魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0151:畑の妖精さん。

 第四王子殿下が帰国して一週間が経った。

 

 その間に騎士科や希望者で行われる模擬戦大会が行われ、準決勝戦にはジーク、ギド殿下、マルクスさまと騎士科の生徒一人が残り、決勝戦はジークとギド殿下。始まって一歩も動かない両者に、観客のみんなが焦れて野次り始める中、一瞬の隙を突いたギド殿下が有終の美を飾った。

 魔力量が関係ないように魔術具を使用しての純粋な肉体だけの勝負だったから、ジーク自身の実力が出せず。本人は何事もないように過ごしているけれど、悔しいのかこっそり訓練の時間を増やしていた。

 

 男子があるなら女子部門も当然ある。男子と比べて女子の参加者は少ないけれど、模擬戦があった。その中には何故かセレスティアさまの姿があり、順当に勝ち進んでいっていた。決勝戦はリンとセレスティアさまとの対戦となり、勝者はセレスティアさま。

 やはり子供の頃から確りとした教育を受けている人に敵うのは難しいらしく。かなり接戦だったので『運が良かっただけですわ』とセレスティアさまが言って、機会があればまた勝負したいと願い出ていた。

 

 リンもリンで何か思う所があったのか、ジークと一緒に訓練時間を増やしていた。女の子なのだからあまり筋肉を付けてもと心配になる。前世でスポーツに特化した学校に通っていた友人が居たのだが、体脂肪が一割切ると生理が止まるなんて言っていたことを思い出す。

 そこまでには至っていないだろうけれど、あまり激しく訓練するのも身体に負担が掛かりそうだから心配である。祝福を何節もかけて能力を底上げした方が早いけれど、本人たちは何か思う所があるのだろう。

 

 老婆心を働かせても仕方ないと、見守ることにしてる。無茶が過ぎればもちろん止めるけれど。

 

 ヴァンディリア王国に戻った第四王子殿下は、ヴァンディリア王にこっぴどく絞られた上に謹慎処分に処されたようだ。

 他国の聖女さまを私欲で利用しようと行動に出たのは不味かろうと。縁を持てれば御の字と考えていたし第四王子殿下もそのつもりだろうと考えていたのだが、本気で口説き落としているとは思わなかったそうな。

 謝罪の書状が届きアルバトロスの陛下を通して、私の下へと届いたのが昨日。ヴァンディリア王の直筆なのか代筆なのか定かではないけれど、微妙に文字が震えており大丈夫なのか心配になった。

 

 「お芋さんっ」

 

 「しゅーかくっ!」

 

 「早くやろうっ!!」

 

 子供たちの声で意識が浮上する。ようやく、というか随分と早くお芋さんが収穫可能となった為、子爵邸裏の家庭菜園畑へ赴いていた。

 子供たちの他にも庭師の小父さまとサフィール、興味本位でクレイグに天馬さまのエルとジョセがこの場に居る。もちろん私の護衛としてジークとリンも傍に居るし、アクロアイトさまは私の肩から降りて、今度は巨大ミミズではなく大きな尺取虫と格闘していた。

 

 『子供たちは元気がありあまっていますね』

 

 『ええ。微笑ましいです』

 

 エルとジョセが子供たちを見ながら目を細めている。ジョセのお腹も随分と大きくなり『そろそろ産まれそうです』と本人が言っていた。妊娠期間は不思議なことに周囲の魔素量に影響されて変化するそうだ。今までで一番早く産まれてくるらしく、どんな強い子が生まれるのか楽しみらしい。

 

 「じゃあ、抜いてみようか」

 

 私の声に一斉に子供たちが小さな畑の中へと入り込み、好きなお芋さんの主茎を握って引っこ抜いている。クレイグとサフィールも少し遅れて畑の中へと入り、中々抜けないお芋さんをどうにか抜いていた。

 

 「多いですな……」

 

 「……多いですね」

 

