魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

115 / 740
0115:会議参加。

 アルバトロス王国からは、向こうが私たちに危害を加えようとしないなら、協力してやれとの返事が来た。危害を加えようとするなら、問答無用でやっていいとのこと。そうなっていれば副団長さまを軸とした虐殺部隊が誕生するところだった。

 

 もう一つ陛下からの伝言で『強要したのはリーム王なのだから、聖樹を枯らした責任は一切聖女にはない。気にするな』と伝えてくれと陛下から外務卿さまへと言伝を預かったそうで。確かに責任はないのだけれど、心情的にはどうにかしたいと思ってしまうもので。ただ次はないようにしないと。つけ入れられる隙になりそうだから。

 

 王太子殿下と第三王子殿下が理性的で良かったと安堵しつつ、聖樹を祀っている神殿から城へと戻って会議室へと案内されたのだ。

 

 リーム王国の会議室はすし詰め状態だった。アルバトロス側も参加しているから仕方ないけれど、リームのお城の規模は少々小さい気がする。一次産業が活発な国家だから仕方ないのかもしれないが、もう少し広くても良かったような……。リーム王は倒れたままで議長は第一王子殿下もとい王太子殿下が執り行う。

 それに第二、第三王子殿下も参加しているが、神妙な顔で議会に集まったメンバーを見ていた。お邪魔している身だし文句は良くないと、リーム王国の重鎮さまたちが集まっている部屋の片隅で黙っている私たち。

 

 「聖樹が枯れてしまった……これから我々はどうすれば……」

 

 年配のお貴族さまが禿た頭を両手で抱えてそんな言葉を零した。なんだかリーム王も同じ台詞を言いそうだなあと、目を細める。

 

 「どうしたもこうしたもないだろう。アルバトロスの聖女が枯らしたのだ。……陛下は何故『失敗しても不問とする』などと……」

 

 はい、枯らした本人です。それについては誠にごめんなさい。ただそれを命じたのは貴方たちの国の一番偉い人です。分かっているなら文句は言わない方が良いのにと渋面になる。

 この場にはアルバトロス王国から副団長さまと外務卿さまに書記官さま、教会の統括、ジークとリンに護衛の近衛騎士さま数名、アクロアイトさまと私。そしてこっそりお婆さまがこの場に居る。他の方は控室で私たちが戻ってくるのを待っている。

 

 「やめろ。――我が国の聖樹が枯れてしまったのは寿命だ。決してアルバトロス王国の聖女殿が悪い訳ではない。これ以上彼女らを侮辱する発言をしてみろ、分かっているな」

 

 ぬぐっ、としかめっ面を晒して口を閉ざすリームの上層部の方々。もちろん、顔色を変えない方も居るし、王太子殿下に窘められたことにほくそ笑んでいる方も居る。

 どの国も一枚岩じゃないよねと遠い目になる。リーム王国の内情には詳しくないから、私に対しての嫌味が止まるなら有難いけれどリーム王が倒れてこの場に居ないのに、王太子殿下はリーム上層部の進退を決めるような言葉を紡いだが大丈夫だろうか。

 

 「王太子殿下、以前から聖樹の問題は表面化しておりました。――聖樹に頼りきりの状況をどうにかしようと模索していた所に……」

 

 「嘆いても何も始まらん。我々は聖樹からの自立を目指し改善の道を歩む。――陛下は頑なに聖樹に頼ろうとしていたが、良い機会だ。神から与えられたリームに対する試練と受け取ろう」

 

 王太子殿下は凄く前向き。聖樹に依存しているリームの現状を良く思っていなかったようだ。こくこくと王太子殿下の言葉に頷く、第二王子殿下と第三王子殿下。彼らの意思は王太子殿下と同じみたい。

 

 「何を仰いますか、殿下っ! 神殿が聖樹を失えば、信仰を失うも同義っ!! 聖樹がなければっ、聖樹がなければ……! うっ……」

 

 神官さまによる男泣きが始まった。えぐえぐ咽び泣き、平手で机をべしべし叩いているのだが、同情している人とドン引きしている人が半々。

 ちなみに私はドン引き。心の拠り所というよりも、自分の仕事がなくなるから嘆いているようにしか見えない。本当に信仰心がある人なら聖樹の寿命と知れば諦めるのが普通のような。

 

 「聖樹に頼ることはもう出来ぬ、神殿の皆にはこれから苦労を掛けることになるのは十分理解している。聖王国の教会にも助力を乞い立て直しを図ろう」

 

 王太子殿下は随分と思い切りが良い。まるでこの展開を予想していたように。聖樹がもう駄目だとは理解していただろうから、対策を練っていた可能性だってある。リーム王より話の理解が早そうだし、無茶なことは言わなさそう。

 

 「皆、聞いて欲しい。陛下は聖樹が枯れたことにショックを受け倒れた。陛下の回復を待って協議など悠長なことは言っていられまい」

 

