魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

159 / 740
2022.07.18投稿 1/2回目


0159:スライムさんの特性。

 グラウンドに出てスライムを創造すると、他の方たちとちょっと違うスライムさんが誕生してしまった。討伐遠征の際に出会うスライムはあまり動かないし、動作がかなりゆっくり。

 それこそナメクジのような動きなのだけれど、私が創造したスライムさんはやたらと動くし、感情表現が豊かな気も。目立つから頂けないなと呟けば、私の影の中に入って大人しくしているみたいだし。術者の魔力で創造しているからか、なんとなく存在がどこに在るのか分かるし、感情もなんとなくだけれど分かってしまう。

 

 本当に不思議。

 

 用は終わったので副団長さまと特進科一年生で外に出ていたメンバーが教室へ戻ると、副団長さまによる解説が始まった。

 

 「貴方のスライムは防御に特化しているようですね」

 

 魔力の高い人は戦闘にも一緒に参加できるほどの力を持っているようだ。核とした魔石が質の低い魔石なので、ある程度の時間が経てば消えてしまうそうだけど。

 

 「収納タイプのスライムではありませんか? 試してみましょう」

 

 副団長さまが懐から万年筆を取り出して生徒に渡す。理由をいまいち理解出来ていない生徒に『持っていてと命じて頂ければ』と説明していた。生徒が副団長さまの言葉を復唱すると、そのスライムさんは万年筆を身体の中へ取り込んだ。

 お家のゴミを掃除するスライムも居るのだから、特段驚くことはない。高そうな万年筆が勿体ないなあと考えていると、副団長さまが『戻せと命じて下さい』と言った。生徒がまた復唱すると、今度は万年筆をぽいっと吐き出し床に転がした。

 

 「おお」

 

 「凄い!」

 

 「スライムなのに……!」

 

 「あんなことまで出来るのか」

 

 とあるスライムさんを見ていた生徒たちは、驚いていたし知能がかなり低い筈のスライムがあんなことが出来るなんて思っていなかったようで。女子の受けはあまり良くないけれど、男子生徒が盛り上がっている気がする。収納タイプのスライムさんを生み出した、伯爵家のご子息さまは驚いた顔をしている。

 スライムさんの形も他の人と違って独特。丸いし、頭の部分が小さな山になっていた。どこかで見たことあるようなと、頭の中にノイズが走る。あ、コレは必要以上に考えると頭が痛くなるヤツなので、記憶を深く探るのを止めた。

 

 「魔力で創造したスライムとなるので、術者本人の命令は守ります。人間の言葉もある程度理解しているので『止めろ』や『止まれ』で行動制限出来ますね」

 

 授業では質の悪い魔石を使用した為に時間が経てば消えてしまうが、良い魔石を使うと生存時間が長くなるし、創造したスライムさんの能力も高くなる。言葉の理解度も上がるし、戦闘系のスライムさんとなると術者と一緒に闘うことも可能なのだとか。

 スライムさん以外の生き物も創造できるので、興味があるならば魔術師団の門戸を叩いて下さいと、ちゃっかり勧誘している辺りは流石副団長さま。抜け目がないよなあと、私の番となったのでこちらへ来た副団長さまを見る。

 

 「ミナーヴァ子爵さま。貴女のスライムを出して頂いても?」

 

 「はい。――ロゼさん、ロゼさん」

 

 彼か彼女かは分からないけれど、名前を呼ぶと『?』と私の影の中で疑問符を浮かべている。いつもは自分の席の寝床に居るはずのアクロアイトさまが、顔をぐりぐりと押し付けてきた。

 普段はすりすりと優しく遠慮がちに顔へ顔を擦り付けてくるのだけれど、一体どうしたというのか。痛いので肩から膝の上に移動して頂いて、頭を撫でると『フスー』と息を吐いて体を丸めて寝る態勢に入った。

 

 「出てきて下さい」

 

 言葉を発すると私の影の中から、細長い状態のスライムさん、もといロゼさんが飛び出してくる。教室の床へと身体を付けると、まん丸な形となってぷるんと一度震えた。ちょっと可愛いかもと絆されている辺り、私の魔物や魔獣に向ける感情って一体どういうものなのだろうと疑問である。

 不可思議現象に出会い過ぎて、順応速度が上がっている気がしてきた。そんな馬鹿なと否定したくなるけれど、学院に入学してからいろいろと事件が起こり過ぎだし、巻き込まれているし、巻き込んだりもしたが。中には竜や聖樹や妖精さんや他諸々のファンタジーな出来事が起きて、私の身に降り注いだ訳で。いちいち驚いていたらやっていけないなという、諦めもあるのだろう。

 

 「やはり素晴らしいですねえ。期待通りの展開です」

 

 いやいや、副団長さまが魔石を入れ替えたからこんなことに。魔力の込め過ぎで魔石が割れたのだから、私は本来失敗していたのだから。すたすたとやってきた副団長さまが新しい魔石を置いて、やり直しを求められればやらざるを得ないのだから。

