魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0148:お手紙届いた。

 秋が随分と深くなってきた今日この頃。冬休みまで残すところあと二ヶ月。長いような、短いような微妙な頃合いだった。

 

 ――ちょっとは落ち着いたかも。

 

 忙しかった最近だけれど、ようやく落ち着いてきた。教会の立て直しもどうにかなりそうで、枢機卿さまの選出や上層部メンバーの選出が済んでいて、あとは発表を待つばかり。

 礼拝で出会ったお婆さんの伝手で何人か現役の聖女さまや引退してもまだまだ元気な元聖女さまを紹介して頂けたのだ。真面目な方が多いのか、教会信徒でもあったから都合が良い。枢機卿さまになる人はアウグストさまと聖女さま方から一名、神父さまかシスターたちから一名選出となっている。

 

 礼拝にも時間が許す限り参加している。私が参加するようになって、黒髪の聖女が拝めると噂になっているし、アクロアイトさまも一緒に居るので物珍しさで見に来る人が多くなったみたい。

 人が多くなるイコール寄付が増えるから、教会的には嬉しいらしい。普段は礼拝に参加しない信徒の人も顔を出すし、信徒ではない人たちも参加しているそうだ。神父さまの教典のお話にハマって入信する人もボチボチいるようだし、順調に勢いを取り戻している。私の役目が終わった訳ではないけれど、少し気が楽になった。

 

 貰った男爵領のトウモロコシはやはり家畜用だからか、味が薄いうえに余り美味しくないという事実が判明した。火の中へ放り込んでポップコーンが出来るかなと試してみたものの、弾けてくれなかった。

 挽いて粉末状にしたあとに水を混ぜて味付けして食べるとか方法もあるはずだけれど、完全に貧しい国の食料だ。小麦が普通に手に入るのに、そんなことをやる必要はない。他にも食べ方があるのだろうけれど私の乏しい知識では何も思いつかない。

 ソフィーアさまやセレスティアさまがその為の学院なのだから、教諭や図書棟で調べてみてはとアドバイスをくれたので、暇があれば先生や図書棟へ通ってる。

 

 うーん残念と唸っていると、家畜用のトウモロコシ以外で何か量産できるものはないかと、領民に願われたので考え中である。子爵家で育ったお芋さんを収穫して、ある程度を男爵領で育ててみようと話し合ってはいるものの、何が起こるか分かったものではないと苦言を呈された。知らない人からすれば怖いだろうし、あまりやらない方が良いのかと諦める。

 

 ならばきちんと領地運営術を学んで、真っ向勝負で発展させていくしかないだろう。幸いにもお金には困っていないのだから、灌漑工事や耕作地開発に力を入れればどうにかなるのではと考えている。あとダウジングで何かしらを見つけるのもアリ。何もないかも知れないが、やらないよりやってみてから話を進めれば良いだけだし。

 

 「忙しさはマシにはなったけれど、やることが多いなあ」

 

 子爵邸の主室で独り言つ。誰も聞いていない……いや、聞いているのはアクロアイトさまだけなので問題はない。ちなみにアクロアイトさまは、ベッドの上で遊んでる。クレイグとサフィールが街へ繰り出した時――護衛付き――に露店で見つけたボール擬き。子供たちにと買ってきたのだけれど、数を揃えていたので一個頂いたのだ。もちろん代金は支払っている。

 

 ボールの上に乗って遊んだり、顔で器用に上へ放り投げたり。自分で遊ぶ方法を見つけているのだから、知能が高いことが窺い知れる。私がアクロアイトさまにボールを投げてみると、鼻先で器用に打ち返してくれるし、ちょっとしたコミュニケーションツールにもなっているかも。

 遊んで欲しい時はアクロアイトさまがボールを足で掴んで、私の下に落としているし。それを放り投げると、口で器用にキャッチしてまた私の下へ戻って口から離す。

 行動が犬と同じなのだけれど、アクロアイトさまは竜だよねと首を傾げると、一鳴き二鳴きしたので抗議していたのだろう。数度鳴くときは、何かを訴えている時だ。犬じゃないと伝えたかったのだと思う。

 

 机の上に置いている手紙に目を落とす。

 

 リーム王国や聖王国もどうにかこうにかやっているそうだ。時折届く手紙や報告から、いろいろと事情は伺える。すわ亡国の危機かと考えていたが、人間やれば出来るもので乗り越えようとしているのだから逞しい。

 お金を着服した枢機卿さまや関係者は鉱山送りにされ、働いたお金を巻き上げられている上に、正規の鉱山労働者から白い目で見られているそうだ。罪を犯して送り込まれた人は彼らの侮蔑の対象らしい。大変そうだけれど、人のお金を奪って美味しい思いをしていたツケが回ったのだから自業自得。鉱山労働者って高給取りらしいから、使い込んだ金額を回収できれば恩赦があるかもしれないから、どうか頑張って欲しい。

