魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0110:あっちでの事。

 ――リーム王国への即時派遣が決定した。

 

 二学期に入ってから殆ど学院に通っていないけれど、大丈夫だろうか。出発は明日決行で、アルバトロスに滞在しているリーム王やリームの第三王子殿下も一緒に付いてくるそう。 

 第三王子殿下は学院へ留学しているから直ぐに国へ帰らないのはまだ理解できるけれど、リーム王は何故私たちと一緒にくっついて国に戻るのか。さっさと転移魔術陣を利用して戻れば良いのにと、不満を漏らしたくなる。

 

 あとアルバトロス王国からの派遣メンバーが凄い事になっていた。私を筆頭にアリアさまと侯爵家の聖女さままで派遣されるそうだ。

 護衛や側仕えとして副団長さまにソフィーアさまセレスティアさま。ジークとリンは言わずもがなで、アリアさま付きの護衛騎士に侯爵令嬢さまが侍らせている護衛騎士も。別枠で近衛騎士の人たちも護衛だし、儀式魔術を使うということで教会のシスター陣も参加する。あー……そういえば儀式魔術だったなあと、天井を仰ぐ。

 

 別の事考えようと、ふと二学期からの出来事を振り返る。

 

 「学院、通えていない……」

 

 謁見場でリーム王とのやり取りを終え、城の廊下を歩きながら言葉を零してしまったのを、後ろを付いて来ていたお二人は聞き逃さなかったようだ。前世では大学にはお金がなくて縁がなかったし、確り学べるならと一学期は結構楽しく通っていたというのに。

 

 「仕方ないな。大陸中にお前の名が広まっているんだ」

 

 「ええ。これからもこのような事は多々ありましょう」

 

 苦笑いを浮かべるソフィーアさまと『頼りにされたなら、その分相手から奪い取って差し上げれば良いのです』とセレスティアさま。セレスティアさまって豪胆だよねえと、苦笑を浮かべると鉄扇を広げて口元を隠し目だけ笑っている。

 『ナイはまだ甘いのです』とか言いたそうな感じだった。

 

 「私の所為でご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

 

 学生の本分は学院で確りと勉強することである。ソフィーアさまとセレスティアさま、そしてジークとリンの教育を受ける為の時間を奪っているからなあ。申し訳ないと切に感じてしまう。

 

 「お前が頭を下げる必要はないだろう。それに学院で学ぶことは全て家で習っていたからな」

 

 「わたくしもです。父が幼少期に良い家庭教師をつけて下さったので、問題はありません」

 

 お二人は学院で学ぶことを、家で既に習っていたようだ。え、私だけみんなから学習力が遅れるパターンになるのだろうか。学院の勉強について行けなくなったら、家庭教師を雇えば良いか。今ならそのお金はあるんだし、公爵さまにでも紹介して貰えば変な人は派遣されまい。

 

 「高位貴族って凄い……」

 

 本当に。そして幼少期から高レベルの教育を受けて逃げ出さなかったのも。小さい子ならば、嫌だと言って逃げ出したり真面目に勉強しなかったりとかありそうだ。ご家族の方々も教養が高いから、そういうのを見て育ったのだろう。

 お二人の元々の素養や性格も理由に上がるのだろうが、若干十五歳にしてこの肝の据わりようは羨ましい限り。私は恐らくこうは成れないだろうなあと、苦笑して少し後ろを歩くジークとリンを見た。

 

 「ジークとリンも、また私に付き合わせてごめん。騎士科の授業について行けなくなったら教えて。家庭教師雇うから、一緒に三人で勉強しよう」

 

 三人で部屋で一緒に勉強をするのもアリだし、孤児仲間のクレイグとサフィールも子爵邸で働くことを望んでくれたから、五人でやるのも楽しそう。

 

 「気にし過ぎだ。特進科ほどじゃないからな、こっちは」

 

 「うん。実力さえあれば、あとはどうにでもなるよ」

 