 だから陛下が目覚めるまで我々だけででも協議し、これからの事を考えようと。確かに神殿の聖樹は枯れてしまった。

 命の根幹となっていた魔石が機能していないので、復活は無理。だが、盲目シスターの言葉で少し希望が見えている。ただ彼らがシスターや私たちの言葉を信じてくれるかは分からない。せめてリーム王国内を移動出来る権利をもぎ取りたい所。

 

 「然り」

 

 王太子殿下を確りと見すえて、年若い男性が頷く。

 

 「ですな」

 

 彼もまた王太子殿下を見て、中年男性が頷いた。

 

 「ですが……我が国の聖樹が……」

 

 白髪頭の年配の男性は聖樹にまだ固執しているようで。

 

 「……聖樹なくしてどうしろというのか」

 

 聖樹に固執している人同様に、まだ聖樹を頼ろうとしている老獪そうな男性が。

 

 「しかし、陛下不在で我々で勝手に事を決めても良いのでしょうか?」

 

 王太子殿下の言葉に対する反応は様々だった。言葉を受け入れる人、まだ現実を受け入れられず聖樹に頼ろうとする人。責任の拠り所を気にする人。沈黙を守ったままの人。そんな人たちを王太子殿下はゆっくりと見渡して、口を開いた。

 

 「問題ない。責任は全てこの国の王太子である私が取ろう。それに助言役としてアルバトロス王国の聖女殿や、魔術師として名高い副団長殿も同席して下さる」

 

 「アルバトロス王国から派遣されて参りました、聖女ナイ・ミナーヴァと申します」

 

 「アルバトロス王国魔術師団副団長、ハインツ・ヴァレンシュタインです」

 

 王太子殿下が私たちに視線を向けたので、立ち上がり会議室の中に居る人たちに頭を下げた。ざわざわと騒いで『子供じゃないか』『あれが黒髪の聖女か……』とか、肩に乗っているアクロアイトさまを見て『本当に竜を従えておる』とかいろいろ好き放題に言われてしまい。

 副団長さまもリーム王国上層部では有名なようで『あれがアルバトロスの魔術師団副団長』とか言われてる。他のメンバーは王太子殿下に呼ばれていないから、着席したまま。

 

 「――始めよう。皆、建設的な意見を求む」

 

 聖樹に頼らない道を模索するなら、私たちが同席する必要はあまりなかったか、と天井を見上げるのだった。

 

 ◇

 

 王太子殿下による会議はどうなるだろうかと固唾を飲んで見守っていたが、やはり聖樹を望む声が多い。しかも神殿――聖王国の教会の教えをリーム王国に合ったものにしているそう――は聖樹がないと困るからかなり必死だし、陛下のご回復を待って~と呑気なことを言う人も居る。王太子殿下と同様に、聖樹に頼り過ぎているのは危険と唱える人も少なからずはいる。

 

 会議で私たちが助言をすることはなかった。

 

 というより私に敵意を向けてる人が多かったというべきか。その度に外務卿さまが『聖樹への魔力補填を強要したのはリーム王。書面にて何が起こっても責任は問わないと一筆頂いております。聖女さまを責めるのは筋違いでございましょう』と庇ってくれた。それに聖樹がどうにかなるかも、なんて言い出せば絶対に利用されるだけだし。

 

 彼らの意見のほとんどが、枯れた聖樹の扱いをどうするのか、求心力を失うことになる王家の今後、リームの今後である。

 国民の『こ』の字も出てこないことに、この国大丈夫なのだろうかと本気で心配した。唯一そんな人たちと戦っていたのは、王太子殿下と少数のお貴族さまだった。そうして会議が終わって王太子殿下と他の殿下方に呼び止められ、別室へ向かうようにと乞われたのだった。

 

 「前途多難そう」

 

 会議が終わり外に出て待機組と合流した安堵からなのか、ぼそりと愚痴が零れた。外にはリーム王国の護衛騎士が立ち番をしており大きい声は出せないが、このくらいならば漏れたりしまい。もちろん盗聴器のような魔道具があれば、別だけれど。

 

 どうにも聖樹信仰が強すぎて、にっちもさっちもいかなそうなリーム王国。リーム王はある意味で聖樹狂いだし、そんな彼に追随する人も多い気がする。

 聖樹に頼り切りは止めようという声もあるが、聖樹なくしてどうするのかという声にかき消されてしまう。王太子殿下もまだ模索している最中のようで、聖樹派の人たちを押し切る手札を持っていなかった。

 

 「随分と他人事だな」

 

 「ですわね。とはいえ枯れた責任をこちらへ擦り付けるようなら容赦はしませんが」

 

 くつくつと笑っているソフィーアさまとセレスティアさまから手厳しい言葉が私に飛んできた。枯らしたのは不本意、やりたくてやった訳じゃない。

 

