HELLVOYAGE〜地獄が航海する〜   作:結城朝晴

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08話 水の都

 "水の都"と呼ばれ、町の中心に巨大な噴水が存在する巨大な島。島には水路が張り巡らされ人々はブルというのか生き物を船にして日常的に使って生活している。

 

「美しい島だ」

 

「そうですね。ジルベールさん」

 

 甲板でニコラと一緒に進行方向に見えるウォーターセブンを眺めていると踏切の音が聞こえてきた。

 

「あれが海列車……」

 

 彼方からやってくる蒸気機関車のような見た目の()だ。あの見た目で船なんだから前世で知ったときは誤植じゃないか目を疑った。

 

 力強いブロアー音と獣の咆哮のような野太い汽笛を鳴らしながらやってくる海列車はネルソン号をさっそうと抜かしていきウォーターセブンへ向かっていった。

 

「ジルベールさん!私達も早く行きましょう!」

 

「そうだな」

 

 船はどんどんウォーターセブンへと近付いていき港に停泊した。

 

「でけーガレオン船だな、兄ちゃん。冒険家か?」

 

 船から降りたら、船を眺めていた市民と思われる男に話しかけられた。

 

「違いますよ。海軍とは違う正義を背負った正義の味方ってとこですよ」

 

「海軍とは違う正義ねぇ。あんたあれか天竜人の所業を見て海軍辞めてきた口だろ?」

 

「そんなところですね」

 

「じゃああんた、史上最悪の偽善者クルシュ・ジルベールの事件聞いて胸がスカッとしたろ?わはっはっはっ」

 

 そのジルベールが目の前にいるんですがね。

 

「確かにスカッとしましたね。市民の方々はどう思ったのでしょうか?」

 

「そりゃあ皆、胸がすく思いさ。あのフィッシャー・タイガーですらなし得なかった天竜人の殺害。天竜人を憎む人間はいても感謝する人間なんていないからな」

 

「そうでしたか。あ、私はこれで失礼します」

 

「あぁ、呼び止めて済まないな」

 

 そう言うと男は人混みの中に消えていった。ニコラも男が見えなくなったと同じくらいで船から降りてきた。

 

「遅れてごめんなさいジルベールさん」

 

「大丈夫だ。じゃあ船をしまうから少し離れていてくれ」

 

「はい」

 

 右腕を名状し難い状態、影に変化させて船を覆い尽くす。そのまま船を影に取り込んでいき、船を体内にしまい込む。こうすれば好きな時、好きな場所でいつでも船を使える。

 この一連の光景を見た市民たちはエネル顔をしていてワンピース世界に来て一度は見たかったものが見れて大満足したのはまた別のお話。

 

「ニコラ、まずはガレーラカンパニーの本社に行くぞ」

 

「はい、ジルベールさん!」

 

 ブルを借りて町中を進んでいく。この個体は結構賢いらしくガレーラカンパニーの本社がある造船島へ入るために通る水門エレベーターまで最短ルートで向かってくれた。

 

「水が下ってる道でも進めちゃうんですねこの子たち」

 

「強い生き物だな、あとで水水肉でもあげるか」

 

「水水肉?」

 

「この島の特産品だ。それとこいつの好物でもある」

 

「そうなんですか。ジルベールさんって物知りですね」

 

「そうかもな」

 

『お入りください。エレベーターは“造船島”造船工場及びウォーターセブン中心街へまいります。門の中へお急ぎください、閉門1分前です』

 

 水門エレベーター、門を閉じて中に水を足していき水位を上昇させてまるでエレベーターのように移動する。

 前世でもこの方法を取っている場所は多くある。一番有名なのはパナマ運河だろう、よくパナマ運河をスエズ運河のように海面水路だと勘違いしてる人がいるが実際はこのエレベーターと同じ方法で大陸を船が跨いでいる。

 

 扉が開かれればまず目の前の巨大な噴水が目に入る。遠くからでも巨大に見えたんだ間近で見ればその大きさは尋常じゃないことが身に沁みて分かる。

 

 そしてこの街に来た目的、ガレーラカンパニー本社へ通ずる1番ドックにたどり着く。

 

「ここがガレーラカンパニー……」

 

「ああそうだ。そこの職人さん仕事を依頼したいんだが」

 

「ん?ワシか?」

 

 襟を立てた作業服に四角い長っ鼻、こんなキャラクターワンピースでは一人しかいない。1番ドック大工職職長兼CP9“カク”だ。

 

「ええ、仕事の依頼をしたくてな」

 

「ほう、なんじゃ?」

 

「軍艦5隻と海賊船1隻の修理と改装、ガレオン船1隻の改装、そして建造依頼だ」

 

「こりゃまた依頼が多いな。取り敢えずその修理する船を見るとしよう、船を泊めたた場所は?」

 

「今持っている」

 

「ん?ワシャは船を泊めた場所わ聞いているんじゃ」

 

「私の能力を使って体内にしまっている。見るんだったら出すが場所はあるか?」

 

「ワハハハ、そうかなら確か5番ドックが空いてるはずじゃ。そこに1隻ずつ出してもらおうか。海に浮かんでいるよりよく見えるわい」

 

 その後、海軍から押収した軍艦5隻とキツネ船の具合を見てもらった結果、損傷は激しいが修理すれば問題なく航海できるとのことだった。ネルソン号に関してはこの前作ったばっかりなのに改装してもらおうとしてることに気付いて皮肉を言いやがった。

 

「そうじゃな、6隻分の修理で5000万前後、7隻分の改装で6000万前後で合計1億ベリーくらいじゃな。改装で何を取り替えるかは知らんが何をつけても大抵6000万程度じゃ」

 