 魔石の質が上がっていたことには気付いていたけれど、まさか代表さまの血を垂らしていたとは誰も思うまい。貴重な竜の血であるし、しかも代表さまのもので。

 そりゃミラクルが起きても不思議ではないと、副団長さまを見ると良い顔を浮かべている。銀髪ロン毛のイケメンなのだけれど、全く持って心を惹かれない。正体はマッドな魔術師だ。副団長さまは、お貴族さまで当主と聞いているけれど奥さんはいらっしゃるのだろうか。いきなりご家庭の話をするのは無粋なので聞くことはないけれど、ちょっと気になる所ではある。

 

 『マスター、ドウシタ』

 

 どうしたもこうしたも副団長さまに呼んで欲しいと言われただけで、特に用事はない。どうしたものかと副団長さまの顔を見る。

 

 「何が出来るか聞いて頂いても宜しいですか?」

 

 確かに、気になる所だ。

 

 「はい。――ロゼさんはどんなことが出来ますか?」

 

 『マモル、マスター、マホウ、オシエテ』

 

 あれ、この口ぶりからすると魔法は使えないのか。ロゼさんの言葉通りなら、教えれば使うことが出来るみたいだけれど。

 

 「おや。――僕の所で習ってみますか?」

 

 『…………』

 

 副団長さまの言葉はガン無視だった。反応してくれないことに眉を八の字にしつつも、どこかしら楽しそうな副団長さま。

 

 「フラれてしまいました。残念です」

 

 めげないなあと感心しつつ、ロゼさんに向き直る。

 

 「私が教えるの?」

 

 『マスター、オシエテ』

 

 私が教えられるのは治癒と防御系とバフデバフなのだけれども。火力系も習ってはいるけれど、初級に毛が生えたくらいのもので。魔術の威力よりも魔力制御の方に重点を置いている為なのか、初級の魔術を行使して、初級以上の威力が出ない練習もやっているから。

 副団長さま曰く、魔力を込めれば良いという物ではありませんと教えられたけど、スライムさん創造の時は咎められなかったなあ。魔力についての勉強は陛下からの命令だったような。その部分で、お貴族さまとしての副団長さまと、魔術師としての副団長さまが葛藤しているのだろうか。

 

 「私がロゼさんに教えられるのは、治癒とか防御だよ?」

 

 それでもいいかとロゼさんに問いかける。火力系はちゃんと使いこなせる人に教えて貰った方が良い気がするしなあ。

 

 『……マスター、マモル、イロイロ、シリタイ』

 

 随分と目標の高いスライムさんだった。いろいろと知りたいことがある、かあ。取りあえず、授業中なので切り上げた方が良さそうだ。ロゼさんとは屋敷に帰ってゆっくり話をしないと。

 

 「戻って貰って良いですか、ロゼさん」

 

 『ン』

 

 ロゼさんが短く返事をして、私の影の中へと戻って行った。残念そうにしている副団長さまに『授業は良いのですか?』と問いかけると、はっとした顔を浮かべてそそくさと教壇へ戻って行く。

 なんだか新しい仲間が増えた気がするのだけれど、私の周りって人間以外の何かが集まりやすいよねえと、副団長さまの講義を聞いていたのだった。

 

 ◇

 

 副団長さまによる特別講義でスライム創造を果たした訳だけれど、スライムさん、もといロゼさんは子爵邸で働く方々に受け入れられるのだろうか。学院の帰り道、子爵家の馬車に乗り込んでソフィーアさまとセレスティアさまに相談してみた。

 

 「今更だろう」

 

 「今更ですわね」

 

 ちなみにロゼさんは未だに私の影の中である。指示しないと出てこないつもりなのだろうか。他の人たちに迷惑を掛けないなら、自由にしてても大丈夫なのだが、後で伝えておかないと。影の中の環境がどんなものか分からないし、居心地が悪いというなら外で過ごす方が快適だろう。

 

 「ただいきなりでは驚く者が殆どだ。屋敷の中を自由に出来るのは明日からにした方が得策だ」

 

 「全員に通達が届くまではある程度時間が掛かりましょうし、家宰さまや侍従長に真っ先に伝えて情報を流して頂きましょう」

 

 ですよねえ、と微妙な顔になる。アクロアイトさまがなんだか不機嫌な気がするし、妙な事にならなければ良いけれどと願うしかない。未だに不貞寝を敢行しているアクロアイトさまの背中を撫でり撫でりしていると、ソフィーアさまとセレスティアさまが苦笑していた。

 

 「どうしました?」

 

 一体何だろうと思い、お二人に声を掛けてみた。

 

 「いや、随分と懐かれたのだなと思ってな」

 

 「羨ましい限りです。ナイは幻想種と呼ばれる生き物に好かれやすい質のようなので」

 

