魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0126:野生の馬。

 アリアさまのご実家、フライハイト男爵邸を出てすぐにダウジングを再開した。ぷらんと指輪が地面へ垂れているけれど、反応する様子はなさそう。

 アリアさまとロザリンデさまも同じようで、指輪が動く気配はなさそう。移動しながら、三方向に分かれる予定で、男爵領を隅々まで歩けば夕方には終わるそうだ。何か見つかると良いのだけれど、見つかったら見つかったで男爵領が大変な事になりそうだ。

 

 一番平和で穏当なものは水脈か岩塩地帯の発見だろうか。金、銀、銅などの鉱脈が見つかれば、話が大きくなってくる。

 鉱石に含まれる含有量と質で価値が決まり、含有量が少なければ採算が取れず、鉱脈が見つかっても旨味がないそうだ。だから不発に終わる可能性もあると男爵さまに説明した訳だが、何が見つかるのか楽しみではある。

 

 一攫千金を夢見て一山当てた人だって実際に居るのだから、期待せずにはいられない。鉱脈が見つかれば土地を所有する男爵家のモノとなるが、魔石の鉱脈が発見されたとなれば国が介入するだろう。

 

 「良い物が発見されると良いですね、アリアさま」

 

 鉱山と聞くと環境汚染が心配だけれど、魔術や魔法でクリアしているそうだ。随分と昔に鉱山から金属を垂れ流しており、病気になる人が多数発生したが原因究明して対策を施したとか。

 科学的にではなく魔術や魔法で解明されたことは不思議でならないが、そういうことらしい。なら、気兼ねなく見つけても問題はなさそう。

 

 「ナイさま。領が発展するのは嬉しいですが、父や兄はその手の知識がないので、どうでしょう……」

 

 アリアさまに声を掛けると、彼女のご家族には鉱山経営の知識はないようで。言っちゃ悪いが片田舎の男爵領を運営している方に、鉱山運営の知識があったらちょっと怖い。自領に鉱脈がある可能性を見出し、勉強して知識を得たとかならまだ分かるけど。

 

 「そうなれば国が援助してくれるかと」

 

 私が副団長さまに視線を向けると、彼はアリアさまの方へ向き口を開いた。

 

 「ええ。何が出るかはまだ分かりませんし、見つかったとしても更なる解析が必要でしょうが、利益のあるモノと判断されれば陛下は予算を組まれるはずですよ」

 

 規模の大きい領ならば自前で全てを出来るかもしれないが、辺境の田舎領だし経営状態もよろしくなさそう。

 まあだからこそ国が目を付けて、調査団が派遣されているから気にする必要はないが、アリアさまは真面目だから気になるのだろう。国営となっても利益の一部は男爵領に還元されるはずである。そこから領地改革を進めれば貧乏からは脱出できる。

 

 あとはアリアさまのお父さまやお兄さまが、欲に飲まれないかが問題かな。

 

 国から定期的に入ってくるお金に目が眩んで、懐に貯め込むだけだと領地が発展しないし。まあ、この後の私たちの頑張り次第だろう。

 

 「さて、分かれてそれぞれで捜索を開始しましょうか」

 

 「はいっ!」

 

 「ええ」

 

 「はい」

 

 副団長さまの言葉に元気よく返すアリアさまに続いて、ロザリンデさまと私が返事をする。男爵邸から少し離れた場所で、山へと続く道をロザリンデさまが行き、田畑が広がる場所をアリアさまが、森の中を私が担当することになった。それぞれに護衛の騎士や専門家の人がついて回る。

 

 「では、また後で合流いたしましょう」

 

 副団長さまの言葉にみんなが頷いて、それぞれの持ち場へと散って行く。私は森の中を担当するのだけれど、魔物とか大丈夫なのだろうか。

 副団長さまが何故か私の組に入っているし、ジークとリンも居るから心配はしていないが、何が起こるか分からないのが森の中である。リーム王国でゴブリン退治を済ませた後にオークが出てきたりもしたのだから、警戒するに越したことはない。

 

 ジークとリンが先行して、鬱蒼と生えた草を掻き分けて道を造りながらゆっくりと進んでいく。所どころから日差しが差し込んでいるので、足元の安全確認は安易だった。後は虫や蛇に気を付けつつ、魔物にも気を配る。

 

 「なかなかですねえ……」

 

 小一時間ほど森の中をうろついても何の反応もない。そう大きい森でもないので、半分の調査を終えたといった所だった。

 

 「少し休憩を取りましょう」

 

 副団長さまが声を上げて足を止める。そこは小川が流れており、休憩するにはもってこいの場所だった。腰を下ろせそうな石を探しつつ、田舎故か水は透明なので川で手を洗ったり顔を洗ったり。

 アクロアイトさまが私の肩から飛んでいき、川の中へにダイブした。浅いし水量も多くないので、溺れたり流されたりする心配は皆無なので、一人遊びしているアクロアイトさまを見守りつつ休憩を取る。私の背後で妙な気配を感じたが、理由は分かり切っているので後ろを振り向くなんて野暮なことはしなかった。

