魔力量歴代最強な転生聖女さまの学園生活は波乱に満ち溢れているようです~王子さまに悪役令嬢とヒロインぽい子たちがいるけれど、ここは乙女ゲー世界ですか?~   作:行雲流水

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0176:喋った。

 目が覚める。――随分とすっきりとした寝覚めだ。昨夜、右腕を枕代わりにアクロアイトさまに差し出すと、機嫌よく頭を乗せていた記憶が残っている。

 そのアクロアイトさまは私の枕元で身体を丸くしてまだ寝息を立てていた。眠たくてその後のことを覚えていないけれど、凄く重要な事を忘れているような。

 

 ――ナイ~、おやすみ。

 

 ああ、そうだ。アクロアイトさまが喋ったような気がしたのだ。以前も部屋の中で名前を呼ばれたような記憶が残っている。

 もしかして以前から喋れていたのに、喋れることを隠していたのだろうか。賢いから、何かしらの理由があって隠していただけの可能性だってある。黙っていたとしても何も問題はないのだし。

 

 寝ているアクロアイトさまを、起こさないようにと気を付けながら背中を撫でる。小さく寝息を立て気持ちよさそうに寝ていた。

 あまり撫でていると起きてしまうと、ベッドから身体を起こして両手を身体の前で組み天井へと伸ばして背中も伸ばす。ごきごきと背骨が鳴る音を耳に感じながら、立ち上がろうとしたその時だった。

 

 『おはよう、ナイ~』

 

 ベッドから腰を上げようとしていたのが止まる。

 

 「おはよう……って、え?」

 

 反射的に答えてから後ろを振り返ると、丸くなって寝ていたはずのアクロアイトさまが起き上がって、四つ足を器用に使って体を伸ばしてからぶるると身体を振っていた。アクロアイトさまはベッドの上を歩いて私の横に座って顔を見上げる。

 

 『少し恥ずかしいね。君たちの言葉は理解していたんだ。でも喋ることが出来なくてもどかしかったけれど、ようやくだよ』

 

 「え、あ……はい。おめでとうございます」

 

 状況に付いていくのが一杯で、なんだか妙な言葉を口走る私にアクロアイトさまが目を細めて苦笑いしているような顔をしている。

 

 『む。――いつも通りで良いのに。今更ボクに気遣いなんて必要ないでしょ?』

 

 前に性別確認しようとしていたからね、と以前の事を持ち出された。あれは単純に性別が気になっただけで深い意図はないのに。確かにセクハラに近い行為だったかもしれないが、幼い犬猫のタマタマの有無を確認するようなものである。

 

 『いやあ、あれにはボクも驚いたよ』

 

 どうして心の中を読んでいるのでしょうか。今の今までのことはアクロアイトさまにはお見通しという奴なのでは。というかアクロアイトさまはボクっ子なのですね。意外というか似合っているというか、まあ何にしても……。

 

 「その節は失礼を致しました」

 

 うっと項垂れる。本当にごめんなさい。あまり深く考えていなかった故の行動だけれど、逆の立場なら嫌だよね。

 

 『気にしないでとは言えないけれど、そんなに落ち込まないで』

 

 アクロアイトさまが立ち上がって、私の腕にぐりぐりと顔を撫で付ける。

 

 「えっと、膝の上に乗せても良い?」

 

 『許可を得なくても大丈夫だよ。ナイはボクが嫌がればやらないでしょう』

 

 そりゃ嫌がる素振りを見せたならやらないのが普通だ。状況把握や感情抑制が出来ない子供じゃあるまいし。両手を伸ばして、いつものようにアクロアイトさまを膝の上に乗せる。姿形は変わっていないけれど、喋ると分かった途端に緊張するのは何故だろうか。

 アクロアイトさまは膝上で寝転がって気持ちよさそうにしている。ぶっちゃけ、あまり肉が付いていないからこういうことはリンやソフィーアさま、セレスティアさまが適任だろうけれど。そっと手を伸ばして頭を撫でる。

 