「そうか。改装してもらいたいものはあとで紙にして渡す」

 

「そうしてくれると楽じゃわい。それで、建造の依頼はどうするんじゃ?カタログから選べるぞ?」

 

「大丈夫だ、既に設計図がある」

 

「おぉそうだったか。その設計図を見せてくれ」

 

「すまないがそれはできない。君とはまだ会ったばかりこの設計図の船は私の運命を左右する大事なものこの会社の社長にだけ見せるつもりだ」

 

「アイスバーグさんに?そのつもりならいいんじゃが」

 

「アイスバーグさんは今どこに?」

 

「アイスバーグさんなら───」

 

「ンマー。呼んだか?」

 

 突如として現れた男こそこの街の市長でありガレーラカンパニーの社長“アイスバーグ”だ。

 

「アイスバーグさん!?今日はカーニバルの町サン・ファルドの市長と会談とか色々あったはずじゃ?」

 

「面倒臭いからキャンセルしてきた」

 

 漫画通りの人物像だな……。

 

「はじめましてアイスバーグさん」

 

「あぁ、はじめましてえーっと」

 

「史上最悪の偽善者クルシュ・ジルベールです、アイスバーグさん」

 

「ンマー。流石だなカリファ」

 

「恐れ入ります!!」

 

「それでお前さんは俺にだけその設計図を見せたい訳だな」

 

「そうだ。これはある人が発明したもの、それを私が許可なく広めたりするのは間違えだと思ってな」

 

「そうか、それならお前ら少し離れてろ」

 

「「はい」」

 

「んで、その設計図とやらは?」

 

「これだ」

 

 もらった設計図を両方ともアイスバーグにわたす。その設計図を見ているとアイスバーグの顔はみるみる変わっていった。

 

「お前さんこれどこで手に入れた」

 

「教えられない。その高圧水管ボイラーというものを動力源として船を動かすのがその巡洋戦艦だ」

 

「こんなものを発明するやつがいるのか……」

 

「で、どうなんだ。この設計図通りに君達はこの船を建造できるか?」

 

「できるかもしれない。いや、建造しよう。こんな船見たことも聞いたこともない技術者としての血が騒ぐってもんだ」

 

「建造費は?」

 

「ンマー、ざっと70億ベリーあれば間違いなく足りる」

 

「建造にはどのくらいかかる?」

 

「こんな船作ったこともないから正確にはわからねぇが、おおよそ3年か4年ってところだろうか」

 

「分かった。今手持ちが5億ベリーしかない、取り敢えずさっきカクに依頼した修理だけ依頼しよう。改装に関してはそのタービンを乗せる予定だったからな」

 

「ンマー。これをあの船に乗せるには無理があるぞ」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ、無理やり乗せたとしても船が沈んでしまうだろうな。だったらあの船を俺らが買い取ってやろう」

 

「本当か!?」

 

「あぁ。船としては修理しねぇと使えねぇが部品はまだ生きてる。使えるところだけとってもまぁまぁの金にはなるからな」

 

「そうか、売ろう。だいたいいくら位になりようだ?」

 

「6隻で70億ベリーくらいだな」

 

「「は?」」

 

 彼の言った金額には今まで黙っていたニコラも素っ頓狂な返事をしてしまった。

 もしかしてこいつ……。

 

「もしかしてアイスバーグさん……」

 

「そうだ、こんな設計図見せられて金がないから作るのを待ってくれなんて技術者泣かせだ」

 

 作りたくてワクワクしてるから無償で引き受けるつもりだっ!

 

「こいつはガレーラカンパニー設立以来過去最大で最高の依頼だ。ウォーターセブンの職人の名においてドンと作ってやろう!この設計図預かるぞ」

 

「いいですが、1つ条件が」

 

「なんだね?」

 

「この設計図の複製の製造を禁止します。この設計図は貴方がフランキーに渡したものと同じくらい大切に扱ってくれ」

 

「なっ、お前それをどこでっ!」

 

「私は政府の役人でもオハラの考古学者でもない、ただの民衆の守り手だ。共に秘密を持つ者同士仲良くしたいんだ」

 

「そういうことか、お前自身も気に入った。必ずや守り通し建造してみせよう!」

 

「よろしく頼む、君たちが買い取ってくれる船たちはどこに停泊させておけばいい?」

 

「ンマー。そうだな、西海岸に停泊させといてくれ」

 

「分かった。では」

 

 カクとカリファの横を通りすぎる際少し脅してから5番ドックを出ていった。脅した内容は簡単だ。新造艦に関して詮索したり設計図を複製しようとするな、さもなくば政府機関の殆どを更地にすると脅しといた。政府のためにすべてを犧牲する彼らでもその政府自体を人質に取られたら何もできまい。

 

 

 

 

 

 

「ブルーノ、俺たちの正体見破ったやつがいる」

 

「それは本当かルッチ。任務に支障はあるのか?」

 

 ウォーターセブン裏町に存在する宿の一室に潜入中のCP9たちは集まっていた。この宿表向きは普通の宿だが本当の顔はウォーターセブンでのCP9の拠点なのだ。

 

「支障はない。ジルベールはこちらが手を出さなければ何もしてこないようだ」

 

「なら、無理に手を出すわけにはいかないわね」

 

「ジルベール?マリージョアを襲撃したあのジルベールか?」

 

「そのジルベールね」

 

「ワシとカリファが奴を間近で見たがあれは化け物じゃな。上手く抑えてるようじゃが近付けばよう分かる」

 

「奴がアイスバーグに渡した設計図が気になるが、我々の任務はアイスバーグが持つプルトンの設計図の奪取だ。ジルベールはノータッチだ」

 

「「「了解」」」

 

 

 




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