 「警告はしましたよ。まあ、枯れたのは本当に予想外でしたが……」

 

 リーム王からもう少し言質を取って置けば良かったとは思うけれど、後の祭り。リーム王はまだ目が覚めないそうで、最高決定権を持つ人が居ないので上層部も右往左往している真っ只中。

 

 「それよりも会議の間は何も言えず仕舞いだったので、徒労に終わってしまいました。――ごめんなさい」

 

 アルバトロス王国側には、私の我儘で付き合って貰っているからなあ。

 

 「お前が頭を下げることはないだろう。気にするな」

 

 「ええ。ナイが発言できなかったことは仕方ありません」

 

 とっとと帰って来ても良いんだぞと陛下から言われてはいたけれど、枯らした責任というよりも『聖女がリーム王国の聖樹を枯らした』という事実だけが広がらないか心配だったから残った訳だけれど。現場を見ていない人からすれば、リーム王に打診されて魔力補填を行ったのに、聖樹と私の相性が悪く枯らしてしまったのだとか、魔力の相性が悪いのに金欲しさに黙っていたとか流されかねないから。本当、人の噂というのは怖いもので、事実よりも面白いネタの方に乗っかってしまうのが人間というもの。

 

 「ナイ、ナイは悪くない」

 

 「ああ。明らかに向こうが強要したんだし、協議の場では発言権がないも同じだったんだ。シスターのあの話をしたかったのだろう?」

 

 リンが私の傍によって何故か頭を撫でてくれた。ジークも擁護してくれているけれど、意気込んだ割には何も言えず仕舞いだったので、超恰好悪いというか。

 

 「うん。可能性的には一番高そうだし、賭けてみるのも悪くはなさそうだったから」

 

 『人間であんなことが分かるだなんて信じられないわ……』

 

 唐突にぱっと光ってお婆さまが現れた。彼女が信じられないのは

 

 「お婆さま。一体どちらに行っていたのですか?」

 

 『私は気ままな妖精。ちょっとお話を聞きに行ってたのっ!』

 

 本当に自由だな。姿が見えないことを良いことに、城内をウロウロしていたらしい。ある意味で盗聴器のような存在だよなあと、お婆さまを見つめるとパチンとウインクした。

 

 『あのね、あのねっ! ……――』

 

 リーム王国は上層部は主に二つの意見に分かれるらしい。聖樹復活を願う派と聖樹からの脱却を考えている派、細々したものを含めるともっと細分化するらしいが、大雑把に二派に分かれるということだ。

 

 聖樹復活派はリーム王を御旗とした歴史の古いお貴族さまたちが、聖樹脱却派は王太子殿下に第二、第三王子殿下を含む、新興お貴族さまで構成されているとか。なるほど、王太子殿下が私をあっさりと受け入れたのは、聖樹からの脱却を画策していたからか。

 今すぐ完全に聖樹依存からの脱却は無理な話であろう。段階的にゆっくりと離れていくのが得策。リーム王から代替わりする時には、少しでも依存状態を無くしておきたいのかも。今なら現王に愚策をなすりつけることも出来るし。

 

 『あと神殿には認識阻害の魔法が掛かっていて、外から見ると聖樹が枯れていないのっ!! だからリーム王都の民は知らないのっ、滑稽よね~!』

 

 それはそれで悪意があるような。まあ私たちの都合を考えるなら、バレない方が良いけれど。そろそろヤバいと分かった時点で、認識阻害の魔術陣を構築してリームの聖女さまや魔力持ちの人に補填させて維持しているのだろう。

 きゃきゃと楽しそうに笑っているお婆さまに悪意はないのだろう。人間の行動が不可思議で面白いと言ったところか。

 

 「なら暫くはリーム王家への不信が向くことはないですね。この後の王太子殿下たちとの話し合いで、シスターの言を伝えてみます」

 

 もちろん、盲目のシスターが発言したなんて言わない。彼女に危害が加わる可能性があるので、黙っているか私が言ったことにする。

 

――どこかへ消えてしまいました。

 

 聖樹にはまだ魔力が残っていたそうだ。私が魔力補填をしたと同時、大きなうねりとなり小さかった魔力が私の魔力と同化して、地面を伝ってどこかへと消えたそう。

 副団長さまとお婆さま曰く、この土地に縛られているからそう遠くへは行けないとのことで。そういうことなら会議の場で伝え外出許可を頂き、探しに行ってみようとなったのだが。発言は出来ず仕舞い。

 

 「皆さん、お待たせして申し訳ない」

 

 待機していた部屋へと入って来た王太子殿下を始めとした、第二、第三王子殿下に数人のお貴族さま。殿下からは信頼たるメンバーだと言ってくれてはいたが。さて、今度こそと大きく息を吐いて王太子殿下と目線を合わせるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。