐに急速凍結機に入れて鮮度を保つ。海軍本部で食べていたものなんてこの女の子の血液と美味しさを比べたら雲泥の差だ。

 

「ぷっはっ!」

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 蕩けきった顔で私の顔を眺めている彼女は私にキスを求めるように目を閉じ顔を近づけてくる。それに答えるように私は彼女と濃厚なキスをした。

 

「カーミラさん……私ッ!」

 

「ごめんなさい、ニコラさん。私は貴方に多くのことを隠しているの。だから──」

 

「それでもいいんです!私をそばに置いてはくれませんか?」

 

 彼女は吸血された快楽と決して短くない時間目を合わせたことで罹った魅了の力のせいで、こんな状態になってしまった。

 船に乗せてもいいが一般人が乗るには危険な旅になるだろうから相応の覚悟が必要になってくる。その覚悟が彼女にあるかどうか……。

 

「本当に私と海に出るのかい?私の正体を知ったとしても?」

 

「───はいッ!」

 

 彼女の覚悟に応じるように姿を“カーミラ”から“ジルベール”へと戻す。彼女の表情は少しびっくりしたかのようなものとなった。

 

「もしかしてクルシュ・ジルベールさん……?」

 

「その通りだ、私が先日第二次マリージョア襲撃事件を引き起こしたジルベールだ。私に付いてくるということは多くの事件や危険に巻き込まれる可能性が、そして死ぬ可能性がこの島で住むより何倍も何十倍も高まるぞ」

 

「それでも貴方の側にいたいんです!」

 

「君は今、吸血された際の快楽と見つめた時の魅了の力に支配されている、その思いは作られたものだ」

 

「作られたとしても……私は……」

 

 相応の覚悟はあるようだ。

 

「ニコラさん、両親の許可を得たのであれば私の側にいることを許しよう」

 

「本当ですね!?行ってきますッ!」

 

 彼女は即座に立ち上がり空き家から去っていった。行動力の塊だな……。

 

「次の方どうぞー」

 

「あいよ」

 

 次には入ってきたのは小さなお爺さんだった。細く小さくワンピース世界では珍しい普通のお爺さんだ。

 

「お爺さん、年齢教えてくれるかな。65歳以上だと65歳以上になってから献血した経験がないと献血できないんです」

 

「わしゃあ、65だ」

 

「でしたら献血できます。協力ありがとうございます。採血はおおよそ10分から15分ほどで終了します。採血後は少なくとも10分ほどはここで休憩していただきます」

 

「分かったよ」

 

 お爺さんの腕をガーゼで消毒して採血針を刺すとチューブの中を血液が駆け抜けていき、輸血パックを満たしていく。

 

「お嬢さん、海賊じゃろ?海の香りと血の匂いがする。海軍で染みつくものとは違う海賊の匂いじゃ」

 

 突然のお爺さんからの質問に私は回答に詰まった。私自身は海賊ではないと思ってはいるが、世間一般には海賊として認知されているからだ。

 

「図星じゃろ?エッエッエッ」

 

「私自身は、海賊になったつもりはないのですがね、それでお爺さん私を海軍に突き出しますか?」

 

「そんなことはやらんよ。やるんだったら献血なんて受けんじゃろ?エッエッエッ」

 

 食えない爺さんだな。

 

「お嬢さんいい物をあげよう。大先輩からのありがたいプレゼントじゃ、北の海(ノースブルー)のスワロー島に住んでいるヴォルフという面白い爺さんが発明した物の設計図じゃ。とっておき」

 

 採血されながら懐から取り出してきたのはそれはそれは古そうな設計図だった。機械の設計図ということは分かるがそれ以外は全くわからない、前世で文系だったことがここに来て悔やんでくる。

 

「それはな、ヴォルフが発明した()()()()()()()()()()()()いうものなんじゃ。このボイラーとやらは最近できた海列車あるじゃろ?あれに使われておる動力よりも強力で巡洋戦艦ってのは船すべてを金属で作ってあってそれそれは鉄の化け物のようなものじゃった」