 

 ジークとリン、護衛役の方たちも交代で休憩を取ってから、再開された探索。森の中をあるくこと暫く、自然の中での水遊びをしてご機嫌なアクロアイトさまが私の耳元で一鳴きして肩から飛び立つ。それと同時に指輪がアクロアイトさまが飛んだ方向へぐぐぐと動くけれど、アクロアイトさまを放っておく訳にはいかない。

 

 「流石に不味い。追うぞっ!」

 

 「ええ、何かあれば大問題となってしまいますもの。――参りましょうっ!」

 

 「聖女さまの指輪も反応していますので、何かあるかと。行きましょうみなさん」

 

 私より先に反応したのは、ソフィーアさまとセレスティアさま、そして副団長さまだった。あと少しで捜索を終える所だったのだが、急展開を見せ。

 

 「ナイ、行くぞ」

 

 「行こう」

 

 「うわっ!」

 

 ジークとリンが声を掛けると、リンが私を抱えあげて走りだす。確かに背が小さいから足が一番遅いけれど、問答無用で抱きかかえられるとは思わなかった。

 行動に移すのが早いなあと、リンの腕の中で体勢を整え前を見る。アクロアイトさまはまだ小さい所為か速く飛ぶことはできないが、大人が走るくらいの速度はあるし、こちとら人間で足元が悪い森の中。

 付かず離れずの距離を保ちながら、とある場所でくるりと戻ってくるアクロアイトさま。リンと私の周りをくるくる回りながら飛び、ゆっくりとリンの肩の上に乗ると一鳴きした。先行していたソフィーアさまとセレスティアさまは、アクロアイトさまが戻ってきたので安堵していた。副団長さまは先に何があるのか気になっているものの、私たちを待ってくれている。

 

 「何か見つけた?」

 

 視線を合わせて言葉を掛けると、一鳴き。もう走ることはなさそうなのでリンから降ろしてもらい、アクロアイトさまが進もうとした道を自分の足で歩く。

 なんとなく垂らした指輪が反応を見せており、みんなで顔を見合わせる。そうして進んだ先で目にしたもの。あとから副団長さまからの説明で珍しいものだと知るのだった。

 

 ◇

 

 アクロアイトさまが珍しく私の肩から飛び立って、一人でどこかへ飛んでしまったので慌てて追いかける調査団一行。

 そうして飽きたのか目的のモノを見つけたのか、戻ってきた満足そうに一鳴きしたアクロアイトさまが進もうとした先を歩く。大きな巨石が割れている横に、なんとも表現しがたい美しい生き物がいた。

 

 ――あれは……。

 

 白馬、かと思ったが背中に羽が生えている。地面に横たわって苦しそうにしているけれど、大丈夫なのだろうか。しかも二頭いて、どちらも苦しそうな様子。

 

 「天馬のようですね」

 

 天馬……――ペガサスだった気がする。白い馬に羽が生えているので、そうなのだろう。ただ何故苦しんでいるのかが分からないが。

 

 「どうします?」

 

 近寄っても大丈夫なのか分からないので、こういう事に滅法詳しそうな副団長さまの顔を見上げて指示を乞う。

 

 「害はないと言われておりますが……暴れられると危険ですしねえ。魔術で脅しても良いのですが、あまり取りたくない手段ですし、珍しい生き物ですから出来れば捕獲……いえ、保護したい所です」

 

 副団長さまの本心が垣間見れた気がしたが、あえて突っ込みはいれない。どうやら貴重な実験サンプルくらいに考えているようだ。どう接触するのが一番穏便に出来るのか、みんなで考えているとアクロアイトさまが天馬の方へゆっくりと飛んでいった。

 どうやら意思疎通が出来ているようで、天馬がアクロアイトさまを見てむくりと首を上げ、顔を上下させている。アクロアイトさまも空中に止まったままで、ぱたぱたと羽を動かし顔を捻ったり一鳴きしたり。

 

 一体何がと眺めていると、アクロアイトさまが戻ってきて私の服の袖を軽く噛み、天馬の方へと導くような仕草を見せた。

 

 「僕たちが全員行くと逃げる可能性もありますから、こちらで見守っていますね」

 

 副団長さまの言葉にソフィーアさまにセレスティアさまが頷く。ジークとリンは私の後ろに控えてくれるようだ。

 ゆっくり進み敵意はないよアピールをしつつ近寄って行く。警戒している素振りは見せていないし、逃げる様子もない。野生動物に分類されそうなのに、こんなに無警戒で良いものなのか。狩人さんとかに簡単に狩られて食べられていそうとか、無情なことを考えてしまう。

 

 「えっと、大丈夫ですか?」

 

 まだ苦しそうなので声を掛けてみるけれど、果たして人間の言葉は通じるのか。私の言葉に片方の天馬が首を上げて視線を合わせてくれた。

 