 

 子爵邸の方もジャングル状態だったお芋さんたちを間引きすることはなくなり、もう少しで収穫が期待できそう。天馬さまのジョセのお腹も随分と大きくなっている。魔素が濃い所為か、成長も早いとかなんとか。大丈夫だろうかと心配になるけれど、無事に生まれてくることを願うのみだ。

 

 ここ最近の出来事を振り返っていると、部屋にノックの音が響く。どうぞ、と入室を促すとソフィーアさまとセレスティアさまが。何故かジークとリンまで一緒だったので一体何事だろうと首を傾げる。普段よりも何か緊張感があるので身構えてしまった。

 

 「ナイ。ヴァンディリアの第四王子殿下からだ」

 

 ソフィーアさまがそう言って差し出されたのは一通の手紙。

 

 「個人宛なので中身は確認しておりません。王城の魔術師に危険物ではないことは確認済み。開封して頂いても?」

 

 確かに中身を見ないことには始まらないよねと、手紙の端をペーパーナイフで切り落とす。そうして手紙に書き記されていた内容を確認して、みんなが読んでも問題ないので机に広げた私だった。

 

 ◇

 

 最近、学院でちょいちょいと声を掛けられてはいたけれど、行動が一気にランクアップしてくるなんて……。二学期当初に臥せったフリをしていた時に、雨の最中子爵邸の門の前で花束を持ったままずぶ濡れで佇んでいたと聞いているけれど、一体何の意味があったのか。

 ストーカーでもなさそうだし、病んでいる気配は感じられないけれど、第四王子殿下の行動は突飛過ぎてドン引き案件となっている。

 手紙に何を書かれているのか不安だったけれど、まあマシな方なのだろうか。友人宛てに送られた、同じ文字列を何度も何度も何度も繰り返している狂気の手紙を見たことがあるので、第四王子殿下の手紙を普通に感じてしまう自分が居る。けれど非常にポエムな内容となっていた。

 

――劇を観に行きませんか?

 

 ヴァンディリア王国第四王子殿下から頂いた手紙の内容は、挨拶の定型文もろもろは読み飛ばし、ポエムな部分は見なかったことにして要約するとその一言に尽きた。

 

 「…………いや、まずいのでは」

 

 手紙を読んでしばらくした私の第一声がコレである。警備の問題もあるのだから、劇場にとって邪魔にしかならない気がする。

 大きい所なら貴賓席があるだろうけれど、せめてそっちを選んでくれるのだろうか。一国の王子さまなのだから、お金をケチるなんてことはないだろうし、そういう席でしか観劇したことないだろうし。

 

 「あまりよろしくはないな。警備の問題もあるし、他の客もナイが居ると分かれば騒ぎになるだろうし……」

 

 ソフィーアさまが深々と息を吐く。その前に演劇に興味がないのだけれども。あまり長いと寝てしまいそうで怖い。第四王子殿下は厚意――下心はあるのだろうが――で誘ってくれているのだろうけれど、日頃の

 

 「女性と劇を観に行くなんて、他の方々への牽制とも見て取れますが。口説くにしても、もう少しスマートな方法がありましょうに」

 

 鈍い私でも、ああもあからさまだと口説かれていることは気付いている。他国の王子さまだし、なにか裏がありそうで怖いとソフィーアさまとセレスティアさまには相談した。もちろんお二人やジークとリンを通して王国上層部や公爵家に辺境伯家とラウ男爵にも報告済み。

 皆さまの反応は『隣国のボンボン王子に黒髪の聖女の横をタダで任せる訳ないだろう』と見解一致して一蹴されてた。ただ私の気持ちが第四王子殿下に靡いたら別の話となるそうだ。婿に入る気があるなら致し方ないとのこと。

 

 第四王子殿下は私との挨拶の時に『貴方のお婿さん』云々は口にしたので、婿入りする気はあるようだけれど、相手である私に全く恋愛感情が湧いてこない。諦めて欲しいけれど、隣国の王子さまということで無下には出来ない相手である。扱いが難しいなと頭を抱えているのに、割と遠慮なく向こうは声を掛けてくる。

 

 おはようの挨拶から、昼休みに昼食を一緒に食べないかとか、放課後はニコニコと笑顔を浮かべてまた明日と告げてくるし。特進科クラスのフリーの女性陣の一部は、私を口説こうとしている第四王子さまを見て黄色い声を上げている。

 まあ自分に降りかかったら嬉しい案件なのだろう。国内の有力貴族よりも魅力的な他国の王子さまだ。実家はホクホク顔になるだろうし、自分もイケメンを侍らせて嬉しいだろうから。

 特進科一年生のクラスがそんな状態なので、誰か第四王子殿下を狙ってくれないかと願っているものの手を出そうとする猛者が居ない。こういう時にヒロインちゃんが居れば、魔眼の力で落としてくれただろうけれど彼女は居ない。

 