 鈴生りとはこういうことを示すのだなと言いたくなるくらいに、お芋さんが沢山根っこについていた。かなりの量が付いているというのに、平気で子供たちは抜いている。

 何だろうこの不可思議現象はと問いたくなるけれど、目の前で起こっている事実なので認めるしかない。ソフィーアさまとセレスティアさまも後で様子を伺いに行くと言っていたので、何を言われるのやら。呆れ顔で呆れた言葉を呟かれるのは確定しているなと苦笑いになる。

 

 「聖女さま、収穫しないの?」

 

 「今行くね」

 

 子供たちに呼ばれて、畑の中へと足を踏み入れる。手近にあったお芋さんの茎に手を伸ばし力を入れると、すっと抵抗感も何もなく抜けた。お芋さんに付いている土を払いのけて、芋だけを取って籠の中へ入れる。上の部分も回収してエルとジョセのおやつに厩の馬の餌となる。

 

 お芋さんを間引いていた時の話を公爵さまと辺境伯さまが聞きつけて、余ったお芋さんの茎の部分があれば分けて欲しいと願われたのは意外だった。

 どうやらお馬さんの馬体が良くなっていることに興味が湧いたようで、試しに自身の家の馬にも与えてみたかったのだろう。公爵さまと辺境伯さまならば妙な事態にはなるまいとおすそ分けし、暫くして『馬体が良くなった』という話をソフィーアさまとセレスティアさまから聞くことになる。

 

 「全部抜いちゃって良いよ」

 

 今日でお芋さんを全て収穫する予定だ。日持ちするものだし、何回か分けて収穫するのも手間なので、抜いてしまおうと庭師の小父さまと話をしていた。

 私の言葉に子供たちが喜んで、残っているお芋さんを全て駆逐しようと一斉にお芋さんの茎を握る。子供たちの楽しみを奪っても申し訳ないと、ゆっくり引き抜いていると地面から小さな光が現れる。

 

 「え……」

 

 短い声が自然と口から漏れる。小さな光は段々と人の姿へと変化していき、妖精さんたちより一回り小さい淡く光る何かが具現化した。それも複数。子供たちも気付いて何事かと慌て始めるけれど、順応性が高いのか小人さんへと近づく。

 

 『タネクレ!』

 

 『シゴトクレ!』

 

 口々に叫ぶ小人さんを興味深げに眺める子供たちを他所に、庭師の小父さまやクレイグにサフィール、ジークとリンに私は戸惑いを隠せない。またやってしまったと遠い目になりつつ、ソフィーアさまの小言は確定だなあと頭を抱える。

 

 「あー……ナイ」

 

 「もう何も言わないでクレイグ」

 

 「お、おう」

 

 そっと私に近づいてそんな声を掛けたクレイグに、反論する気力は湧かず。これお二人がやってきたらどう言い訳しようかと考える。

 

 「ナイ、終わったのか?」

 

 「すっきりとしましたわね。最初はどうなることかと思いましたが、沢山採れているようでなによりですわ」

 

 こちらへやって来たお二方の方へギギギと顔を向ける。きゃっきゃと騒いでいる子供たちを微笑ましそうにお二人は見ると、異変に気付いたようで表情が凍り付く。

 

 『タネクレ!』

 

 『シゴトクレ!』

 

 同じことを繰り返している小人さんを見て、深い深い溜め息を吐いた。しかも長かった。

 

 「ナイ、済まないが、お隣に連絡を入れてくれ……」

 

 「……はい」

 

 眉間を手で押さえたソフィーアさまから亜人連合国へ連絡を入れて欲しいと願われ、やらかした原因である私は素直に頷くしかなかった。

 

 ◇

 

 子爵邸裏の家庭菜園畑からお芋さんを全て収穫しようと子供たちとみんなが集まっていたのだけれど……。お芋さんを全て収穫し終えた後に問題が起こった。何故か地面から光る何かが現れて暫くすると、人の形を成していた。

 

 『タネクレ!』

 

 『シゴトクレ!』

 