 『こうしてナイに撫でて貰えるのは気持ち良い。魔力の相性も関係していると思うけれど、ナイはボクたちを引き寄せやすいよね』

 

 ボクたちというと、竜の方や天馬さまたちだろう。犬や猫は嫌いじゃないし、竜や天馬さまも嫌いじゃないけれど引き寄せすぎるのもどうなのだろうか。出会った方たちが穏やかで人格者ばかりだったから困ることはなかったけれど、これから先にとんでもない方に出会う可能性だって残っている。

 

 「そうかな。単純に私の魔力量が多いってだけだろうし」

 

 アクロアイトさまを見下ろしていると、アクロアイトさまは私を見上げている。なんだか妙な気分になってアクロアイトさまを抱え、いつも寝ている籠を机の上に移動してその中へアクロアイトさまをゆっくりと降ろし、私は椅子へ腰掛ける。

 これで目線が大体同じ位置になった。毎度のことながら、竜の方や亜人の皆さまに天馬さまたちに気に入られているのは、単純に私の魔力の所為であろう。

 特にこれと言った他の理由は思いつかない。魔力の親和性も高いみたいだし、これといった理由が特に見当たらないから。

 

 『もちろんソレもあるけれど、ナイって怖がったりしないでしょ。元々ボクたちは人間から畏怖されているんだけれど、ソレがない』

 

 魔力の流れで相手の感情を把握していることもあり、他人の感情に敏感なのだそうだ。多くの人間は彼らに対して、圧倒的強さを恐れ怖がる。けれど私にはソレが感じられないとか。そういう人の隣の方が楽だし落ち着くんだそうな。

 

 『亜人連合国で暮らしても良かったけれど、あっちだとボクのことをみんな敬うから』

 

 いや、こっちでも大変な状況に陥っている筈だけれど、アクロアイトさまは感じていないようだ。学院とか警備体制が強化されていたけれど、アクロアイトさまは以前の学院がどんな状況だったかなんて知らないしなあ。

 

 『それにしてもナイはみんなが驚くことを沢山しているね。この数ヶ月隣で見てきたけれど、楽しいこと面白いことばかりだ』

 

 「私が望んでそう行動している訳じゃないよ……問題が向こうからやってくるんだよ」

 

 本当に。どうして私の下にはああやっていろいろと問題が舞い込むのだろうか。平和に穏やかな人生を歩みたいというのに、厄介ごとやとんでもない事起こってしまう。

 特に学院へ入学してからというもの、問題が凄く起こっているような。巻き込まれなければ私は、特進科のクラスの片隅で本を読みながら『お貴族さまって大変だな』と心の中でぼやきながら、学生生活を送っていたはずなのに。

 

 『楽しいから良いんじゃないかな。――黒髪黒目は古代人に多くあった特徴で、彼らはボクたちを使役出来る程に強大な魔力持ちが多かったんだ』

 

 その頃の大陸には人間の数は少なく、竜や幻想種と呼ばれる種族や亜人の皆さまが住んでいた。古代人と呼ばれる人たちは極少数だったけれど、共存したり契約して使役も出来ていたとか。

 他の大陸からやって来た――ようするに帝国がある大陸のことだ――人間にどんどんと住処を追われて迫害されてる。こちらの大陸に住んでいた古代人も大陸からやって来た人たちとの混血化と純血に拘る人たちに別れて、純血の方たちは数をどんどん減らして自然消滅したとか。

 

 「私は先祖返りみたいなものなのかあ……」

 

 それか突然変異……一緒か。魔力が多いという点も一致するし、血の不思議というかなんというか。

 アクロアイトさまの口から知ることになるとは全く考えていなかったけれど、ご意見番さまの知識が残っているらしい。記憶という名の思い出を引っ張り出すことは難しいみたいだけれど、ご意見番さまが溜め込んだ情報を引き出すのは安易に出来ると。

 

 『だからボクたちは君に惹かれやすいのかもしれないよ』

 

 籠から飛び出て、私の肩に乗るアクロアイトさま。それと同時に部屋の扉を二度叩く音が響いた。

 