 苦笑いを浮かべつつ、楽しそうな雰囲気のお二人。私の所為でソフィーアさまもセレスティアさまも振り回されている気がするけれど、良いのだろうか。益や利があるから私に付いていると以前に言われたけれど、今でも益があるのかどうか謎である。問題を起こし過ぎて、益よりも苦労が多い気がするし。

 

 「魔力で惹かれているだけですよ。私自身に惹かれている訳はないでしょうから」

 

 阿呆みたいな魔力量ってよく言われるものなあ。魔力が多く備わっていると、優遇されるし将来の選択の幅が広がる。もちろん使いこなせないと意味がないけれど、師事すればある程度使いこなすことが出来るものだ。

 センスのある人は、少ない魔力消費で術を行使できるみたいだけれど。私は雑な部類に入るので、もしかしてその辺りも関わっているのだろうか。真面目にシスター・リズに教えて貰っているのだけれど、魔力制御が上手くなっているのかどうか分かり辛い現状で。

 

「確かにそれもあるかも知れんが、それなら魔力だけを取って去ることが出来るだろう」

 

 「貴女の下を離れないのは、何かしらの魅力があるからではありませんこと?」

 

 邪な心であれば察知するでしょうと、セレスティアさまが言った。魅力ねえ……魅力かあ……。魔力よりも、この世界における平均身長と顔面偏差値が欲しかった。あと胸。同年代のみんなは、私より背が高いし顔が良いんだよ。こんな悲しいことがありますかいなと愚痴り倒したくなる。

 

 雑談を繰り広げながら、子爵邸へ戻って馬車から降りた。今日は登城する予定もないので、家庭菜園の様子やエルとジョセと話をして、課題をこなしたらご飯とお風呂の予定だったけれど、ロゼさんのことをみんなに説明しないと。

 まだ不貞寝を敢行しているアクロアイトさまを片腕で抱きかかえて、ジークのエスコートを受けながらゆっくりと降りる。腕の中でもぞもぞと動きながら、また私の脇の下へ顔を突っ込んだ。ジークとリンには事情説明は済ませてあるので、アクロアイトさまの様子を苦笑いを浮かべて見ているだけだった。

 

 「ロゼさん、ロゼさん」

 

 出てきてくださいなとは言わない。多分名前を呼んだ時点で影の中に居るロゼさんは理解している。馬車停まりなので、まだ人は少ない。御者の方が驚いているけれど、先手を打ってソフィーアさまが説明に赴いてくれていた。

 

 『マスター』

 

 「屋敷の皆さんに紹介したいので、私に付いて来て貰っても良いですか?」

 

 縦に身体を揺らしたので、了承の意と解釈した。私が歩き始めるとずるずると地面を這うように付いて来るのかと思えば、身体を上手く使ってポンポン跳ねて着いて来る。

 ちょっと可愛いかもと後ろを振り返りつつ玄関先を目指すと、使用人の皆さまが待っていてくれた。忙しいだろうからお迎えやお見送りは大丈夫と伝えてあるのだけれど、家宰さま曰く主人を迎えるのも送り出すのも使用人としての務めなのでご理解をと言われてしまった。

 

 「えっと……授業でスライムを創造することになりまして……」

 

 この場に騎士さまや軍の人が居なくて良かった。スライムは魔物に分類されるし、見たら問答無用でロゼさんが切り付けられそうだから。使用人の皆さまは驚いた顔をしつつ、私だから何が起こっても不思議じゃないなという顔を浮かべて、次の言葉を待っている。

 

 「何故か特殊な個体を作り出したみたいで……ロゼさん、皆さんに挨拶は出来ますか?」

 

 『? ――マスター、スライム、ヨロシク』

 

 私の言葉に対して少し考えた様子を見せた後、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。どうやら私のスライムだからよろしくねと言いたいらしい。喋ったことに対して使用人の皆さまが驚くけれど、天馬さまのエルとジョセ、畑の妖精さんも『タネクレ』『シゴトクレ』と大合唱している所為か、飲み込みが凄く早い。

 突っ込みが少なくて良かったけれど、クレイグには盛大に突っ込まれるんだろうなあ。夜にどう説明すべきだろうかと頭を悩ませるが、部屋に戻って着替えかな。

 

 「よろしくお願いいたします。この家の家宰を務めさせて頂いております、ギュンター・エーベルバッハと申します」

 

 胸に手を当てて家宰さまがお辞儀する。子爵邸の中では私の次に偉い人となるので、彼が認知したなら他の方たちへの通達をお任せしてしまおう。私が伝えるよりも穏便に済ませることが出来るし。

 

 『ヨロシク』

 

 家宰さまへ返事を返すロゼさん。へにょっと丸い形を崩してお辞儀をしていたような気がする。今日は部屋で無難に過ごして、通達されてから屋敷の中を案内かな。護衛を務めてくれている人たちにも紹介して、エルとジョセにも会って貰わないと。

 あとは畑の妖精さんたちやお隣さんにも紹介して、それから……やることは沢山あるけれど、一つ一つ地道にこなしていくしかないなと、挨拶を終えて部屋へと戻るのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。