 そう繰り返す妖精さんを見ていると、ソフィーアさまとセレスティアさまが様子を見にこちらへと姿を見せ、お隣さんを呼べと乞われた。で、連絡を入れるなり直ぐに子爵邸へと顔を出してくれた。子供たちや庭師の小父さまにクレイグとサフィールはそれぞれの持ち場に戻っている。

 

 総登場した亜人連合国の皆さまが顔を揃えて、畑を見ている。代表さまは三人の見守り役らしい。何も口にすることはないまま、静かに佇んで……というよりは尺取虫相手にまだ格闘しているアクロアイトさまを愛おし気に見てる。

 可愛いですよねえアクロアイトさま。巨大ミミズに負け、尺取虫相手にも負けそうだけれど。まだ幼いし色んな事を経験して欲しいから、子爵邸の中は割と自由に過ごして貰ってる。

 

 「あら。畑の精霊じゃない」

 

 「魔素が濃いから現れたのかもね~」

 

 畑の上で何か植えろ、仕事くれと叫んでいる妖精さんを愉快そうに眺めているエルフのお姉さんズ。どうやらお芋さんに無意識で魔力を注いでいたことと、ジョセにも無意識で魔力を与えていたことが原因で魔素が濃くなって、それを取り込んで畑の妖精さんが姿を現したと教えてくれた。

 なんだか子爵邸が人外魔境と化している気がするけれど、外に迷惑を掛けなければ問題ないと割り切った方が気が楽だ。あれこれ悩んでも仕方ないし、漏れ出る魔力はシスター・リズに教えを乞うているのだからいずれどうにかなるだろう。

 

 『私たち妖精より格下の存在だから、放っておいても良いけれど……』

 

 この大合唱がずっと続くわねとお婆さま。

 

 「流石にこれがずっと続くのは……」

 

 ご近所迷惑とはならないが、屋敷で働くみなさまはびっくりするだろう。

 

 「なら妖精たちの訴えを聞くしかないわ」

 

 「うん。何かしら植えておくと勝手に育ててくれるから、楽だよ~」

 

 そんな事態になれば農家の皆さまのお仕事を奪ってしまうなと頭の片隅で考える。農業が全て機械化して人手を取らせないようになっている近未来みたい。ただやっているのは妖精さんなので、魔素濃度が維持できないと消えてしまうのだろうけど。

 

 『あ、なら適当な種を私が用意するわ。お芋以外に植えられる野菜ないんでしょ?』

 

 畑の精ということで花などの観賞用植物は彼らとの相性が悪いそうだ。お婆さまがぱっと消えて、暫く待っているとまた戻ってきた。小さな袋を持っているけれど、妖精さんサイズの小袋なのでかなり小さい。

 

 『エルフの街から種を拝借してきたわ!』

 

 小袋の口を開けて、私に手を広げるようにとお婆さまが告げた。言われるまま両手を差し出して手を広げると、袋の口から大量の種が私の手の上にこんもりと盛られた。

 

 「頂きすぎではないですか?」

 

 『いいの、いいの~。余っているものだし、私が勝手に拝借してきただけだから!』

 

 それは問題ではとお姉さんズへ顔を向けると、苦笑いを浮かべて何も言わない。妖精故の悪戯だから、エルフのお姉さんズ的に苦言をお婆さまへ伝えても仕方ないのだろう。後でお姉さんズに種を頂いたことにちゃんとお礼を述べなければ。おそらくエルフの街で大切にしていたものだろうし、対価が必要なら払わないと。

 

 「彼らに種を渡してあげて」

 

 「そのまま差し出せば良いよ~」

 

 言われるままに畑の隅でしゃがみ込み、いっぱいに種を抱えたままの両の手を地面すれすれに置くと、妖精さんたちが駆け寄って好きな種を選んで畑の真ん中へと走って行く。スコップで穴を掘り、抱えていた種を地面へ落としてまた土を掛けている。それを何度も繰り返して

 

 『ミズ!』

 