 本当に大丈夫だろうか。ジークの言葉はまだ信頼できるけれど、リンは頭脳よりも肉体へ能力を振っているからなあ。ちょっと、いや大分心配なのだけれども。駄目なら私とジークに家庭教師の方と付きっ切りで教えよう。進級や卒業できないとなれば、支援してくれている公爵さまの顔に泥を塗ることになるものなあ。

 

 「大丈夫かなあ」

 

 心配になって声に出てしまった。

 

 「お前、ジークフリードとジークリンデには過保護だな」

 

 「そうですか?」

 

 「ええ。甘いですわねえ」

 

 家族みたいな関係だ、甘くなるのも仕方ない。お二人も咎めるというよりは揶揄うような印象を受けるから、気にはしない。くつくつと笑いつつ前を見てまた歩き始めると、謁見場から先に退場していたアリアさまと侯爵家の聖女さまが何故か一緒に廊下の隅に立っている。

 

 どうしたのだろうと顔を向けつつ先へと進むとぱぁと明るい顔になるアリアさま。接点なんて殆どないのに、どうしてこうも私を慕ってくれているのか。ソフィーアさまとセレスティアさまに断りを入れ、アリアさまの方へと足を向ける。明日は一緒に同道することになったのだ、挨拶をしておいた方が良いだろう。

 

 「ごきげんよう、リヒターさま。アリアさま」

 

 アリアさまの名前を先に呼びたい所だけれど、彼女たちの実家の爵位を考えるとどうしても侯爵家の聖女さまの方が先になる。リヒターは家名、ロザリンデが名前だったはず。

 

 「ごきげんよう、竜使いの聖女さま」

 

 「ナイさま、ごきげんよう」

 

 リヒターさま、アリアさまが声を上げたのだった。

 

 ◇

 

 お城の謁見場から歩くこと暫く見知った姿が見え、討伐遠征の時のように顔を突き合わせるのだから声を掛けておこうと、侯爵家の聖女さまとアリアさまに向き直った。少し緊張した様子の侯爵家の聖女さま、もといロザリンデ・リヒターさまと嬉しさいっぱいに笑ってこちらを見るアリアさま。

 

 「明日から暫くご一緒になるので、ご挨拶を申し上げておこうかと。――ご迷惑をお掛けすることもあるかも知れませんが、どうぞよろしくお願いいたします」

 

 温度差が酷いなあと見比べつつ、ゆっくりと頭を下げ聖女としての礼を執る私。

 

 「こちらこそ。――以前は多大なご迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした。直ぐに手紙か直接謝罪すべきでしたが、遅くなりました」

 

 侯爵家の聖女さまがしずしずと頭を下げた。以前よりも随分としおらしくなっており、何だか妙な感じがするなと、顔が引きつりそうになるけれどどうにか堪える。一体何があって、こうも変わってしまったのか。

 

 「いえ、わたくしもこの度は皆さまに代わりを務めて頂きました」

 

 私の代わりにリームに派遣され儀式魔術を行使したのだ。異国の地で大変だったに違いないと、感謝とお礼を述べて頭を下げる。アリアさまは学院の授業もあったはずなのに、編入早々申し訳ないことをしてしまった。

 

 侯爵家の聖女さまは学院を卒業されているが……そう言えば彼女は普段何をしているのだろう。聖女を担っているのだし、無職という訳ではない。

 侯爵家で治癒依頼をぼちぼち請け負いつつ、城の魔術陣への魔力補填を二ヶ月に一度行い、貴族として社交の場に赴いているというところか。前回の討伐遠征で失態し、心を入れ替えることが出来たのかもしれない。貴族のご令嬢として終わっているかもしれないが、聖女としてならまだ挽回のチャンスはあるだろうし。

 

 「しかし、リーム王国の聖女さま方と協力して五年延命出来ただけとは……私が行ってたとしても成功する可能性は少ない気がします」

 

 国から選出されたということは、現役の聖女さまたちの中ではトップクラスという証明だ。本来ならば筆頭聖女さまが出張る案件だが、老齢を理由に外に出ていない。筆頭聖女さまのお姿は遠目で拝見したことがあるが、年齢は公爵さまと同じくらいという印象を受けた。