 

 この爺さんなんてもの持っているんだ……。この世界の船といえば帆船、揚力で進んでいる中、ボイラーを使った船だと?せいぜい17、8世紀の船の中に20世紀の船を登場させたらどうなるかなんて想像するだけでもカオスだ。

 

 確かにハートの海賊団の旗艦は潜水艦だ。潜水艦があるってことは造船技術は第一次世界大戦並みってことだ。おかしいことはない。

 

「お爺さん、ありがとう。有活用させてもらうよ」

 

「いいんじゃ、いいんじゃ。かわいい後輩のためじゃしワシが持ってても宝の持ち腐れだわい!エッエッエッ!」

 

 これは海軍船とキツネ船の修理と改装とかと一緒にネルソンも改装を───と思ったが改装に収まらないだろうな。新造したほうが案外安く早く済むかもしれんな。今持っているベリーは5億2000万ベリーと大量の武器、この武器を売却すれば100万ベリーは超えるだろうが船の建造費と比べたら雀の涙ほどだ。

 

「はい、お爺さん。採血終わり、あっちのソファで休憩してて。紅茶とコーヒーあるから好きなの飲んでていいですよ」

 

「酒はないのかい?」

 

「ないです」

 

「少しも?」

 

「一切ないです」

 

「分かったわい、じゃあコーヒーを飲むぞ」

 

「えぇ。そう言えばお爺さん、さっきから自分のことを大先輩とか私のことを後輩ってお爺さん若い頃海賊だったの?」

 

 満杯になった輸血パックを急速凍結機に入れながら爺さんに気になっていたことを問いかける。

 

「そうじゃ。ある海賊のクルーとして世界中で暴れまわったんじゃ!あのロジャー海賊団とも一戦交えたんじゃぞ!」

 

「へー」

 

「なっ!さては信じてないな」

 

「そんなことないですよ。それでそのブイブイ呼ばせていた海賊がなんでこんな辺鄙(へんぴ)な島に?」

 

「むぅ……まぁいいわい。ワシがまだ海賊やってた頃にな、正確な海域は忘れたがここら辺である海賊と戦ったんじゃ」

 

「ワシらは武器に毒を塗り戦い相手を壊滅に追い込んだ。じゃが歳をとったらワシみたいにも良心が生まれ彼らの残党を探しておるんだ。もう誰も生き残っていないと分かって思ってもな」

 

「………海賊はしぶといですから骨になっても航海を続けているかもですよ」

 

「じゃとしたらいいんじゃがなぁ」

 

「はい、10分経ちましたからもう戻って大丈夫ですよ」

 

「そうかい、んじゃお暇させてもらおうかな。お嬢さん、いい人生を送れよォ〜」

 

 そう言って爺さんは出ていった。話し方もその内容も昔を懐かしむような感じでリアリティがあった。信じてもいいのだろうか。

 

 それはそれとしてこの設計図は思いがけない戦利品だ。これらを元にウォーターセブンで建造してもらおう。建造費はだいたい15億ベリーは行くんだろうなァ。これは懐がすっからかんになるどころか全く足りなくなる予感。

 

『バァッン!』

 

「ジ、カーミラさん!」

 

 勢いよくドアを開けて入ってきたのはニコラだった。走ってきたのは肩で呼吸している。

 

「両親から許可得てきました!だから貴方のそばにいさせてください!」

 

「あーうん、分かったよ」

 

「やったぁ!!」

 

 こうして、補給しによった島で思いもよらない品と愛人を手に入れてしまった。これがいわゆる“棚からぼたもち”ってやつですか。

 

 

 




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〔主人公の名前と姿〕
エドワード・アンナ⇨ロリカード
クルシュ・ジルベール⇨アーカード
ヴィクトリア・カーミラ⇨セラス
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