 「どうぞ」

 

 私の声に『失礼致します』という声が扉の向こうから聞こえて、ドアノブが回された音が鳴る。侍女さんたちがしずしずと頭を下げ、扉の前でいったん止まる。

 

 「おはようございます、ご当主さま。お着替えの手伝いをしに参りました」

 

 代表格の方が私へ声を掛けた。

 

 「おはようございます。よろしくお願いします」

 

 『おはよう~』

 

 お貴族さまとなって数ヶ月、この介添え着替えも慣れてきたなあとしみじみ感じる。最初は自分で着替えようとしたけれど『私たちの仕事を奪わないで下さい』と懇願された。侍従として主人にそういうことはさせられないそうで、侍従としてのプライドもあるとかなんとか。

 

 「――っ!!!?」

 

 「!???」

 

 あ、アクロアイトさま普通に挨拶を返しちゃった。目を真ん丸に見開いて、侍女のお二人が顔を見合わせた。

 お一人は回れ右をして廊下を足早に去っていき、もう一方は部屋へと入って平然を装い着替えを手伝ってくれる。けれどアクロアイトさまの方へ時折視線をやって、気にしているようで。

 

 『あ、ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだけれど……』

 

 着替える為に私の肩から籠の中へ移動していたアクロアイトさまが、介添えの侍女さんへ声を掛けた。

 

 「い、いえっ!! 失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんっ!」

 

 アクロアイトさまが喋って語り掛けてくれたことに対し、普段よりも二トーンくらい声が上がっている侍女さん。あ、もしかしてさっき言っていたことはこういう事なのだろうか。確かに声が上ずったり、彼女のようにカチコチに固まったりはしていないな、私。

 

 『ようやく喋れるようになったんだ。みんなと沢山お喋りしたいから気兼ねなく声を掛けて欲しいなあ』

 

 他の人たちにも伝えてくれると嬉しいと言葉を付けたしたアクロアイトさま。

 

 「ひゃ、ひゃい!」

 

 びしっと立ち礼する侍女さんに、アクロアイトさまが目を細めて苦笑している。ただ、アクロアイトさまが喋れるようになったのは本当に嬉しいことで。ジークやリンにクレイグとサフィール、ソフィーアさまとセレスティアさまにお屋敷で働いているみんな、亜人連合国の人たちにも早く知って欲しいなあ。

 

 でも、まあ取り敢えず。名前、呼びたいなあとアクロアイトさまを見つめるのだった。

 

 ◇

 

 朝食を摂って、学院へ行く前にやりたいことがある。

 

 ――アクロアイトさまの名前を呼びたい。

 

 ずっと考えていたけれど、亜人連合国の風習で信頼している方たち以外には教えないと聞いていたから『アクロアイトさま』と口に出すことは控えていた。

 ジークやリンも知っているけれど、向こうの国の風習を知っているので私と同様に口には出さなかった。介添えの侍女さんが『もうすぐ朝食ですので』と告げて部屋を去った後、何とも言えない雰囲気が流れる。

 

 いつもなら籠の中に居るアクロアイトさまを放置していても何とも思わなかったけれど、気になって仕方ないというかもっとお喋りしたいという気持ちもある。なるべく自然に名前を呼んでも良い許可を頂きたい所だけれど、こういう思慮深いことは苦手だし直接ストレートな言葉を伝えた方が早い気がしてきた。

 

 「あのね」

 

 定位置に戻した籠の中でじっとしていたアクロアイトさまに向き直る。

 

 『どうしたの?』

 

 くっと身体を伸ばして私を見るアクロアイトさまは、こてんと首を傾げた。

 

 「名前を呼びたいんだけれど、ちゃんとした名前で呼ぶ訳にはいかないよね?」

 

 周りに人が居るのにアクロアイトさまと名前を呼んだら、知れ渡ることになってしまうから。エルやジョセのように短縮した名前を呼んでもいい許可を頂きたい所だけれど。

 

 『どうして?』

 