 なら、まだまだ現役を頑張れそうなものだけれど、無理をさせられない状況か、実力が備わっていないのか。政治色が強く反映される場合もあるそうで、筆頭聖女を選出した時の情勢が色濃く出るそうだ。その時の状況を知らないので、なんとも言えないけれど筆頭聖女さまにはまだまだ頑張って頂きたい。

 

 「千年、万年生きると言われている聖樹が何故枯れたのか、理由は定かではないそうですから」

 

 バカスカ許容を超えた農業生産していた可能性もあるが、事実は闇の中だろう。リームの上層部しか分からないだろうし、下手をすれば把握していない可能性だってある。向こうが原因究明出来ていないことに頭を抱えるけれど、お金はキチンと頂けるのだから有難いことではある。

 

 「向こうの方々の説明だと、詳しい人はいらっしゃらないそうです。移植や挿し木も考えたそうですが、聖樹が枯れると元も子もないので手を出せないと仰っていましたから」

 

 侯爵家の聖女さまとアリアさまが状況を説明してくれる。エルフのお姉さんズも同行していたけれど、彼女たちからの助言はなかったのだろうか……。謁見場で聞いたこととほぼ同じだから、アルバトロス王国側もリーム王国側も聖樹についての情報は少ないようだ。

 

 「始終、無言でしたわね」

 

 「はい。私たちとはお話して下さるのですが……他の方々とは全くでしたから」

 

 アリアさまとリヒターさまとは会話を交わしていたようだが、魔術に関しての助言はあったが聖樹に関してのものはなかったそう。ついて行った理由が良く分からないなあと首を傾げる。

 お姉さんズが同行したのは物見遊山だったのかもしれないなとふと思うと、その説が濃厚な気がしてきた。『リームに行ってくるわね』『ちょっと様子を見てくるね~』と気軽に知らせてくれたので、てっきりアドバイスでも送っていると思っていたのだが。全く違うようで。

 

 「あ、ナイさまっ!」

 

 「どうしましたか?」

 

 「お借りしていたストール、本当にありがとうございましたっ!」

 

 そう言ってアリアさまが思いっきり頭を下げる。一応男爵家のご令嬢なのだから、そう簡単に頭を下げて良い物なのだろうか。彼女らしいけれど、少し心配になるが本人は気にも止めてない。

 

 「わたくしにもお貸し頂き感謝致します」

 

 侯爵家の聖女さまは綺麗にカーテシーをしてくれたのだった。彼女たちにストールを渡したのは、私がリームに赴かないようにする為だったけれど、まあ仕方ない。

 エルフの方々の反物も追加で時折届いていて、使い道に困るのでいろいろと作って貰っては、クローゼットに仕舞い込んだままとなっている。アルバトロスの聖女の質が上がるなら、渡しても問題はないだろう。

 

 「お気になさらず。前回と今回の件でご助力頂きましたので、返却は不要です」

 

 だから文句なんて付けてくれるなよという、ある意味での賄賂であり脅しだった。何度か『頂けませんっ!』『構いませんよ』というやり取りをして、ようやく納得してもらった。

 

 ふと侯爵家の聖女さまを見る。

 

 祝福の効果がかなり薄くなっているような気がするが、明日から行動を共にするし掛け直しする機会はあるから問題ないか。効果の持続時間は、魔力の相性や掛けた相手、掛けて貰った相手の感情にも左右される。

 彼女に対してあの時はあまり良い印象を受けていなかったから、その辺りも反映されたのだろう。彼女もまた私に対して良い印象は持っていなかっただろうし。

 

 「ありがとうございます! 明日からも頑張りますね! ナイさまなら必ず成功します!」

 

 「ええ。貴女であれば必ず」

 

 嬉しそうに笑うアリアさまと落ち着いた表情と声色で侯爵家のご令嬢さまがそう告げて。

 

 「成功すると良いのですが」

 

 彼女たちに苦笑いを浮かべて、そう返す私だった。

 

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