 『ミズクレ!』

 

 そう主張する妖精さんたちに、厩の近くにある井戸から水を桶に汲んだジークが戻ってきた。流石に深いので浅そうな園芸用の受け皿を見つけて、そっちに水を入れて地面へ置くと妖精さんたちが嬉しそうに水を汲んで畑に撒き始めた。

 

 「誰か居ると、そうやって要求してくるから放置が一番ね」

 

 「曲がりなりにも妖精だから、水やりも勝手にやってくれるよ~」

 

 本当に凄いな妖精さんと驚きつつ、子爵邸のみなさまにはどう説明したものか。私の祝福が掛かっていない人たちには見えないはずだから、畑の立ち入りは禁止にしてあまり近づかないようにと説明するしかないのか。

 子爵邸の魔素が濃い所為か、お婆さまのお仲間たちが屋敷の中を勝手にウロウロしている時が時折あるのだけれど、子爵邸で働いている人たちから『光る玉を見た』と報告される時がある。

 亜人連合国がお隣さんなので、妖精さんがこちらの屋敷にも遊びに来ていると伝えて納得して頂いたのが最近。不可思議現象が増えたと言われてしまう前にちゃんと伝えておかなければ、我が子爵邸は不思議の館と言われてしまいそう。

 

 変な噂が立って仕事を辞めたいと言い出す人や、子爵邸で雇用する際にこんな屋敷は嫌だと言われかねないので気を付けないと。なんだかお貴族さまが噂に拘る気持ちが分かった気がする。噂の方向が超常現象っていう奇跡の代物だけれど。

 

 「え?」

 

 「嘘だろう……」

 

 「あら、凄いですわね」

 

 妖精さんたちが蒔いた種が出芽している。私たちが植えたお芋さんでも二、三日萌芽までには時間が掛かったのだけれど、これは一体。

 

 「そんなに驚かなくても~」

 

 「ええ。曲がりなりにも妖精なのだから魔法を使うことが出来るわ」

 

 周囲の魔素を利用してねと告げたお姉さんA。要するに育成促進系の魔法を使ったのだろう。しかしまあやりたい放題というかなんというか。任せておけば作物が育つ環境が出来上がってしまったことに、どうしたものかと頭を悩ませる。

 

 「この妖精さんたちをどこか別の場所へ移動させたりは出来ませんか?」

 

 エルフの街へ持ち帰って頂きたい……。

 

 『無理ね。それをやるとあの子たちは消えちゃうわ』

 

 なんだろう地縛霊とかそんな感じで土地に縛られて生まれた系なのだろうか。お婆さまが腕を組み私の真横で滞空したまま、土地や魔素に由縁して生まれたものだから違う場所だと魔素との相性や土地との相性が合わず、自然消滅するらしい。

 何とも儚い妖精さんであるが、そういうものなので納得して欲しいとのこと。害を齎すことはないので、そっとしておけば益にしかならないそうで、エルフの街でも畑の妖精さんを重宝しているそうだ。

 

 『タネクレ!』

 

 『シゴトクレ!』

 

 また同じ言葉を繰り返す妖精さんたちに、どこまで働く気なのかと苦笑い。お姉さんズ曰く、種じゃなくて苗でも大丈夫とのこと。こっそり畑の近くに置いておけば、一生懸命運んで植えて育ててくれる。何だか利用しているみたいで申し訳ないが、そういう性質なので変わることはないそうな。

 

 「彼らの望みを叶えてあげるのが一番ね」

 

 「うん。魔素さえあればずっと生きていられるから、時々魔力をこの辺りでばら撒いておくといいよ~」

 

 なんだかなあと目を細めつつ、小さな妖精さんが一生懸命働く姿には微笑ましいものがあるあ……畑の隅っこでアクロアイトさまが尺取虫に完敗してた。一匹だった尺取虫の数が増えて十匹くらい集まってしまい、どうにもならなかったらしい。本当に竜種なのだろうかと疑いたくなる一場面であった。

 

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