 ナイが名前を付けてくれたでしょ、とアクロアイトさま。

 

 「亜人連合国だと信頼する方にしか名前を告げないって教えて貰ったからかな」

 

 だから未だに代表さまとエルフのお姉さんズである。私はまだまだ彼らの信頼を得られていないようだ。少し寂しくはあるけれど、今以上に認めて貰うように頑張るしかない。

 

 『オブ……代表も恰好をつけちゃったね。――そう難しく考える必要はないよ。気にする子は気にして名前を教えないってだけだからね』

 

 体を揺らしながら喋るアクロアイトさま。最初に何かを言いかけたけれど、何のことかさっぱりなので気付かない振りをしておく。代表さまたちは別に名乗っても問題はなかったそうだけれど、突然現れた他国の人間に警戒してそのまま名前を告げられていないだけだそうで。

 

 そうなのかとも思うし、まだまだ人として格が足りていないと言われているような気もする。長く生きている代表さまたちである。前世の記憶約三十年分とこちらの十五年分では足元にも及ばないだろうから。

 生きてきた年数が長くとも、考え方や教育で随分と差が出るものだ。私はまともに教育を受けられなかった側の人間で、社会人になってから時間を掛けてようやく真っ当に生き始めたような奴である。他の人よりも遠回りしたのだから仕方ないけれど、今世は真面目に真っ直ぐに生きられれば良いなと願う。

 

 『あ、でもボクも天馬のエルやジョセみたいに短く呼んで貰えたら嬉しいな。流石に誰彼にナイが付けてくれた名前を教える気はないから』

 

 私が決めても良いみたい。一番単純なのは『アクロ』か『アイト』だよねえ。日本人の記憶がある身としては『悪路』と『愛人』となって、人生が大変そうとかスケコマシや貞操観念の低い子になりそうと思ってしまう。

 アクロアイトさまならばそんな心配は必要ないが、ちゃんとした短縮名を考えたい。そうなると一番無難なものが頭をよぎる。

 

 「クロじゃあ駄目? 短いけれど私の髪色とかと一緒だなって」

 

 アクロアイトさまの鱗の色は白銀なのでちょっとイメージから離れてしまうけれど。私の我儘も入っているのかなあ。

 

 『ボクは好きだな。ナイと一緒かあ』

 

 籠の中から私の肩へと飛び移るアクロアイトさま、もといクロが顔をすりすりしてきた。それに答えて私も手を伸ばしてクロの頭を撫でる。

 

 「クロ」

 

 『ナイ~』

 

 お互いに名前を呼び合う。さっきまでこんなことになるだなんて露にも思っていなかったけれど。

 

 「変な感じだね」

 

 『直ぐに慣れるよ』

 

 せっかくお喋りできるのだからと、この際に聞きたいことを聞いておく。今は小さいけれどこれから大きくなるのとか、ご飯の量はちゃんと足りているのとか、亜人連合国の竜の方たちと交流をもっと持たなくて良いのとか。

 悩んでいたことが直接当事者に聞けるようになるって凄く楽。頭を悩ませるのも良いけれど、やっぱりクロ本人の口から聞いた方が良い。

 

 『大きくなるよ~。全盛期になればね、ボクは代表よりもおっきくなるはずなんだ』

 

 えへんと胸を張るアクロアイトさま。竜の方にとって身体の大きい小さいは力の差の現れなので、大きければ大きいほど格があるんだとか。

 

 『ナイの魔力を一杯貰っているから、小さくなることも出来るよ。代表は人化出来るでしょ、それの応用』

 

 はへーと声を漏らす。で、私の魔力を沢山摂っているからご飯は十分足りているそうな。元の自分よりも大きくなるかもと目を細めながら教えてくれたし、大きくなろうと思えば今からでもできるそうな。

 屋敷からはみ出す勢いで成長しそうだから、もう暫くはそのままでお願いしますと伝えると、小さくなることもできるから問題ないけれどねと首を傾げつつクロが言う。

 

 『仔竜たちの面倒を見るのは良いけれど、畏まられるのは頂けないかなあ……。対等でありたいのが本音だったし』

 