 『大丈夫、とは言い難いです』

 

 あ、言葉が通じる。良かったと安堵しつつ、大丈夫ではないことに不安を覚えるが、凄く丁寧な物腰の天馬だった。

 

 「どういたしました?」

 

 『お恥ずかしい話なのですが、食べたものに中ってしまったようで。貴女さまの肩に乗っている御仁が、治せる人を呼んでくると仰って下さり……』

 

 あのやり取りでそんなことを交わしてたのか。アクロアイトさまは私が治癒魔術を使えることを理解していて、動物相手であれば会話が可能なようで。人間相手に会話が通じないのは、種族の差故か。

 

 「聖女を務めておりますので、治癒魔術で治せるかと。どういたしますか?」

 

 勝手に魔術を施す訳にもいかないと確認を一応取ると、是非お願いしますとのことなので、動物相手に効くのか不安だったがどうにか治ったようで。横たわっていた身体を起こすと、馬車を引く馬よりも随分と立派な馬体で、一回りくらいは大きい気がする。

 

 『お手間をかけ申し訳ございません』

 

 『有難うございます。自然豊かなこの地に降りて食事をしていると、気付かぬうちに毒草を食んでいたようで……』

 

 草の見分けは完璧な筈なのに、間違えて食してしまったようだ。しきりに頭を下げる二頭。

 

 『貴女のお陰で痛みもなくなりました。本当に有難うございます』

 

 『調べ物の前に、腹ごしらえをと考えたのが悪かったのでしょうね』

 

 彼らにとってこの辺りの草花は美味しかったらしい。それで夢中になって食べていたら、気付かないうちに毒草を食べちゃったとか。なんとも抜けている理由ではあるが、親しみは持ちやすい……多分。

 

 『竜の御仁も有難うございます。お陰で難を逃れました』

 

 『ええ、本当に』

 

 そんな天馬さま二頭の言葉にアクロアイトさまが一鳴きして、言葉を返していた。

 

 「しかし、どうしてこの地に?」

 

 単純な疑問だった。副団長さまが珍しいと仰っていたから個体数は少なく貴重なのだろう。捕縛とか言いかけていたし。どこが生息域なのかも知らないし、この辺りなのかも知れない。取りあえず会話が可能なら聞いてみるのも悪くはないと、彼らと話してみるのだった。

 

 『この辺りに不思議な雰囲気を感じまして。まだ遠い先の場所にも強い気配を感じますが、取りあえず確認の為にとこの地に降り立ったのです』

 

 天馬さまの内の一頭が少し先の場所の方角へ顔を向けた。どうやら彼らは番の様で子育てに適切な場所を探しているとのこと。適切な場所と言うのは魔素が豊富な場所とのことなので、まだ少し先の場所って辺境伯領ではないかと勘繰っている。

 

 『育つ場所の違いで差がありますので、親は必死で良い場所を探すのです』

 

 もともとアルバトロスは魔素の多い場所なので、人間に気付かれ難い場所で繁殖をしていたそうな。

 ただ魔素量も時代の経過や環境の変化に、魔力持ちの強い個体が朽ちた場所等で変わっていくので、毎度繁殖場所を探すのに苦労しているとのこと。そうしてまたアルバトロスで繁殖場所を探していたら、気になる所を見つけた。それがフライハイト男爵領だった、と。

 

 『痛みも引きましたし、その場所へ行ってみようかと』

 

 「そうですか」

 

 『貴女もご一緒に参りませんか? 良い魔力をお持ちの方とお見受け致しますし、竜の御仁にも我々が望む場所を指南して頂きたく』

 

 「よろしいのですか?」

 

 繁殖場所がバレると不味いのでは。今まではこっそりと人間に見つからないように繁殖していたようだし。

 

 『長く生きている所為か人間への警戒心は薄れていますし、人間と関わらず生きて行くには難しい環境となっている昨今ですので、問題はありません』

 

 そうなのか。ただヒャッハーしそうな方が約一名居るのだけれど、ドン引きされないかな。

 

 「同行者が増えても構いませんか? あちらに居る方々なのですが……」

 

 『何の問題もありません。ご一緒致しましょう』

 

 『賑やかな方がきっと楽しいですから』

 

 うーん、凄く真摯な方たちと笑みを浮かべて、同行メンバーを呼ぶと副団長さまが凄く嬉しそうな顔を浮かべ、何故かセレスティアさままでも嬉しそうな顔をしていた。気にしたら負けだから放っておこうと心に刻み。

 テンションの高そうな人たちと天馬二頭で森の中から出て、田畑が広がる場所へと案内されると、遠目にはよく見知っている人たちが佇んでいた。何をやっているのだろうと疑問に思うけれど、天馬さまたちの案内を無視する訳にはいかないが、何故かアリアさまたちの方へと歩いて行き。

 

 「アリアさま」

 

 「ナイさまっ!?」

 

 どうしてだか、アリアさま一行と私たちが合流するのだった。

 

 

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