 どうにか乗り切るしかないよなあと、遠い目になる。

 

 「で、受けるのか受けないのか?」

 

 首を少し傾げてソフィーアさまが私に問いかける。正直断ってしまいたいが、どうしたものか。

 

 「正直、面倒なだけなので受けたくはないです。ただ断った後にアプローチが酷くなりそうで怖いですね」

 

 単純に私の力か後ろ盾が狙いなら余計に怖い気もする。恋愛感情ならはっきりと断れば諦めてくれるだろうけれど、権力やお金目的ならばそう簡単に諦められるものではない気も。

 

 「ならば、余計にはっきりと断るべきでは。――有耶無耶な態度が相手に対して酷く失礼かと」

 

 「やはり、断る方がお互いの為ですよね」

 

 陛下や公爵さま方に相談した上で、きっぱり断るのが筋か。恋愛に発展する可能性に期待を持たせても可哀そうなだけ。

 だったらセレスティアさまが言うように、はっきりと断るべきなのだろう。取りあえずは陛下方に相談案件なので、手紙と報告書を出しておこう。恐らく優先的にどう動けば良いか決めてくれるはず。今後どうするべきかをソフィーアさまとセレスティアさまへ告げると、お二人もそれが良いだろうと頷いてくれた。

 

 ――夜。

 

 面倒な相談事も終わって、仲間たちと共に私の部屋で集まっていた。今日起きたことを仕事をしていた為に知らないクレイグとサフィールへ説明を終えた所だ。

 

 「お前が口説かれるなんざ、世も末だな」

 

 「クレイグ、言い過ぎだよ」

 

 にやにやと笑みを浮かべながら私を見ているクレイグにサフィールが苦言を呈す。気にしていないし、彼なりの雰囲気づくりだというのは理解しているので止めはしない。むしろこうして扱ってくれる方が、言いたいことを言えるので気が楽である。

 ジークとリンはいつものように椅子に座って私たちの様子を見ているだけで、必要な時以外は喋ろうとはしない。助けてくれるかなあと期待しても、この面子では笑って終わりだろう。

 

 「でも何で私を狙うんだろう。自分の国のお貴族さまを狙った方が良くない?」

 

 本当に。マジで。第四王子妃の椅子を狙っているお嬢さまは沢山居そうだし、容姿も悪くない上に態度も紳士的。私からすれば演技みたいで、ちょっと気持ち悪さを覚えるけれど、合う人には合うはずだ。

 

 「ナイが価値のある奴だから、これに尽きるな」

 

 「他国に留学してまでやること?」

 

 自分の価値を完全に理解しているかと言えば謎だけれど、重用されているのは分かる。でも一国の王子さまが他国に来て口説き落とすのはアリなのだろうか。

 それなら自国の公爵令嬢さまでも落とせば良いのにと考えてしまう。第四王子殿下の面子を守れるだろうし、適当に公爵家が所持している爵位を頂いて運営していけば良いのに、と。

 

 「んー……それを言われると反論し辛い。けど、お前の価値が他国にも認められてるってことだろう。恋愛感情なんて別だろうし、小さいお前を狙うなんざ特殊な奴だけだろうし」

 

 腕を組んで考えるしぐさを見せるクレイグが、しれっと禁句を言った。リンに言われるのはまだ許せるんだけれど、何故か彼に言われるのは癪に障るというか。

 

 「クレイグ、それは言わないで」

 

 「おい、魔力を練るなっ! 怖えからっ!!」

 

 「っと、ごめん。――チビは禁句ね」

 

 無意識で魔力を練って漏れていたらしい。若干脅しに使った気がしなくもないが、無意識だと言い張っておこう。

 アクロアイトさまがここぞとばかりに魔力を吸収しているので、この部屋の魔素量が多くなることはないので安心だ。飾られている花とかが奇跡を起こして喋りはじめたら、私は問答無用で切り落とす。怖いし。

 

 「言ってねえだろうがっ!」

 

 「小さいって言ったっ、一緒でしょっ!!」

 

 クレイグと私のやり取りに、サフィールとジークにリンが苦笑いしていると、不意にジークが私に問いかけた。

 

 「ナイ。結局、観劇に誘われたのは受けるのか?」

 

 「陛下や上層部の返事が遅ければ受けることになりそうだよね……断ると失礼だし、どうしようもないというか」

 

 タイミングが悪ければ受けることになりそう。一応、国には報告書へ記載して送った所だけれど、すぐさま返事が届くとは思えない。で、明日も学院へ行かなければならないので、そこで声を掛けられれば断り辛い訳で。

 うーん、はっきりと態度を示した方が良いけれど子爵位でしかない私が、他国の王子さまの誘いを断ったとあればやはり問題だ。粘ってはみるものの、目的があるのだから諦めるはずはないだろう。学院へ行くのが気が重いなあと苦笑いを浮かべると、一同微妙な顔を浮かべるのだった。

 

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