 立場もあったからそういう訳にもいかなかったとクロが言う。いろいろと考えることがあるのだなあと、クロの目を覗き込む。

 

 「クロって男の子なの、女の子なの?」

 

 ずっと気になっていたけれど、どちらなのだろう。代表さまや白竜さまは雄である。

 

 『え、ボクに性別はないよ。というかどっちにでもなれるって伝える方が正しいのかなあ』

 

 じゃあなんで確かめることを嫌がったのだろうか。深く突くと藪蛇になりそうだから良いかと、話の続きを聞く。

 

 『子供を残すなら魔力を固定させれば良いだけ。魔石があればもう少し簡単に子を残せるねえ』

 

 やろうと思えば今からでも出来るらしい。魔力に満たされているから、何でもできる万能感みたいなものを凄く感じているそうだ。そっかと納得しつつ、闇落ちとかしないで欲しいと願う。また浄化儀式を執り行うようになるのは嫌だし、クロの命を奪わないといけなくなるのは絶対に嫌だし。

 

 部屋にノックの音がまた響く。

 

 「大丈夫?」

 

 これまでは私がどうぞと言って入って貰っていたけれど、クロにも同意を得なければと聞いてみる。

 

 『あ、ナイのタイミングで大丈夫だよ。ボクこういうのは全く気にしないから』

 

 人間の掟って大変だねと私を見てクロは言う。ノックの仕方で辺りは付いているけれど、ドアの前で立っている人を待たせるわけにはいかないと『どうぞ』と声をだす。

 

 「ナイ、朝ご飯の時間だよ」

 

 扉を開けてリンが顔を覗かせた。

 

 「リン、おはよう。ごめん、遅くなっちゃったね」

 

 本当なら食堂へ足を向けている時間だけれど、遅かったのでリンが様子を伺いに来たようだ。大丈夫、と首を左右に振る彼女。肩に乗っているクロの足に力が籠っているのが分かる。どうしたのだろうと顔を横に向けると、意を決したようにクロが口を開いた。

 

 『――おはよう』

 

 「っ、おはようございます」

 

 クロが喋ったことに一瞬目を見開くけれど、直ぐに鳴りを潜めて言葉を返したリン。

 

 『あう……』

 

 彼女ならば普通に『おはよう』と返してくれると考えていたのだろう。時折リンの方へ飛んで行って、抱きかかえて貰い撫でて貰っていたから。

 

 「リン、普通に接してあげて。クロも緊張してるから伝わるんじゃないかな。リンなら気にしないからいつも通りで大丈夫だよ」

 

 苦笑しつつリンに声を掛ける。

 

 「良いの?」

 

 「うん。クロもそうして欲しいって言っていたからね」

 

 クロが乗っている方の方を少し上げれば、リンの方へ飛んで行き腕の中にすっぽりと収まる。

 

 『突然だけれど喋れるようになったんだ。君のことはリンって呼んで良いかな?』

 

 腕の中に居るので、リンの顔を見上げているクロ。

 

 「もちろん。でも私は君のことをどう呼べば良いの?」

 

 社交的だよねえクロって。長く生きてきた記憶がある為か、リンとのやり取りは順調そのもの。

 

 『さっきね、ナイがボクのことをクロと呼ぶって決めてくれたんだ。だからリンもそう呼んでくれるとボクは嬉しい』

 

 「クロ。ん、良い名前だね」

 

 『ありがとう、これからもよろしくね。――他の人にもそう呼んで貰えるかな?』

 

 「クロが願えば呼んで貰えるよ」

 

 リンの方へ近寄りクロの言葉に答える。子爵邸の人たちへの邂逅も驚かれているけれど順調そうだし、クロが望めば呼んでくれるだろう。一部の方は敬称が付くかもしれないけれど。

 

 「そうだね。ナイ、ご飯冷める。クロも一緒に行こうね」

 

 彼女の言葉に苦笑いを浮かべながら、食堂へと向かう一匹と二人だった。

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